10 / 39
エングラントの槍編
ドラゴン
しおりを挟む
翌日、シュタインがバオホの所へ鷹を飛ばすと言うので、ミカはその様子を見に来た。
「やあ、ミカ。おはよう」
「おはようございます」
シュタインは止まり木に止まらせた鷹に小さいリュックのようなものを背負わせた。
そのリュックの中にエメラルドと手紙を入れてボタンで留めた。
「この鷹には向精順応の魔法がかけられている。まぁ一種の催眠術かな。エングラントの槍まで行って帰るように教えてあるよ」
「何十日も飛び続けるんですか?」
「そんな事は出来ないから、途中疲れれば休むしお腹が空けば食べる。その辺は自由なんだが、バオホの塔まではなるべく早く飛んでくれるんだ」
そう言うとシュタインは止まり木に腕を近付けて鷹を自分の腕に移動させた。
「それじゃよろしく頼むよ」
そう言うと腕を上に上げて鷹を放した。鷹はバサバサと翼を羽ばたかせてみるみると遠くに飛んで行った。
「さて、どうなる事やら」
バオホのプロトコルに則り、うまく事が運べばあの鷹はバオホが住むエングラントの槍にたどり着き、バオホはエメラルドと手紙を受け取る。そしてその返信をして鷹を戻す。その返信内容によってシュタインはバオホと会見できる。と言う算段だ。
ミカはやる事もなくひたすら魔法の勉強にいそしんだ。時々シュタインは様子を見に来てくれた。
「師匠。あの鷹は本当に戻ってくるのですか? もし迷ってしまったり逃げてしまってたらどうなるんですか?」
「向精順応の魔法をかけてあるからね。迷ったり逃げたりする事はないよ。戻らないとすればバオホが横取りした時くらいだけど、それは有り得ないね」
「何故ですか?」
「それをしてしまっては誰ももう鳥を送らないからさ。エメラルドだけでも高い贈り物なのに、その上鳥まで取られて梨の礫では信頼など生まれない」
「なるほど」
そしてそんな話をしてからひと月ほど経ってからの事だった。屋敷の鳥舎に例の鷹が戻ってきた。
シュタインはエメラルドの代わりに戻ってきた手紙を読んだ。
「師匠。何が書いてあったんですか?」
「どうやら小さな迷いの森にある誘惑の岩で会談だ」
「小さな迷いの森?」
「エングラントとポーレシアの国境付近にある森さ。エングラント側に広がるその森の中に誘惑の岩と呼ばれる大きな岩があるのさ。バオホが指定した日時まで時間がないな……明日発とう」
小さな迷いの森は、バオホが住むエングラントの槍からは少し離れている場所だ。
「明日ですか?」
「約定まで後十日しかないからね。急がないと」
「十日って! 鷹の翼でも半月ほど掛かってるのに、人の足で十日でいけるはずな……」
シュタインはミカの言葉を遮った。
「人の足では行かないよ。ささ、早く準備をして寝るんだ。明日は早いからね」
そう言うとシュタインは自室へ戻っていってしまった。
「人の足では行かない? 馬って事よね? ずっと馬を走らせるって事かしら?」
考えたが真意は分からない。仕方なく旅の準備をしてミカは寝た。
翌朝早くにミカは起きた。タイミングよくドアがノックされキルシュが入ってきた。
「お早うございます。お師匠様が正面玄関で待てと仰せです」
「朝食も取らずに出発するのね」
「そのようでございます」
ミカはおそらく馬上で食事になるなと思った。そして荷物を持って玄関に向かった。
ポルシュへ行った時のようにウェザーとリーがいるのかと思いきや、そこにいたのはロバ二頭だった。ミカは驚いた。使用人のサヌラッグがミカの荷物とシュタインの荷物をロバに付ける。
「やあ、ミカ。おはよう」
「あ、師匠。おはようございます。ロバで行くのですか?」
「山道だからね」
「山道?」
「そうさ。山に向かう」
ミカもこの辺りの地理には少し慣れてきていた。エングラントまでに確かに山道を超えるルートもあるが、お屋敷からエングラントに向かう西のルートは、暫く平原や森のはずだった。
「とにかく出発しよう」
シュタインはロバに跨った。ミカもそれに続いて跨った。
「では行ってくるよ。留守は頼んだよ」
「行ってらっしゃいませ。お気を付けて」
「行ってきます」
二人は屋敷を出て歩き始めた。シュタインは街道に出る西のコースではなく、東の道に進んだ。
屋敷の東は半日も歩けば確かに山だが、エングラントとは逆方向になる。
「師匠、どこに行くんですか?」
「エングラントにある小さな迷いの森だよ。誘惑の岩で待ち合わせだ」
「い、いえ。そうじゃなくて。エングラントは西になるのではないですか?」
「エングラントに行くにはロバの足では時間がかかり過ぎる。もっと早く行かないと間に合わないんだよ」
