君との冬

杏鈴

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俺の好きな時間

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人からはよく"顔に出ないタイプ"と言われる事が多い
表情筋が硬いのだろうか、口数も多い方ではないからそれが理由なのだろうか
自分で自分の顔は見えないからわからない

*俺の好きな時間***

一人暮らしを初めてからはそれなりに充実してそれなりに忙しい日々を送っている
朝は強い方だから余裕を持って起床
朝ごはんと身支度を済ませたら天気の良い日は早めに家を出て雨の日は30分ほど遅く家を出る。今日は快晴だ
家を出て止めてある自転車を出すと
"にゃぁー"と元気の良い声がする
◆今日も元気だな、おはよう"にぼし"

"にぼし"とはこの猫の名前だ
どうやら俺がこのアパートに越してくるかなり前からここの駐輪場に住み着いている、と越してきた時に大家さんが教えてくれた。名前の通り好物は煮干し、ぽっちゃり体型で少し貫禄のあるハチワレ猫だ
挨拶を交わして頭や顎を撫でながらスーパーで買ったお得用煮干しを少しあげる、この毎朝のやりとりは俺の好きな時間だ
◆今日も気持ちの良い日向ぼっこが出来そうで良かったな、行ってきます

再び元気の良いにゃぁーで見送られ大学へ向かった

大学へは自転車で20分くらい、雨の日はバスを使っている
正門を通って自転車を止めたら校舎とは違う方向へ向かう
◆今日は本当に天気が良くて気持ちがいいな

校舎の周りは芝生が広がっている場所が多く大きな木があちこちに植えられている、その中でお気に入りのベストポジションがあってそこで読書をするのが晴れた日の日課、憩いの時間だ。これが30分早く家を出た理由である

かばんから本を取り出して読み始める
たまに話の展開が良いと没頭し過ぎて時間を忘れる事があるから注意だ
◆この本もそろそろ読み終わるな、次は何を買うか…

しばらく本を読み進めゆったりとした時間が流れる
"…と、ゆいと、結人!"
◆ん?
女性:おーはよ!時間大丈夫?
◆あれ、朝花。おはよ

声をかけられ前を見たら友達の朝花(あさか)が立っていた
◆いつの間にもうこんな時間か。そろそろ向かわないとな
朝花:私が声掛けなかったらまーた遅刻してたんじゃないー?

朝花が顔に"感謝しなさい"と書いてあるかのようなドヤ顔でこっちを見ている
◆またってそんなにしょっちゅうは遅刻してない…はず…うん…
朝花:自信なさそうー。笑

素直にありがとうとお礼を言って朝花と一緒に教室へ向かった

無事遅刻せず教室に着くと誰かに名前を呼ばれる
男性:おーい、結人!こっちこっち!
◆おはよう。真咲、凛

こいつらも俺の友達、真咲(まさき)と凜太朗(りんたろう)。凜太朗の事は凛って呼んでいる
それぞれ取っている科目はバラバラだが共通科目や休憩時間なんかは大体このメンバーで過ごしている事が多い
あと1人女子がいるのだが今は不在のようだ
真咲:あれ、朝花ー。琴乃ちゃんは?
朝花:琴乃は休むって連絡来てたよ。真咲寂しい?
真咲:え!?寂しくなんかねぇよ!
凜太朗:真咲は本当にわかりやすいよね
真咲:凛!お前は余計な事言うな!

こうやっていつも朝花が真咲にちょっかいをかけて凛がボソッと一言付け加える、今は不在だが琴乃がそれを見てオロオロする。そのやりとりを見るのが俺の密かな楽しみだ
"おーい、始めるから席つけー"
先生が到着し1限が始まった

淡々と時間が過ぎ今日の講義も全て終わってちょっとした休憩タイムを取っていると
朝花:あれ?琴乃から電話来てた。どうしたんだろ?
真咲:かけ直してみたら?
朝花:んー、そうだね…ん??

タッタッタッタッタッタッ
琴乃:み、みんな~よかったまだいた~
朝花:琴乃!?こんな時間にどうしたの!?

走ってきた琴乃が息を整える
琴乃:はぁはぁ、ふー…ごめんね遅くなっちゃって、もしかしたらお祝いするんじゃないかなって思って急いで来たの
真咲:お祝い?なんの?
琴乃:え?だって今日は凛ちゃんのお誕生日でしょ?
真朝結:え?えぇぇ!?

今日2/3は凜太朗の誕生日だったらしい。全く知らなかった事実に本人と琴乃以外は唖然とする
真咲:いや、言えよ!凛!
凜太朗:忘れてた
◆まさか誕生日だったなんて
朝花:本当よ!でも琴乃はよく知ってたわね
琴乃:ごめんね、みんな知ってるとばかり…
朝花:どうする?この後どこか行く?みんな予定がないならだけど…
◆そうだね。せっかく琴乃も来てくれたんだし、俺は大丈夫だよ
真咲:おう!なにも用意してないけど誕生日パーティしようぜ!
琴乃:わぁい
朝花:よーし、じゃぁ近くのお店に電話を…
凜太朗:ごめん、俺バイトが

凜太朗の一言に真咲と朝花の目が光る
真朝:休め
凜太朗:いや、そんな無茶な…
真朝:いいから休め
琴乃:ま、まさくん…朝ちゃん…落ち着いて~
◆どーどー
真咲:電話して誰かに代わってもらうとか方法はあるだろー!なんとかしろ、なんとか!
凜太朗:ど、努力はしてみる…

凜太朗は何人か電話をかけて運良くシフトを代わってもらえる相手が見つかり俺達は無事に凜太朗の誕生日パーティを開くことができた

駅から近い居酒屋で楽しい時間を過ごし気付けば23時前だった
琴乃:私そろそろ帰らないと…
朝花:本当だ、もうこんな時間だったんだ。私も帰らないと
◆じゃぁ今日は解散しようか
真咲:えぇぇー!もう!?もう少しいようぜ~~
凜太朗:真咲はまた酔ってるの?
朝花:いつものことでしょー?まったく、弱いのに調子乗って飲むんだから…
琴乃:あはは…あ、私10分後の電車乗りたい!
朝花:私も琴乃と同じ電車乗る!真咲は結人に任せて急ご!ほら、凛も行くよ

やっぱりそうなるか…
酔っ払った真咲の相手をするのはいつも俺の役割だ、もう慣れたけど
琴乃:結くんごめんね!また月曜日!
朝花:あとよろしく~
凜太朗:これ胃薬、がんばれ

凜太朗からなぜか常備していた胃薬を受け取り真咲と2人にされてしまった
さて、この酔っ払いどうしよう
◆真咲、お前もそんなに遅くまで終電ないだろ?帰れるか?
真咲:うぅーん、まだ飲み足りない!結人、もう少し飲もうー?
◆いやいや、お前どうせ明日バイトだろ?いつも休日はぎっしり入れてるんだから…それか俺の家泊まってく?
真咲:宅飲み!?たまにはいいな!!
◆いや、だから…
真咲:はっ!!!だ、だめだ!!俺帰らないと!!花ちゃんが待ってる!!
◆花ちゃんってたしか真咲が飼ってるモルモットかなんかの名前…
真咲:チンチラだ!チ・ン・チ・ラ!

そう言って真咲は酔っ払いとは思えないスピードで駅へ走っていった
◆ふぅ、真咲も大丈夫そうだし俺も帰ろう

みんなのお金をまとめて払い終え駅近の駐輪場まで自転車を取りに歩いた
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