姫のまにまに

ゲス

文字の大きさ
3 / 3
第1章

猿の活用方法

しおりを挟む
姫様に拾われて初日、城に着いた俺は最初に湯に浸かることに。
ということになったのも、姫様と乗馬している間、ずっと姫様は見事なバランス力で片手乗馬し、もう片手で鼻をつまんでいたからだ。
久しく湯に浸かるという機会を与えられた俺はしっかり隅々まで身体を洗い、湯船から出る頃には再び眠気に襲われた。
泊まる部屋に案内されるとそのまま布団に横になり夜を明かした。
日がのぼり始めた時のこと、
ドタドタドタッ
廊下を駆け巡る足音で目が覚めると、身支度を整え外にでた。
「であえ!であえ!姫様が城から抜けなさった!姫様を城へ連れ戻すのじゃ!」
そう叫ぶのは昨日姫様を探しにきた家老だった。今日も姫様を探す羽目になるとは何とも苦労人である。
「じいよ、私は一国を支える主であるが故、国の治安も見張る必要があるのじゃ」
まだ城からギリギリ出ていなかった姫様は、城の屋根に登るとそう言って飛び降り城の外へと逃げていく。
身支度を整え、ちょうど手が空いていた俺は姫様を連れ戻しに駆り出されることになった。
城の外へ出るが、昨日来たばかりでこの国をよく知らない俺はどうしていいか分からないので、直感で道を進むしかなかった。
とりあえず見晴らしの良い高い屋根に登ると姫様がいないか見渡してみた。
「登るの早いねぇ。まるで猿みたいな身のこなしだよ」
見下ろすと少し腰が曲がった百姓のお爺さんがこちらを見ていた。
「へぇ、あいにく猿みたいな動きが出来るのが私の取り柄なのですよ」
少し人見知りの俺は愛想笑いをしながら丁寧に答えた。
屋根からスパッと飛び降りて、事情を話すと百姓のお爺さんから良い情報を聞くことができた。
「もしかしたら団子屋に居るかもしれないのぉ」

「団子屋ですか」

「あぁ、ここからずっと真っ直ぐ進んで紫山の看板がある所を右に曲がるとあるよ。姫様はお忍びでよく食べにこられる」

「ありがとう御座います」

お辞儀をすると素早く団子屋まで駆け出した。

百姓のお爺さんの言う通りに小走りで道を進んでいくと、桜の様な見覚えのある髪が瞳にうつった。
「姫様~!こんなところで何をしておられるのです?皆んな心配してらっしゃいます」
姫をみると遠くの千本桜を見ながら団子を食べうっとりした表情を浮かべていた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

処理中です...