同性愛~3人の王子~

福猫

文字の大きさ
10 / 10

最終話

しおりを挟む
ー翌日ー

先に目を覚ましたリクは側で寝ている衣都を起こさないように身体を起こしベッドからおりると魔法で赤いタキシードと赤いマントを身にまとった。

そしてリクは魔法で壁に空間を開け中に入ると空間を閉じ歩き出した。

50秒後、空間が開くとリクは空間から出て崩れた洞窟を見つめた。

「……」

「リク、何しに来た」

「……」

背後から話しかけられ振り返ったリクは1人で立っている王様に目を向けた。

「王様」

「何しに来た」

「崩れた洞窟がどうなったか気になって様子を見に来たんだ、すぐにいなくなるから安心してください」

「それだけか、俺に用事があるから来たんじゃないのか」

「俺は王様の息子じゃないし王子でもない」

「……」

「衣都と過ごすのに魔法はいらない、王様、魔法を解いてください」

「……」

お辞儀をするリクに王様は無言で近づき肩に触れると顔をあげさせた。

「……」

「姿は赤いままだが心は元に戻ったようだな」

「衣都のお陰です」

「ソウゴ王子とタイキ王子に言われたよ」

「……」

「衣都ならリクの赤い姿を元に戻すかもしれないから悪魔の国の王子に戻してやってくれと」

「アイツら余計なことを」

「一度、衣都の元に戻って衣都を連れて城に来い」

「王様」

「わかったら早く行け」

「……」

無言でお辞儀をするとリクは空間の中に入り衣都の元に向かった。

「……」

笑みを浮かべると王様も離れ城に向かった。

ー寝室ー

私服に着替えた衣都はリクがいなくなりベッドに座りながら落ち込んでいた。

「リクさん、どこに行ったんだろ」

壁に目を向けると空間が現れ衣都は驚いた。

その空間からリクが現れると衣都は立ち上がり「リクさん!」と言ってリクに抱きついた。

「どうした」

「何も言わずいなくなるから心配しました」

「すまない」

「どこに行ってたんですか?」

「崩れた洞窟を見に行ってた」

「洞窟を?」

「そこで王様に会った」

「何かされませんでしたか」

「王様が衣都を連れて城に来いって」

「え…」

驚いた顔で衣都が見つめるとリクが口を開いた。

「今から城に行こう」

「今からですか…」

「嫌か?」

「嫌じゃないです、行きましょう」

そう言って衣都は差し出されたリクの手を握りそのまま空間の中に入ると歩き出した。

その頃、悪魔の国の城では王様と王妃は椅子に座り兵士達とソウゴ王子とタイキ王子は立ってリクと衣都を待っていた。

それから暫くして兵士が慌てて現れた。

「王様、リク王子が衣都さんを連れて来ました」

「わかった」

「……」

兵士が仲間の兵士達の元に向かうとリクと衣都が社交場の中に現れた。

そしてリクは兵士達とソウゴとタイキに驚いた。

「リク、衣都さん、私の前へ」

「……」

リクと衣都は言われた通り王様に近づくと立ち止まった。

王様は椅子から立ち上がり衣都に目を向けると口を開いた。

「衣都さん」

「はい」

「リクと一緒にこの国を守ってほしい」

「え…」

「……」

衣都とリクが驚くと再び王様が口を開いた。

「あなたがいなかったら俺は赤い悪魔になったリクの命を奪ってた、あなたが側にいてくれたらリクは大丈夫、衣都さん、リクを頼みます」

そう言って王様が衣都に向かってお辞儀をするとリクは驚いた顔で見つめた。

「顔をあげてください」

「……」

顔をあげ王様が見つめると衣都が口を開いた。

「俺はリクさんが好きです、俺でリクさんの力になれるのならリクさんの側にいます」

「ありがとう」

王様がホッとするとソウゴが口を開いた。

「王様、パーティーを始めましょうか」

「そうだな」

王様の許可が入ると兵士達は酒と食事を準備しパーティーが始まった。

「衣都、俺と踊ってください」

ソウゴとタイキが衣都を王様とリクから離れさせると王様が口を開いた。

「リク、俺にはお前しかいない」

「父さん」

「リク、この国を頼む」

「父さん」

「リク」

「……」

リクが目を向けると王妃が口を開いた。

「明日から私達、人間が暮らす国に旅行に行くのリク、国のことお願いね」

そう言って王妃と王様が社交場を出ていくとパーティーは盛り上がった。

「盛り上がってるな」

そう言ってリクは酒が入ったグラスを取りにテーブルに近づくとグラスを掴み飲んだ。

そこへソウゴとタイキが近づいてきた。

「リク、良かったな」

「お前ら俺を恨んでないのか」

「何で恨むんだよ」

「衣都を俺だけのものにした、恨んでないわけないだろ」

兵士達と楽しく騒いでいる衣都を見つめながらリクが口にするとソウゴとタイキが口を開いた。

「3人を好きだと言っていた衣都がリクを選んだんだ、俺達は諦めらしかないだろ」

「ソウゴの言う通りだ」

「リク、衣都を悲しませたら絶交だからな」

「わかったか」

「衣都を悲しませることはしない約束する」

衣都を見つめながらリクが誓うとソウゴが魔法で音楽を流した。

「リク」

タイキがリクの身体を押し中央に行かせると兵士達も衣都を中央に行かせた。

「リクと衣都のダンスでパーティーを終えよう」

ソウゴの言葉と同時に兵士達が目を向けるとリクと衣都は音楽に合わせてダンスを踊り始めた。

それから暫くして音楽が終わりダンスも終わった。

その後、社交場は誰もいなくなった。

ーリクの部屋ー

バルコニーでリクと衣都は寄り添いながら空を見つめていた。

「本当に良いのか?」

「リクさんの力になりたいのは本当だから」

「宮下から受け継いだスーパーがあるだろ」

「スーパーは宗正さんと義久さんに任せるから大丈夫です」

衣都の言葉通りスーパーは宗正と義久が受け継いだ。

ー翌日ー

兵士達は城の前に集まった。

そして赤い長髪に赤い瞳、赤いタキシードに赤いマントを羽織ったリクと私服姿の衣都が姿を現した。

「王が来たぞ」

会話をしていた兵士達は静になりリクと衣都に目を向けた。

「皆、嫌かもしれないけどこの国を守るために俺の力になってほしい」

そう言ってリクと衣都が兵士達に向かってお辞儀をすると兵士達が口を開いた。

「俺はリク王のために働きます」

「俺も」

「俺も」

1人の兵士の言葉に全ての兵士達が新しい王を認めるとリクと衣都は顔をあげ見つめ合い微笑んだ。

そしてリクは嬉し涙を流しながら兵士達に向かって「ありがとう」と口にした。

こうしてリクは悪魔の国の新しい王様になり衣都はリク王を支える王妃になった。

       完結
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる

七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。 だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。 そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。 唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。 優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。 穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。 ――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

人生はままならない

野埜乃のの
BL
「おまえとは番にならない」 結婚して迎えた初夜。彼はそう僕にそう告げた。 異世界オメガバース ツイノベです

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...