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第64話 全部大好き!
しおりを挟む今日はクリスマスイブだ。
俺にくっついて眠る小動物のようなカレンの寝顔を見ながら幸せな朝を迎えた…はずだった…
なのに朝から外が騒がしい…
「なんかうるさいなぁ…カレン、ちょっと見てくるから寝てていいぞ」
「うーん、あっ、そこ」
「変な夢見るな!」
寝ぼけたままのカレンを置いて外に出た。
するとなにやら道端に人集りができている。
「校長?なにしてるんだろ…」
よくみると何か水晶玉のようなものを出している。
「さぁ、あなたの未来がわかる!ラック・ヨブテの占いの館だよー。」
思い切り胡散臭い占いを路上で展開していた…
「校長!なにしてるんですか!?占いなんかできたんですか?」
「おお、快斗くん!ついに私も素晴らしい力を手に入れたぞい!」
占いは大繁盛だった…
「校長、もしかしてあの伝説の像とやらのおかげですか?」
「そうなんじゃ、あの力は絶大じゃのー。どれ、君の未来も占ってやろうか?」
「…なんか先が見えてる気がしますけど…」
一応占ってもらうことにした。
「うむ、むむむ、これは!?」
「え、なんかやばい感じですか?」
「いや、チューばっかりしとるのー」
「今と変わらんじゃねえか!童貞は!?ねえそれだけでも教えてよ!」
「うーむ、真っ暗じゃのう…」
「まじか…」
しかし占いは大流行りで客足が途絶える様子はなかった。
「ていうかなんでこんなとこでやってんの?学校とかでやってくださいよ!」
「うむ、それがのー。純也くんが像の力で神になってしもうての、彼も新しい商売を始めたのじゃが…それのために学校を乗っ取られてしもうた」
「まて、色々整理させろ!神になったってなに!?そんでまた学校占拠されたの!?ぐちゃぐちゃすぎるだろ!」
「彼は神になり申したのじゃ。そのうち出ていくとは思うがのー」
「純也のやつ一体神になってなんの力手に入れたの?」
「髪を生やす力じゃ。これは凄まじい需要じゃのー」
「たしかにすごいな!あいつそんなことできちゃうの!?」
気になりすぎて純也に電話をした。
「もしもし?お前神になったってどういうことだよ?」
「おお、快斗。俺はもう神様になったんだ。だから学校行けなくなるけどすまんな。暇な時に遊びに行くから」
「サラッというな!え、人ですらなくなったの!?」
「いやだから神様になったんだよ」
「いやだからそれの意味がわからんのだって!?」
友達が神になった…
彼は学校で資金を集めた後、全国の薄毛に悩む人たちのために髪の毛を生やす旅にでるらしい…
もう人外のものまで登場してしまうような学校になってしまったが、これまでの無茶のせいか大した驚きもなく寮に戻った…
まだ夢の中のカレンを起こして、今日はケーキ作りをする予定だ。
「カレン、起きようよ。ケーキ作るんだろ?」
「うーん、あ、快斗、そこ、そこきて」
「いい加減エッチな夢から帰ってこい!」
ちょっと興奮しながらもカレンを起こした。
「快斗、おはよう。気持ちよかったー」
「おはよう…なんの夢見てたんだ?」
「快斗に開発されてたの」
「まだ童貞なのになにやってんだよ俺!」
でも夢の中の俺になりたい…
「それよりケーキ!作る準備するぞ」
「わーい、材料買いにいくー」
「ちょっとデパートとかいってみるか。材料以外に機材もいるだろ?」
そして二人でデパートに向かった。
「最近ケーキ多いよなー」
「なんか甘いのも好きになったの!だから帰っら甘々する!」
「甘いの意味が違うような…」
デパートはクリスマスムード一色で、カップルばかりだった。
「うわー、人多いなぁ…」
「快斗、ツリーがある!」
デパートの中央には大きなクリスマスツリーが立っていた。
「へぇー、すごいな。こんなのって誰が建てるんだろ?」
「快斗、ツリーほしい!」
「いや、さすがにそれは…」
「いる!今日はイブなの!」
