53 / 81
在処のはじまり
49 選択
しおりを挟む三つの宝箱にはそれぞれ鍵が付いていて、リース達が血を垂らしても何をしても宝箱を開くことができなかった。
「鍵はどこ?ロクストシティリ神」ルルリアナがリースを睨む。「…神様はどこに宝箱のカギを隠したの?」
「俺に聞かれてもねぇ…」
リースに鋭く睨まれたチャーリーは困ったように答える。
「そいつ嘘ついてるぞ」
マーカスがチャーリーに冷たい視線を向け、リースへ警告する。
「何を言うてるんかいな?宝箱を開ける鍵なんて、わしゃもってへん」
「へぇ、鍵を持ってるのね。フィーア!」
リースの言葉でフィーアがチャーリーの足首をがっしりと掴み引っ張る。チャーリーは足を引っ張られ、後頭部を地面にぶつけて転んでしまう。
「何をうるんや!」
チャーリーがもがくのもフィーアは気にせずそのまま魔法陣で宙に浮かび、まるでチャーリーがただの物であるかのように激しく上下へと振る。
「うわっ、わっ、わっ、わ~~~~!」
するとチャーリーの首からペンダントがポテリと地面に落ちる。
ペンダントのアクセサリーの部分が鍵の形をしており、その鍵はアンティークのとても美しい鍵だった。鍵は青い金属でできており、頭の部分が雪の結晶の形となっていた。
「この鍵…宝箱の鍵かしら?」
アインスが地面からその鍵を拾い、光に翳す。光に反射し、雪の華はキラキラと輝いている。
「そらちゃう!その鍵はロクストシティリ神のかぎちゃう!俺の恥ずかしい宝箱の鍵や!」
「嘘ついても俺にはわかるぞ」
「正直に話すならフィーアにやめるように言ってあげる」
マーカスとリースがそういうと、チャーリーは一瞬考えるようなに顎に手をやる。激しく振られているというのに余裕な態度だ。
「こないに激しゅう振られとったら舌を噛んでまう。話せへんで」
「話せてる」
フィーアがぽつりとつぶやき、今度はチャーリーをジャイアントスイングでぐるぐると廻し始める。
「ちょい、こら反則や!目が回ってまうわ」
「早く話した方がいいと思わない?」
「話す必要はなくてよ。これは街がいなくロクストシティリのクソ野郎のカギだわ」
アインスは熱魔法で鍵を溶かそうとしたのだ。しかし、鍵は熱くなるばかりで、全く溶ける様子はなかった。
赤く光り輝く鍵を見て、リースは慌ててアインスから鍵を奪い取る。
「あつっ!ちょっと!もしかしてこの鍵、壊そうとしたの?」
「ロクストシティの鍵なら私の魔法では壊せないわ。それにどうせ偽物だったらこの宝箱は開かないでしょ?」
確かにアインスの言うとおりなので、リースはそれ以上文句が言えなくなってしまった。
「それじゃあ、宝箱を片っ端から開けてお目当ての巻物を探すとしますか!」
リースが一番近くにあった黄色い宝箱を開けようとした時だった。チャーリーはフィーアに掴まれているブーツを脱ぎ捨てることで脱出に成功し、リースから鍵を奪い取る。
「待てや、自分!この鍵はたった一度しか使えへんねんぞ。そないな風に貯金箱開けるみたいにこの鍵を使われたらたまったさかいちゃう!もっとよう考えてどの宝箱を開けるか考えろ!」
「やっぱり、この鍵が何の鍵か知ってたのね!何が恥ずかしい宝箱の鍵よ。良く言うわね」
リースがチャーリーの手から素早く鍵を奪う。
「もしかしてどの宝箱に何が入っているか知ってるの?」
「し…し、知らへんよ!俺はなんも知らへん!」
「マーカス?」
「あぁ、そいつは嘘ついてる」
「チャーリー?また、フィーアに協力させてもいいかしら?」
「そら堪忍して!俺はほんまに知らへん!」
「でもマーカスはあなたが嘘をついてると言っているけど?」
