3 / 32
弟ポジション2
しおりを挟む
昨夜は早めに休んだので少し体が軽くなっていた。
眩暈も少し軽くなっているようである。
だが、電車に乗ることは避けられず周りを警戒しながら乗り込んだ。
昨日は帰りの電車では特に何もなかったのでほっとした。
いつもの時刻、いつもの車両に乗り込んでいたことに特に疑問を感じていなかった。
動き出してしばらくして、背後に生暖かい温度を感じる。
誰かが密着してきたようだ。
ただ、揺れている車内の中で流れに沿うようにそばにいる。
違和感を感じて体を硬直させる。
…痴漢だ。
出入り口の近くなので扉により近づいていく。
だが、それでも密着してる体は離れることはない。
しばらくすると耳元に息がかかるのがわかる。
近くにいるのは男のようだ。
央の身長より高いのだろう、そしてタバコのにおいもする。
わざとだろう、耳元に息があたるようにしている。
「…っ」
こちらの反応を楽しんでいるようである。
嫌悪感と驚きのあまり息をつめてしまった。
恐怖のあまり体も動けず、助けを求めることもできず降車するホームにつくことだけを願っていた。
「今日も一人なんだね…」
降りるホームに近付いて電車が止まる瞬間。
グイっと制服のポケットが引っ張られる感覚がした。
それと同時に耳元で囁かれた。
央はドアが開くと同時に急いで外に出た。
電車を見返す。
誰がしているのかを確認するぐらい予防できるのではと先ほどまでいた場所の付近を確認してみる。
閉まるドアからは中を確認することもできず電車はそのまま走っていった。
先ほどの息がかかった耳元が気持ちが悪い。
嫌だ。
なんで。
気持ちが悪い。
こんなのは初めてだ。
走って駅のトイレまで行き、ハンカチを濡らして気持ちの悪さを誤魔化そうと手を制服のポケットに入れてみる。
「カサリっ」
ハンカチを取り出そうとしたそのポケットの中には入れた憶えのない折り畳まれていた紙が入っていた。
何かと確認した央は、持っていた手を小さく震えさせている。
その紙には
「昨日、帰りの電車で会えなかったね。さみしかっただろう。君をまっているからね。」
と、印刷された言葉だった。
これは誰から?
仲のいい人からの手紙なのか?
…違う、最近はずっと一人だ。
では、この人は誰を待っている?
…痴漢。
さっきの言葉を思い出した。
「今日も一人なんだね」
央は寒気がしてその手紙をポケットに押し込み、ハンカチを水で濡らし、固く絞ったものを耳元にゆっくりと当てて目の前の鏡をみる。
そこには怯えた表情の自分が耳にハンカチを当てている様子がうつる。
ハンカチを少し離してみてまだ感覚が残っていて先ほどより強く耳を拭き違和感を取り除こうとしてみる。
だが、何回してもとれることはなく、諦め学校に急いでいくころには、朝礼ギリギリの時刻になっていた。
いつもは朝、余裕で教室に入ってくる央がギリギリに入っている様子を桐嶋朔は廊下の窓際で横目を観察していた。
なんだか様子がおかしい。
顔色も悪く、普段身だしなみを整えている央が今日は特に崩れているように思う。
それに髪が乱れている。
耳のあたりが赤くなり、一部出血をしているようである。
ただ、周りの人間は慌ててきた央を軽い冗談で迎え入れてそのまま教室の中に入っていった。
昨日、央から一瞬だが自分を怖がる様子を見て、傷つき、思わずそのまま央を執務室に置いて帰ってしまった。
ただ、普段の習慣で央の様子を見ることは仕方のないことではあった。
一日、冷静になってみると出会った頃の央の様子に似ているような気がする。
怯えた様子、眩暈。
昨日まではこの廊下でも目を合わすことができていたのに。
なぜ、彼は今までの態度から急に変えたのだろう。
急?
