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消えたクマちゃん
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その村は森に面した小さな村です。子供たちがたくさんいて、いつもみんなで遊んでいました。
ハルちゃんはクマのぬいぐるみを持ってきて、みんなとおままごとをして遊びました。ハルちゃんはその日クマのぬいぐるみと一緒に寝ました。
次の日の朝のことです。ハルちゃんが目覚めるとクマのぬいぐるみがなくなっていました。
「ママ! ママ! 私のクーちゃん知らない?」
「知らないわよ」
ハルちゃんは変だなと思いました。
その日はカノンちゃんがクマのぬいぐるみを持ってきました。そしてみんなで遊びました。
そしてまた次の日。カノンちゃんが泣きながらみんなの所にやってきました。
カノンちゃんが泣いているのでケントくんが聞きました。
「カノンちゃん、何で泣いてるの?」
「昨日みんなで遊んだクマのぬいぐるみが夜のうちに無くなってしまったの」
それを聞いたハルちゃんが言いました。
「私のクマちゃんもいなくなってしまったの」
その次の日も、またその次の日も、誰かのクマのぬいぐるみが無くなるのでした。
ケントくんは、これは何かおかしいと感じました。クマのぬいぐるみばかり無くなるのは何か原因があるんだと感じました。
「僕が原因を突き止めてやる」
さっそくケントくんはクマのぬいぐるみが消えた家に行って、その家の人一人ひとりに事情を聞いて回りました。
ハルちゃんのお家で何かないかと探していた時です。ケントくんは動物の毛のような物を見つけました。
「これは何の毛だろう?」
そしてカノンちゃんの家でも同じ物と思われる毛が見つかったのです。
「何か獣が家に入って来たのかな?」
しかしそれ以上有力な情報は得られませんでした。
ケントくんが考えているとミナちゃんがやってきました。手にクマのぬいぐるみを持っています。
「私のベーちゃんもいなくなっちゃうの?」
「ぬいぐるみたちはどこかへ連れ去られてるのかも知れない」
「じゃあどうすれば良いの?」
ケントくんは考えます。
「そうだ! オトリ捜査だ」
ケントくんはその日ミナちゃんの家に泊まらせてもらうことにしました。そして一晩中見張ってることにしたのです。
「ミナちゃんはいつも通り寝てくれていいよ、僕が眠らずに見張ってるからね」
「うん」
ミナちゃんのお父さんも協力してくれるそうです。ミナちゃんのお父さんは家の外に出て、ミナちゃんの部屋が見える茂みに隠れて見張ってくれています。
ケントくんはミナちゃんの部屋の入り口が見える廊下に段ボール箱に入って隠れて見ていました。
夜が更けてきました。ケントくんはだんだん眠くなってきました。
その時ミナちゃんの部屋の中からお父さんの声が聞こえました。
「捕まえたぞ! 犯人だ!」
ケントくんは飛び起きました。そしてミナちゃんの部屋の中に入ってみました。
するとお父さんが何かを捕まえていました。
焦げ茶色で毛むくじゃら、まん丸の体をしています。
「これは! 妖怪クマゴローじゃないか!」
お父さんがそう言いました。
「きっとクマゴローがみんなのクマのぬいぐるみを盗んでたんだな!」
ケントくんは不思議に思いました。
「妖怪クマゴローと言えば心優しい大人しい妖怪で、森の中の平和を守っている心強い妖怪だよ。そんなクマゴローが何でドロボーみたいなことを?」
ミナちゃんも言いました。
「何か訳があるんじゃないの? 話してみて」
クマゴローは泣き出しました。みんな驚きました。
「実は子供を探してるんだゴロ」
一通り泣いた後、クマゴローはゆっくりと話し始めました。
「もう何日も子供のクマタローがウチに帰ってこないんだゴロ。だから村に来てるのかと思って探しに来たゴロよ」
クマゴローはいなくなった子供のクマタローを探しに村に来て、ぬいぐるみをクマタローと間違えて連れて帰ってしまっていたのです。
「それはきっと心配だろうね」
ミナちゃんのお父さんが言いました。ケントくんはそんなクマゴローの心を考えて言いました。
