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Eine Serenade des Vampirs編
欺かれた二人
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シュタインは前方から松明を持った集団がやって来るのを見た。すかさず茂みに身を潜める。それは儀式を終えた教団の信者達だった。
「まさかタエスがあんな形で逃げ出すとはな」
「ああ、栄誉ある生贄なのにな」
(タエスが逃げ出した?)
シュタインは信者達に見つからないように慎重に茂みの中を移動して行った。
広場に着くと誰もいなかった。篝火が焚かれていた跡はあるが今は消えていて月明かりだけだ。魔法陣も綺麗に消されている。
「師匠! 無事でしたか!」
反対側の林の中からミカが駆け寄ってきた。リグルは負傷しているザイルに肩を貸してゆっくり歩いてきていた。
「ミカ。無事だったか」
「師匠! 肩から血が!」
ミカはシュタインの肩から滲み出ている血を見て驚いて言った。
「大丈夫だ。それより邪魔が入ったのかい?」
「はい。何者か分からない男が二人、私達を邪魔しにきました」
シュタインは傍らの箱を開けてみた。メタセコイアの枝など転生の儀式に使われる物品が全て無くなっている。
(どうやら転生の儀式は阻止出来なかったか。と言う事は今頃タエスはヴァンパイアの始祖に……)
「信者達の話ではタエスは逃げたと言うんだ。恐らくそう見せたのだろうね」
「何故ですか?」
「教団の信者達にはタエスがヴァンパイアに転生する事は秘密なのかも知れない」
「よく分かりません」
「取り敢えずザイルの傷の手当てをしなければ。宿に戻ろう」
四人は一旦宿へ戻る事にした。
(教団はヴァンパイアを使って何をしようと言うのだ?)
宿に着くとミカがシュタインの、リグルがザイルの治療を始めた。
「師匠。この傷は明日僧侶にあってきちんと癒してもらって下さい」
「ああ、そうするよ……所で、タエスにはゼーレンと言う、恐らく恋人がいる」
タエスはゼーレンが側にいればそれで良いと言っていた。それはつまり恋人と一緒に暮らしたいと言う事だろう。
「考えたんだが、タエスはゼーレンもヴァンパイアにするつもりなのではないだろうか。そうすれば永遠に一緒にいられる」
「どうやってヴァンパイアにするんですか?」
「単純さ。ゼーレンの霊力を吸う事でゼーレンはヴァンパイア化する」
ザイルが聞いた。
「もしそうなったらどうなるんですか?」
「ヴァンパイアは生きていくために他の人間の霊力を吸わなければならない。ヴァンパイアがヴァンパイアを生み負の連鎖で人間は居なくなる」
「じゃあそれを食い止めないと!」
「ああ……」
シュタインは他の事も気になっていた。
(教団は一体何故ヴァンパイアを生み出したのだ? そして何故クベリウスが。そして祭壇の様式、そこに使われていた古代シャタール語。ランパーギルとの関係は何なんだ?)
シュタインが教団に侵入した時、見かけた祭壇の様式は邪神ランパーギルのそれだった。更に古代シャタール語はランパーギルが好んで使う。と言うよりランパーギルしか使わない。そして儀式の進行を守るために現れたのはランパーギルの下僕クベリウスだ。
(ガイスとランパーギルは関係があるのか?)