新規イベントのためお互いに忙しくしていて時間が合わないのは仕方がない。
クラスが違うためなかなかゆっくりと会話をすることもできない。
一緒にいないときになにかあったのか。
生徒会役員の仕事を一緒に携わっているからこそ央との共通点があったのだ。
朔は担任の姿を確認して部屋に入りながら、今後、どうするべきか考えていた。
朔が藤咲 央を知ったのは一年の時であった。
家庭の事情で高校は男子高へとすすみ一人暮らしを始めてなんとか半年がたち周囲の状況を冷静に見ることができるようになってきた。
そして、一回目の役員選抜生徒に一人1年生がいることに気が付いた。
彼は学年で上位の成績を保ち、かつまじめな性格と容姿の儚さの中に可愛らしさがあると評判になっていた。
確かに同じ年とは思えないほど、独特の雰囲気を持っていた。
身長は平均の男子よりは少し低めではあるが姿勢の良さが彼を引き立てているようであった。
ただ、あまり人づきあいが得意なほうではないようで話しかけても簡単な会話しかなくその対応も、他の生徒からは敵意どころか神々しく映っていたのであろう。
推薦枠の投票で役員に選ばれそれからは拒否することもなく、律義に仕事を任されるようになっていった。
ただ、役員の中にバランスを考えずに割り当てていく上級生がいたため新人の藤咲は一人でかかえていく内容も増えていったようである。
ある日、放課後の図書館へ返却用の本を持っていったら藤咲 央が日当たりのよい、窓の近くで本を片手に寝ている様子を見つけた。
男子高には珍しく、図書館が2つあるせいか読書好きなひとが多い。
この学校がきっかけで小説家になったり、文学に関わる仕事、そして図書館で巡り合った蔵書の影響で将来を決めていく人が多いというのも納得がいく。
だがこっちの図書館は人の入りが比較的すくなく人に会うことはあまりない。
その場所にまさか、自分以外にも利用している人がいることに驚いた。
その様子を見ていた司書の先生が
「内緒ですよ。もうすぐ起きると思います。あ、待って。あまり近づかないで…」
話を聞くと過去にストレスが原因で眩暈を起こした場所がちょうどこの図書館だったそうだ。
その時から時々、落ち着くまで休んでいくように配慮をしているそうだ。
近くに行き、顔を見てみると顔色がよくない。
儚げであるとは聞いてたが色白であるがゆえに、青白さも目立つように思う。
太陽の光が図書館特有の窓のせいだろう、淡く変化している。
その光が藤咲を包み込んでいてなんだか神秘的ではあるが、可憐である。
同じ男であるのにどうして違うものだろう。
体調が悪いのだろうともっと近づこうとしたときに、ビクッと彼が起きた。
その様子がとても気になった。
確かに近づくときに音を立てていったのだが、あまりにも警戒をしすぎている。
目覚めてこちらに気づいたのだろう、少し観察されていた。
後ろでは司書の人が様子をうかがっている。
「すみません、本を選ぶ邪魔でしたか。
今、避けますので待ってください」
慌てていたのだろう、まだ体調も戻っていなかったのかもしれない。
彼の体は動いたと思ったらふらりとこちらに倒れてくるではないか。
表情は目を開けたまま、ただ焦点があまりあっていないように思う。
胸で受け止めるようにして気づいた。
すごく細い。
制服で誤魔化されているが細い。
強く支えると骨が折れてしまうのではと思うほどである。
腕を開き軽く抱き寄せる形で倒れることは防げた。
本人はまだ、自分の状況が理解できていないようで息を軽くし動揺を落ち着かせている様子である。
「怯えないで。何もしませんから。
…背中を落ち着くまでなでます…」
静かにそっと耳元で囁くと一瞬、体を固まらせたがまだ、落ち着いてないのであろう、眉間にしわを寄せ、目を閉じて唇を震わせながらも、軽めにカクンっと問いかけに真摯に答えようとうなずいた。
諦めて身を任せてくれているようである。
この人はかなり無理をしているのではないか、痩せているのは体質?
それとも何かの病気だろうか。
緊張していた様子から少しずつほぐれていく。
しばらくしてゆっくりだが体を離して立ち上がった。
「あなたは藤咲 央さんですね。
いきなり近づいてすみませんでした。
体調が悪いと司書の方に聞いたもので様子を見ようと近づきました。
驚かせて申し訳ないです。
私は同じ1年の桐嶋 朔といいます」
相手が警戒しているためこちらに悪意などないことを知らせないといけないような気がする。
それにこの人、人に触れられるときに警戒する。
…でも、声を掛けたら受け入れてくれた。
いきなり触れるのがダメなのか?
