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絶対反対
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俺の一言で冒険者4人とルシウスは表情が固くなる。
コイツらの間にどんな因縁や過去があろうと俺は提案しただけだ。
出来れば俺をこれ以上責めないで欲しい。
「貴方はいつも地雷を踏みますね。狙ってやってます?」
ルシウスが嫌味な言い方をする。
「知らん。俺はどうしたら良いか聞かれたからそれに答えただけだ。」
俺は頭の後ろに手を回し、回る椅子でクルクルと回ってみせる。
咥えていたタバコの煙が渦を巻いていてちょっと楽しい。
「確かに彼らは戦力としては申し分ないでしょう。ですが彼らがそれを望まない。」
ルシウスは無理矢理に作った笑顔で、
「……ここから先は彼らに聞いた方が良いでしょう。私は1度席を外します。」
そう言って休憩室の扉を出ていった。
それを追うようにソールも、
「大体の予想は着くからアタシも出るわ。でもアタシの意見としてこれだけは言っておく。アンタ達が責めるのはルシウスじゃないと思うわよ。それじゃ。」
力強く扉を閉め、ルシウスの後を追った。
「んで、お前らはどうしたい?」
「絶対反対です。」
「同じく。」
「俺もだ。」
「僕もです。」
4人が口を揃えて異議を申し立てる。
俺にはあの優男のルシウスがここまで嫌われる意味が理解できない。
アイツは人の恨みを買うタイプじゃないだろう。
貧民街の人間達に金を工面し、隊長でありながら民衆のために最前に立って戦うような人間だぞ?
「お前らはなんでそんなにルシウスを嫌う?」
「アイツはね、私たちの村をモンスター共に明け渡したんだよ。村にまだ人が残ってるのにね!!」
魔法使いの女は机を叩きながら凄い剣幕で怒鳴る。
俺に怒鳴られても困るんだがな。
相手が激情しているとこっちは冷静になれるもので、俺は淡々と返した。
「ほー、理由は?」
「理由?知らないわよ!!」
「コイツじゃ話にならん。他の3人も知らんのか?」
俺が聞くと、比較的冷静だったランスが詳細を語ってくれた。
「あの時村にモンスターの群れが迫っていたんです。村人全員と討伐隊で戦えば村を守ることはできたと思います。ですが指揮をとっていた当時副隊長だったルシウスは村を捨て、退却する事を選んだ。その結果村を守ろうと戦った私達の家族や村の人間達が蹂躙され、村もモンスターに滅ぼされたんです。」
「なるほどな。つまりお前らの逆恨みか。そんなことだろうとは思ったよ。」
「あんたさっきから何なのよ!!生まれ育った大切な村を守ろうとして何が悪い!!」
ヒステリックになっている女がうるさいな。
単純に考えたら分かるだろうが。
「お前は少し落ち着いたらどうだ?いい加減煩いぞ。」
腕を組み、睨みを利かせると女は黙った。
先の戦いを見て俺に勝てないことは分かっているのだろう。
「村を守る事は決して悪いことじゃない。だがその時ルシウスは村じゃなく人を守りたかったんじゃないか?」
4人は俯く。多分そんなこと言われなくてもわかっていたんだろう。
しかしそれを認めてしまうと、村で戦った人間達は命令に背き犬死した人間ということになる。
村の連中は間違っていなかった、戦犯は他にいることにしたい。だから誰かを吊し上げないと気が済まない。
そうして槍玉に挙げられたのが、勇敢にも撤退の指示を出したルシウスだったという訳だ。
戦場において撤退のタイミング程難しいものは無い。
勝てるか勝てないかだけじゃない、どれだけの被害が出るかという判断も委ねられる。
ギリギリ被害の出ないタイミングで撤退の指示を出したのにも関わらず、それを無視され逆恨みされたのではルシウスが報われないだろう。
「お前らも本当は分かっているんだろう?悪いのはルシウスじゃない。どっかの巫女が言ったことそのままだな。」
「だからって、村の人間を見捨てて撤退したあの人を許せるわけがありません。」
「まぁ、そこから先はお前らの判断で好きにしろよ。俺はルシウスとそんなに付き合いが長い訳じゃないが、少なくともアイツは自らが常に死と隣り合わせの位置に居ながら、全く自分に責任の無い他人の死を後悔するような人間だったぞ。」
俺はそう言ってレインを連れ、部屋から出た。
これから先アイツらがどうしようと俺の知ったことでは無いが、理不尽な理由で仲間が後ろ指さされるのは許容できない。
ドアを開けるとルシウスとソールが立っていた。
「盗み聞きか?」
「聞きたくはありませんでしたけどね。」
「俺はお前の口から真実を聞きたいがな。今ここで。」
「何を言っても言い訳にしかなりませんけどね。あの時実は後方からも小規模ですがモンスターの群れが来ていたんです。村に留まれば挟み撃ちになり、被害が拡大することは目に見えていました。なので一度撤退し後方のモンスターを倒した後、再度正面のモンスターを倒す予定だったんです。」
「まぁ、妥当だわな。だが村人たちが村を離れなかったと。」
「正直撤退し、後方のモンスターを制圧した人間達だけでは村を占拠したモンスターを倒し切ることは難しかった。だから村を明け渡すしか無かったんですよ。」
「俺はお前の判断は間違ってなかったと思うぞ。」
「いえ、間違っていました。私はずっと、村は失ってもまた建て直せるが、人間は失うともう戻らないと思っていました。でも村だって失えばもう元には戻らないんですよね。」
「だそうだ。」
半開きにしたドアを閉めることなく、俺はロビーに戻った。
コイツらの間にどんな因縁や過去があろうと俺は提案しただけだ。
出来れば俺をこれ以上責めないで欲しい。
「貴方はいつも地雷を踏みますね。狙ってやってます?」
ルシウスが嫌味な言い方をする。
「知らん。俺はどうしたら良いか聞かれたからそれに答えただけだ。」
俺は頭の後ろに手を回し、回る椅子でクルクルと回ってみせる。
咥えていたタバコの煙が渦を巻いていてちょっと楽しい。
「確かに彼らは戦力としては申し分ないでしょう。ですが彼らがそれを望まない。」
ルシウスは無理矢理に作った笑顔で、
「……ここから先は彼らに聞いた方が良いでしょう。私は1度席を外します。」
そう言って休憩室の扉を出ていった。
それを追うようにソールも、
「大体の予想は着くからアタシも出るわ。でもアタシの意見としてこれだけは言っておく。アンタ達が責めるのはルシウスじゃないと思うわよ。それじゃ。」
力強く扉を閉め、ルシウスの後を追った。
「んで、お前らはどうしたい?」
「絶対反対です。」
「同じく。」
「俺もだ。」
「僕もです。」
4人が口を揃えて異議を申し立てる。
俺にはあの優男のルシウスがここまで嫌われる意味が理解できない。
アイツは人の恨みを買うタイプじゃないだろう。
貧民街の人間達に金を工面し、隊長でありながら民衆のために最前に立って戦うような人間だぞ?