「よし! 僕が一緒にクマタローを探してあげるよ!」
「本当ゴロか? それは嬉しいゴロ!」
「今日は夜遅いから明日の朝から探し始めよう」
「じゃあ、明日朝ごはんを食べたら森にあるフツフツの泉に来て欲しいゴロ」
ケントくんとクマゴローは約束しました。
翌朝ケントくんはご飯を食べ終わると虫眼鏡を持って森の中のフツフツの泉に行きました。
クマゴローは既にそこにいました。
「早速手がかりを探そう! まずはクマゴローの家に案内してよ」
クマゴローはケントくんを家に案内しました。
「子供のクマタローがいなくなって、一緒に家から消えたものがあるゴロ」
「それは何?」
「物差しと包帯、牛乳とスープ用のボウルだゴロ」
「物差しと包帯、牛乳とスープ用のボウル……」
ケントくんは繰り返して言いました。
「でもそれだけじゃ分からないや。何か他に手がかりがないか森の中を探してみよう」
ケントくんとクマゴローは森の中を当てずっぽうに探し始めました。
森でお猿さんに出会った時、クマゴローはお猿さんにクマタローの事について聞きました。クマゴローは妖怪なので動物の言葉も分かるのです。
「クマタローは森の外れの崖に行ったらしいゴロ」
二人は崖の上に行ってみました。そして辺りをくまなく探してみました。
ケントくんは辺りに動物の足跡がたくさん残っている事に気がつきました。
「この足跡は何だろう?」
「これは、子鹿の足跡だゴロ。あ、クマタローの足跡もあるゴロよ」
「きっとクマタローはここで子鹿と遊んでいたに違いない」
クマゴローは注意深くクマタローと子鹿の足跡を辿りました。
「子鹿の足跡は崖に向かって行ってそのまま消えているゴロよ。クマタローの足跡は向こうに続いて行っているゴロよ」
「クマタローは崖を降りる道の方に向かったのか」
ケントくんは考えました。でも分かりません。
「とにかくクマタローの足跡を追ってみよう」
二人は崖を降りる道を伝い崖を降りて行きました。そして崖の下に出ると再び辺りを探し始めました。
「ここに何かシミのようなものがあるなぁ」
クマゴローはシミをよく見てみました。
「これは……動物の血のようだゴロ」
そしてその血の跡は森の奥の方に続いていました。
「もしかするとこれは!?」
ケントくんはある推測をしましたが、まだハッキリとはしないので口ごもりました。
「この血が続く方には大きな洞窟があるゴロよ?」
「洞窟?」
ケントくんは家から無くなったものをもう一度思い出しました。
「物差しと包帯、牛乳にボウル……そして崖の上の足跡と血の跡、その先に洞窟か……」
「何か分かったゴロか?」
「うん、分かったよ! クマタローはその洞窟に子鹿と一緒にいるんだ!」
「本当ゴロか?」
早速二人は洞窟に向かいました。暫く進むと大きな洞窟の入り口がありました。
クマゴローは洞窟の入り口で大声で叫びました。
「お~い! クマタローや~い! いたら返事するゴロ~!」
「ここタロ~! ここにいるタロ~!」
なんと、洞窟の中から声が聞こえました。二人は急いで中に入って行きました。
入り口から少し奥に入った所にクマタローがいました。そしてそのそばには足に包帯を巻いた子鹿がいたのです。
「やっぱり! クマタローと子鹿が遊んでいるうちに、子鹿が崖から落ちてしまったんだね」
「そうなのゴロか?」
「そうタロ」
「そして子鹿が足を折ってしまったんだ。だから物差しを添え木にして包帯で巻いてあげたんだね?」
「そうなのゴロか?」
「そうタロ」
「そして子鹿に元気になってもらうために、雨が防げるこの洞窟に来て牛乳をボウルに入れてあげたんだね?」
「そうなのゴロか?」
「そうタロ」
ケントくんの推理は見事に当たりました。
「でもなんでウチに帰らずにここにいたゴロか? 心配したゴロよ?」
「きっと子鹿が寂しくて泣いたんじゃないかな?」
「そうなんだタロ。子鹿のミーが寂しくて心細くて泣くから一人にしておけなかったんだタロ」
「まったく心配をかける子だ」
「まぁまぁ。悪いことをしてたんじゃないから大目に見てあげてよ、クマゴロー」
クマゴローはやれやれと言う顔をしました。
