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特等席は、もういらない。
好きな人がいた。
彼は僕の事を一番の友達だって言ってくれる人で、たくさんの人に愛される人だった。
彼に想いを寄せている人がたくさんいて、彼の隣という特等席は、誰もが羨む場所だった。
「あんたも彼のことが好きなんだろ?」
「当たり前のように自分の居場所だっていうその面が見ていてムカつく」
たくさんの言葉を投げつけられた。それでも、僕は彼の隣で笑うことができていた。
「神酒、どこに行ってたんだよっ! ほら、隣に座ってろ」
あえて自分から彼に近寄らなかったのはその場所を望む人たちの目が怖いから。
でも、彼の一声はどんなものにも変えることができない。
そう思っていた。
時期外れの転校生が彼の幼馴染だということがわかり、僕の居場所はあっという間に失われてしまった。僕の居場所は、転校生の場所になり、僕は彼を挟んだ場所にいた。
始めは慣れなかったけれど、当たり前のように彼の隣に行く転校生を見ていて、自分に何度も言い聞かせる。当たり前のようにそれを受け入れている様子に、胸が押しつぶされるような気持ちになった。
僕の様子を見て「ざまぁ」と、笑う人の目が沢山あることも気づいていた。彼と言葉を交わすことが徐々に少なくなって、目を合わす機会が減っていった。
「...神酒君、ごめんね。 僕がいつも彼の隣を陣取って。
でも、彼も嫌そうにしないからいいかなって思ってるんだ。 神酒君はどう思う?」
嫌いになれる人だったら、良かったのに。
何度も思って、そんな考えをしてしまった自分を戒めた。
「僕も邪魔になってないか、すごく気になってたんだ。 教えてね? 邪魔をしたくないんだ」
転校生の彼は、僕の言葉に喜んで「わかった」と、手を振って見つけた彼に駆け寄っていった。彼の視線は、一度も僕に向けられることはなかった。
それから少しずつ、すれ違うようになっていくのに気づいた。
僕が来るまで待っていた彼らは、2人だけでいることが多くなり僕は取り残されるようになっていった。
「クス...いい気味」
すれ違う人の声が聞こえた。
一人でも僕はやっていける。
毎日が楽しくて鮮やかな色で塗られていた情景は、次第に色を失っているのに僕自身が気づいていなかった。
「...ねぇ、神酒君。」
ー!!
一人で放課後の図書館で本を選んでいるときだった。
呼ばれて振り返ると転校生とそっくりな顔があった。
「...君は...。」
クチュリと怯えの残る唇を味わう。
「...まさか、双子だとは思わなかった?
まぁ、名字が違うから気づかないか。」
転校生に似た顔の彼に身体を抑え付けられ、唇を奪われた。抵抗するけど、握られた手首の力に差を感じた。
転校生が双子だったなんて聞いていない。
目の前で自分の知らない事実がポロポロと出てきて、混乱する。
「教えてやるよ。 あいつが夢中になってる奴はあいつの幼馴染じゃない。
俺が幼馴染だ。 いつか気づくかと思ってたけど、全然気づいてねーの。
双子で生まれて、あいつと離れるきっかけが両親の離婚で。
俺とあいつはバラバラに過ごしてきた。話を合わせれば騙せると思ったんだろう。」
彼の言っているあいつとはだれ?
「...どうなってるの?」
溜まった涙をチュウっと吸ってくる。
「だから。 お前が好きな宮城。あいつの幼馴染だと言っている自称幼馴染君は偽物だって。 本物は俺。 だけど、同じ学年にいても全然気づいてない時点で、俺はどうでもいいの。 それより、お前だ。 バカな奴らは好きにさせたらいいさ。」
転校生の彼は、僕と似ている雰囲気を持っていた。
偶然だなと思っていたけれど、違うの?