「なら馬で出れば良かったのではないですか?」
「馬でも間に合わない。もっと早く空を飛んで行くのが一番だよ」
「空を?」
シュタインはそれ以上言葉を繋がなかった。ミカは仕方なく黙ってシュタインについていった。
山道に入ってから何回か休憩を取った。シュタインはミカに地学についての雑談や魔法の勉強についての話などをしていた。
やがて山道から外れて獣道のような所を歩き始めた。
「師匠。どこに行こうとしてるのですか?」
「エングラントだよ」
「それは分かってます。こちらは方向が逆だし、獣道を行かれてるので」
「それはすぐ分かるよ。そこに洞窟があるだろう? その中に入ればすぐさ」
見るとすぐそこの山肌に大きな大穴が空いていた。シュタインはロバを降りて手綱を引き洞窟の中に入っていった。ミカもそれに続いた。
洞窟に入るのにランタンも点けずに入って行くのを不思議に思っていたら、洞窟はすぐに広いホール状の場所に出た。天井は崩れ落ちていて空が良く見えていた。
「どうやら散歩にでも出てるのかな?」
「誰がですか?」
「ムースさ。空の散歩が好きなんでね」
ミカは理解できずにいた。シュタインはロバをドーム内に放った。
「二人とも屋敷に帰れるならゆっくり帰ってくれ。帰り道が分からなければ自由にして良いよ」
ロバはその言葉を理解しているのかいないのか、暫くホール内をウロウロすると入ってきた入口の方へ出て行った。
「ムースは暫くすれば帰ってくる。のんびり待とう」
「ムースとは誰なんですか?」
「カッパードラゴンさ。昔から仲良くしてるんだ」
ミカは世界の生物についても勉強していたのでカッパードラゴンの事は理解できた。
ドラゴンは大きく分けるとカラーで呼ばれるものと素材で呼ばれるものに分かれる。例えばグリーンドラゴンやゴールドドラゴンなどである。カラーのドラゴンはどちらかと言うとわがままで、素材で呼ばれるドラゴンは友好的な事が多い。体の大きさで分類する事もある。その場合スモール、ラージ、ヒュージの三つに分かれる。知能がとても高く様々な言語を操る。魔法を唱える個体もいる。カッパーとは銅の事だ。
「どんなドラゴンなんですか?」
「性格は穏やかだけどあまり前に出る事は好まないかな」
シュタインはムースの事を色々話し始めた。その話がひと段落する頃、ひらけた天井部から翼を羽ばたかせる音が聞こえてきた。
「帰ってきたかな?」
羽音は力強く羽ばたきその風がミカ達の立っているところまで届いた。
ムースがゆっくりと降りてくる。降りながら二人を見つけて言った。
「そこにいるのはシュタインだな? 隣にいるのは見かけない人間だが」
ムースの高度が下がるにつれて吹き返しの風が強くなってきた。ミカは両腕を頭の前に持ってきて風とともに飛んでくる砂や枝などを避けた。
ムースが地面に降りると翼を畳んで改めて言った。
「久しぶりじゃないか。前は何だったかな?」
「ハリルベルクの沖の離島に出る海賊の討伐さ」
ムースは首を縦に振って納得した。
「そうだったそうだった。あの時も楽しかったぞ……所で隣の人間は?」
「僕の弟子でミカって言うんだよ」
「ミカです。よろしくお願いします」
「私はムースだ。人間の顔は皆同じに見えるが、あるいはミカは女かな?」
「は、はい」
「なるほど。で、今日はどうした? 昔話をする為に来たわけでもあるまい」
ムースは時間を惜しむように言った。シュタインもそれに合わせて言った。
「僕らを運んで欲しいんだ。エングラントにある小さな迷いの森まで」
「エングラント……もしやバオホと会合でもしようと言うのかな?」
「まあね。どのくらいで飛べる?」
ミカは驚いた。
「飛ぶ? 飛ぶって、まさか私達を乗せて飛んでもらうのですか?」
「そうだよ。ムースの翼なら他愛もない事さ」
ミカは驚きそして動揺した。ドラゴンを見る事も初めてだし、ポーレシアにドラゴンがいるなんて思いもよらなかったし、そして更にその背に乗って飛ぶなど想像もしていなかったからだ。
そんなミカの様子を知ってか知らずか、シュタインとムースは構わず話を続けた。
「そうだな、小さな迷いの森なら何度か行ったことがある。三日いや二日もあれば十分間に合うだろう」
「流石だね。やはり君の所へ来て正解だったよ」
ミカは更に驚いた。鷹の翼でさえ往復にひと月近くかかる距離を、たったの二日で飛ぶなんて。
「しかし、この依頼をする事で僕の方が二つ多く仕事を依頼する事になってしまうが」
ムースは物欲もなく金や宝石で仕事を受けるドラゴンではない。例の海賊討伐の際もシュタインが仕事を依頼した形になっている。その見返りは今の所支払ってはいない。そこに来て今また仕事を依頼すればシュタインの方ばかりがムースを頼っている事になる。