「でもこれからはこういう時は近くの動物たちに助けを求めるゴロよ」
「分かったタロよ」
「この子鹿のミーの親はワシが探してくるゴロ。すぐに見つけて来るからみんなはここで待つゴロよ」
そういうとクマゴローは疾風のようにビューンと森の中に消えて行きました。
「クマゴローにはまだ聞かなきゃいけない事があるのに」
「それは何だタロ?」
ケントくんはここ数日クマのぬいぐるみがなくなっていた事、それはクマゴローの仕業だった事をクマタローに話しました。
「みんなのぬいぐるみはどこに行ったのかなぁ?」
「そんなの簡単タロ。お父さんは大切なものは子宝山の中腹にあるホコラにしまっているタロよ」
「そうなんだね!」
二人は色々な話をしました。ケントくんは村の事、クマタローは森の事。
「森の中には色々な事があるんだね。動物たちや泉、洞窟。ちょっと危険だけど崖の上の遊び場」
「崖の上にはもう行かないタロよ。落ちたらミーのように大怪我してしまうタロ」
「そうだね」
そんな話をしているうちにクマゴローが親鹿を連れて戻ってきました。
「ほら、あそこで座ってるゴロよ」
クマゴローは親鹿に言いました。
親鹿はミーの姿を見ると駆け寄って顔をペロペロ舐めました。
「鹿の親子も良かったね」
「あとは鹿の親子に任せて大丈夫だゴロ。ワシも毎日様子を見に来るゴロよ」
「ねーねー、お父さん。ケントくんがみんなのぬいぐるみはどこへやったのか心配してるタロよ」
「おお、あれか。あれなら子宝山のホコラにおいてあるゴロよ」
「やっぱりそうだったタロ!」
ケントくんとクマタローは、顔を見合わせて笑いました。
クマゴローとクマタローはケントくんと3人で村へ帰りました。そして子供達にぬいぐるみを返しながら謝って回りました。みんな事情を知って許してくれました。そして、たまには村に遊びにおいでと言ってくれました。
「みんなありがとうゴロ」
「ありがとうタロ」
「ケントくんもありがとうゴロ。一緒にクマタローを探してくれて助かったゴロ」
「また困ったことがあったら相談してね」
クマゴローとクマタローはお辞儀をすると疾風のように森の中に消えて行きました。
それから時々クマタローは村にやってきてはみんなと遊びました。
ハルちゃんはクマのぬいぐるみを持ってきて、みんなとおままごとをして遊びました。ハルちゃんはその日クマのぬいぐるみと一緒に寝ました。
次の日の朝のことです。ハルちゃんが目覚めるとクマのぬいぐるみがなくなっていました。
「ママ! ママ! 私のクーちゃん知らない?」
「知らないわよ」
ハルちゃんは変だなと思いました。
その日はカノンちゃんがクマのぬいぐるみを持ってきました。そしてみんなで遊びました。
そしてまた次の日。カノンちゃんが泣きながらみんなの所にやってきました。
カノンちゃんが泣いているのでケントくんが聞きました。
「カノンちゃん、何で泣いてるの?」
「昨日みんなで遊んだクマのぬいぐるみが夜のうちに無くなってしまったの」
それを聞いたハルちゃんが言いました。
「私のクマちゃんもいなくなってしまったの」
その次の日も、またその次の日も、誰かのクマのぬいぐるみが無くなるのでした。
ケントくんは、これは何かおかしいと感じました。クマのぬいぐるみばかり無くなるのは何か原因があるんだと感じました。
「僕が原因を突き止めてやる」
さっそくケントくんはクマのぬいぐるみが消えた家に行って、その家の人一人ひとりに事情を聞いて回りました。
ハルちゃんのお家で何かないかと探していた時です。ケントくんは動物の毛のような物を見つけました。
「これは何の毛だろう?」
そしてカノンちゃんの家でも同じ物と思われる毛が見つかったのです。
「何か獣が家に入って来たのかな?」
しかしそれ以上有力な情報は得られませんでした。
ケントくんが考えているとミナちゃんがやってきました。手にクマのぬいぐるみを持っています。
「私のベーちゃんもいなくなっちゃうの?」
「ぬいぐるみたちはどこかへ連れ去られてるのかも知れない」
「じゃあどうすれば良いの?」
ケントくんは考えます。
「そうだ! オトリ捜査だ」
ケントくんはその日ミナちゃんの家に泊まらせてもらうことにしました。そして一晩中見張ってることにしたのです。
「ミナちゃんはいつも通り寝てくれていいよ、僕が眠らずに見張ってるからね」
「うん」
ミナちゃんのお父さんも協力してくれるそうです。ミナちゃんのお父さんは家の外に出て、ミナちゃんの部屋が見える茂みに隠れて見張ってくれています。
ケントくんはミナちゃんの部屋の入り口が見える廊下に段ボール箱に入って隠れて見ていました。
夜が更けてきました。ケントくんはだんだん眠くなってきました。
その時ミナちゃんの部屋の中からお父さんの声が聞こえました。
「捕まえたぞ! 犯人だ!」
ケントくんは飛び起きました。そしてミナちゃんの部屋の中に入ってみました。
するとお父さんが何かを捕まえていました。
焦げ茶色で毛むくじゃら、まん丸の体をしています。
「これは! 妖怪クマゴローじゃないか!」
お父さんがそう言いました。
「きっとクマゴローがみんなのクマのぬいぐるみを盗んでたんだな!」
ケントくんは不思議に思いました。
「妖怪クマゴローと言えば心優しい大人しい妖怪で、森の中の平和を守っている心強い妖怪だよ。そんなクマゴローが何でドロボーみたいなことを?」
ミナちゃんも言いました。
「何か訳があるんじゃないの? 話してみて」
クマゴローは泣き出しました。みんな驚きました。
「実は子供を探してるんだゴロ」
一通り泣いた後、クマゴローはゆっくりと話し始めました。
「もう何日も子供のクマタローがウチに帰ってこないんだゴロ。だから村に来てるのかと思って探しに来たゴロよ」
クマゴローはいなくなった子供のクマタローを探しに村に来て、ぬいぐるみをクマタローと間違えて連れて帰ってしまっていたのです。
「それはきっと心配だろうね」
ミナちゃんのお父さんが言いました。ケントくんはそんなクマゴローの心を考えて言いました。
「よし! 僕が一緒にクマタローを探してあげるよ!」
「本当ゴロか? それは嬉しいゴロ!」
「今日は夜遅いから明日の朝から探し始めよう」
「じゃあ、明日朝ごはんを食べたら森にあるフツフツの泉に来て欲しいゴロ」
ケントくんとクマゴローは約束しました。
翌朝ケントくんはご飯を食べ終わると虫眼鏡を持って森の中のフツフツの泉に行きました。
クマゴローは既にそこにいました。
「早速手がかりを探そう! まずはクマゴローの家に案内してよ」
クマゴローはケントくんを家に案内しました。
「子供のクマタローがいなくなって、一緒に家から消えたものがあるゴロ」
「それは何?」
「物差しと包帯、牛乳とスープ用のボウルだゴロ」
「物差しと包帯、牛乳とスープ用のボウル……」
ケントくんは繰り返して言いました。
「でもそれだけじゃ分からないや。何か他に手がかりがないか森の中を探してみよう」
ケントくんとクマゴローは森の中を当てずっぽうに探し始めました。
森でお猿さんに出会った時、クマゴローはお猿さんにクマタローの事について聞きました。クマゴローは妖怪なので動物の言葉も分かるのです。
「クマタローは森の外れの崖に行ったらしいゴロ」
二人は崖の上に行ってみました。そして辺りをくまなく探してみました。
ケントくんは辺りに動物の足跡がたくさん残っている事に気がつきました。
「この足跡は何だろう?」
「これは、子鹿の足跡だゴロ。あ、クマタローの足跡もあるゴロよ」
「きっとクマタローはここで子鹿と遊んでいたに違いない」
クマゴローは注意深くクマタローと子鹿の足跡を辿りました。
「子鹿の足跡は崖に向かって行ってそのまま消えているゴロよ。クマタローの足跡は向こうに続いて行っているゴロよ」
「クマタローは崖を降りる道の方に向かったのか」
ケントくんは考えました。でも分かりません。
「とにかくクマタローの足跡を追ってみよう」
二人は崖を降りる道を伝い崖を降りて行きました。そして崖の下に出ると再び辺りを探し始めました。
「ここに何かシミのようなものがあるなぁ」
クマゴローはシミをよく見てみました。
「これは……動物の血のようだゴロ」
そしてその血の跡は森の奥の方に続いていました。
「もしかするとこれは!?」
ケントくんはある推測をしましたが、まだハッキリとはしないので口ごもりました。
「この血が続く方には大きな洞窟があるゴロよ?」
「洞窟?」
ケントくんは家から無くなったものをもう一度思い出しました。
「物差しと包帯、牛乳にボウル……そして崖の上の足跡と血の跡、その先に洞窟か……」
「何か分かったゴロか?」
「うん、分かったよ! クマタローはその洞窟に子鹿と一緒にいるんだ!」
「本当ゴロか?」
早速二人は洞窟に向かいました。暫く進むと大きな洞窟の入り口がありました。
クマゴローは洞窟の入り口で大声で叫びました。
「お~い! クマタローや~い! いたら返事するゴロ~!」
「ここタロ~! ここにいるタロ~!」
なんと、洞窟の中から声が聞こえました。二人は急いで中に入って行きました。
入り口から少し奥に入った所にクマタローがいました。そしてそのそばには足に包帯を巻いた子鹿がいたのです。
「やっぱり! クマタローと子鹿が遊んでいるうちに、子鹿が崖から落ちてしまったんだね」
「そうなのゴロか?」
「そうタロ」
「そして子鹿が足を折ってしまったんだ。だから物差しを添え木にして包帯で巻いてあげたんだね?」
「そうなのゴロか?」
「そうタロ」
「そして子鹿に元気になってもらうために、雨が防げるこの洞窟に来て牛乳をボウルに入れてあげたんだね?」
「そうなのゴロか?」
「そうタロ」
ケントくんの推理は見事に当たりました。
「でもなんでウチに帰らずにここにいたゴロか? 心配したゴロよ?」
「きっと子鹿が寂しくて泣いたんじゃないかな?」
「そうなんだタロ。子鹿のミーが寂しくて心細くて泣くから一人にしておけなかったんだタロ」
「まったく心配をかける子だ」
「まぁまぁ。悪いことをしてたんじゃないから大目に見てあげてよ、クマゴロー」
クマゴローはやれやれと言う顔をしました。
「でもこれからはこういう時は近くの動物たちに助けを求めるゴロよ」
「分かったタロよ」
「この子鹿のミーの親はワシが探してくるゴロ。すぐに見つけて来るからみんなはここで待つゴロよ」
そういうとクマゴローは疾風のようにビューンと森の中に消えて行きました。
「クマゴローにはまだ聞かなきゃいけない事があるのに」
「それは何だタロ?」
ケントくんはここ数日クマのぬいぐるみがなくなっていた事、それはクマゴローの仕業だった事をクマタローに話しました。
「みんなのぬいぐるみはどこに行ったのかなぁ?」
「そんなの簡単タロ。お父さんは大切なものは子宝山の中腹にあるホコラにしまっているタロよ」
「そうなんだね!」
二人は色々な話をしました。ケントくんは村の事、クマタローは森の事。
「森の中には色々な事があるんだね。動物たちや泉、洞窟。ちょっと危険だけど崖の上の遊び場」
「崖の上にはもう行かないタロよ。落ちたらミーのように大怪我してしまうタロ」
「そうだね」
そんな話をしているうちにクマゴローが親鹿を連れて戻ってきました。
「ほら、あそこで座ってるゴロよ」
クマゴローは親鹿に言いました。
親鹿はミーの姿を見ると駆け寄って顔をペロペロ舐めました。
「鹿の親子も良かったね」
「あとは鹿の親子に任せて大丈夫だゴロ。ワシも毎日様子を見に来るゴロよ」
「ねーねー、お父さん。ケントくんがみんなのぬいぐるみはどこへやったのか心配してるタロよ」
「おお、あれか。あれなら子宝山のホコラにおいてあるゴロよ」
「やっぱりそうだったタロ!」
ケントくんとクマタローは、顔を見合わせて笑いました。
クマゴローとクマタローはケントくんと3人で村へ帰りました。そして子供達にぬいぐるみを返しながら謝って回りました。みんな事情を知って許してくれました。そして、たまには村に遊びにおいでと言ってくれました。
「みんなありがとうゴロ」
「ありがとうタロ」
「ケントくんもありがとうゴロ。一緒にクマタローを探してくれて助かったゴロ」
「また困ったことがあったら相談してね」
クマゴローとクマタローはお辞儀をすると疾風のように森の中に消えて行きました。
それから時々クマタローは村にやってきてはみんなと遊びました。
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