まぁ、普通、いきなり他人に触れられることはないからおかしな態度ではないのだけれど
…それにしても過剰なぐらいの警戒の仕方からして怯えているのだと判断した。
偶然、図書館で出会った藤咲を桐嶋は責任もって一緒に下校して自宅付近まで送り届けた。。
司書の手前、申し出を断ることができなかった藤咲も図書館を出て、しばらくすると一人で帰れるので気をつかわないようにと言ってきた。
「こんなあなたを置いて平気で帰れるほど私は無責任で薄情に見えますか?
勝手ではありますが、私はあなたを心配しています。
それにまだ電車に乗ることは無理ですよね」
こちらを見る目が警戒している。
ただ、あまり力が入っていないように感じる。
一言、断りを入れておいてもいいだろう。
家の場所を聞いてみると同じ路線を使っているようである。
学校近くの駅までは少し離れている。
そこまで歩いていくが、彼は徐々にゆっくりとなってきているように感じる。
座れる場所を見つけ、少し休むように言うと今度は素直に聞いた。
座っている彼の様子を見ると落ち着きがない。
座っているが、二人に会話はない。
緊張しているというより怯えているという言葉が適格だ。
今、気をそらしても会話はあまり成り立たないような気がする。
もっと彼のことを知ることができていたなら違う方法があるのかもしれない。
送り届けるまでしばらく観察するしかない。
動けるようになったといい、いつも利用している時間帯の電車だと、車内に入っていく。
いつも出入り口に近い場所にいるようで、今日は無理をさせないように背もたれがある場所へと連れて行った。
背もたれをつかっているからか楽なようで自然と向き合うようになっていた。
混雑している車内なのでどうしても密着しているが、彼の空間が少しでもあくように自分の体を壁につかっていく。
最初は、向き合っていることが居心地悪かったのであろう。
目を合わせてくれなかったが、だんだんとなれてきているようだった。
少し顔を近づけて小声で具合を尋ねてみる。
「ち、近いです。
…顔が近い。
具合はよくなってきてるようです」
小さい声で答えてくれた。
この人は思ったより感情が豊かなのかもしれない。
照れているのかな?
なんだか可愛らしい一面をもっているようである。
彼の利用している駅までつき、隣でふーっと息を吐いている央の姿を見た。
歩きながら自宅付近まで歩きながら彼が消えそうな声で言ってきた。
「ありがとうございました。
桐嶋くんのおかげで電車の中でも何もなく済みました」
この人は自分の弱音を誰かに聞いてもらっているのだろうか。
抱え込みすぎているのではないだろうか。
少しでも役に立てることはないだろうか。
勇気を出して聞いてみる。
「藤咲くん、私はあなたの役に少しは立ちましたか?
…もしよかったらですが、これからも時々、お話などするために声をかけてもいいですか?
私はあなたのことをもっと知りたいです」
目を大きく開けて
「なんだか、告白みたいですね。
もちろん、声をかけてください。
…嬉しいです。
学校ではつい、まじめでいなければと固い口調でいるのですが、普段は違いますよ。
僕のことは央と呼んでくれて構わないよ」
今日一日で少しは心を許してくれているようである。
よく見るとはにかむような表情をしている。
「よかったです。
すみません、私はこの口調が普段もなんです。
心の中では結構乱暴な言葉も使ったりするときもありますよ。
まじか!とか。
…秘密ですよ」
少しでもあなたの違う表情をみることができたので今日は特別です。
指を口元に当ててヒミツのしぐさをすると、笑ってもらえた。
なんだ?!この人?
身長差から見上げてくるようにこちらを見ながら、くしゃりと笑うしぐさを初めてかわいいと思う自分にも驚いた。過去にいろんな人から告白を受けることが多かったせいか、上目遣いなど、見慣れたものである。
その時は、少しも心が動かなかったのに。
待て待て待て。
藤咲くんは男だ。
本人も普通に男である。
何になんで?
保護欲?
