ヘビースモーカーと枯れ木の魔女

I.B

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悪くない仕事

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「凄いわねアンタ!!たった一晩であのオーナーを口説き落とすなんて!!……って随分疲れてるわね。」


「一晩中元の世界の話をさせられ続けたからな……。」


 翌日朝からルビィには連絡が行ったようで、今回の件は白紙に戻ったという。

 なんなら元々融資のつもりで金を渡していたからと、オーナーに返済した金まで戻ってきてウハウハらしい。


「店の商品ももぬけの殻だし、アンタの才能に脱帽だわ。」


「なーんかレインを外に立たせて『いかがですかー?』って道行く冒険者に声かけさせてるだけで店の物全部売れたわ。」


 ソールも雑談に混じってその日の詳細を語ってくれた。

 レインを客寄せパンダにしてんじゃねぇよ。

 さっすがレインよねーと言いながらソールはレインの頭をワシャワシャと撫でている。

 レインも恥ずかしそうに嬉しそうだ。


「アンタに頼んで正解だったわ一成。これが約束のお金と例のインゴットよ。」


 そう言ってルビィは2つを机の上に差し出した。

 俺がそれを受け取ろうと手を伸ばすと、ルビィがその手を掴んでくる。


「アンタとなら結婚しても良いわよ?」


「残念だが、好みじゃない。」


「あはは!!冗談よ。アタシはこの街を離れるけど、また会うことがあれば手を貸すわ。今回は返しきれないほどの借りが出来ちゃったしね。」


「ああ、それは是非とも。あのオーナーからも似たようなこと言われたし、今回の依頼悪くなかったよ。」


 そう言って俺はレインとソールを引き連れて店を出た。

 帰り際、レインがルビィに深くお辞儀をして、ルビィがそれに小さく手を振っていた。


「あんなに素直で可愛い子が居たらそりゃあアタシなんか眼中に無いわよねぇ……。さーて、気持ち切り替えて仕事仕事!!」




「良いのー?あんなに優秀な美人の誘い断っちゃって?」


 茶化すようなテンションでソールが俺を小突いてくる。

 それを聞いてレインが見えない目で真っ直ぐと俺を見つめてくるので、俺は少し間を置いてタバコに火をつけながら返した。


「優秀さで言えば俺の方が優秀だし顔はレインの方が良いだろう。」


「しくじったわ。ナルシストと惚気のダブルパンチによる胸焼けで吐きそうよ。」


「……私、そんなに美人なんですか?」


 顔を赤らめながらレインが俺とソールに聞いてくる。

 世間的に見てもレインの顔立ちは整っているだろう。

 ソールに客寄せパンダにされていた時、冒険者が半分貧民街の裏道に吸い込まれるほどなのだから相当なものだ。


「顔立ちは整っていると思うぞ?」


「アンタねぇ……。男としては0点の回答よそれ。」


 それでもレインは嬉しそうに足取りを弾ませて転びかけていたので、俺としては100点満点の回答だと思う。


 ちなみに後日ルシウスに同じ質問をしてみたところ、俺と全く同じ回答が帰ってきたのでこいつも俺と同じ分類だとソールがキレていた。

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