海恋

福猫

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第2話

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男性は千波から貰ったスカーフを腕に結び砂浜で千波に毎日、会った。

「名前ないって言ってたよね」

「言ったけど」

「海(かい)ってどうかな」

「海(かい)…」

「海って書いてかいって読むの」

砂浜に書きながら千波が説明すると「良い名前だ」と言って男性は優しく微笑んだ。

その姿に千波は心を奪われ海の妖精、海(かい)に恋をした。

「海(かい)君、楽しかった」

「明日、展望台に行かないか」

「展望台に?」

「展望台から見る夜空、綺麗なんだ」

「わかった、じゃあまた明日ね」

「あぁ」

返事をし離れていく千波を見送りながら海(かい)は別れを告げる決意をした。

ー翌日ー

展望台にやって来た千波と海(かい)は隣同士でベンチに座り海を見つめた。

「ここから見る海も良いわね」

「……」

海を見つめる千波の姿を見つめながら海(かい)は声をかけた。

「千波さん」

「何?」

千波が目線を向けると海(かい)が真剣な顔で口を開いた。

「俺達、もう会わない方が良い」

「え…」

「俺は海の妖精、ここから離れることはできないだから千波さんと恋はできない」

「恋?」

「俺は初めて千波さんを好きになっただからもうここに来ないでくれ」

そう言って海(かい)は腕からスカーフを外し千波に握らせベンチから立ち上がり歩いていった。

千波はスカーフを握りしめながら目から涙を流し口を開いた。

「海(かい)君に出会ったから私は匠海の死から立ち直ることができた…私は海(かい)君のことが好きお別れなんて嫌だ」

そう言って千波はベンチから立ち上がり海(かい)に近づき背後から抱きしめ動きを止めた。

「私は海(かい)君が好き、お別れなんて嫌だ」

「俺だって千波さんのことが好きだ」

そう言って振り向くと海(かい)と千波は抱きしめ合った。

その後、千波と海(かい)は離れ見つめ合った。

「海(かい)君、私、あなたと生きたい」

「千波さん、俺は海の妖精、人間と」

「そんなの関係ない」

「……」

海(かい)は驚いた。

「私は海(かい)君が好きなの、好きなの」

そう言って千波は海(かい)に抱きついた。

「俺も千波さんが好きだ」

海(かい)は千波をギュっと抱きしめた。

その後、千波と海(かい)は見つめ合いそのまま顔を近づけ唇を重ねた。

「……」

「……」

千波と海(かい)は唇を離し抱きしめ合った。

そして千波は展望台から離れ海(かい)は見送った。

そこへ人間姿の仲間の海の妖精が現れた。

「あの娘、俺が助けられなかった男性の恋人だろ」

「あぁ」

「あの娘のこと好きなのか?」

「好きです」

「わかってて言ってるんだよな」

「わかってます、それでも俺は千波さんのことが好きなんです」

そう言って海(かい)は展望台から海に飛び込んだ。

それから千波と海(かい)の恋愛は何年も続き千波は20歳になった。
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