小さいものをかわいがる女子のような自分の思考に混乱している。
その後、どういう理由で選考されたのか謎ではあるが、異例の追加として生徒会役員に入ることとなり、藤咲央と関りができるようになる。
役員の仕事は藤咲の抱えていた事案を教えてもらいながら一緒にこなしていくことから始まった。
そのせいか、ほとんど慣れるまでは下校も一緒にするようになっていった。
一人暮らしをしている場所は学校の近くではなく、買い物の便利なエリアを選んだせいか、たまたま藤咲の利用する駅と同じだった。
そのことは後日、登校時同じ電車を待つホームで会った時に、問われて詳細を説明した。
ホームで会ってもはじめは別々に電車に乗っていたのだが、徐々に一緒にいることが多くなっていった。
そこで気づいたことがある。
藤咲は他校の生徒からよく声をかけられている。
時には成人した人もいる。
はじめは告白かと思っていたのだが、相手は男が多い。
本人に尋ねてみると、友達になりたいとか、一緒に遊びに行こうとか誘われることがよくあるそうだ。
ただ、相手のことを知らないのに、こちらのことを知っているので正直な気持ち、気持ち悪いらしい。
本人がさみしそうに、「人間不信なんですよ・・」と、言っている姿はとても辛そうだった。
そういう出来事があったとき、眩暈の症状がでているようであった。
はっきりと拒絶できたらいいのだが、言葉を選んでいくうちにできずにいるということだった。
一緒の時には声をかけられている様子はないので、なるべく一緒に帰るようにしようと提案してみた。
「ありがたいですが、そこまで甘えるわけには…」
「では、私が勝手に一緒に帰るので、いいですね」
あまりはっきりと返事をもらうことはできなかったが、確実に困っていることを減らすことができるだろう。
それからは、興味のある分野や趣味などを話していくうちに、仕事でも頼ってもらえるようになってきた。
彼の眩暈などもだんだんと減ってきていて落ち着いているようであった。
2年にあがり、役員業務をそれなりにこなせるようになり、お互い忙しくなりはしたが、それでも登下校時は一緒にいることが多かった。
時間のある時には図書館に行って思い思いに過ごすこともあった。
彼が心を開いてくれるようにあったと思うところがいくつかあった。
役員になったらやはり一般の生徒よりは目立つこともあり、あまり弱音を吐いたり、弱っている自分をあまり見せれなくなっていた。
それは仕方がない、選ばれたからにはいい加減なきもちではしていない。
それは、朔も、央も同じであった。
やわらかい日差しのなかで二人、本を読んでいるとふと、朔の背中に重さを感じた。
後ろでは央が本を読んでいたと思ったんだが…と、様子をゆっくりうかがうと、本を開いている手は力がこもっておらず、ページがパラパラと戻ってきている。
耳元ではスーっと規則正しい寝息が聞こえる。
起こさないようゆっくりゆっくりと朔は自分の膝の上に央の頭がのるようにしていく。
膝枕というものだ。
男でゴツゴツしているが、直接、床で寝るよりかはいいだろう。
以前は近づいただけで飛び起きて警戒していたのに今は、こんなに穏やかな顔で寝ている。
心を開いてくれているのだろう。
この人は甘えることが苦手なのだ。
こちらから先回りしてもいいぐらい。
朔は央の寝顔を見ながらそっと色白のほほを指先でプニプニと触ってみる。
起きそうだと思っていたのだが、起きる気配はない。
少し前へかがんで顔を近づけて今度は唇を見てみると乾燥しているようで少し荒れていた。
持ち歩いているリップクリームを指先に取り、ゆっくり静かに唇に置いておく。
つーっと塗っていると少し反応がある。
上唇を塗り始めて央が本格的に目覚めたようだ。
自分の今の状態を理解していないのだろう、ぼうっとしている央と目が合う。
「ん?朔の顔が近い…なんで?」
