1 / 1
特等席は、もういらない。
しおりを挟む
好きな人がいた。
彼は僕の事を一番の友達だって言ってくれる人で、たくさんの人に愛される人だった。
彼に想いを寄せている人がたくさんいて、彼の隣という特等席は、誰もが羨む場所だった。
「あんたも彼のことが好きなんだろ?」
「当たり前のように自分の居場所だっていうその面が見ていてムカつく」
たくさんの言葉を投げつけられた。それでも、僕は彼の隣で笑うことができていた。
「神酒、どこに行ってたんだよっ! ほら、隣に座ってろ」
あえて自分から彼に近寄らなかったのはその場所を望む人たちの目が怖いから。
でも、彼の一声はどんなものにも変えることができない。
そう思っていた。
時期外れの転校生が彼の幼馴染だということがわかり、僕の居場所はあっという間に失われてしまった。僕の居場所は、転校生の場所になり、僕は彼を挟んだ場所にいた。
始めは慣れなかったけれど、当たり前のように彼の隣に行く転校生を見ていて、自分に何度も言い聞かせる。当たり前のようにそれを受け入れている様子に、胸が押しつぶされるような気持ちになった。
僕の様子を見て「ざまぁ」と、笑う人の目が沢山あることも気づいていた。彼と言葉を交わすことが徐々に少なくなって、目を合わす機会が減っていった。
「...神酒君、ごめんね。 僕がいつも彼の隣を陣取って。
でも、彼も嫌そうにしないからいいかなって思ってるんだ。 神酒君はどう思う?」
嫌いになれる人だったら、良かったのに。
何度も思って、そんな考えをしてしまった自分を戒めた。
「僕も邪魔になってないか、すごく気になってたんだ。 教えてね? 邪魔をしたくないんだ」
転校生の彼は、僕の言葉に喜んで「わかった」と、手を振って見つけた彼に駆け寄っていった。彼の視線は、一度も僕に向けられることはなかった。
それから少しずつ、すれ違うようになっていくのに気づいた。
僕が来るまで待っていた彼らは、2人だけでいることが多くなり僕は取り残されるようになっていった。
「クス...いい気味」
すれ違う人の声が聞こえた。
一人でも僕はやっていける。
毎日が楽しくて鮮やかな色で塗られていた情景は、次第に色を失っているのに僕自身が気づいていなかった。
「...ねぇ、神酒君。」
ー!!
一人で放課後の図書館で本を選んでいるときだった。
呼ばれて振り返ると転校生とそっくりな顔があった。
「...君は...。」
クチュリと怯えの残る唇を味わう。
「...まさか、双子だとは思わなかった?
まぁ、名字が違うから気づかないか。」
転校生に似た顔の彼に身体を抑え付けられ、唇を奪われた。抵抗するけど、握られた手首の力に差を感じた。
転校生が双子だったなんて聞いていない。
目の前で自分の知らない事実がポロポロと出てきて、混乱する。
「教えてやるよ。 あいつが夢中になってる奴はあいつの幼馴染じゃない。
俺が幼馴染だ。 いつか気づくかと思ってたけど、全然気づいてねーの。
双子で生まれて、あいつと離れるきっかけが両親の離婚で。
俺とあいつはバラバラに過ごしてきた。話を合わせれば騙せると思ったんだろう。」
彼の言っているあいつとはだれ?
「...どうなってるの?」
溜まった涙をチュウっと吸ってくる。
「だから。 お前が好きな宮城。あいつの幼馴染だと言っている自称幼馴染君は偽物だって。 本物は俺。 だけど、同じ学年にいても全然気づいてない時点で、俺はどうでもいいの。 それより、お前だ。 バカな奴らは好きにさせたらいいさ。」
転校生の彼は、僕と似ている雰囲気を持っていた。
偶然だなと思っていたけれど、違うの?
同じ顔をしているのに、目の前の男は、纏っている雰囲気が全くの別物だ。ぞくりと身体の奥を暴かれるような鋭い目が、警笛を呼ぶ。
「幼馴染を始めは見てた。 ま、仕方がないよな。知ってる奴だから。
目で追いかけているうちにお前が傍にいて。
お前の事を独占したいのに、お前は自分からは行かない。
宮城の中で、たぶん、今、嫉妬してくれって思ってるんだぜ。
バカだな。」
高木君だったと思う。目の前の男の名前を思い出し
「...高木...君...」
と呟いた。
驚いた彼は、僕の肩に顔を埋めたまま話し始めた。
「...双子の弟は、父親の実家に預けられて、俺は母親の実家に引き取られた。
双子を離れ離れにするのは酷だろうと、定期的に俺とあいつは顔を合わせて。
だんだんと弟の性格がわかるようになった。
父親の実家は、結構金持ちで、金持ちが全部そうだとは言わねーけど、甘いところがあって。始めは俺が父方に行くはずだったのに、それを変えたのも弟。
人の居場所をとるのが生きがいの性悪だ。俺の幼馴染にずっと会いたいって言っていた。
高校に入って、向こうの家の都合で、こっちに過ごすことになってあいつがごねたんだろう。こんな時期外れに転校してきて。おまけにあんたと同じような恰好をして似せて来て。
みんな知らないだろうが、弟はわざわざこの学校に入るまでに下見をすると言って訪れたことがある。転校前の見学だとかほざいてたけど、観察してたみたいだな。
奪った奴と同じ顔は嫌か? 俺はお前を遠ざけたりしない。 もう、宮城を見て泣きそうな顔をするな...」
ー!!
気付いてくれる人がいた。それが今の僕にはすごく嬉しかった。
「ふ、ふぇぇぇ...」
抱き着くように背伸びした。
キスをされて、それまで受け入れれなかった熱を受け入れようと思えた。
ー!
誰かに見られているような気がして閉じていた目を開けると驚いている宮城の顔があった。
もう、どうでもいいって思う自分がいた。
そのまま、僕の心を捕まえてくれた高木の唇を味わうために瞳を閉じたのだった。
特等席はもういらない。
彼は僕の事を一番の友達だって言ってくれる人で、たくさんの人に愛される人だった。
彼に想いを寄せている人がたくさんいて、彼の隣という特等席は、誰もが羨む場所だった。
「あんたも彼のことが好きなんだろ?」
「当たり前のように自分の居場所だっていうその面が見ていてムカつく」
たくさんの言葉を投げつけられた。それでも、僕は彼の隣で笑うことができていた。
「神酒、どこに行ってたんだよっ! ほら、隣に座ってろ」
あえて自分から彼に近寄らなかったのはその場所を望む人たちの目が怖いから。
でも、彼の一声はどんなものにも変えることができない。
そう思っていた。
時期外れの転校生が彼の幼馴染だということがわかり、僕の居場所はあっという間に失われてしまった。僕の居場所は、転校生の場所になり、僕は彼を挟んだ場所にいた。
始めは慣れなかったけれど、当たり前のように彼の隣に行く転校生を見ていて、自分に何度も言い聞かせる。当たり前のようにそれを受け入れている様子に、胸が押しつぶされるような気持ちになった。
僕の様子を見て「ざまぁ」と、笑う人の目が沢山あることも気づいていた。彼と言葉を交わすことが徐々に少なくなって、目を合わす機会が減っていった。
「...神酒君、ごめんね。 僕がいつも彼の隣を陣取って。
でも、彼も嫌そうにしないからいいかなって思ってるんだ。 神酒君はどう思う?」
嫌いになれる人だったら、良かったのに。
何度も思って、そんな考えをしてしまった自分を戒めた。
「僕も邪魔になってないか、すごく気になってたんだ。 教えてね? 邪魔をしたくないんだ」
転校生の彼は、僕の言葉に喜んで「わかった」と、手を振って見つけた彼に駆け寄っていった。彼の視線は、一度も僕に向けられることはなかった。
それから少しずつ、すれ違うようになっていくのに気づいた。
僕が来るまで待っていた彼らは、2人だけでいることが多くなり僕は取り残されるようになっていった。
「クス...いい気味」
すれ違う人の声が聞こえた。
一人でも僕はやっていける。
毎日が楽しくて鮮やかな色で塗られていた情景は、次第に色を失っているのに僕自身が気づいていなかった。
「...ねぇ、神酒君。」
ー!!
一人で放課後の図書館で本を選んでいるときだった。
呼ばれて振り返ると転校生とそっくりな顔があった。
「...君は...。」
クチュリと怯えの残る唇を味わう。
「...まさか、双子だとは思わなかった?
まぁ、名字が違うから気づかないか。」
転校生に似た顔の彼に身体を抑え付けられ、唇を奪われた。抵抗するけど、握られた手首の力に差を感じた。
転校生が双子だったなんて聞いていない。
目の前で自分の知らない事実がポロポロと出てきて、混乱する。
「教えてやるよ。 あいつが夢中になってる奴はあいつの幼馴染じゃない。
俺が幼馴染だ。 いつか気づくかと思ってたけど、全然気づいてねーの。
双子で生まれて、あいつと離れるきっかけが両親の離婚で。
俺とあいつはバラバラに過ごしてきた。話を合わせれば騙せると思ったんだろう。」
彼の言っているあいつとはだれ?
「...どうなってるの?」
溜まった涙をチュウっと吸ってくる。
「だから。 お前が好きな宮城。あいつの幼馴染だと言っている自称幼馴染君は偽物だって。 本物は俺。 だけど、同じ学年にいても全然気づいてない時点で、俺はどうでもいいの。 それより、お前だ。 バカな奴らは好きにさせたらいいさ。」
転校生の彼は、僕と似ている雰囲気を持っていた。
偶然だなと思っていたけれど、違うの?
同じ顔をしているのに、目の前の男は、纏っている雰囲気が全くの別物だ。ぞくりと身体の奥を暴かれるような鋭い目が、警笛を呼ぶ。
「幼馴染を始めは見てた。 ま、仕方がないよな。知ってる奴だから。
目で追いかけているうちにお前が傍にいて。
お前の事を独占したいのに、お前は自分からは行かない。
宮城の中で、たぶん、今、嫉妬してくれって思ってるんだぜ。
バカだな。」
高木君だったと思う。目の前の男の名前を思い出し
「...高木...君...」
と呟いた。
驚いた彼は、僕の肩に顔を埋めたまま話し始めた。
「...双子の弟は、父親の実家に預けられて、俺は母親の実家に引き取られた。
双子を離れ離れにするのは酷だろうと、定期的に俺とあいつは顔を合わせて。
だんだんと弟の性格がわかるようになった。
父親の実家は、結構金持ちで、金持ちが全部そうだとは言わねーけど、甘いところがあって。始めは俺が父方に行くはずだったのに、それを変えたのも弟。
人の居場所をとるのが生きがいの性悪だ。俺の幼馴染にずっと会いたいって言っていた。
高校に入って、向こうの家の都合で、こっちに過ごすことになってあいつがごねたんだろう。こんな時期外れに転校してきて。おまけにあんたと同じような恰好をして似せて来て。
みんな知らないだろうが、弟はわざわざこの学校に入るまでに下見をすると言って訪れたことがある。転校前の見学だとかほざいてたけど、観察してたみたいだな。
奪った奴と同じ顔は嫌か? 俺はお前を遠ざけたりしない。 もう、宮城を見て泣きそうな顔をするな...」
ー!!
気付いてくれる人がいた。それが今の僕にはすごく嬉しかった。
「ふ、ふぇぇぇ...」
抱き着くように背伸びした。
キスをされて、それまで受け入れれなかった熱を受け入れようと思えた。
ー!
誰かに見られているような気がして閉じていた目を開けると驚いている宮城の顔があった。
もう、どうでもいいって思う自分がいた。
そのまま、僕の心を捕まえてくれた高木の唇を味わうために瞳を閉じたのだった。
特等席はもういらない。
40
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
罰ゲームって楽しいね♪
あああ
BL
「好きだ…付き合ってくれ。」
おれ七海 直也(ななみ なおや)は
告白された。
クールでかっこいいと言われている
鈴木 海(すずき かい)に、告白、
さ、れ、た。さ、れ、た!のだ。
なのにブスッと不機嫌な顔をしておれの
告白の答えを待つ…。
おれは、わかっていた────これは
罰ゲームだ。
きっと罰ゲームで『男に告白しろ』
とでも言われたのだろう…。
いいよ、なら──楽しんでやろう!!
てめぇの嫌そうなゴミを見ている顔が
こっちは好みなんだよ!どーだ、キモイだろ!
ひょんなことで海とつき合ったおれ…。
だが、それが…とんでもないことになる。
────あぁ、罰ゲームって楽しいね♪
この作品はpixivにも記載されています。
俺の体に無数の噛み跡。何度も言うが俺はαだからな?!いくら噛んでも、番にはなれないんだぜ?!
汀
BL
背も小さくて、オメガのようにフェロモンを振りまいてしまうアルファの睟。そんな特異体質のせいで、馬鹿なアルファに体を噛まれまくるある日、クラス委員の落合が………!!
親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた
こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。
つまりは相思相愛
nano ひにゃ
BL
ご主人様にイかないように命令された僕はおもちゃの刺激にただ耐えるばかり。
限界まで耐えさせられた後、抱かれるのだが、それもまたしつこく、僕はもう僕でいられない。
とことん甘やかしたいご主人様は目的達成のために僕を追い詰めるだけの短い話です。
最初からR表現です、ご注意ください。
平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法
あと
BL
「よし!別れよう!」
元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子
昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。
攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。
……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。
pixivでも投稿しています。
攻め:九條隼人
受け:田辺光希
友人:石川優希
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグ整理します。ご了承ください。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
若旦那からの甘い誘惑
すいかちゃん
BL
使用人として、大きな屋敷で長年奉公してきた忠志。ある日、若旦那が1人で淫らな事をしているのを見てしまう。おまけに、その口からは自身の名が・・・。やがて、若旦那の縁談がまとまる。婚礼前夜。雨宿りをした納屋で、忠志は若旦那から1度だけでいいと甘く誘惑される。いけないとわかっていながら、忠志はその柔肌に指を・・・。
身分差で、誘い受けの話です。
第二話「雨宿りの秘密」
新婚の誠一郎は、妻に隠れて使用人の忠志と関係を続ける。
雨の夜だけの関係。だが、忠志は次第に独占欲に駆られ・・・。
冒頭は、誠一郎の妻の視点から始まります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
え、続き普通に読みたい。
ハピエンのその後!!