「ゼーレンと言う女性が今どこにいるのか探さなくては」
(マルトンの種は三房……ヴァンパイア一匹に一房必要だ)
「仕方ないが今夜は寝よう。少しでも傷を癒さなくては」
翌朝朝食を取ってそのままテーブルでその日の行動について話し合っていると、ローブを纏った女性が宿に入ってきた。いつも立っている教団の信者だ。
すると店の主人がその女性に話しかけた。
「ゼーレン。悪いがもう店には来ないでくれ」
シュタインやミカ達はハッとした。
(ゼーレン⁉︎)
シュタインは席を立ちその女性に駆け寄った。両肩を掴んで問いかける。
「君はゼーレンなのか?」
「は、はい。私はゼーレンです」
「タエスの恋人なのか?」
「は、はい」
(良かった、こんな簡単に見つかって。それに朝出歩いていると言う事はまだヴァンパイア化していない)
「ここでは何だからどこか人のいない……そうだ。君の家に行って話をしないか?」
「私の家ですか? あなたはどなたなのですか?」
シュタインは躊躇わず答えた。
「僕はシュタインさ。君らとは違う形で世界の平和を考えている」
「シュタイン⁉︎ 最近教団を嗅ぎ回っている男ですね」
「それもこれも世界平和の為さ。話を聞いてくれないか」
ゼーレンはシュタインを不審な目で見た。シュタインもそれに気付いたが敢えて何も言わなかった。するとミカが駆け寄ってきて言った。
「あなた達、とんでも無い事をしてくれたわね」
そう言われてゼーレンは怪訝な表情になった。
「とんでも無い事? どう言う事ですか?」
「だからそれはここでは話しにくい。君の家で話そう」
「……お茶は出しませんよ」
そう言うとゼーレンは出て行った。
「ミカ、リグル、ザイル。行こう」
シュタイン達もゼーレンの後を追った。
*
ゼーレンの家も小さかった。入ってすぐにリビングがあった。シュタインは構わず四人がけのテーブルに座った。ミカ達はその後ろに立った。ゼーレンもシュタインの正面に座った。
「タエスは今何処に?」
「分かりません。家にでもいるのではないですか?」
「昨夜逃げ出したのに?」
「…………」
「あれは逃げたように見せかけたんだろ?」
「見せかけた? 分かりません。それよりもとんでも無い事と言うのはどう言う……」
シュタインはその言葉を遮って言った。
「どこまで知ってるんだ?」
「……何をですか?」
「タエスは君と永遠に暮らすために今回の儀式を受けた。永遠にとは具体的にどう言う事か知っているのか?」
「…………」
ゼーレンは口を閉ざした。
「永遠に生きるのは別に構わない。そう言う愛の形があったっていいよ。しかしその方法は選ばなければならない」
「方法?」
「……ヴァンパイアの事を知ってるな?」
「し、知らないわ」
シュタインはタエスの説得に失敗した。ゼーレンの説得に失敗は許されない。
「ヴァンパイアの本質を知っているのか?」
「永遠に死なない生物よ」
「それは始祖だけだ。それにヴァンパイアは人の霊力を吸い続けないと活動できない事は知らないのか?」
「霊力?」
霊力とは簡単に言うと精神力の事で、人は多くの霊力を奪われると昏睡し、最悪死に至る。
「ヴァンパイアにされたものは更に別の人間を襲い新たなヴァンパイアを作る。そのヴァンパイアがさらに別の人間を襲い……負の連鎖が始まるんだ」
「そんな! ライス様はそんな事何も……」
「それだけじゃ無い。他のヴァンパイアによってヴァンパイアにされた者は心臓を破壊する事で殺す事ができる。つまりもし君がタエスに噛まれる事でヴァンパイアになろうと言うのなら、いつか現れる冒険者によって心臓を破壊されて死ぬんだ」
ゼーレンはその事実を初めて聞いて驚いていた。
「しかしタエスは始祖だ。心臓を破壊されても死ぬ事はない。タエスは君のいない世界で永遠に人間をヴァンパイアに変えて生き続けることになるんだ!」
「そ、そんな……」
「君らがしている事はそう言う事なんだ!」
ゼーレンは事の重大さを知りワナワナ震え始めた。両腕で体を抱いて震えている。
「タエスを、タエスを元に戻して!」
「……もう遅い。一度始祖になった者を人間に戻す方法は今の所見つかっていない」
「じゃあタエスは?」
「残念だが封印するしかない」