素が出てますよ…
「なぜでしょうね?目が覚めましたか?」
あまりにも無防備すぎて思わず頭を撫でてかわいがりたくなってくる。
最近、所々でかわいいので我慢をするが限界である。
表現の仕方で「キュンキュン」ってしてしまうのは仕方がない。
眩暈も少し軽くなっているようである。
だが、電車に乗ることは避けられず周りを警戒しながら乗り込んだ。
昨日は帰りの電車では特に何もなかったのでほっとした。
いつもの時刻、いつもの車両に乗り込んでいたことに特に疑問を感じていなかった。
動き出してしばらくして、背後に生暖かい温度を感じる。
誰かが密着してきたようだ。
ただ、揺れている車内の中で流れに沿うようにそばにいる。
違和感を感じて体を硬直させる。
…痴漢だ。
出入り口の近くなので扉により近づいていく。
だが、それでも密着してる体は離れることはない。
しばらくすると耳元に息がかかるのがわかる。
近くにいるのは男のようだ。
央の身長より高いのだろう、そしてタバコのにおいもする。
わざとだろう、耳元に息があたるようにしている。
「…っ」
こちらの反応を楽しんでいるようである。
嫌悪感と驚きのあまり息をつめてしまった。
恐怖のあまり体も動けず、助けを求めることもできず降車するホームにつくことだけを願っていた。
「今日も一人なんだね…」
降りるホームに近付いて電車が止まる瞬間。
グイっと制服のポケットが引っ張られる感覚がした。
それと同時に耳元で囁かれた。
央はドアが開くと同時に急いで外に出た。
電車を見返す。
誰がしているのかを確認するぐらい予防できるのではと先ほどまでいた場所の付近を確認してみる。
閉まるドアからは中を確認することもできず電車はそのまま走っていった。
先ほどの息がかかった耳元が気持ちが悪い。
嫌だ。
なんで。
気持ちが悪い。
こんなのは初めてだ。
走って駅のトイレまで行き、ハンカチを濡らして気持ちの悪さを誤魔化そうと手を制服のポケットに入れてみる。
「カサリっ」
ハンカチを取り出そうとしたそのポケットの中には入れた憶えのない折り畳まれていた紙が入っていた。
何かと確認した央は、持っていた手を小さく震えさせている。
その紙には
「昨日、帰りの電車で会えなかったね。さみしかっただろう。君をまっているからね。」
と、印刷された言葉だった。
これは誰から?
仲のいい人からの手紙なのか?
…違う、最近はずっと一人だ。
では、この人は誰を待っている?
…痴漢。
さっきの言葉を思い出した。
「今日も一人なんだね」
央は寒気がしてその手紙をポケットに押し込み、ハンカチを水で濡らし、固く絞ったものを耳元にゆっくりと当てて目の前の鏡をみる。
そこには怯えた表情の自分が耳にハンカチを当てている様子がうつる。
ハンカチを少し離してみてまだ感覚が残っていて先ほどより強く耳を拭き違和感を取り除こうとしてみる。
だが、何回してもとれることはなく、諦め学校に急いでいくころには、朝礼ギリギリの時刻になっていた。
いつもは朝、余裕で教室に入ってくる央がギリギリに入っている様子を桐嶋朔は廊下の窓際で横目を観察していた。
なんだか様子がおかしい。
顔色も悪く、普段身だしなみを整えている央が今日は特に崩れているように思う。
それに髪が乱れている。
耳のあたりが赤くなり、一部出血をしているようである。
ただ、周りの人間は慌ててきた央を軽い冗談で迎え入れてそのまま教室の中に入っていった。
昨日、央から一瞬だが自分を怖がる様子を見て、傷つき、思わずそのまま央を執務室に置いて帰ってしまった。
ただ、普段の習慣で央の様子を見ることは仕方のないことではあった。
一日、冷静になってみると出会った頃の央の様子に似ているような気がする。
怯えた様子、眩暈。
昨日まではこの廊下でも目を合わすことができていたのに。
なぜ、彼は今までの態度から急に変えたのだろう。
急?
