同性愛~3人の王子~

福猫

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第5話

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「天を見つめて何してるの?」

光る天を見つめる衣都に小さな妖精が話しかけると衣都は振り返り小さな妖精に答えた。

「あの光りに行けばあの世に逝けるんですよね」

「あなたは死んでないのに何であの世に行くのよ」

「俺は死んでない?」

「ソウゴ王子があなたの目覚めを待ってる」

「ソウゴさんが」

「さぁ、行こう」

小さな妖精が手を差し出すと衣都はその手を掴み光りに包まれた。 

その後、衣都の身体から小さな妖精が現れると衣都が目を覚ました。

そして衣都が身体を起こし立ち上がるとソウゴに抱きしめられた。

「良かった」

「ソウゴさん」

「再会を邪魔して悪いんだけど宮下という人間が黒水晶に閉じ込められてる」

「何だと」

「宮下さんが黒水晶に閉じ込められてるってどういうことですか?」

小さな妖精に向かって衣都が問いかけると小さな妖精が口を開いた。

「宮下の剣の攻撃をソウゴ王子の代わりに受けた、そのせいで宮下は自分を責め黒水晶に閉じ込められた」

「宮下さんを助けないと」

衣都が目線を向けるとソウゴが口を開いた。

「衣都には悪いが宮下を助けるつもりはない」

「ソウゴさん」

「宮下は衣都を傷つけた、タイキとリクも同じ気持ちだ」

「……」

「衣都」

「俺、1人で宮下さんを助けます」

背を向けながら口にすると衣都は森林の中を歩き出しそのまま姿を消しスーパーの控え室に姿を現した。

「衣都!」

驚いた顔でタイキとリクが見つめると衣都は黒水晶に近づき宮下を見つめながら触れた。

「宮下さん」

「……」

眠りながら宮下の手が動くと衣都は「宮下さん!」と口にしながら黒水晶の中に入っていった。

「衣都!」

驚いた顔でタイキとリクが見つめるとソウゴが姿を現した。

「衣都、宮下を助けたら傷つくことがなぜわからない」

黒水晶を見つめながらソウゴが口にすると黒水晶の中の衣都が宮下に話しかけた。

「宮下さん、目を覚ましてください」

「……」

「宮下さん、目を覚ましてください…お願いだから目を覚ましてください」

衣都の目から涙が流れ宮下の手に落ちると宮下の手が動いた。

「宮下さん!」

衣都が手を握ると宮下が目を覚ました。

「衣都さん、死んだんじゃ」

「小さな妖精さんのお陰で死なずに生きています、だから宮下さんも死なずに生きてください」

「嫌な思いをさせた俺のために泣くなんて」

衣都の涙を手で拭うと宮下は顔を近づけ優しい口づけを交わした。

その後、宮下の唇が離れると黒水晶が砕け衣都と宮下が現れた。

「衣都」

警戒しながらタイキとリクが見つめると宮下がタイキとリクに向かって口を開いた。

「警戒しなくても衣都さんを嫌な思いさせないから安心しろ」

目線をタイキとリクからソウゴに向けると宮下は近づき口を開いた。

「衣都さんのこと頑張れよ」

「宮下」

「……」

見つめるソウゴに笑みを浮かべると宮下は衣都に近づき口を開いた。

「衣都さん、俺は悪魔の国に帰ります」

「スーパーはどうするんですか?」

「衣都さんが経営者になってください」

「急に言われても」

「大丈夫、衣都さんなら立派なスーパーの経営者になれる」

「わかりました、俺、頑張ります」

「ありがとう衣都さん」

そう言って衣都に顔を近づけ別れのキスを交わすと宮下はその場から姿を消していった。

「衣都」

「……」

無言で衣都がソウゴに目を向けるとソウゴが口を開いた。

「家に帰ってゆっくり休め」

「控え室を片づけないと」

「俺達が片づけておくから衣都はゆっくり休め」

「わかりました、お願いします」

そう言って衣都が控え室から出ていくとソウゴは険しい顔でタイキとリクを見つめ口を開いた。

「誰が衣都に相応しいか決めないか」

「本気で言ってんのか」

「お前達も思ってただろ」

そう言ってソウゴも白と黒のタキシードに白と黒のマントを羽織った姿に変身すると剣を構えた。

「3人で衣都を守るじゃダメなのか?」

「1人で衣都を守る王子の方が良いよな」

そう言ってリクも剣を構えるとリクとソウゴの戦いが始まりタイキはその戦いをじっと見つめた。
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