同じ顔をしているのに、目の前の男は、纏っている雰囲気が全くの別物だ。ぞくりと身体の奥を暴かれるような鋭い目が、警笛を呼ぶ。
「幼馴染を始めは見てた。 ま、仕方がないよな。知ってる奴だから。
目で追いかけているうちにお前が傍にいて。
お前の事を独占したいのに、お前は自分からは行かない。
宮城の中で、たぶん、今、嫉妬してくれって思ってるんだぜ。
バカだな。」
高木君だったと思う。目の前の男の名前を思い出し
「...高木...君...」
と呟いた。
驚いた彼は、僕の肩に顔を埋めたまま話し始めた。
「...双子の弟は、父親の実家に預けられて、俺は母親の実家に引き取られた。
双子を離れ離れにするのは酷だろうと、定期的に俺とあいつは顔を合わせて。
だんだんと弟の性格がわかるようになった。
父親の実家は、結構金持ちで、金持ちが全部そうだとは言わねーけど、甘いところがあって。始めは俺が父方に行くはずだったのに、それを変えたのも弟。
人の居場所をとるのが生きがいの性悪だ。俺の幼馴染にずっと会いたいって言っていた。
高校に入って、向こうの家の都合で、こっちに過ごすことになってあいつがごねたんだろう。こんな時期外れに転校してきて。おまけにあんたと同じような恰好をして似せて来て。
みんな知らないだろうが、弟はわざわざこの学校に入るまでに下見をすると言って訪れたことがある。転校前の見学だとかほざいてたけど、観察してたみたいだな。
奪った奴と同じ顔は嫌か? 俺はお前を遠ざけたりしない。 もう、宮城を見て泣きそうな顔をするな...」
ー!!
気付いてくれる人がいた。それが今の僕にはすごく嬉しかった。
「ふ、ふぇぇぇ...」
抱き着くように背伸びした。
キスをされて、それまで受け入れれなかった熱を受け入れようと思えた。
ー!
誰かに見られているような気がして閉じていた目を開けると驚いている宮城の顔があった。
もう、どうでもいいって思う自分がいた。
そのまま、僕の心を捕まえてくれた高木の唇を味わうために瞳を閉じたのだった。
特等席はもういらない。
彼は僕の事を一番の友達だって言ってくれる人で、たくさんの人に愛される人だった。
彼に想いを寄せている人がたくさんいて、彼の隣という特等席は、誰もが羨む場所だった。
「あんたも彼のことが好きなんだろ?」
「当たり前のように自分の居場所だっていうその面が見ていてムカつく」
たくさんの言葉を投げつけられた。それでも、僕は彼の隣で笑うことができていた。
「神酒、どこに行ってたんだよっ! ほら、隣に座ってろ」
あえて自分から彼に近寄らなかったのはその場所を望む人たちの目が怖いから。
でも、彼の一声はどんなものにも変えることができない。
そう思っていた。
時期外れの転校生が彼の幼馴染だということがわかり、僕の居場所はあっという間に失われてしまった。僕の居場所は、転校生の場所になり、僕は彼を挟んだ場所にいた。
始めは慣れなかったけれど、当たり前のように彼の隣に行く転校生を見ていて、自分に何度も言い聞かせる。当たり前のようにそれを受け入れている様子に、胸が押しつぶされるような気持ちになった。
僕の様子を見て「ざまぁ」と、笑う人の目が沢山あることも気づいていた。彼と言葉を交わすことが徐々に少なくなって、目を合わす機会が減っていった。
「...神酒君、ごめんね。 僕がいつも彼の隣を陣取って。
でも、彼も嫌そうにしないからいいかなって思ってるんだ。 神酒君はどう思う?」
嫌いになれる人だったら、良かったのに。
何度も思って、そんな考えをしてしまった自分を戒めた。
「僕も邪魔になってないか、すごく気になってたんだ。 教えてね? 邪魔をしたくないんだ」
転校生の彼は、僕の言葉に喜んで「わかった」と、手を振って見つけた彼に駆け寄っていった。彼の視線は、一度も僕に向けられることはなかった。
それから少しずつ、すれ違うようになっていくのに気づいた。
僕が来るまで待っていた彼らは、2人だけでいることが多くなり僕は取り残されるようになっていった。
「クス...いい気味」
すれ違う人の声が聞こえた。
一人でも僕はやっていける。
毎日が楽しくて鮮やかな色で塗られていた情景は、次第に色を失っているのに僕自身が気づいていなかった。
「...ねぇ、神酒君。」
ー!!