新規イベントのためお互いに忙しくしていて時間が合わないのは仕方がない。
クラスが違うためなかなかゆっくりと会話をすることもできない。
一緒にいないときになにかあったのか。
生徒会役員の仕事を一緒に携わっているからこそ央との共通点があったのだ。
朔は担任の姿を確認して部屋に入りながら、今後、どうするべきか考えていた。
朔が藤咲 央を知ったのは一年の時であった。
家庭の事情で高校は男子高へとすすみ一人暮らしを始めてなんとか半年がたち周囲の状況を冷静に見ることができるようになってきた。
そして、一回目の役員選抜生徒に一人1年生がいることに気が付いた。
彼は学年で上位の成績を保ち、かつまじめな性格と容姿の儚さの中に可愛らしさがあると評判になっていた。
確かに同じ年とは思えないほど、独特の雰囲気を持っていた。
身長は平均の男子よりは少し低めではあるが姿勢の良さが彼を引き立てているようであった。
ただ、あまり人づきあいが得意なほうではないようで話しかけても簡単な会話しかなくその対応も、他の生徒からは敵意どころか神々しく映っていたのであろう。
推薦枠の投票で役員に選ばれそれからは拒否することもなく、律義に仕事を任されるようになっていった。
ただ、役員の中にバランスを考えずに割り当てていく上級生がいたため新人の藤咲は一人でかかえていく内容も増えていったようである。
ある日、放課後の図書館へ返却用の本を持っていったら藤咲 央が日当たりのよい、窓の近くで本を片手に寝ている様子を見つけた。
男子高には珍しく、図書館が2つあるせいか読書好きなひとが多い。
この学校がきっかけで小説家になったり、文学に関わる仕事、そして図書館で巡り合った蔵書の影響で将来を決めていく人が多いというのも納得がいく。
だがこっちの図書館は人の入りが比較的すくなく人に会うことはあまりない。
その場所にまさか、自分以外にも利用している人がいることに驚いた。
その様子を見ていた司書の先生が
「内緒ですよ。もうすぐ起きると思います。あ、待って。あまり近づかないで…」
話を聞くと過去にストレスが原因で眩暈を起こした場所がちょうどこの図書館だったそうだ。
その時から時々、落ち着くまで休んでいくように配慮をしているそうだ。
近くに行き、顔を見てみると顔色がよくない。
儚げであるとは聞いてたが色白であるがゆえに、青白さも目立つように思う。
太陽の光が図書館特有の窓のせいだろう、淡く変化している。
その光が藤咲を包み込んでいてなんだか神秘的ではあるが、可憐である。
同じ男であるのにどうして違うものだろう。
体調が悪いのだろうともっと近づこうとしたときに、ビクッと彼が起きた。
その様子がとても気になった。
確かに近づくときに音を立てていったのだが、あまりにも警戒をしすぎている。
目覚めてこちらに気づいたのだろう、少し観察されていた。
後ろでは司書の人が様子をうかがっている。
「すみません、本を選ぶ邪魔でしたか。
今、避けますので待ってください」
慌てていたのだろう、まだ体調も戻っていなかったのかもしれない。
彼の体は動いたと思ったらふらりとこちらに倒れてくるではないか。
表情は目を開けたまま、ただ焦点があまりあっていないように思う。
胸で受け止めるようにして気づいた。
すごく細い。
制服で誤魔化されているが細い。
強く支えると骨が折れてしまうのではと思うほどである。
腕を開き軽く抱き寄せる形で倒れることは防げた。
本人はまだ、自分の状況が理解できていないようで息を軽くし動揺を落ち着かせている様子である。
「怯えないで。何もしませんから。
…背中を落ち着くまでなでます…」
静かにそっと耳元で囁くと一瞬、体を固まらせたがまだ、落ち着いてないのであろう、眉間にしわを寄せ、目を閉じて唇を震わせながらも、軽めにカクンっと問いかけに真摯に答えようとうなずいた。
諦めて身を任せてくれているようである。
この人はかなり無理をしているのではないか、痩せているのは体質?
それとも何かの病気だろうか。
緊張していた様子から少しずつほぐれていく。
しばらくしてゆっくりだが体を離して立ち上がった。
「あなたは藤咲 央さんですね。
いきなり近づいてすみませんでした。
体調が悪いと司書の方に聞いたもので様子を見ようと近づきました。
驚かせて申し訳ないです。
私は同じ1年の桐嶋 朔といいます」
相手が警戒しているためこちらに悪意などないことを知らせないといけないような気がする。
それにこの人、人に触れられるときに警戒する。
…でも、声を掛けたら受け入れてくれた。
いきなり触れるのがダメなのか?
