【本編完結】乙女ゲームだろうが推しメンには俺の嫁になってもらいます!

柚鷹けせら

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3 不完全なゲームの世界

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 ダンスホールを後にした俺は、とりあえず帰宅する事にした。
 さっきも言ったように情報……まぁ記憶って言った方がいいのか、その整理が必要だ。
 確認したい事も山のようにあるんで、その為には方々に足を運ばなきゃならないんだが、貴族ってのは何かと慣例だ、マナーだってうるさい。
 自分の婚約者に会いに行くのだって事前の、それも最低でも三日前の約束が必要になる。

(その婚約も解消させてもらわなきゃいけないな……)

 確認しなきゃならない事の一つがそれだ。
 キースとトーマスの婚約者はダンスホールにいたのに、俺の婚約者だけ不在だったのが引っ掛かる。断罪イベントも謎だったが、本来なら俺の婚約者もあそこでルークレア嬢に駆け寄っていくはずの間柄だ。
 原作とゲームで違うと言われればそれまでなんだが……、名前は確かセレナ・ラベリック。
 リントが無口な不愛想キャラだったせいで、ほとんと登場しなかった子爵令嬢だ。

 ともあれ、俺の推しがユージィンだって事を別にしても、リントの中身が俺になった時点で令嬢との結婚は無理なのだ。正直に打ち明けて謝罪しよう。
 幸いなことに、この世界は同性婚が当たり前にある。
 原作はあくまでも乙女ゲームをアレンジした内容だったが、スマホゲームになるにあたってユーザー層の拡大を狙った設定が後付けされたらしい。

 さっき降って来た情報の一部がそれだった。
 つまり、此処は原作小説の世界じゃなく、春から配信が始まる予定の、不完全なゲームの世界ってわけだ。

(だから覚えのない断罪イベントが起きていたんだな)

 原作小説には断罪イベントが存在しない。
 むしろ悪役令嬢だったルークレアを魔の手から救い出し、正気を取り戻した彼女とも協力してラスボスを倒す流れだった。
 ゲーム化に際し大衆向けに改変されたんだろうとは思うけど、原作好きとしては残念である。

(改変の結果がヒロインの腹黒化っつーのも妙な話……あれ?)

 なんかおかしいよな?
 もっとしっかりと思い出せよ、俺。
 この『氷雪の恋~あなたと紡ぐ真実の愛~』は異世界から召喚された『六花の神子』と呼ばれる女の子がヒロインだ。
 それがミリィなんだが、ゲームはこの子の視点で進むため、名前は任意で変えられるらしい。
 っと、それは今はおいておく。

 召喚されたヒロインの役目は、世界に厄災を齎すと言われる魔の一族からの侵攻を防ぐため、世界の結界を張り直す事だ。
 その為にはダンジョンと呼ばれる、三〇階層からなる『試練の洞窟』を攻略し、武器やアイテムを入手していかなければならない。
 攻略時には魔の一族以外にモンスターとの戦闘も多数行われるため、ヒロインには彼女の盾となり剣となる、この世界での協力者が必要なのだ。
 そう、それが『六花の戦士』と呼ばれる、ゲームでは攻略対象となるメンバーだ。
 六花は雪の異称。
 攻略対象者がそう呼ばれる所以は『試練の洞窟』がある場所ーー北の果てが完全なる雪国だからだ。
 王太子殿下エルディン・セス・ルーデンワイス。
 宰相の息子キース・グランワルド。
 魔導士師団団長の息子トーマス・マンスフィールド。
 騎士団団長の息子である俺、リント・バーディガル。
 そして公爵家嫡男のユージィン・クロッカスと、その妹のルークレア。彼女もゲーム内では友情エンドと言う名の攻略対象者(一部では百合エンドとも)になるらしい。

 原作では、ヒロインは王太子と一途な純愛を展開していた。
 王太子の婚約者だったルークレアは想い合う二人への嫉妬を募らせた結果、魔の一族に魅入られてしまい、中ボスとしてメンバーの前に立ちはだかる。
 しかしヒロインと王太子殿下の真実の愛の前に敗れ、正気を取り戻し、世界の幸せな未来のために一緒にラスボス(魔の一族の王様の影みたいな門番だ)を斃しましょうと奮起する。

 なので、普通に考えると断罪イベントなどありえないのだ!

「んんん? ってか、ほんと……どうなってんだ? ダンジョン攻略……開始してもいないじゃん? 卒業ダンスパーティーって事は結界が弱まり始まるのが……明日……?」

 鳥肌立った。
 え、マジで?
 俺は慌てて自分の袖を二の腕まで捲り、其処に刻まれているはずの六花の紋を確認する。

 ある。
 健康的に焼けている腕に、拳大の真っ白な雪の結晶がくっきりと刻まれている。

 ってことは、俺は確かに『六花の戦士』の一人で、ミリィを守りながらダンジョンを攻略し、明日にはアイテムを揃えて結界を強化する儀式を行わなければならないはずで!!

「あの女、何してんだ!?」

 このままじゃ世界滅亡、バッドエンドじゃねーか!?
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