野生の子供

福猫

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第5話

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野性の森に着いた朝は森の中を走りながらイリヤの元に向かった。

「母さん」

嫌な予感を感じながら走り続けた朝は倒れているイリヤを目撃し近づいた。

「母さん…母さん…母さん…」

「……」

ゆっくり目を開きイリヤは口を開いた。

「朝…愛生さんと一緒に生きなさい…そして幸せになりなさい…」

「母さん…母さん…母さん」

永遠の眠りについたイリヤに抱きつきながら朝は涙を流した。

それから暫くして朝は泣き疲れイリヤに抱きつきながら眠りについた。

30分後、私服姿の愛生が現れた。

「……」

愛生は朝をお姫様抱っこしイリヤを見つめると口を開いた。

「朝さんは俺が幸せにします」

そう言って愛生は背を向け歩き出した。

その後、愛生は朝を後部座席に乗せ車で自宅に向かった。

その頃、愛生の家の前では仕事を終えたリンが待っていた。

「愛生さん、まだ仕事なのかな」

諦めて帰ろうとしたその時、車が家の前で止まった。

運転席から愛生がおりるとリンは近づき声をかけた。

「愛生さん」

「リンさん、どうしてここに」

「愛生さんに伝えたいことがあって来たの」

「中で話を聞きます、先に入ってリビングで待ってて」

「ドア、開いてるの?」

「開いてますよ」

そう言って愛生は運転席のドアを閉め後部座席のドアを開いた。

そして愛生は朝をお姫様抱っこしながら後部座席から離れドアを閉めた。

「あの人は!」

リンはじっと見つめた。

「リンさん、ドアを開いてください」

愛生が声をかけるとリンは「はい」と言ってドアに近づきドアを開いた。

「ありがとう」

そう言って愛生はドアに近づき中に入り寝室に向かった。

「……」

中に入りドアを閉めようとしたリンは一瞬、嫌な気配を感じドアを閉めた。

その後、リンはリビングに向かいソファーに座り愛生を待った。

その頃、愛生は朝をベッドに寝かせ掛け布団を身体にかけ見つめていた。

「朝さん、ゆっくり休んで悲しい出来事は忘れてください」

そう言って愛生は朝の唇に唇を重ねその後、寝室を出ていきリビングに向かった。

「車を駐車場に止めてくるから」

「はい」

リンが返事をすると愛生は玄関に向かい外に出た。

そして愛生は車を駐車場に移動させ車からおりた。

その後、愛生は家の中に入りドアを閉めリビングに向かった。

「待たせてゴメンね」

愛生が隣に座ると顔を見つめながらリンが口を開いた。

「あの人、誰ですか?」

「あの人って朝さんのこと?」

「愛生さん、1人暮らしだって言いましたよね」

「いろいろあって朝さんのことは話せないんだゴメンね」

「知らない男に乱暴されていた私を助けてくれた愛生さん、あの時から私、愛生さんに恋をしました、私と付き合ってください」

「リンさん、ゴメンなさい」

「好きな人がいるんですか?」

「いないけど…」

「いないなら私と付き合って愛生さん」

そう言ってリンは愛生に抱きついた。

愛生はリンを離れさせ口を開いた。

「ゴメンなさい」

「……」

無言でリンは立ち上がり涙を流した。

「リンさん」

愛生も立ち上がるとリンが口を開いた。

「私は諦めないから」

そう言ってリンは家を飛び出していった。

ー寝室ー

朝は目を覚まし身体を起こした。

「ここは愛生さんの寝室…愛生さんが俺をここに運んだんだ…」

そう言って朝はベッドからおり寝室を出るとリビングに向かいソファーに座りながら頭を抱えている愛生の姿を見つめた。

朝は近づき声をかけた。

「何かあったんですか?」

「……」

愛生は朝に目線を向け手首を掴んだ。

「愛生さん?」

「……」

愛生はじっと朝を見つめた。

朝はその顔に頬を赤らめ顔をそらした。

愛生は朝をソファーに座らせ口を開いた。

「朝さん、俺は朝さんが好きです」

「好きってどう意味ですか?」

「心を奪われました」

そう言って愛生は朝に顔を近づけ唇を重ねた。

その後、愛生は唇を離し朝の身体を倒し覆い被さった。

「……」

「……」

愛生と朝は無言で見つめ合った。

「朝さん」

「愛生さん」

互いの名前を呼び合うと愛生は朝の衣服を脱がせ全裸にした。

「……」

無言で朝が見つめると愛生も衣服を脱ぎ全裸になった。

「朝さん、良いですか?」

「良いですかって何ですか?」

「朝さんの身体を奪って良いですか?」

「……」

「返事がないので勝手に奪います」

そう言って愛生は朝の身体を奪い始めた。

その頃、リンは誰もいない倉庫で白い髪の男と話をしていた。

「愛生さんの家に生意気な男がいるの、その男がいるから愛生さんは私をふったの」

「それで俺に何をさせたいんだ」

「愛生さんの心を惑わす男をめちゃくちゃにしてほしいの」

「そいつの写真はあるか」

「写真がなくても大丈夫、私が誘い出すから」

「俺はどこにいれば良いんだ」

「私が誘い出しこの倉庫に連れてくるからあなたはここで隠れてて」

「わかった」

「明日、この倉庫の近くで撮影があるから連れてくる」

「わかった」

そう言って男とリンは倉庫で別れそれぞれに家に帰っていった。

ー翌日ー

リンはマネージャーの車で愛生の家に向かった。

その頃、愛生と朝は寝室のベッドで寄り添いながら眠っていた。

その時、インターホンが鳴った。

「誰だ」

そう言って愛生は朝を起こさないようにベッドからおり上服を着てズボンを穿くと玄関に向かった。

その後、愛生はドアを開きリンに出くわした。

「リンさん!」

「愛生さんの家にいる彼に用事があるんだけど」

「朝さんに?」

「車の中で待ってるから」

そう言ってリンはドアを離れ車に向かった。

愛生はドアを閉め怪しみながら寝室に向かった。

「愛生さん」

「……」

身体を起こしながら見つめる朝に愛生は近づきスタンガンを渡した。

「これは?」

「危険なめが起きたらスタンガンで抵抗して逃げてください、そしてこれで俺に連絡してください」

そう言って愛生はスマホも朝に渡した。

その頃、助手席に座っているリンは本物のマネージャーと入れ替わった運転席に座っている金髪のカリンと話をしていた。

「来るのか?」

「来るわよ」

リンが口にしたその時、朝が現れた。

「来た」

そう言ってリンは助手席からおり朝を助手席に乗せドアを閉めた。

その後、リンは後部座席のドアを開き口を開いた。

「カリン、お願いね」

「わかった」

「……」

リンがドアを閉めると車は動き離れていきリンは歩き出した。

「……」

リンの姿を隠れながら見つめていた愛生はリンのあとをつけていった。

ー車中の中ー

助手先に座っている朝は窓に目を向け運転席のカリンは無言で運転し続けた。
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