「そいつが嘘をついてるかもわからへんやろう?簡単に人を信用せえへん方がええぞ!」
「マーカスは少なくともあなたよりは信用できるわ。…フィーア」
まるで大きな壁が迫るようにフィーアがチャーリーに迫る。
「わかった!話すさかいそいつを俺に近寄らせんといて!」
目に涙を浮かべて後ずさりするチャーリーの様は見ている者の哀れを誘った。
「わかった、だから正直に教えるのよ」
チャーリーは頭がバネになっている人形の様に激しく頭を振って頷く。
「フィーア」
フィーアは舌打ちをしてチャーリーに近づくのを止めたが、視線はまるでカエルを見るヘビの様に鋭い。
「どうして、フィーアはチャーリーにだけあんな態度をとるのでしょうか?」
ルルリアナの問いに、リースは一緒になって首を傾げる。
「良くわからないけど、フィーアが生き生きとしているからいいんじゃないかな?」
チャーリーは三つの宝箱の前に立ち、芝居がかった仕草で宝箱の中身を説明する。
「こちらの赤い箱には世にも珍しい、いの…「他の宝箱の中身の説明はしなくていいわ。だって、箱の中身を聞いたら巻物以外の宝が欲しくなっちゃう。でも、私が欲しいのは巻物なの。だから巻物が入っている宝物だけ教えて」
リースの言葉を聞いたチャーリーは眉を顰める。
「おもんないお客さんやな。巻物が入ってるのはその赤い箱や。その箱の中身が一番おもんない宝物やのに。ほんまにええんか?」
「ええ。すごい宝物を持っていても私に上手く扱えるとは思えないもの」
そのセリフを聞いて、初めてチャーリーの瞳にリースに対する興味が浮かぶ。
「あんたはロクストシティ神が一番嫌う人間のタイプやな。気ぃ付けてな、いつ、この世界から追い出されるかわからへんぞ」
「私もロクストシティ神のことが嫌いなの。ありがとう」
リースはさっそく青い鍵を使い、赤い宝箱を開ける。
青い鍵は赤い宝箱を開けた瞬間、まるで雪が溶けるように水たまりとなってしまったのだった。
チャーリーの言うとおり、赤い宝箱の中には宝石で彩られた金の表紙に赤い紐で結ばれた巻物が一つ納まっていた。
その巻物の姿かたちはゲームのイラストと同じで、金ということは本当に制限なくインテリアを変えられるということだ。
「やった!これで、カフェが開ける」
「ちょい待て!カフェのインテリアを飾るためにその巻物を使いたいんか!その巻物さえあれば金の椅子や宝石でできたテーブルなんかもできるんやぞ?黄金の城も作られる。それがたったのカフェのために使うちゅうんか?」
リースはチャーリーにニコリと微笑む。
「あら?ただのカフェとは違うのよ。私たちの住処、在り処となるカフェなんだから」
リースの言葉を聞き、チャーリーはバカにするように笑う。
「好きにしたらええ。その巻物は間違いのうあんたのもんや」
チャーリーに再びクシャっと笑いリースは背を向け、コロッセオの出口へと向かう。その様子をチャーリーは眺め、皆が自分に背を向けたのを確認すると、魔法を使い鍵が溶けてできた水をポケットから出した小瓶に集め、しっかりと封をする。小瓶には鍵と同じ、雪の結晶が描かれていた。
「たった一度しか使えへん言うたけど、鍵がいずれ元に戻らへんとは言うてへん。俺は嘘は付いてへんぞ。ただ黙っとっただけや。ほな、また会いまひょか」
チャーリーは三体の銅像にピエロがするようにBow and scrapeを披露する。
チャーリーは指を鳴らし、残りの青と黄色の宝箱を回収すると、皆が気が付く前に、リース達の後を追うのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる