昇華混じりの雪柳 淡い恋の白い肌

香野ジャスミン

文字の大きさ
18 / 50

18

しおりを挟む
雪柳は、息が止まりそうだった。
美しくなったという言葉を真に受けていた。
確かに、サプリを飲み始めて身体は変化した。
それは、自分の想いの強さの表れなのだと思い込んでいた。

違っていた。
女になりたかった。
ただ、自分の力でだ。
ましてや、嫌悪感しか感じることがない、鮫島には、死んでも頼りたくなかった。
自分に暗示をかけるように、髪を手入れし、肌を手入れした。
花街を出て、女になり、そして女として働き、女として愛してもらえたら。
そのために、働くときのスキルも身につけようと勉強をしている。

鮫島の言葉が頭をめぐる。

自分のことは、いい。
自分が注意していればよかったのだ。
後悔も自分でどうにか・・・

それよりも、母親や父親のことが出てきた。
「・・・・父や母は・・・」
雪柳が顔色を失いながらも、小さく零した言葉を鮫島は聞き逃さなかった。
「ふはっははは!!
 父親は、当然だ!
 私がずっと目をつけていた女を横取りするからなっ!

 母親は・・・あの女も、どうにかしているんだっ!
 いつまでも、男のことをグダグダとっ。
 おかげで、年増になりやがってっ!
 ちょっと、使ったらすぐ、こわれてやがる!」
何のことを言っているのだ。
父親は事故だ。それを当然と鮫島は言っている。
父は、鮫島に?

母親のことは、正直、雪柳はわからない。
父のことを想っているのはわかっているが、お嬢様育ちというだけ、自分に甘い所があった。
甘い言葉に吸い寄せられる母親の姿は、心配だった。
住み込みで鮫島の所にいた。
そこで、ずっと都合のいいように、されていたのだろう。
ただ、自殺だと聞いた。
「・・・・母は・・」
震える声で雪柳が尋ねる。
「ちょっと、抱いたらヨガリまくってさっ!
 あれは、実は淫乱だったんだ。
 アバズレな女には、興味はない。
 ヤッてるときに使うと、とぶ薬を使ってやったのに、壊れてやがる。
 いくら手に入れた女でも、あんなのは、いらない。
 飼うのも金がかかるからな。
 ちょっと処分をしただけだ」
まるで、お気に入りのぬいぐるみに手を加えて、想像と違うから捨てた。
そう聞こえる。
自分の親が、どうして?
いやいや、なぜ、鮫島にこんなに酷い仕打ちを受けなければならない。
理不尽すぎる。勝手すぎる!
人の命をなんだと思っているんだ。
怒り、悲しみ、憎しみ・・・一つ一つが、大きな岩のように落ちてくるようだった。
雪柳の表情をみて、鮫島が笑う。
「いいねぇ。
 若いと、こんなに感情を豊かにするんだね。

 明日。
 明日、お前を抱いてやる。
 今まで、飲ましていた薬ものんでおけよっ!
 あと、すぐに突っ込めるようにしておけっ!
  鈴宮!」
今まで、空気のように様子を見ていた鈴宮が近くまで来る。
「鮫島様。
 いかがいたしましょう」
鈴宮が指示を仰ごうを鮫島に尋ねる。
鮫島は、
「雪柳を明日、抱く。
 男は、突っ込むのに時間がかかるというじゃないか。
 明日までに、雪柳の身体を突っ込めるようにしておけっ!」
鈴宮が
「身体を開く楽しみは、私が頂いていいということですか?」
その言葉を聞いて、鮫島は、ニヤニヤと笑う。
「ほほほっ!!
 3人か・・・
 いやっ!
 2人入れるとガバガバ・・・
 金がとれなくなるっ」
一人、鮫島がつぶやく言葉に雪柳は、身体を反応させてしまった。
その様子をみて、鮫島が言葉をかける。
「私が、抱いた後、今度は客を取らせる。
 金をしっかり稼ぐんだっ!
 花街で評判の色子がいる。
 それだけで、人は興味を示す。

 なんせ、色事には、盛んな人種だからな日本人は。
 あぁぁ、日本人とやりたい外国人もいるだろう。

 ヤるには、たっぷりと金を・・・ひひ」
聞いただけで、虫唾が走る。
もう、嫌だ。
自分のためではない、この身体も、あの人を想い続けている自分の心も。
そして、これから先、足音を立てて順番を待つように闇へと落ちていく未来も。

「では、部屋に戻りましょう」
そう言って、鈴宮が雪柳に声をかける。
座ったままで、動かない雪柳を見下ろし、そして
「失礼します」
膝裏に腕を通し、雪柳の身体を鈴宮は抱える。
抱き上げてる瞬間、鈴宮が雪柳の顔を見る。
硬い表情をしてじっと何かを考えている。
唇を噛みしめ、微かに震えている。

部屋を出る時、横目で鈴宮は鮫島の様子を見る。
もう、雪柳に客を取らせるときの金の勘定を考えている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

前世が教師だった少年は辺境で愛される

結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。 ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。 雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。

異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる

七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。 だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。 そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。 唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。 優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。 穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。 ――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

処理中です...