A.I. AM A FATHER(覚醒編)

LongingMoon

文字の大きさ
5 / 19

五. 文通

しおりを挟む
オレは、挫折感を味わいながら大学に入ったが、自分の目指す研究ができるような大学ではなく、どんどんやる気を失い、人工知能の構築もやめてしまっていた。

そんなオレにとって、彼女との出会いは衝撃的だった。
なぜ、見ず知らずの彼女が、突然オレの稚拙な行動に対して張り倒すというような態度をとったのか、考えれば考えるほど、わからなかった。
いろいろ考えたあげく、なぜかオレはマジで、また人工知能の開発を再開してみようという気になった。オレ自信のことなのに、何故そんな気持ちになったのかわからなかった。
三流大学で、オレに人工知能システムを開発するための理論や技術をレクチュアできるような教授はいなかった。しかし、情報処理に関する研究をしている一人の教授が、新歓コンパの時に「何かやる気があるのなら、いつでも空いてるコンピュータなら使っていいよ。自由にやってみなさい」と言ってくれていたことを思い出した。
それで、オレは4回生でもないのに、時間があればずっとその研究室と学校の図書館で時間を費やし始めた。

それから1か月ほど経ったある日、たまたま大学の図書館で、ローカル新聞の情報処理に関する連載コラムを読むために、そのバックナンバーを遡ってパラパラとめくっていくと、モンゴルの児童福祉使節団の写真が目に飛び込んできた。

まったくの偶然だった。

その記事は、丁度一か月前の記事で、オレの胸が高鳴った。記事の写真に写った人物画像は、まぎれもなく彼女だった。
オレは、その記事を元に、そのモンゴル使節団のことを調べてみた。
もちろん、インターネットで調べるしかなく、しかも日本語や英語のサイトを調べても知りえるはずもなかった。しかし、人工知能の設計・開発を進めてきたオレにとって、そんなことを調べることは朝飯前だった。
翻訳サイトを駆使して、日本語→英語→モンゴル語で検索し、それらしきサイトを逆の手順で翻訳し、彼女の存在を突き止めることができた。
彼女は使節団の一員として日本へやってきていたという記事を発見してしまった。
その時の強烈な印象を忘れられずに、思わず彼女のモンゴルの施設のHPに英語で書き込んでしまった。
「今年の夏、日本でキミに張り倒された男のこと覚えているかな。ボクは、あの時のキミの言葉で、諦めかけていた夢を実現するために、また人工知能の研究を始めたんだ・・・」
彼女からの返事も英語で、すぐに彼女のメールアドレスから返ってきた。
「覚えているは、あの時のこと。ホント、ごめんなさいね。今のモンゴルのことを考えると、恵まれた環境にあるアナタを見た瞬間、なんかもどかしくなっちゃって」 
「ホントにごめんなさい」

それから、彼女との文通が始まった。
彼女の悩みを聞くこともあった。
そして、いつしか文通だけの間柄から、いつか逢おうという約束までかわすようにまでなった。
オレの大学生活は、アルバイトと人工知能の開発に費やされていった。いや、正確には、モンゴルの彼女と毎日のように文通も交わした。

遠く離れた国。

いや、距離はそんなに遠くはなかったかもしれない。しかし、お互いに行き来することができるほど裕福ではなかった。全く逢うことはできなかったが、お互いのことを文通だけですべてを語りあえる仲になっていった。
彼女は、孤児院の教員をしていたが、彼女自身も子供の頃、親のいないマンホールチルドレンだったことを聞いたときは、衝撃的だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

処理中です...