「ならばシュタインよ。カーテンカーテンの街に孤児院を作ってはくれまいか」
ムースはカーテンカーテンの街の近くにある火山の麓に温泉があるのを知っていて、たまにその温泉に入りに行っている。先日そこで温泉に入っていたらある子供と知り合ったという。
「滅多に人の来ない温泉で子供と出会って驚いたが、その子は特に怯えもしてなかったよ。で、その子が言うには、近年カーテンカーテンの街は飢饉と疫病に見舞われて、多くの人が亡くなったそうだ。その結果街に孤児が増えているらしい」
「なるほど、ムースらしい願いだね。カーテンカーテンの街に土地を用意して孤児院を作ってみるよ。と言うよりは、飢饉と疫病の原因を探り対処して欲しいって事だね?」
「さすがシュタインだ。この願いを聞いてもらえれば二つ分の仕事どころか三つ、いや五つ分は働ける」
ミカは訳も分からず二人の話を聞いていた。どうやらシュタインとムースは対等の関係にあり、このようにお互いにお互いの願いを聞いてあげる事で、お互いの仕事を片付けているようだ。
「では、早速行くかね?」
「ムースが良ければ」
「では行こう」
ムースは二人が背中に乗りやすいようにひれ伏すように背中を下げた。シュタインはムースの肘などを足がかりに、ムースの背中によじ登った。
そしてムースの背中の鱗を手がかりにして、身を乗り出してミカに手を差し伸べた。
「ささ、僕の手に捕まって」
ミカはドラゴンの背中によじ登った事などない。恐る恐るシュタインの手に捕まって、ムースの背中によじ登った。
背中は意外と広くしかし鱗で覆われているので硬かった。
「ドラゴンの鱗は人が二人よじ登ったくらいじゃ取れないから安心して良いよ」
「お二人さんとも準備はいいかね?」
「ああ、行ってくれ」
するとムースは翼を大きく広げて羽ばたいた。風が大きく渦巻いた。
背中がゆっくり持ち上がりフワッと浮いた。ミカはその不安定さに少し慌てた。
「ミカ。バランスが取りにくいなら僕のベルトに捕まってるといいよ」
ミカは言われるままにシュタインのベルトに捕まった。
ホールから出るとムースは一つ大きく羽ばたいて勢いよく加速した。スピードがみるみる上がっていく。と、同時に高度が徐々に上がった。
速度が上がるにつれて、ミカはだんだん息がしにくくなってくるのを感じた。それを知ってるかのようにシュタインが首を目一杯後ろに捻り大声で言った。
「ミカ! 息が出来ないのは風圧のせいだ! 焦らずにゆっくりと息を吸い込んでみるといいよ!」
ミカは言われるままに、ゆっくりと息を吸ってみた。すると肺に息が流れ込んできた。
「ありがとうございます!」
高度が上がって少し肌寒くなってきた。そして速度も増して体感温度はみるみる下がった。
眼下には森や草原が小さく広がっていて、かなり遠くまで見える。
その視線の先にお城とそこを囲むように街や城壁が見えた。
「師匠、もしかしたらあそこに見えるのはポルシュの城下町ですか?」
「そうだよ」
シュタインは少しだけ首を振り向けて言った。
この短時間でポルシュまで飛んできた事にミカは驚いた。ドラゴンとはこれ程の能力があるものなのか。
眼下の景色はどんどん流れていく。遠くに山脈が見える。おそらくエングラントとの国境付近の雪割り山脈だろう。
「さて、一休みするか」
ムースはそう言うと高度をぐんぐん下げていった。それと同時に少しずつ速度を落としていった。
辺りには街道も森も何もないだだっ広い草原だった。腰の高さほどはある生い茂った草原だ。シュタインはムースの背中から飛び降りて、ミカの方を振り向いて言った。
「疲れてないかい?」
「え? ここまであっという間だったので全然疲れてないです」
「今日は天気も良く気流も安定してるだろう」
ムースが空を見やりながら言った。
「こんなに早く飛べるなら国境まで今日中に辿り着けるのではないですか?」
「いや、今日は月待ちの滝まで行ったらそこで終わりだ」
続けてシュタインが言った。
「ムースは人目につくのを嫌うから、街や街道からなるべくそれたコースを飛ぶのさ。直線距離を最速で飛べば一日で迷いの森まで運んでくれるけど、それだと人間たちの目に晒されるからね」
「人に見られるのが嫌いなのですか?」
「昔は我らの鱗や内臓を狙って多くの人間たちが挑んできたものさ。それで死んでいった仲間もいる。今では我らドラゴン族も数が減り、そもそもその存在を信じない者たちも増えたのだ」
以前はドラゴンといえばその鱗は強力な防具として使われたり羽は魔法の材料に使われたりなど、多くの人間が狙っていたが、その為ドラゴンは数を減らしてしまった。
そして数が減ったがゆえにドラゴンの存在は幻のものとなり、見かけることは少なくなり、そしてやがて空想上の生き物と思う者も増えてきたのだった。
「私は本来人間を嫌うものではない。だが、中には邪悪な心を持つ者もいるだろう。だからなるべく接することを避けたいのだ」
「そうだったんですね」
ミカは、ムースとシュタインの出会いのきっかけは何だったのだろうと気に掛かったが言わなかった。
「ムース。そろそろ行くかい?」
「そうだな。じゃあ背中に乗ってくれ」
ムースが力強く翼を羽ばたかせると身体がフワリと宙に浮いた。そして再び翼を羽ばたかせた、今度はそのまま前に向かって進んでいった。
「月待ちの滝は、本来とは道が逸れるが夜を越すには程よい場所なのでな」
高い高度に達して暫く飛んでいたムースはそう言って首を後ろに振り向かせた。
「すぐに着く」
遠くには相変わらず雪割り山脈が見えていた。雪を被って白く輝いている。
ムースの言葉通り月待ちの滝にはすぐに着いた。もっとも、馬で来たらどれ程掛かるのか分からないが。
生茂る木々をバキバキ折りながらムースはとある滝の下に降りた。広い滝壺だ。ムースの巨大な体を横たえても余裕がある。
「今日はここで野宿だ。ムースがいるから野生の動物などに襲われる心配はないよ。でも夜は冷えるから火をおこそう」
シュタインはミカを連れて辺りに薪を拾いに行った。
「師匠。ここには人は来ないのですか?」
「全く来ないわけではないよ。道に迷った探検家などがひょっこり現れることだってあるだろう。何でだい?」
ミカはムースが悪い人間に見つかり倒されてしまうのではないかと不安に思っていた。
「そうだな。街道や街から遠く離れたこんな場所に、ひょっこり現れるような人間は相当腕が立つだろうね」
「もしそうなったら?」
「僕が追い払うよ」
そう言えば以前一緒になったドワーフの二人も言っていた。シュタインは通り名が付くほど強力な魔法探究者なのだ。
月影の魔法使い。
ミカは頭の中で通り名を思い出してみた。
シュタインは少し太めの薪を拾ってフーとため息をついた。
「この薪は大きすぎるかもしれないが、もうこれだけ集めればいいだろう。戻ろうか」
二人はムースのいる滝壺へと戻った。ムースは横たわって寝ていた。
「戻ったよ」
この辺りは滝の周りに木が生い茂っているものの、滝や川の上空は空が見えた。滝壺はちょっとした広場になっていた。大きな石や小さな石がゴロゴロしていて寝にくそうだ。
ムースはシュタインとミカが抱えてる薪の量を見て言った。
「人間とは不便なものだな。夏は汗をかき冬は暖を取らねばならない。我らも温度を感じるが、汗をかいたり寒さに震える事はない」
「ふふふ。僕ら人間には硬いウロコが付いてないからね」
シュタインとミカは石を積み上げて簡単なかまどを作った。枯葉や小さな木々を下に敷く。その上に徐々に大きめの薪を置いて行き、最後に太い薪を置いた。
火口箱から火種を取り出して枯れ草に移し、息を吹きかけると途端に火が燃え出した。
燃え出した火が薪に燃え移る頃、ムースが言った。
「明日はどこに行けば良いのかな?」
「小さな迷いの森に隣接する夢見の湖まで運んでくれ。その後湖で水浴びでもしててくれると助かる」
「もう冬だ。この寒い中水浴びをしろと言うのか?」
「暑さ寒さを感じないと言ってたじゃないか」
シュタインは笑いながら言った。
「いや、あの辺りでは一番人目に付かないんだよ。それとも会見が終わるまで空の散歩をしてるかい?」
「それも悪くないな。体が冷えてきたら空の散歩をして待とう」
ミカは二人の話がひと段落するのを待ってから聞いた。
「明日には小さな迷いの森に着くと言う事ですか?」
「うん、明日は小さな迷いの森に隣接するように横たわっている湖に行く予定だよ。誘惑の岩までは森を歩いて行く」
シュタインは持ってきたザックの中から保存食を取り出すと、枝に挿し焚き火で炙った。
同じものをいくつか作る。
「さて、陽が沈んだらとっとと寝るけど、それまでは自由だ。あまり遠くに行かなければ遊んでていいよ」
「やあ、ミカ。おはよう」
「おはようございます」
シュタインは止まり木に止まらせた鷹に小さいリュックのようなものを背負わせた。
そのリュックの中にエメラルドと手紙を入れてボタンで留めた。
「この鷹には向精順応の魔法がかけられている。まぁ一種の催眠術かな。エングラントの槍まで行って帰るように教えてあるよ」
「何十日も飛び続けるんですか?」
「そんな事は出来ないから、途中疲れれば休むしお腹が空けば食べる。その辺は自由なんだが、バオホの塔まではなるべく早く飛んでくれるんだ」
そう言うとシュタインは止まり木に腕を近付けて鷹を自分の腕に移動させた。
「それじゃよろしく頼むよ」
そう言うと腕を上に上げて鷹を放した。鷹はバサバサと翼を羽ばたかせてみるみると遠くに飛んで行った。
「さて、どうなる事やら」
バオホのプロトコルに則り、うまく事が運べばあの鷹はバオホが住むエングラントの槍にたどり着き、バオホはエメラルドと手紙を受け取る。そしてその返信をして鷹を戻す。その返信内容によってシュタインはバオホと会見できる。と言う算段だ。
ミカはやる事もなくひたすら魔法の勉強にいそしんだ。時々シュタインは様子を見に来てくれた。
「師匠。あの鷹は本当に戻ってくるのですか? もし迷ってしまったり逃げてしまってたらどうなるんですか?」
「向精順応の魔法をかけてあるからね。迷ったり逃げたりする事はないよ。戻らないとすればバオホが横取りした時くらいだけど、それは有り得ないね」
「何故ですか?」
「それをしてしまっては誰ももう鳥を送らないからさ。エメラルドだけでも高い贈り物なのに、その上鳥まで取られて梨の礫では信頼など生まれない」
「なるほど」
そしてそんな話をしてからひと月ほど経ってからの事だった。屋敷の鳥舎に例の鷹が戻ってきた。
シュタインはエメラルドの代わりに戻ってきた手紙を読んだ。
「師匠。何が書いてあったんですか?」
「どうやら小さな迷いの森にある誘惑の岩で会談だ」
「小さな迷いの森?」
「エングラントとポーレシアの国境付近にある森さ。エングラント側に広がるその森の中に誘惑の岩と呼ばれる大きな岩があるのさ。バオホが指定した日時まで時間がないな……明日発とう」
小さな迷いの森は、バオホが住むエングラントの槍からは少し離れている場所だ。
「明日ですか?」
「約定まで後十日しかないからね。急がないと」
「十日って! 鷹の翼でも半月ほど掛かってるのに、人の足で十日でいけるはずな……」
シュタインはミカの言葉を遮った。
「人の足では行かないよ。ささ、早く準備をして寝るんだ。明日は早いからね」
そう言うとシュタインは自室へ戻っていってしまった。
「人の足では行かない? 馬って事よね? ずっと馬を走らせるって事かしら?」
考えたが真意は分からない。仕方なく旅の準備をしてミカは寝た。
翌朝早くにミカは起きた。タイミングよくドアがノックされキルシュが入ってきた。
「お早うございます。お師匠様が正面玄関で待てと仰せです」
「朝食も取らずに出発するのね」
「そのようでございます」
ミカはおそらく馬上で食事になるなと思った。そして荷物を持って玄関に向かった。
ポルシュへ行った時のようにウェザーとリーがいるのかと思いきや、そこにいたのはロバ二頭だった。ミカは驚いた。使用人のサヌラッグがミカの荷物とシュタインの荷物をロバに付ける。
「やあ、ミカ。おはよう」
「あ、師匠。おはようございます。ロバで行くのですか?」
「山道だからね」
「山道?」
「そうさ。山に向かう」
ミカもこの辺りの地理には少し慣れてきていた。エングラントまでに確かに山道を超えるルートもあるが、お屋敷からエングラントに向かう西のルートは、暫く平原や森のはずだった。
「とにかく出発しよう」
シュタインはロバに跨った。ミカもそれに続いて跨った。
「では行ってくるよ。留守は頼んだよ」
「行ってらっしゃいませ。お気を付けて」
「行ってきます」
二人は屋敷を出て歩き始めた。シュタインは街道に出る西のコースではなく、東の道に進んだ。
屋敷の東は半日も歩けば確かに山だが、エングラントとは逆方向になる。
「師匠、どこに行くんですか?」
「エングラントにある小さな迷いの森だよ。誘惑の岩で待ち合わせだ」
「い、いえ。そうじゃなくて。エングラントは西になるのではないですか?」
「エングラントに行くにはロバの足では時間がかかり過ぎる。もっと早く行かないと間に合わないんだよ」
「なら馬で出れば良かったのではないですか?」
「馬でも間に合わない。もっと早く空を飛んで行くのが一番だよ」
「空を?」
シュタインはそれ以上言葉を繋がなかった。ミカは仕方なく黙ってシュタインについていった。
山道に入ってから何回か休憩を取った。シュタインはミカに地学についての雑談や魔法の勉強についての話などをしていた。
やがて山道から外れて獣道のような所を歩き始めた。
「師匠。どこに行こうとしてるのですか?」
「エングラントだよ」
「それは分かってます。こちらは方向が逆だし、獣道を行かれてるので」