ヴァンパイアの始祖を殺す方法はこの時はまだ見つかっていない。だからヴァンパイアの始祖は封印して動けなくするしか方法はないのだ。
「そ、そんな……」
ミカはタエスとゼーレンの事を不憫に思った。何故このような事になってしまったのだろう。
ミカはゼーレンに聞いてみた。
「何でタエスさんはヴァンパイアになろうと思ったのですか?」
ゼーレンは泣きながら話した。
「タエスと私はお互いに愛し合っていたのですが、それぞれの両親は私達の関係を認めなかったのです」
そこでタエスとゼーレンは教団のライスに相談した。ライスはガイスにその話を相談してみると言った。
「そしてガイス様は、二人が永遠の命になれば永遠に結ばれるとおっしゃられたのです」
「その方法がヴァンパイア……」
ミカは酷い話だと思った。しかしタエスもゼーレンも、ヴァンパイアがそのような恐ろしい存在だとは聞かされていなかった。ただ、永遠に生きられるとだけ聞いていたのだった。
「ガイス……一体何者なんだ。ゼーレン。君はランパーギルを知っているか?」
「ランパーギル? 何ですか、それは?」
(やはり知らないか……何か関わりがある筈なのに)
「師匠。ランパーギルとは一体何なんですか?」
「シュバルツ家には伝わっていないのかな? そもそもミカ。給仕契約のきっかけになったのはランパーギルなんだよ」
元をただせばミカはシュタインと何代か前のシュバルツ家の当主が結んだ給仕契約によってシュタインの家に連れてこられたのだった。
「え? 初耳です」
「まあその話はまた余裕のある時にするとして、ランパーギルは魔界に住む超生物。邪神さ」
「そのランパーギルが今回の件と何か関係が?」
「それが分からないんだ。明らかに関連性があるのに誰も知らない。これは謎だ」
ザイルが呑気に聞いた。
「ランパーギルが絡んでるとしたらどうなんですか?」
「全て辻褄が合うのさ。そもそも人間を始祖にしようだなんて提案、普通の神なら言わない。魔界の住人が言いそうな事だ。それに祭壇の様式や使われている言語、全てランパーギルのものだ」
何故ガイスがランパーギルを模しているのか分からなかった。
「まあいい。それで、今タエスはどこにいるんだい?」
「予定では教団本部の第一礼拝堂に寝ている事になっています」
(封印するなら日が出てる今が時か……しかし)
ヴァンパイアは太陽の光を浴びるとその部分が燃えてしまう。なので日が出ている間は屋内にいる。特に眠る事で地霊を吸い活動するエネルギーを蓄える。日が出ている今活動が制限されるので封印をするには絶好のタイミングなのだ。
しかしシュタインは教団に目をつけられていて中に入る事が出来ない。
(怪我をしている左肩も気になるが……)
シュタインは右手で左肩をそっと押さえて言った。
「ゼーレンに協力してもらうか」
シュタインは皆んなにここで待つように伝えると自分はマルトンの種を取りに宿に戻るのだった。
「まさかタエスがあんな形で逃げ出すとはな」
「ああ、栄誉ある生贄なのにな」
(タエスが逃げ出した?)
シュタインは信者達に見つからないように慎重に茂みの中を移動して行った。
広場に着くと誰もいなかった。篝火が焚かれていた跡はあるが今は消えていて月明かりだけだ。魔法陣も綺麗に消されている。
「師匠! 無事でしたか!」
反対側の林の中からミカが駆け寄ってきた。リグルは負傷しているザイルに肩を貸してゆっくり歩いてきていた。
「ミカ。無事だったか」
「師匠! 肩から血が!」
ミカはシュタインの肩から滲み出ている血を見て驚いて言った。
「大丈夫だ。それより邪魔が入ったのかい?」
「はい。何者か分からない男が二人、私達を邪魔しにきました」
シュタインは傍らの箱を開けてみた。メタセコイアの枝など転生の儀式に使われる物品が全て無くなっている。
(どうやら転生の儀式は阻止出来なかったか。と言う事は今頃タエスはヴァンパイアの始祖に……)
「信者達の話ではタエスは逃げたと言うんだ。恐らくそう見せたのだろうね」
「何故ですか?」
「教団の信者達にはタエスがヴァンパイアに転生する事は秘密なのかも知れない」
「よく分かりません」
「取り敢えずザイルの傷の手当てをしなければ。宿に戻ろう」
四人は一旦宿へ戻る事にした。
(教団はヴァンパイアを使って何をしようと言うのだ?)
