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第1章 王国叙勲式

エンペラーリザード

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5階層に続く階段付近まで乗せてくれたフロストにお礼を言って俺達が階段を下りると見渡す限り灼熱のマグマ溜まりが流れる火山地帯であった。


今なお活動を続けているらしく、ボコボコとマグマと一緒にできて間もない大小様様な形をした溶岩もそこかしこにあり、セーフティーエリアにいても熱気が伝わってきた。



あまりの熱気に慌てて、極寒地帯で手に入れたブレイブハートと手紙に書いてあったコートを脱ごうとした俺達だが、すぐさま体温調節機能保持付きの為この気温に順応したようで身体が底冷えしない程度に体温を一定の温度に下げてくれた為、脱がずに着たままにしておいた。



ハッ!?とあることに気づいて氷龍であるフロストを見ると彼は、この灼熱の大地にいても平然としていた。


「フロストお前大丈夫なのか……氷龍なんだろ?暑さに身体が弱ったりしないのか?」



<ハハッ、我のことなら心配は要らぬ。我には生まれた時に親から受け継いだ力、永遠なる氷"エターナル アイス"という加護を持っているからな。

どんなに過酷な温度や環境に関わらず自身の快適な温度に自動調節してくれるのだ。



それに元は、どの種族の龍も火山地帯が出産場所で生まれるからな。これくらい慣れ親しんだものだ。>



《なぁ、スカイ。》


「あーなんだ?」


《フロストってスゲェな。レオンも大人になったら更に規格外になるんだろうが…。》



「そうだな…俺の周囲は平凡じゃない奴ばかりだ。平凡な俺は誰からも目立たず穏やかに暮らしたいのに…。」



スカイ以外の全員が"スカイが1番平凡じゃねぇわ"
と思っていたが、スカイに言っても絶対に認めないと分かっていた為誰も口には出さなかった。



意識を他所に飛ばしていたスカイを尻目にレオンが火山地帯の連なる1番大きい山脈の山頂にとあるものを見つけ声をあげた。


『おい、あれを見てみろ?なんだあの巨大な岩は?』



というレオンが鼻先を振って示した先を見れば、火山地帯のマグマが吹き出る噴火口に何か巨大な岩のような物体が乗っており、マグマが噴き上がることなく物体の下からドロドロと流れ落ちていた。


いち早く気づいたフロストが声を荒げた。


<なっ!?あれは岩なんかではないぞ?エンペラーリザードではないか!!

奴は、俺達と同じ古龍の一種だが性格は極めて獰猛で我々氷龍一族と奴の司る炎一族は因縁の仲だ。


しかもだ…6階層の扉は、奴のすぐ後ろにある。

戦闘は避けて通れないだろう。>


というフロストの言葉を聞いて俺達は言葉が出なかった。
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