「それはすぐ分かるよ。そこに洞窟があるだろう? その中に入ればすぐさ」
見るとすぐそこの山肌に大きな大穴が空いていた。シュタインはロバを降りて手綱を引き洞窟の中に入っていった。ミカもそれに続いた。
洞窟に入るのにランタンも点けずに入って行くのを不思議に思っていたら、洞窟はすぐに広いホール状の場所に出た。天井は崩れ落ちていて空が良く見えていた。
「どうやら散歩にでも出てるのかな?」
「誰がですか?」
「ムースさ。空の散歩が好きなんでね」
ミカは理解できずにいた。シュタインはロバをドーム内に放った。
「二人とも屋敷に帰れるならゆっくり帰ってくれ。帰り道が分からなければ自由にして良いよ」
ロバはその言葉を理解しているのかいないのか、暫くホール内をウロウロすると入ってきた入口の方へ出て行った。
「ムースは暫くすれば帰ってくる。のんびり待とう」
「ムースとは誰なんですか?」
「カッパードラゴンさ。昔から仲良くしてるんだ」
ミカは世界の生物についても勉強していたのでカッパードラゴンの事は理解できた。
ドラゴンは大きく分けるとカラーで呼ばれるものと素材で呼ばれるものに分かれる。例えばグリーンドラゴンやゴールドドラゴンなどである。カラーのドラゴンはどちらかと言うとわがままで、素材で呼ばれるドラゴンは友好的な事が多い。体の大きさで分類する事もある。その場合スモール、ラージ、ヒュージの三つに分かれる。知能がとても高く様々な言語を操る。魔法を唱える個体もいる。カッパーとは銅の事だ。
「どんなドラゴンなんですか?」
「性格は穏やかだけどあまり前に出る事は好まないかな」
シュタインはムースの事を色々話し始めた。その話がひと段落する頃、ひらけた天井部から翼を羽ばたかせる音が聞こえてきた。
「帰ってきたかな?」
羽音は力強く羽ばたきその風がミカ達の立っているところまで届いた。
ムースがゆっくりと降りてくる。降りながら二人を見つけて言った。
「そこにいるのはシュタインだな? 隣にいるのは見かけない人間だが」
ムースの高度が下がるにつれて吹き返しの風が強くなってきた。ミカは両腕を頭の前に持ってきて風とともに飛んでくる砂や枝などを避けた。
ムースが地面に降りると翼を畳んで改めて言った。
「久しぶりじゃないか。前は何だったかな?」
「ハリルベルクの沖の離島に出る海賊の討伐さ」
ムースは首を縦に振って納得した。
「そうだったそうだった。あの時も楽しかったぞ……所で隣の人間は?」
「僕の弟子でミカって言うんだよ」
「ミカです。よろしくお願いします」
「私はムースだ。人間の顔は皆同じに見えるが、あるいはミカは女かな?」
「は、はい」
「なるほど。で、今日はどうした? 昔話をする為に来たわけでもあるまい」
ムースは時間を惜しむように言った。シュタインもそれに合わせて言った。
「僕らを運んで欲しいんだ。エングラントにある小さな迷いの森まで」
「エングラント……もしやバオホと会合でもしようと言うのかな?」
「まあね。どのくらいで飛べる?」
ミカは驚いた。
「飛ぶ? 飛ぶって、まさか私達を乗せて飛んでもらうのですか?」
「そうだよ。ムースの翼なら他愛もない事さ」
ミカは驚きそして動揺した。ドラゴンを見る事も初めてだし、ポーレシアにドラゴンがいるなんて思いもよらなかったし、そして更にその背に乗って飛ぶなど想像もしていなかったからだ。
そんなミカの様子を知ってか知らずか、シュタインとムースは構わず話を続けた。
「そうだな、小さな迷いの森なら何度か行ったことがある。三日いや二日もあれば十分間に合うだろう」
「流石だね。やはり君の所へ来て正解だったよ」
ミカは更に驚いた。鷹の翼でさえ往復にひと月近くかかる距離を、たったの二日で飛ぶなんて。
「しかし、この依頼をする事で僕の方が二つ多く仕事を依頼する事になってしまうが」
ムースは物欲もなく金や宝石で仕事を受けるドラゴンではない。例の海賊討伐の際もシュタインが仕事を依頼した形になっている。その見返りは今の所支払ってはいない。そこに来て今また仕事を依頼すればシュタインの方ばかりがムースを頼っている事になる。
「ならばシュタインよ。カーテンカーテンの街に孤児院を作ってはくれまいか」
ムースはカーテンカーテンの街の近くにある火山の麓に温泉があるのを知っていて、たまにその温泉に入りに行っている。先日そこで温泉に入っていたらある子供と知り合ったという。
「滅多に人の来ない温泉で子供と出会って驚いたが、その子は特に怯えもしてなかったよ。で、その子が言うには、近年カーテンカーテンの街は飢饉と疫病に見舞われて、多くの人が亡くなったそうだ。その結果街に孤児が増えているらしい」
「なるほど、ムースらしい願いだね。カーテンカーテンの街に土地を用意して孤児院を作ってみるよ。と言うよりは、飢饉と疫病の原因を探り対処して欲しいって事だね?」
「さすがシュタインだ。この願いを聞いてもらえれば二つ分の仕事どころか三つ、いや五つ分は働ける」
ミカは訳も分からず二人の話を聞いていた。どうやらシュタインとムースは対等の関係にあり、このようにお互いにお互いの願いを聞いてあげる事で、お互いの仕事を片付けているようだ。
「では、早速行くかね?」
「ムースが良ければ」
「では行こう」
ムースは二人が背中に乗りやすいようにひれ伏すように背中を下げた。シュタインはムースの肘などを足がかりに、ムースの背中によじ登った。
そしてムースの背中の鱗を手がかりにして、身を乗り出してミカに手を差し伸べた。
「ささ、僕の手に捕まって」
ミカはドラゴンの背中によじ登った事などない。恐る恐るシュタインの手に捕まって、ムースの背中によじ登った。
背中は意外と広くしかし鱗で覆われているので硬かった。
「ドラゴンの鱗は人が二人よじ登ったくらいじゃ取れないから安心して良いよ」
「お二人さんとも準備はいいかね?」
「ああ、行ってくれ」
するとムースは翼を大きく広げて羽ばたいた。風が大きく渦巻いた。
背中がゆっくり持ち上がりフワッと浮いた。ミカはその不安定さに少し慌てた。
「ミカ。バランスが取りにくいなら僕のベルトに捕まってるといいよ」
ミカは言われるままにシュタインのベルトに捕まった。
ホールから出るとムースは一つ大きく羽ばたいて勢いよく加速した。スピードがみるみる上がっていく。と、同時に高度が徐々に上がった。
速度が上がるにつれて、ミカはだんだん息がしにくくなってくるのを感じた。それを知ってるかのようにシュタインが首を目一杯後ろに捻り大声で言った。
「ミカ! 息が出来ないのは風圧のせいだ! 焦らずにゆっくりと息を吸い込んでみるといいよ!」
ミカは言われるままに、ゆっくりと息を吸ってみた。すると肺に息が流れ込んできた。
「ありがとうございます!」
高度が上がって少し肌寒くなってきた。そして速度も増して体感温度はみるみる下がった。
眼下には森や草原が小さく広がっていて、かなり遠くまで見える。
その視線の先にお城とそこを囲むように街や城壁が見えた。
「師匠、もしかしたらあそこに見えるのはポルシュの城下町ですか?」
「そうだよ」
シュタインは少しだけ首を振り向けて言った。
この短時間でポルシュまで飛んできた事にミカは驚いた。ドラゴンとはこれ程の能力があるものなのか。
眼下の景色はどんどん流れていく。遠くに山脈が見える。おそらくエングラントとの国境付近の雪割り山脈だろう。
「さて、一休みするか」
ムースはそう言うと高度をぐんぐん下げていった。それと同時に少しずつ速度を落としていった。
辺りには街道も森も何もないだだっ広い草原だった。腰の高さほどはある生い茂った草原だ。シュタインはムースの背中から飛び降りて、ミカの方を振り向いて言った。
「疲れてないかい?」
「え? ここまであっという間だったので全然疲れてないです」
「今日は天気も良く気流も安定してるだろう」
ムースが空を見やりながら言った。
「こんなに早く飛べるなら国境まで今日中に辿り着けるのではないですか?」
「いや、今日は月待ちの滝まで行ったらそこで終わりだ」
続けてシュタインが言った。
「ムースは人目につくのを嫌うから、街や街道からなるべくそれたコースを飛ぶのさ。直線距離を最速で飛べば一日で迷いの森まで運んでくれるけど、それだと人間たちの目に晒されるからね」
「人に見られるのが嫌いなのですか?」
「昔は我らの鱗や内臓を狙って多くの人間たちが挑んできたものさ。それで死んでいった仲間もいる。今では我らドラゴン族も数が減り、そもそもその存在を信じない者たちも増えたのだ」
以前はドラゴンといえばその鱗は強力な防具として使われたり羽は魔法の材料に使われたりなど、多くの人間が狙っていたが、その為ドラゴンは数を減らしてしまった。
そして数が減ったがゆえにドラゴンの存在は幻のものとなり、見かけることは少なくなり、そしてやがて空想上の生き物と思う者も増えてきたのだった。
「私は本来人間を嫌うものではない。だが、中には邪悪な心を持つ者もいるだろう。だからなるべく接することを避けたいのだ」
「そうだったんですね」
ミカは、ムースとシュタインの出会いのきっかけは何だったのだろうと気に掛かったが言わなかった。
「ムース。そろそろ行くかい?」
「そうだな。じゃあ背中に乗ってくれ」