一人で放課後の図書館で本を選んでいるときだった。
呼ばれて振り返ると転校生とそっくりな顔があった。
「...君は...。」
クチュリと怯えの残る唇を味わう。
「...まさか、双子だとは思わなかった?
まぁ、名字が違うから気づかないか。」
転校生に似た顔の彼に身体を抑え付けられ、唇を奪われた。抵抗するけど、握られた手首の力に差を感じた。
転校生が双子だったなんて聞いていない。
目の前で自分の知らない事実がポロポロと出てきて、混乱する。
「教えてやるよ。 あいつが夢中になってる奴はあいつの幼馴染じゃない。
俺が幼馴染だ。 いつか気づくかと思ってたけど、全然気づいてねーの。
双子で生まれて、あいつと離れるきっかけが両親の離婚で。
俺とあいつはバラバラに過ごしてきた。話を合わせれば騙せると思ったんだろう。」
彼の言っているあいつとはだれ?
「...どうなってるの?」
溜まった涙をチュウっと吸ってくる。
「だから。 お前が好きな宮城。あいつの幼馴染だと言っている自称幼馴染君は偽物だって。 本物は俺。 だけど、同じ学年にいても全然気づいてない時点で、俺はどうでもいいの。 それより、お前だ。 バカな奴らは好きにさせたらいいさ。」
転校生の彼は、僕と似ている雰囲気を持っていた。
偶然だなと思っていたけれど、違うの?
同じ顔をしているのに、目の前の男は、纏っている雰囲気が全くの別物だ。ぞくりと身体の奥を暴かれるような鋭い目が、警笛を呼ぶ。
「幼馴染を始めは見てた。 ま、仕方がないよな。知ってる奴だから。
目で追いかけているうちにお前が傍にいて。
お前の事を独占したいのに、お前は自分からは行かない。
宮城の中で、たぶん、今、嫉妬してくれって思ってるんだぜ。
バカだな。」
高木君だったと思う。目の前の男の名前を思い出し
「...高木...君...」
と呟いた。
驚いた彼は、僕の肩に顔を埋めたまま話し始めた。
「...双子の弟は、父親の実家に預けられて、俺は母親の実家に引き取られた。
双子を離れ離れにするのは酷だろうと、定期的に俺とあいつは顔を合わせて。
だんだんと弟の性格がわかるようになった。
父親の実家は、結構金持ちで、金持ちが全部そうだとは言わねーけど、甘いところがあって。始めは俺が父方に行くはずだったのに、それを変えたのも弟。
人の居場所をとるのが生きがいの性悪だ。俺の幼馴染にずっと会いたいって言っていた。
高校に入って、向こうの家の都合で、こっちに過ごすことになってあいつがごねたんだろう。こんな時期外れに転校してきて。おまけにあんたと同じような恰好をして似せて来て。
みんな知らないだろうが、弟はわざわざこの学校に入るまでに下見をすると言って訪れたことがある。転校前の見学だとかほざいてたけど、観察してたみたいだな。
奪った奴と同じ顔は嫌か? 俺はお前を遠ざけたりしない。 もう、宮城を見て泣きそうな顔をするな...」
ー!!
気付いてくれる人がいた。それが今の僕にはすごく嬉しかった。
「ふ、ふぇぇぇ...」
抱き着くように背伸びした。
キスをされて、それまで受け入れれなかった熱を受け入れようと思えた。
ー!
誰かに見られているような気がして閉じていた目を開けると驚いている宮城の顔があった。
もう、どうでもいいって思う自分がいた。
そのまま、僕の心を捕まえてくれた高木の唇を味わうために瞳を閉じたのだった。
特等席はもういらない。
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