まぁ、普通、いきなり他人に触れられることはないからおかしな態度ではないのだけれど
…それにしても過剰なぐらいの警戒の仕方からして怯えているのだと判断した。
偶然、図書館で出会った藤咲を桐嶋は責任もって一緒に下校して自宅付近まで送り届けた。。
司書の手前、申し出を断ることができなかった藤咲も図書館を出て、しばらくすると一人で帰れるので気をつかわないようにと言ってきた。
「こんなあなたを置いて平気で帰れるほど私は無責任で薄情に見えますか?
勝手ではありますが、私はあなたを心配しています。
それにまだ電車に乗ることは無理ですよね」
こちらを見る目が警戒している。
ただ、あまり力が入っていないように感じる。
一言、断りを入れておいてもいいだろう。
家の場所を聞いてみると同じ路線を使っているようである。
学校近くの駅までは少し離れている。
そこまで歩いていくが、彼は徐々にゆっくりとなってきているように感じる。
座れる場所を見つけ、少し休むように言うと今度は素直に聞いた。
座っている彼の様子を見ると落ち着きがない。
座っているが、二人に会話はない。
緊張しているというより怯えているという言葉が適格だ。
今、気をそらしても会話はあまり成り立たないような気がする。
もっと彼のことを知ることができていたなら違う方法があるのかもしれない。
送り届けるまでしばらく観察するしかない。
動けるようになったといい、いつも利用している時間帯の電車だと、車内に入っていく。
いつも出入り口に近い場所にいるようで、今日は無理をさせないように背もたれがある場所へと連れて行った。
背もたれをつかっているからか楽なようで自然と向き合うようになっていた。
混雑している車内なのでどうしても密着しているが、彼の空間が少しでもあくように自分の体を壁につかっていく。
最初は、向き合っていることが居心地悪かったのであろう。
目を合わせてくれなかったが、だんだんとなれてきているようだった。
少し顔を近づけて小声で具合を尋ねてみる。
「ち、近いです。
…顔が近い。
具合はよくなってきてるようです」
小さい声で答えてくれた。
この人は思ったより感情が豊かなのかもしれない。
照れているのかな?
なんだか可愛らしい一面をもっているようである。
彼の利用している駅までつき、隣でふーっと息を吐いている央の姿を見た。
歩きながら自宅付近まで歩きながら彼が消えそうな声で言ってきた。
「ありがとうございました。
桐嶋くんのおかげで電車の中でも何もなく済みました」
この人は自分の弱音を誰かに聞いてもらっているのだろうか。
抱え込みすぎているのではないだろうか。
少しでも役に立てることはないだろうか。
勇気を出して聞いてみる。
「藤咲くん、私はあなたの役に少しは立ちましたか?
…もしよかったらですが、これからも時々、お話などするために声をかけてもいいですか?
私はあなたのことをもっと知りたいです」
目を大きく開けて
「なんだか、告白みたいですね。
もちろん、声をかけてください。
…嬉しいです。
学校ではつい、まじめでいなければと固い口調でいるのですが、普段は違いますよ。
僕のことは央と呼んでくれて構わないよ」
今日一日で少しは心を許してくれているようである。
よく見るとはにかむような表情をしている。
「よかったです。
すみません、私はこの口調が普段もなんです。
心の中では結構乱暴な言葉も使ったりするときもありますよ。
まじか!とか。
…秘密ですよ」
少しでもあなたの違う表情をみることができたので今日は特別です。
指を口元に当ててヒミツのしぐさをすると、笑ってもらえた。
なんだ?!この人?
身長差から見上げてくるようにこちらを見ながら、くしゃりと笑うしぐさを初めてかわいいと思う自分にも驚いた。過去にいろんな人から告白を受けることが多かったせいか、上目遣いなど、見慣れたものである。
その時は、少しも心が動かなかったのに。
待て待て待て。
藤咲くんは男だ。
本人も普通に男である。
何になんで?
保護欲?
