【完結】平民聖女は堅物騎士に溺愛されるだろう

柚鷹けせら

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4.そこまで性根が腐ってるとは思わなかった

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 真夜中――。

「ん……?」

 こんなに寝心地の良いベッドで眠るのは初めてだと言っても過言ではないくらい上質なベッドで横になり幸せな気持ち享受していた私は、奇妙な違和感に目を覚ました。
 熱い。
 からだが怠いような気もするし、……風邪だろうか。

「っ……」

 ぞわっとする。
 布団や、なんなら衣服の布が擦れるのさえ刺激になって鳥肌が立つ。

「なにこれ……」

 こんな症状には覚えがない。
 こんな、不快感。

「っ」

 不意に遠慮がちなノックの音が聞こえて来た。同時に吐息だけで言葉を紡ぐような囁き声。

「聖女様、このような時間に恐れ入りますが起きて頂けませんか。聖女様」
「は、はい……っ」

 ヴェインだ。
 そう気付いてベッドを降りて扉に近付くが、手足が震える。

「ぅっ……」
「聖女様?」

 なんとか扉まで辿り着いてヴェインを招き入れるが、その顔を見た瞬間に何かが体の中で発熱する。

「このような時間に申し訳ありません。重ねてお詫びいたしますが、テルトワ国の者に聞かれるわけにはいかず……聖女様?」
「っ……」
「どうかなさったのですか?」

 ヴェインが私の様子がおかしいことに気付いて眉根を寄せた。
 わかる。
 どう見てもいまの私はおかしなことになっていると思う。でも、どうしてかなんて私が聞きたい。
 口を開けば今にも変な声が出てしまいそうだし、足の力は今にも抜けそうだし、人に言えない場所が疼いて勝手に足が内股になる。
 なんなの、これ。
 どういうこと……?
 ヴェインの顔を見るのも憚られて俯いていた私に彼も戸惑っていたようだが、不意に表情を一変させて部屋に入り扉を閉める。
 音を立てないよう細心の注意を払った動きで鍵まで閉めて、扉の向こう側に耳を澄ます。
 私も何が起きているのか判らないながらに、他に意識を向ければ楽になるんじゃないかと思って廊下の音に集中してみると、4人分の足音……重さから言って全員が男ね。
 4人の男がこそこそと此方に近付いて来ていた。

「くくくっ、いまごろクスリが効き始めてベッドで悶えてるぜ」
「本当にいいのか?」
「司祭様がヤれってクスリまで用意したんだからいいんだろ」
「そーそー。抱き潰して明日の治療が出来なくなれば、ピテムの奴らが出張依頼なんて出してくることもなくなるだろ。面倒な護衛もしなくてよくなるし、俺らはスッキリするし、言うことナシじゃねぇか」

 小声で話しているつもりだろうが丸聞こえだ。
 その内容に、目の前が怒りで真っ赤に染まった気がした。

「クスリ……」

 ヴェインの震える唇から信じ難いと言いたげな呟きが零れる。
 同感だ。
 いくらなんだって、ここまで性根の腐った真似をされるなんて思ってもみなかった。

「聖女様、御身体は……」
「さいっ……あくです……っ!」

 もうそれしかない。
 だけどあの4人はもう間もなくこの部屋に辿り着いて、私はこの身体で、……ヴェインは信頼できる人だと思っているけれど、いまここで彼らといざこざを起こすのはピテムへ逃亡する明日以降の計画を考えると得策では決してない。

「……っ」

 歯を食いしばる。
 嫌だ。
 嫌だ。
 嫌だ。
 嫌だ、でも。

「っ……ヴェイ、さ、は、まぉ……、ぁら……逃、げ……」
「――っ」

 言葉にならない声にヴェインが息を呑むのが判った。
 そして次の瞬間には彼にお姫様抱っこされていた。

「ぇ……」
「勝手に触れる無礼をお許しください」

 言うなり私を抱いたまま窓を開けた彼は、そこを飛び降りた。

「⁉」

 ここは3階だったはず――驚きで一瞬とは言え冷えた頭が思い出すが、どうやら建物の構造上で隣の建物の屋根に飛び乗る事になった。
 住んでいる人にとっては、屋根からものすごい音がして恐怖どころじゃなかったかもしれない。
 だけど今は、それを詫びる余裕もなくて。

 ヴェインは、私を抱えたまま夜闇の中を走り出した。
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