海恋

福猫

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第1話

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今日も海辺で恋人から貰ったスカーフを持ちながら千波(ちなみ)は海を眺めていた。

「匠海(たくみ)…会いたいよ…匠海」

そう言って千波はスカーフを握りしめながら涙を流した。

そこへ恋人同士の男女が通りすぎ千波はうらやましそうに見つめた。

「……」

突然、激しく風が吹き千波はスカーフから手を離しスカーフは海に落ちた。

「匠海から貰ったスカーフが」

千波は海に飛び込み泳ぎながらスカーフを追いかけた。

「匠海がくれたスカーフ」

必死に泳ぎスカーフを掴んだその時、海が荒れ千波はスカーフを掴みながら溺れた。

「誰か…助けて…」

泳げない千波はスカーフを握りしめながら溺れながら流された。

「誰か…たす…けて…」

力尽き千波は沈んだ。

その時、青い髪に青い瞳の男性が千波を救い別の海辺に運び砂浜に仰向けで寝かせた。

その後、男性は千波に声をかけた。

「しっかりしろ、俺の声聞こえるか」

「……」

声に反応せず千波は眠り続けた。

男性は千波に顔を近づけ唇を重ねた。

その後、男性は唇を離し千波を見つめた。

「……」

千波は目を覚まし側にいる男性に目線を向けた。

「あなたが助けてくれたんですか?」

そう言って身体を起こした千波は下半身裸に驚き頬を赤らめながら顔をそらした。

「どうしたの?」

男性が問いかけると顔をそらしながら千波が「ズボンかパンツか穿いてください」と口にした。

男性は立ち上がり魔法で青いズボンを穿いた。

「これで良いかな」

「……」

そらした顔を向けると千波はあらためてお礼を口にした。

「助けてくれてありがとうございます」

「君まで海で命を失ったら匠海さんが悲しむよ」

「え…」

彼の言葉に千波は驚いた。

「どうして匠海が海で死んだこと知ってるんですか?」

「匠海君が溺れてなくなった時、俺は展望台の近くで見守りをしてた」

「……」

「暫くして君の叫び声が聞こえた、見に行ったら匠海君が溺れてた、皆が必死に匠海さんを助けようとしたんだけど匠海さんは助からなかった」

「……」

千波は立ち上がり無言でスカーフを握りしめながら砂浜を歩きだし男性から離れていった。

「千波さん」

悲しげな顔で男性は千波を見送りその後、海に飛び込んだ。

ー翌日ー

海の中で見守りをしていた男性は砂浜で立って海を見つめる千波の姿を目撃した。

男性は青い髪に青い瞳に青い上服と青いズボン姿の人間に変身し千波に近づいた。

「また来たんですね」

「あなた名前は?」

「海の妖精に名前はありません」

「海の妖精?」

「千波さん、ここに来れば匠海さんに会える気がする、その気持ちわかるけどここに来ても悲しいだけだ、もうここに来ない方が良い」

「これを渡したくて来たの」

そう言って千波がスカーフを差し出すと男性が口を開いた。

「大事なスカーフじゃないのか」

「昨日、出会ったばかりなのに」

「千波さん」

「明日、また来ます」

そう言って千波はスカーフを男性に渡し砂浜を走り出すと離れていった。
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