「お前らはなんでそんなにルシウスを嫌う?」
「アイツはね、私たちの村をモンスター共に明け渡したんだよ。村にまだ人が残ってるのにね!!」
魔法使いの女は机を叩きながら凄い剣幕で怒鳴る。
俺に怒鳴られても困るんだがな。
相手が激情しているとこっちは冷静になれるもので、俺は淡々と返した。
「ほー、理由は?」
「理由?知らないわよ!!」
「コイツじゃ話にならん。他の3人も知らんのか?」
俺が聞くと、比較的冷静だったランスが詳細を語ってくれた。
「あの時村にモンスターの群れが迫っていたんです。村人全員と討伐隊で戦えば村を守ることはできたと思います。ですが指揮をとっていた当時副隊長だったルシウスは村を捨て、退却する事を選んだ。その結果村を守ろうと戦った私達の家族や村の人間達が蹂躙され、村もモンスターに滅ぼされたんです。」
「なるほどな。つまりお前らの逆恨みか。そんなことだろうとは思ったよ。」
「あんたさっきから何なのよ!!生まれ育った大切な村を守ろうとして何が悪い!!」
ヒステリックになっている女がうるさいな。
単純に考えたら分かるだろうが。
「お前は少し落ち着いたらどうだ?いい加減煩いぞ。」
腕を組み、睨みを利かせると女は黙った。
先の戦いを見て俺に勝てないことは分かっているのだろう。
「村を守る事は決して悪いことじゃない。だがその時ルシウスは村じゃなく人を守りたかったんじゃないか?」
4人は俯く。多分そんなこと言われなくてもわかっていたんだろう。
しかしそれを認めてしまうと、村で戦った人間達は命令に背き犬死した人間ということになる。
村の連中は間違っていなかった、戦犯は他にいることにしたい。だから誰かを吊し上げないと気が済まない。
そうして槍玉に挙げられたのが、勇敢にも撤退の指示を出したルシウスだったという訳だ。
戦場において撤退のタイミング程難しいものは無い。
勝てるか勝てないかだけじゃない、どれだけの被害が出るかという判断も委ねられる。
ギリギリ被害の出ないタイミングで撤退の指示を出したのにも関わらず、それを無視され逆恨みされたのではルシウスが報われないだろう。
「お前らも本当は分かっているんだろう?悪いのはルシウスじゃない。どっかの巫女が言ったことそのままだな。」
「だからって、村の人間を見捨てて撤退したあの人を許せるわけがありません。」
「まぁ、そこから先はお前らの判断で好きにしろよ。俺はルシウスとそんなに付き合いが長い訳じゃないが、少なくともアイツは自らが常に死と隣り合わせの位置に居ながら、全く自分に責任の無い他人の死を後悔するような人間だったぞ。」
俺はそう言ってレインを連れ、部屋から出た。
これから先アイツらがどうしようと俺の知ったことでは無いが、理不尽な理由で仲間が後ろ指さされるのは許容できない。
ドアを開けるとルシウスとソールが立っていた。
「盗み聞きか?」
「聞きたくはありませんでしたけどね。」
「俺はお前の口から真実を聞きたいがな。今ここで。」
「何を言っても言い訳にしかなりませんけどね。あの時実は後方からも小規模ですがモンスターの群れが来ていたんです。村に留まれば挟み撃ちになり、被害が拡大することは目に見えていました。なので一度撤退し後方のモンスターを倒した後、再度正面のモンスターを倒す予定だったんです。」
「まぁ、妥当だわな。だが村人たちが村を離れなかったと。」
「正直撤退し、後方のモンスターを制圧した人間達だけでは村を占拠したモンスターを倒し切ることは難しかった。だから村を明け渡すしか無かったんですよ。」
「俺はお前の判断は間違ってなかったと思うぞ。」
「いえ、間違っていました。私はずっと、村は失ってもまた建て直せるが、人間は失うともう戻らないと思っていました。でも村だって失えばもう元には戻らないんですよね。」
「だそうだ。」
半開きにしたドアを閉めることなく、俺はロビーに戻った。
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