新たな人生〜初恋〜

福猫

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第8話

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「邪魔するわね」

「……」

「……」

互いの唇が離れ魔法使いの寿子に目線を向けた。

「何しに来たんですか?」

広勝が問いかけると寿子が口を開いた。

「羽場広子さんからお願いが来たの」

「お願いって何ですか?」

「仏壇を実家に運ぶの」

魔法の杖を仏壇に向けると広勝に向って口を開いた。

「広子から伝言よ、お母さんとお父さんのことは忘れて筧洋平さんと幸せになりなさい、じゃあね」

寿子は仏壇と共に姿を消した。

筧は広勝を抱き寄せた。

翌日、広勝は筧の車で一緒に家の解約をし筧の家に向かった。

「必要なものだけ持っていこうか」

「……」

「どうした?」

「何でもないです」

笑顔で答えると広勝は筧と共に袋の中に衣類を入れ通帳やはんこを中に入れた。

「これで良いかな」

「そうですね」

「帰ろうか」

「はい」

広勝と筧は衣類と通帳とはんこが入った袋を持って車に乗り込み羽場家に向かった。

それから暫くして羽場家の駐車場に着いた筧は車を止め広勝と筧は袋を持って車からおり家の中に入った。

そして翌日、筧は仕事場に向かい広勝は家の中の掃除を始めた。

ー魔法使いの国ー

寿子が水晶玉で人間や動物達を見つめていると仲間の魔法使いが近づいて来た。

「寿子、話があるんだけど」

「何?」

「寿子が新しい人生を授けた三毛猫なんだけど」

「今は人間でパートナーと共に幸せに暮らしているわよ」

「何もないといいけど…」

「何よ、はっきり言いなさい」

「鈴斗(すずと)が聞いてきたのよ、人間になった三毛猫のことを」

「それで何て答えたの?」

「私はよく知らないから寿子に聞いたらって答えた」

「鈴斗、来てないけど」

「何も無いと思うけど様子を見に行ったら?」

「広勝にはパートナーがいる、もし何かあったとしてもパートナーが広勝を守るでしょう」

「寿子がそれで良いなら良いけど」

仲間の魔法使いが離れると寿子は水晶玉を見つめた。

その頃、広勝は家の中の掃除を続けていた。

「1人じゃなかなか進まないな、少し休むか」

広勝がソファーに座ろうとしたその時、インターホンが鳴った。

ほうきをソファーに置き玄関に向かい靴を履くと広勝はドアを開き目の前に立っている素敵な男性と目が合った。

「どちら様でしょうか?」

「今、あなた1人ですか?」

「そうですが…」

「……」

男性は中に入りドアを閉め広勝は口を開いた。

「ご用件は何でしょうか?」

「羽場広勝さんに会いに来ました」

「どうして俺の名前を」

広勝は男性に倒され覆い被され広勝と男性は見つめ合った。

「……」

「俺は魔法使いの鈴斗」

「魔法使い…」

「三毛猫が人間になって新しい人生を過ごしている、どんな人か見たくて会いに来た」

「……」

「会ってみて俺のものにしたくなった」

「え…」

広勝は鈴斗に覆い被されながら唇を奪われた。

その時、ドアが開き筧が怒った口調で声をかけた。

「何してんだ」

「……」

「……」

広勝は鈴斗を押し離し鈴斗は立ち上がり広勝は身体を起こした。

「洋平さん!」

「ここから出ていけ、広勝に2度と近づくな」

「……」

笑みを浮かべると鈴斗はドアを開き出ていった。

筧はドアを閉め鍵をかけ広勝を抱きしめた。

「魔法使いの寿子さんに今すぐ広勝の元に向かえって言われたから帰ってきたんだ」

「あの人、俺が三毛猫から人間になったこと知ってました」

「広勝は俺が守る」

筧は広勝をギュっと抱きしめた。
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