小さいものをかわいがる女子のような自分の思考に混乱している。
その後、どういう理由で選考されたのか謎ではあるが、異例の追加として生徒会役員に入ることとなり、藤咲央と関りができるようになる。
役員の仕事は藤咲の抱えていた事案を教えてもらいながら一緒にこなしていくことから始まった。
そのせいか、ほとんど慣れるまでは下校も一緒にするようになっていった。
一人暮らしをしている場所は学校の近くではなく、買い物の便利なエリアを選んだせいか、たまたま藤咲の利用する駅と同じだった。
そのことは後日、登校時同じ電車を待つホームで会った時に、問われて詳細を説明した。
ホームで会ってもはじめは別々に電車に乗っていたのだが、徐々に一緒にいることが多くなっていった。
そこで気づいたことがある。
藤咲は他校の生徒からよく声をかけられている。
時には成人した人もいる。
はじめは告白かと思っていたのだが、相手は男が多い。
本人に尋ねてみると、友達になりたいとか、一緒に遊びに行こうとか誘われることがよくあるそうだ。
ただ、相手のことを知らないのに、こちらのことを知っているので正直な気持ち、気持ち悪いらしい。
本人がさみしそうに、「人間不信なんですよ・・」と、言っている姿はとても辛そうだった。
そういう出来事があったとき、眩暈の症状がでているようであった。
はっきりと拒絶できたらいいのだが、言葉を選んでいくうちにできずにいるということだった。
一緒の時には声をかけられている様子はないので、なるべく一緒に帰るようにしようと提案してみた。
「ありがたいですが、そこまで甘えるわけには…」
「では、私が勝手に一緒に帰るので、いいですね」
あまりはっきりと返事をもらうことはできなかったが、確実に困っていることを減らすことができるだろう。
それからは、興味のある分野や趣味などを話していくうちに、仕事でも頼ってもらえるようになってきた。
彼の眩暈などもだんだんと減ってきていて落ち着いているようであった。
2年にあがり、役員業務をそれなりにこなせるようになり、お互い忙しくなりはしたが、それでも登下校時は一緒にいることが多かった。
時間のある時には図書館に行って思い思いに過ごすこともあった。
彼が心を開いてくれるようにあったと思うところがいくつかあった。
役員になったらやはり一般の生徒よりは目立つこともあり、あまり弱音を吐いたり、弱っている自分をあまり見せれなくなっていた。
それは仕方がない、選ばれたからにはいい加減なきもちではしていない。
それは、朔も、央も同じであった。
やわらかい日差しのなかで二人、本を読んでいるとふと、朔の背中に重さを感じた。
後ろでは央が本を読んでいたと思ったんだが…と、様子をゆっくりうかがうと、本を開いている手は力がこもっておらず、ページがパラパラと戻ってきている。
耳元ではスーっと規則正しい寝息が聞こえる。
起こさないようゆっくりゆっくりと朔は自分の膝の上に央の頭がのるようにしていく。
膝枕というものだ。
男でゴツゴツしているが、直接、床で寝るよりかはいいだろう。
以前は近づいただけで飛び起きて警戒していたのに今は、こんなに穏やかな顔で寝ている。
心を開いてくれているのだろう。
この人は甘えることが苦手なのだ。
こちらから先回りしてもいいぐらい。
朔は央の寝顔を見ながらそっと色白のほほを指先でプニプニと触ってみる。
起きそうだと思っていたのだが、起きる気配はない。
少し前へかがんで顔を近づけて今度は唇を見てみると乾燥しているようで少し荒れていた。
持ち歩いているリップクリームを指先に取り、ゆっくり静かに唇に置いておく。
つーっと塗っていると少し反応がある。
上唇を塗り始めて央が本格的に目覚めたようだ。
自分の今の状態を理解していないのだろう、ぼうっとしている央と目が合う。
「ん?朔の顔が近い…なんで?」
素が出てますよ…
「なぜでしょうね?目が覚めましたか?」
あまりにも無防備すぎて思わず頭を撫でてかわいがりたくなってくる。
最近、所々でかわいいので我慢をするが限界である。
表現の仕方で「キュンキュン」ってしてしまうのは仕方がない。
10
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
イケメンに惚れられた俺の話
モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。
こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。
そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。
どんなやつかと思い、会ってみると……
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる
七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。
だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。
そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。
唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。
優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。
穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。
――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。
兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?
perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。
その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。
彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。
……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。
口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。
――「光希、俺はお前が好きだ。」
次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新するかもです。
BLoveさまのコンテストに応募するお話に、視点を追加して、倍くらいの字数増量(笑)でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる