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第32話 謎の男ガストン
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「おいアイザック、このままじゃ埒があかねえからよ、わざわざこの俺様が迎えに来てやったぞ」
「チッ……」
「お? なんか旨そうなもん食ってるな。おーい、俺にも同じのくれや。二人前、いや三人前で頼むわ」
食堂中に響き渡る大声に、アイザックはさも忌々しげに鋭く舌打ちをした。
「……おいガス、見てわからねえのか? 俺は今連れと朝飯中だ。邪魔すんな」
「カカカッ、いいじゃねえか。おうかわい子ちゃん、ちょっとここ失礼するぞ」
「は、はい」
ガスさんは豪快に笑いながら席に着くと、四人がけのテーブルが一気に狭くなる。そして何故か食堂中の視線が集まっているのがわかった。
「……そんでこんな朝っぱらから何の用事だ」
「アイザックよう、何言ってやがる。昨日お前さんが途中で帰ったもんだから話し合いが終わらねえんだぞ? おかげでギルマスから直々の呼び出しだ」
「俺は昨日はっきり断った筈だ」
「おいおい、あんな一方的じゃあ俺らは勿論ギルドの連中だって、はいそうですかってすんなり納得できるもんじゃねえぞ」
「……」
「それに直々の指名依頼だ。断るなら断るで、ちゃんと理由を説明すんのが筋ってもんだろう」
むっつりと黙り込むアイザックは、私が初めて見る冷たい表情をしている。
そしてそんな仏頂面を気にせず話し続けるガスさんの前に、ステーキが三枚乗った大皿がどんと置かれた。
「はいよ、ステーキ三人前お待たせ。こっちは付け合わせの野菜だよ。このパンはお代わり自由だからね、いつでも声をかけとくれ」
「おおこりゃあ旨そうだ! すまねえがパンのお代わりはすぐに持ってきてもらえるか」
「はははっ、こりゃあ気持ちのいい食べっぷりだね。ちょっと待ってな」
丸太みたいな筋骨隆々の腕でお皿を受け取ると、ガスさんはその手には小さく見えるナイフとフォークで器用に肉を切りわけて口に運ぶ。付け合わせの野菜とパンを一口で、しかもまるで飲み物のように食べていくさまは、見ていて一種爽快ですらある。
「だいたいよ、どうせお前さんだって王都に戻るんだろう? ダンジョンの依頼が終わったらとっとと拠点に帰るって言ってたじゃねえか」
「……」
「だったら一石二鳥じゃねえか。何がまずいんだ。それともあれか? お前さん、拠点を王都からこのモルデンに移すつもりなのか?」
「……ガス、詳しい話は後だ。飯が不味くなる。おいセリ、手が止まってる。ちゃんと食え」
「あ、う、うん」
思わず食事の手を止めていた私は、慌てて目の前の食事を再開する。
そしてアイザックは無言で私のお皿にお代わりのパンを足した。
「セリ、飯が終わったら部屋に戻ってろ。今日こそはそんなに遅くならねえように帰るからよ」
「え? あ? う、うん。わかった」
「よし、いい子だな」
「カカッ、なんだお前、まるで子供の世話をする親父みてえだな」
気がつくとアイザックはもちろん、あれだけ肉が山盛りだったガスさんのお皿も綺麗に片付いている。
「行くぞガス」
「おお? なんだ随分忙しないな。それじゃあかわい子ちゃん、邪魔して悪かったな。今度はちゃんと紹介して……」
「うるさい、早く出ろ」
唐突に立ち上がったアイザックは、尚も話そうとするガスさんを急かすように席を離れる。
そして二人が食堂を出て行くと、それまでの静けさが嘘だったようにあちこちから声が聞こえた。
「……今のあいつ、大斧のガストンじゃねえか?」
「ギルマスの使いでガストンが迎えに来るって、あの優男一体何者だよ」
「もしかしたらあいつが噂の灰燼のアイザックじゃねえか?」
「まさか! あんな有名人がこんなど田舎に住んでいる訳ねえだろ。大体Aランクの冒険者は王都を拠点にしてるって聞くぜ」
ざわざわとした声の中食べる一人の朝ご飯は、なんだか急に味がなくなったように感じた。
「チッ……」
「お? なんか旨そうなもん食ってるな。おーい、俺にも同じのくれや。二人前、いや三人前で頼むわ」
食堂中に響き渡る大声に、アイザックはさも忌々しげに鋭く舌打ちをした。
「……おいガス、見てわからねえのか? 俺は今連れと朝飯中だ。邪魔すんな」
「カカカッ、いいじゃねえか。おうかわい子ちゃん、ちょっとここ失礼するぞ」
「は、はい」
ガスさんは豪快に笑いながら席に着くと、四人がけのテーブルが一気に狭くなる。そして何故か食堂中の視線が集まっているのがわかった。
「……そんでこんな朝っぱらから何の用事だ」
「アイザックよう、何言ってやがる。昨日お前さんが途中で帰ったもんだから話し合いが終わらねえんだぞ? おかげでギルマスから直々の呼び出しだ」
「俺は昨日はっきり断った筈だ」
「おいおい、あんな一方的じゃあ俺らは勿論ギルドの連中だって、はいそうですかってすんなり納得できるもんじゃねえぞ」
「……」
「それに直々の指名依頼だ。断るなら断るで、ちゃんと理由を説明すんのが筋ってもんだろう」
むっつりと黙り込むアイザックは、私が初めて見る冷たい表情をしている。
そしてそんな仏頂面を気にせず話し続けるガスさんの前に、ステーキが三枚乗った大皿がどんと置かれた。
「はいよ、ステーキ三人前お待たせ。こっちは付け合わせの野菜だよ。このパンはお代わり自由だからね、いつでも声をかけとくれ」
「おおこりゃあ旨そうだ! すまねえがパンのお代わりはすぐに持ってきてもらえるか」
「はははっ、こりゃあ気持ちのいい食べっぷりだね。ちょっと待ってな」
丸太みたいな筋骨隆々の腕でお皿を受け取ると、ガスさんはその手には小さく見えるナイフとフォークで器用に肉を切りわけて口に運ぶ。付け合わせの野菜とパンを一口で、しかもまるで飲み物のように食べていくさまは、見ていて一種爽快ですらある。
「だいたいよ、どうせお前さんだって王都に戻るんだろう? ダンジョンの依頼が終わったらとっとと拠点に帰るって言ってたじゃねえか」
「……」
「だったら一石二鳥じゃねえか。何がまずいんだ。それともあれか? お前さん、拠点を王都からこのモルデンに移すつもりなのか?」
「……ガス、詳しい話は後だ。飯が不味くなる。おいセリ、手が止まってる。ちゃんと食え」
「あ、う、うん」
思わず食事の手を止めていた私は、慌てて目の前の食事を再開する。
そしてアイザックは無言で私のお皿にお代わりのパンを足した。
「セリ、飯が終わったら部屋に戻ってろ。今日こそはそんなに遅くならねえように帰るからよ」
「え? あ? う、うん。わかった」
「よし、いい子だな」
「カカッ、なんだお前、まるで子供の世話をする親父みてえだな」
気がつくとアイザックはもちろん、あれだけ肉が山盛りだったガスさんのお皿も綺麗に片付いている。
「行くぞガス」
「おお? なんだ随分忙しないな。それじゃあかわい子ちゃん、邪魔して悪かったな。今度はちゃんと紹介して……」
「うるさい、早く出ろ」
唐突に立ち上がったアイザックは、尚も話そうとするガスさんを急かすように席を離れる。
そして二人が食堂を出て行くと、それまでの静けさが嘘だったようにあちこちから声が聞こえた。
「……今のあいつ、大斧のガストンじゃねえか?」
「ギルマスの使いでガストンが迎えに来るって、あの優男一体何者だよ」
「もしかしたらあいつが噂の灰燼のアイザックじゃねえか?」
「まさか! あんな有名人がこんなど田舎に住んでいる訳ねえだろ。大体Aランクの冒険者は王都を拠点にしてるって聞くぜ」
ざわざわとした声の中食べる一人の朝ご飯は、なんだか急に味がなくなったように感じた。
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