ムースが力強く翼を羽ばたかせると身体がフワリと宙に浮いた。そして再び翼を羽ばたかせた、今度はそのまま前に向かって進んでいった。
「月待ちの滝は、本来とは道が逸れるが夜を越すには程よい場所なのでな」
高い高度に達して暫く飛んでいたムースはそう言って首を後ろに振り向かせた。
「すぐに着く」
遠くには相変わらず雪割り山脈が見えていた。雪を被って白く輝いている。
ムースの言葉通り月待ちの滝にはすぐに着いた。もっとも、馬で来たらどれ程掛かるのか分からないが。
生茂る木々をバキバキ折りながらムースはとある滝の下に降りた。広い滝壺だ。ムースの巨大な体を横たえても余裕がある。
「今日はここで野宿だ。ムースがいるから野生の動物などに襲われる心配はないよ。でも夜は冷えるから火をおこそう」
シュタインはミカを連れて辺りに薪を拾いに行った。
「師匠。ここには人は来ないのですか?」
「全く来ないわけではないよ。道に迷った探検家などがひょっこり現れることだってあるだろう。何でだい?」
ミカはムースが悪い人間に見つかり倒されてしまうのではないかと不安に思っていた。
「そうだな。街道や街から遠く離れたこんな場所に、ひょっこり現れるような人間は相当腕が立つだろうね」
「もしそうなったら?」
「僕が追い払うよ」
そう言えば以前一緒になったドワーフの二人も言っていた。シュタインは通り名が付くほど強力な魔法探究者なのだ。
月影の魔法使い。
ミカは頭の中で通り名を思い出してみた。
シュタインは少し太めの薪を拾ってフーとため息をついた。
「この薪は大きすぎるかもしれないが、もうこれだけ集めればいいだろう。戻ろうか」
二人はムースのいる滝壺へと戻った。ムースは横たわって寝ていた。
「戻ったよ」
この辺りは滝の周りに木が生い茂っているものの、滝や川の上空は空が見えた。滝壺はちょっとした広場になっていた。大きな石や小さな石がゴロゴロしていて寝にくそうだ。
ムースはシュタインとミカが抱えてる薪の量を見て言った。
「人間とは不便なものだな。夏は汗をかき冬は暖を取らねばならない。我らも温度を感じるが、汗をかいたり寒さに震える事はない」
「ふふふ。僕ら人間には硬いウロコが付いてないからね」
シュタインとミカは石を積み上げて簡単なかまどを作った。枯葉や小さな木々を下に敷く。その上に徐々に大きめの薪を置いて行き、最後に太い薪を置いた。
火口箱から火種を取り出して枯れ草に移し、息を吹きかけると途端に火が燃え出した。
燃え出した火が薪に燃え移る頃、ムースが言った。
「明日はどこに行けば良いのかな?」
「小さな迷いの森に隣接する夢見の湖まで運んでくれ。その後湖で水浴びでもしててくれると助かる」
「もう冬だ。この寒い中水浴びをしろと言うのか?」
「暑さ寒さを感じないと言ってたじゃないか」
シュタインは笑いながら言った。
「いや、あの辺りでは一番人目に付かないんだよ。それとも会見が終わるまで空の散歩をしてるかい?」
「それも悪くないな。体が冷えてきたら空の散歩をして待とう」
ミカは二人の話がひと段落するのを待ってから聞いた。
「明日には小さな迷いの森に着くと言う事ですか?」
「うん、明日は小さな迷いの森に隣接するように横たわっている湖に行く予定だよ。誘惑の岩までは森を歩いて行く」
シュタインは持ってきたザックの中から保存食を取り出すと、枝に挿し焚き火で炙った。
同じものをいくつか作る。
「さて、陽が沈んだらとっとと寝るけど、それまでは自由だ。あまり遠くに行かなければ遊んでていいよ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜
黒城白爵
ファンタジー
異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。
魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。
そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。
自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。
後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。
そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。
自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる