ハロウィン ナイト

僕と眠れない夜

アメリカの海の見える街で生まれた僕は生まれつきゾンビに襲われない。
「嫌な事件ね、また夜に出歩いた少年がゾンビに襲われてゾンビになったって。だからあなたも夜は大人しく寝るのよ、いい？」
「まま、分かったけど僕はゾンビに襲われないよ？」
僕はままにそう言うと朝食を持って来てくれたついでに僕の頭をこつんとした。
「ゾンビに追いかけられない人間なんていないわ。だってゾンビは人間を常に食べていたい怪物なの、学校に送るから早く食べて頂戴」
弁護士の仕事で忙しそうにしてるままはそう言いながらそそくさと僕をスクールバスへ連れてった。
「まま僕怖いよ、だって今日お仕事で僕また1人なんでしょ？」
帰っても誰もいない。しかも夜となるとまだ幼い少年にとっては心寂しいものだ。
「あぁごめんねロバート。仕事が立て込んでてなかなか帰れないの、でも夜が来る前には必ず戻るわそれまでベビーシッターのエマさんといて頂戴」
そう言って僕を乗せるとスクールバスは出発した。
「ままの嘘つき。この前だってそう言って夜になってから来た癖に」
僕は窓に肘をつき頬をあてると、学校のある方角に視線をむけてほっと息を吐いた。
僕は学校が嫌い。
理由は短気なジャックと泣き虫イーサンが居るからだ。
そう思った矢先、最初にジャックがやって来た。
「ロバートじゃないか。今日も俺とたくさん遊ぼうぜ」
肩を組みながら臭い吐息を僕に吐いてきた。
周りがケラケラ笑い出すと僕も返してみる。
「前から言ってるだろジャック。僕と遊びたかったらまずはそのお口を治さないと。でも僕優しいからオススメのブレスケアを紹介してあげるね」
周りの人はもっとケラケラ笑いだした。
ジャックはすかさず拳を振ろうとしたがバスが少々雑に停止したことによって体制を崩したところを思い切り両手で押してやった。
そうして走ってクラスに入ると僕は深いため息をついた。
「これから授業なのにもう帰りたくなっちゃった」
でも大丈夫。授業が終われば帰れるんだ！
日が昇ってる間より夜の方がもっともっと長いんだ。
それは僕だけが知ってる秘密なんだ。

ロバートはとても賢く、そしてずるい子だった。

ままには甘えるふりをしてさりげなく今日の予定を聞いた。今日も彼女は帰りがおそいらしい。
それは長い長い夜の始まりの合図。