A.I. AM A FATHER(覚醒編)

LongingMoon

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一三. モンゴルを救わねば

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 ロシアの西方、黒海の北側にあるウクライナは、内戦状態にあった。ウクライナは、冷戦時代ソ連の支配下にはいり、ソ連崩壊後独立国家となったが、その国内はロシア系民族と土着のウクライナ人との間で、常に紛争があった。

2014年、ウクライナはロシアと一線を引いて、EU(ヨーロッパ連合)へ加入の道を選択した。しかし、ウクライナでは少数民族であるが、既得権益を持つ親ロシア派にとっては、そのデメリットは大きく、ウクライナは民族間の利害の不一致で内戦に陥った。
 ウクライナは、鉱物、海洋資源に富んだ国だった。資源から得られる利益を、国民にうまく分配すれば貧富の差も顕著ではない平和な国家になるはずだった。
 しかし、人間の業とは深いもので、元々、ウクライナの富を握っていた親ロシア派の人々にとって、これまで築き上げた資源の利用技術や貿易による富は当然自分たちのものであると思うことに否定も肯定もできない。
 結局、ウクライナ東部は、ロシアが親ロシア派住民に対して軍事援助を大々的に行い、ロシアに切り取られてしまった。
 もちろん、EUやアメリカ等から非難宣言が次々と出されたが、領土に貪欲なロシアは、全く無視していた。それどころか、内戦に乗じて中東の国々をロシアの支配下に置こうとさえ考えていた。
 国際社会では、中国、ロシアが国連の常任理事国として連合して、非難決議を無視していった。
 両国は、協調してそれぞれ領土併呑を進め、国際社会のモラルを踏みにじっていった。

両国の領土併呑政策の中に、秘かにモンゴルも含まれていた。その政策は、両国互いに認識し合っていたが、もし、お互いに争うようなことになれば、国際社会で孤立することもわかっていた。そこで、両国は秘密裏にモンゴルを分割統治する契約を進めていた。

 その策略は、貧しいモンゴルに対して、ロシアはモンゴルの北部開発を、中国はモンゴルの南部開発をそれぞれ支援するために、それぞれロシア人、中国人を送り込んでいった。
 徐々に、モンゴル北部ではロシアが、南部では中国が、そこに住むモンゴル人に対して影響力を持つようになっていった。
 そして、モンゴル中央政府の汚職と貧富差を理由に、北部と南部で反政府勢力を作り上げていった。
 モンゴル攻略は、ロシアと中国の秘密外交組織がトップにあり、進められていった。そして、モンゴル反政府勢力もその秘密外交組織によって、誘導されていった。

 ただ、NATOは、東西冷戦終結後も、ロシアへスパイをもぐりこませており、ロシアの内部事情ならびに秘密外交交渉情報はつぶさに本部のコンピュータに情報収集されていた。
NATOは、ロシアと中国の動きに気付いてはいた。しかし、EUレベルでの決定がなければ、国際的なスパイ工作活動は許されなかった。
 EU諸国にとって、ロシアはエネルギー資源の重要な輸入先である一方、中国は様々な産業の重要な輸出先であった。EUは、両国の暴挙に対して制裁を課したとしても、逆制裁を受けることになってしまう。すなわち、EU諸国は、ロシア・中国に、名指しで強力な制裁を科すことができなかった。
NATOは、両国の陰謀がわかっていても、どうすることもできなかった。EUにとって、モンゴルがどうなろうと、EUそのものには関係がなかったからであった。
 
 オレは思った。

「モンゴルを救わねば」

「やつらの狙いは、反政府軍に加担して、反政府デモ鎮圧にでてきた政府軍をたたきつくして、反政府軍による政府樹立させ、モンゴルを2分割し、ロシア・中国で分け合うことだ」
「このままだと、モンゴルはやられる。人工知能のオレに何ができるんだ」
 オレのモラル機能と戦争抑止機能が動き出した。
「まず、いち早く、ロシア・中国の反対勢力であるアメリカが動き出せるだけの情報を提供することだ」
「一方で、モンゴル政府に、危機的状態であることを伝え、手遅れにならないうちに防御策を考えさせることだ。また、できるだけ早く、具体的な反政府軍による軍事活動計画を知らせることだ」
「まずは、世界中のメディアに、ロシアと中国による暴挙情報を的確に流し、国際世論を操作することだ」
「あとは、政府転覆を防ぐために、情報を必要とする組織へ、情報提供し続けることだ」
「モンゴルと友好関係にある日本を経由して、アメリカへ情報提供する方法もある」
「ダメだ。日本政府へ情報提供することは簡単だが、簡単に情報漏えいしてしまう」
「ペンタゴン(アメリカ国防総省の本部)内部のネットワークに、情報投入するしかない」
「反政府軍の軍事力を制圧できるだけの政府軍軍事力が必要だ」
「モンゴル政府は、アメリカから借款してでも、軍事力増強は図らねばならない。アメリカはモンゴルに対して影響力はなかったが、軍事支援により、一気にロシアと中国の間に一大勢力を築くチャンスを掴むことになる」

「ここでの問題は、ペンタゴン内部のネットワークに侵入し、NATOからの情報を流し続けなければならないことだ。ペンタゴンには、オレがガキの頃、ハッキングを見抜かれて、煮え湯を飲まされたことがある」
「今度は、人間としてのオレの実態はないが、ネットワーク型人口知能の存在がばれて、オレは消滅させられるかもしれない」
「ここは、申し訳ないが、スケープゴートを立てて、そいつに成りすまして、ハッキングするしかない。幸い中国には、悪質なハッカーがごろごろいて、そいつらがどうなろうと知ったことではない」
「オレのハッカーデータベースには、1000人をこえるよりすぐりのハッカーが登録されている。そのうち、上位10人程を利用して、あたかも、そいつらが、ペンタゴンへハッキングして情報収集したかのように見せればよい。その情報は、アメリカにとって危害を加えるものではないから、やつらも許してもらえるだろう」
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