「まぁそうなるよな…いいよ、わかった買おう。どんなサイズのにする?」
「一番大きいの!」
「寮に入るのか?」
結局ツリーのコーナーで一番のサイズのものを今日送ってもらうように手配した。
サラッと10万円くらいを払ってしまうのはカレンのお嬢様なところである…
「快斗、ケーキチョコクリームにしたい」
「ああ、俺もチョコ好きだからいいよ」
「楽しみ楽しみ!」
今日は終始カレンのテンションが高い。
まぁ女の子ってクリスマス好きだもんなぁ。
材料を購入してから二人で寮に帰った。
「とりあえずツリーが来るまでの間にケーキ作ろっか」
「うん!」
カレンとのケーキ作りが始まった。
「あ、快斗クリームついた」
「え、どこ?って…」
口に思いっきりクリームをつけたカレンがこっちを向いている。
「ん、ん!」
「わかったよ…」
カレンにキスをしてクリームをとってあげた。
「えへへ、これしたかったの!」
「普通ほっぺとかだと思うんだけど…」
その後もことある度にクリームをつけたカレンがキスを迫ってきた。
もうそのクリームでお腹いっぱいになりそうだったが、なんだかんだ楽しくケーキ作りが進んだ。
そして途中でツリーの配達がきた。
「カレン、ツリーきたんじゃないか?」
「わーい」
早速ツリーを受け取りにいったら…アンが届けにきていた…
「いや、お前今日ケーキ作りで忙しいんじゃ?」
「終わった」
「1500個全部!?すごいな…。でもそれなら俺らのも作ってくれよ」
「やだ」
「どうして?」
「もうケーキ見たくない」
「あ、ストレスなんですね…」
アンはツリーを組み立ててくれるという。
「中だと天井が大丈夫かな?」
「奥の寝室なら3センチ足りる」
「なんでそこまでわかるんだよ?」
「プロだから」
「お前は一体なんのプロなんだ…」
早速ツリーを作り出した。
「カレン、どーだ?」
「快斗、美味しいよ!食べてみて」
「ああ、いただきます。あ!うまい!ほんとカレンは料理が上手だなー」
「あ、快斗、口にクリームついてる」
そう言ってカレンが思い切り俺にキスしてきた。
「んー、ぷはっ。うん、美味しい!」
「舌いれるなよ今は…」
「だってクリームついてたもん、えへへケーキも快斗とクリスマスも全部大好き!」
キャッキャするカレンと俺は作ったケーキを冷蔵庫に入れて寝室の様子を見に行った。
するとすでにツリーは完成していた…
「いや飾り付けもセンスいいな!てか早くないか?どうやった!?」
「企業秘密」
「いやぁでも助かったよ。アンもケーキ食べてく?」
「いやいい」
「なんだよ、遠慮してんのか?」
「素人の作ったケーキは食べない」
「お前友達なくすぞ!?」
案外プライドだけ高いアンだった…
体のあちこちにツリーの飾り付けを絡めたまま
アンは帰っていった…
「快斗、メリークリスマス!」
「ああ、メリークリスマスだなカレン。こうやってクリスマスまで一緒に過ごせるなんて夢みたいだな」
二人で存分にクリスマスを堪能した。
そして実は俺はクリスマスプレゼントと用意していた。
「カレン、これ。マフラーなんだけど…お前寒がりだから」
「え、プレゼント?わーい、快斗大好き!早速一緒につける!」
「え、一緒に?」
そう言ってカレンがマフラーを俺とカレンの首に巻きつけて、俺たちはひっついた。
「あったかい…快斗のマフラー大事にするね」
「う、うん…」
ちょっと恥ずかしいなこれ…
「快斗、私もプレゼントあるの!」
「え、なになに?」
「はい!」
なにやら封筒を渡された。
「ん?なんだこれ…っておいおい」
商品券10万円分入っていた…
「こーいうのは嬉しいけど恋人には向いてないの!」
「あれ、ダメなの?」
「いや、もらっとく…」
アンの組み立てたツリーを見ながら、二人でマフラーと毛布にくるまってあったかいクリスマスを過ごした。
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