宿に着くとミカがシュタインの、リグルがザイルの治療を始めた。
「師匠。この傷は明日僧侶にあってきちんと癒してもらって下さい」
「ああ、そうするよ……所で、タエスにはゼーレンと言う、恐らく恋人がいる」
タエスはゼーレンが側にいればそれで良いと言っていた。それはつまり恋人と一緒に暮らしたいと言う事だろう。
「考えたんだが、タエスはゼーレンもヴァンパイアにするつもりなのではないだろうか。そうすれば永遠に一緒にいられる」
「どうやってヴァンパイアにするんですか?」
「単純さ。ゼーレンの霊力を吸う事でゼーレンはヴァンパイア化する」
ザイルが聞いた。
「もしそうなったらどうなるんですか?」
「ヴァンパイアは生きていくために他の人間の霊力を吸わなければならない。ヴァンパイアがヴァンパイアを生み負の連鎖で人間は居なくなる」
「じゃあそれを食い止めないと!」
「ああ……」
シュタインは他の事も気になっていた。
(教団は一体何故ヴァンパイアを生み出したのだ? そして何故クベリウスが。そして祭壇の様式、そこに使われていた古代シャタール語。ランパーギルとの関係は何なんだ?)
シュタインが教団に侵入した時、見かけた祭壇の様式は邪神ランパーギルのそれだった。更に古代シャタール語はランパーギルが好んで使う。と言うよりランパーギルしか使わない。そして儀式の進行を守るために現れたのはランパーギルの下僕クベリウスだ。
(ガイスとランパーギルは関係があるのか?)
「ゼーレンと言う女性が今どこにいるのか探さなくては」
(マルトンの種は三房……ヴァンパイア一匹に一房必要だ)
「仕方ないが今夜は寝よう。少しでも傷を癒さなくては」
翌朝朝食を取ってそのままテーブルでその日の行動について話し合っていると、ローブを纏った女性が宿に入ってきた。いつも立っている教団の信者だ。
すると店の主人がその女性に話しかけた。
「ゼーレン。悪いがもう店には来ないでくれ」
シュタインやミカ達はハッとした。
(ゼーレン⁉︎)
シュタインは席を立ちその女性に駆け寄った。両肩を掴んで問いかける。
「君はゼーレンなのか?」
「は、はい。私はゼーレンです」
「タエスの恋人なのか?」
「は、はい」
(良かった、こんな簡単に見つかって。それに朝出歩いていると言う事はまだヴァンパイア化していない)
「ここでは何だからどこか人のいない……そうだ。君の家に行って話をしないか?」
「私の家ですか? あなたはどなたなのですか?」
シュタインは躊躇わず答えた。
「僕はシュタインさ。君らとは違う形で世界の平和を考えている」
「シュタイン⁉︎ 最近教団を嗅ぎ回っている男ですね」
「それもこれも世界平和の為さ。話を聞いてくれないか」
ゼーレンはシュタインを不審な目で見た。シュタインもそれに気付いたが敢えて何も言わなかった。するとミカが駆け寄ってきて言った。
「あなた達、とんでも無い事をしてくれたわね」
そう言われてゼーレンは怪訝な表情になった。
「とんでも無い事? どう言う事ですか?」
「だからそれはここでは話しにくい。君の家で話そう」
「……お茶は出しませんよ」
そう言うとゼーレンは出て行った。
「ミカ、リグル、ザイル。行こう」
シュタイン達もゼーレンの後を追った。
*
ゼーレンの家も小さかった。入ってすぐにリビングがあった。シュタインは構わず四人がけのテーブルに座った。ミカ達はその後ろに立った。ゼーレンもシュタインの正面に座った。
「タエスは今何処に?」
「分かりません。家にでもいるのではないですか?」
「昨夜逃げ出したのに?」
「…………」
「あれは逃げたように見せかけたんだろ?」
「見せかけた? 分かりません。それよりもとんでも無い事と言うのはどう言う……」
シュタインはその言葉を遮って言った。
「どこまで知ってるんだ?」
「……何をですか?」
「タエスは君と永遠に暮らすために今回の儀式を受けた。永遠にとは具体的にどう言う事か知っているのか?」
「…………」
ゼーレンは口を閉ざした。
「永遠に生きるのは別に構わない。そう言う愛の形があったっていいよ。しかしその方法は選ばなければならない」
「方法?」
「……ヴァンパイアの事を知ってるな?」
「し、知らないわ」
シュタインはタエスの説得に失敗した。ゼーレンの説得に失敗は許されない。
「ヴァンパイアの本質を知っているのか?」
「永遠に死なない生物よ」
「それは始祖だけだ。それにヴァンパイアは人の霊力を吸い続けないと活動できない事は知らないのか?」
「霊力?」
霊力とは簡単に言うと精神力の事で、人は多くの霊力を奪われると昏睡し、最悪死に至る。
「ヴァンパイアにされたものは更に別の人間を襲い新たなヴァンパイアを作る。そのヴァンパイアがさらに別の人間を襲い……負の連鎖が始まるんだ」
「そんな! ライス様はそんな事何も……」
「それだけじゃ無い。他のヴァンパイアによってヴァンパイアにされた者は心臓を破壊する事で殺す事ができる。つまりもし君がタエスに噛まれる事でヴァンパイアになろうと言うのなら、いつか現れる冒険者によって心臓を破壊されて死ぬんだ」
ゼーレンはその事実を初めて聞いて驚いていた。
「しかしタエスは始祖だ。心臓を破壊されても死ぬ事はない。タエスは君のいない世界で永遠に人間をヴァンパイアに変えて生き続けることになるんだ!」
「そ、そんな……」
「君らがしている事はそう言う事なんだ!」
ゼーレンは事の重大さを知りワナワナ震え始めた。両腕で体を抱いて震えている。
「タエスを、タエスを元に戻して!」
「……もう遅い。一度始祖になった者を人間に戻す方法は今の所見つかっていない」
「じゃあタエスは?」
「残念だが封印するしかない」
ヴァンパイアの始祖を殺す方法はこの時はまだ見つかっていない。だからヴァンパイアの始祖は封印して動けなくするしか方法はないのだ。
「そ、そんな……」
ミカはタエスとゼーレンの事を不憫に思った。何故このような事になってしまったのだろう。
ミカはゼーレンに聞いてみた。
「何でタエスさんはヴァンパイアになろうと思ったのですか?」
ゼーレンは泣きながら話した。
「タエスと私はお互いに愛し合っていたのですが、それぞれの両親は私達の関係を認めなかったのです」
そこでタエスとゼーレンは教団のライスに相談した。ライスはガイスにその話を相談してみると言った。
「そしてガイス様は、二人が永遠の命になれば永遠に結ばれるとおっしゃられたのです」
「その方法がヴァンパイア……」
ミカは酷い話だと思った。しかしタエスもゼーレンも、ヴァンパイアがそのような恐ろしい存在だとは聞かされていなかった。ただ、永遠に生きられるとだけ聞いていたのだった。
「ガイス……一体何者なんだ。ゼーレン。君はランパーギルを知っているか?」
「ランパーギル? 何ですか、それは?」
(やはり知らないか……何か関わりがある筈なのに)
「師匠。ランパーギルとは一体何なんですか?」
「シュバルツ家には伝わっていないのかな? そもそもミカ。給仕契約のきっかけになったのはランパーギルなんだよ」
元をただせばミカはシュタインと何代か前のシュバルツ家の当主が結んだ給仕契約によってシュタインの家に連れてこられたのだった。
「え? 初耳です」
「まあその話はまた余裕のある時にするとして、ランパーギルは魔界に住む超生物。邪神さ」
「そのランパーギルが今回の件と何か関係が?」
「それが分からないんだ。明らかに関連性があるのに誰も知らない。これは謎だ」
ザイルが呑気に聞いた。
「ランパーギルが絡んでるとしたらどうなんですか?」
「全て辻褄が合うのさ。そもそも人間を始祖にしようだなんて提案、普通の神なら言わない。魔界の住人が言いそうな事だ。それに祭壇の様式や使われている言語、全てランパーギルのものだ」
何故ガイスがランパーギルを模しているのか分からなかった。
「まあいい。それで、今タエスはどこにいるんだい?」
「予定では教団本部の第一礼拝堂に寝ている事になっています」
(封印するなら日が出てる今が時か……しかし)
ヴァンパイアは太陽の光を浴びるとその部分が燃えてしまう。なので日が出ている間は屋内にいる。特に眠る事で地霊を吸い活動するエネルギーを蓄える。日が出ている今活動が制限されるので封印をするには絶好のタイミングなのだ。
しかしシュタインは教団に目をつけられていて中に入る事が出来ない。
(怪我をしている左肩も気になるが……)
シュタインは右手で左肩をそっと押さえて言った。
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