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一七. ああ、トヤー
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バイクは、ウランバートルの中心部からは、遠ざかったところまで来ていた。GPS計算だと施設まで2kmのところまできているはずだった。
オレは、近くに、何か拾える電波がないか、そこらじゅうの携帯電話をサーチした。人通りなく、しばらく、何もひっかからなかった。
配達のバイクが、施設前に到着した。
「やれやれ、やっと着いたか。やっぱり、この施設、火事で燃えたっきりだな。郵便物も送り主にかえしてやるしかねぇか。しかし、なんだなぁ。あの子たちは、どうなったんだろうな。
火事の中、妊婦さんが、必死で施設の子供を助けて回っていたんだっけ。施設の子供たちは助かったが、あの妊婦さん産気づいちゃって救急車で、病院に運ばれていったんだよな」
「えっ、妊婦?そんな、ばかな。トヤーのことなのか?トヤーが。いったい、どうなったんだ」
オレは、まず施設の火事についてのニュースをググってみた。確かに、火災があったという記事を見つけることができたが、それ以上のことは何もわからなかった。
「いったい、どうなっているんだ」
オレは、郵便配達人の携帯で、近くにある病院情報をサーチした。それから、登録されているメールアドレスを使って、病院のサーバのハッキングを開始した。産婦人科と外科手術ができる救急病院をキーワードにサーチした。
施設のまわりに、それほど病院はなかった。
探し始めて3軒目だった。トヤーの出産のカルテがあったのは。
そして、まだ名前のない赤ん坊のカルテもあった。
カルテには出産の経緯が書かれていた。
トヤーには重度の子宮筋腫があり、子供を出産するのは非常に困難極まりなかったことが、カルテに書かれていた。
医者と施設長は、「子供のことは諦めなさい」と、一生懸命説得したようだが、・・・。
「ダメよ。あの人の子供だから、私が死んでも必ず産むの」
カルテの備考に、トヤーは断固として聞き入れなかったというような掛け合いが書かれていた。
「この子さえ、産めば。必ず、死んでしまったはずのあの人が、オユンナのことを守ってくれるわ」
トヤーは、産まれてくる女の子の名前まで決めていた。
「あの人、コウイチは、オユンナを必ず見つけて守り続けてくれるはずだわ」
トヤーのカルテの中には、手術中のトヤーの叫び声が記述されていた。
オユンナは、無事生まれた。しかし、トヤーは死んだ。
・・・
サポートするはずのターゲットである一人が存在しなくなっていた。オレのシステムは暴走したかのように動き出した。彼女のための膨大なデータに削除フラグが立っていった。データからデータへ連動して、猛烈な勢いで、メインのスーパーコンピュータのCPUトメモリをフル稼働し始めた。テストもロクにやってないロジックで何度もエラーを引き起こし、自動修復機能が動作した。
「バカヤロウ。何で死んだんだ。オレなんかのこと信じちゃって。バグだらけの・・・」
「もう、これ以上、しゃべっちゃいかん」
「トヤー、よくがんばったわ。あなたの娘オユンナのことは、私たちに任せて」
医者と施設長が、トヤーのか細くなった声を制止した。
「オ、オユンナのこと、おね・・・」
そこで、トヤーの心肺は停止してしまった。
カルテに、トヤーの最期が記録されていた。
オユンナのカルテもあった。
「オユンナは、早産で、各種臓器に未熟児の傾向あり。
それぞれの臓器の状況は、以下の通りである。
・・・
最終的に、保育器で1か月ほど入院し、退院にいたった」
ということが書かれてあった。
「オ、オユンナは無事なのか。今、どこにいるんだ。誰が面倒を見てくれているんだ」
オレは、近くに、何か拾える電波がないか、そこらじゅうの携帯電話をサーチした。人通りなく、しばらく、何もひっかからなかった。
配達のバイクが、施設前に到着した。
「やれやれ、やっと着いたか。やっぱり、この施設、火事で燃えたっきりだな。郵便物も送り主にかえしてやるしかねぇか。しかし、なんだなぁ。あの子たちは、どうなったんだろうな。
火事の中、妊婦さんが、必死で施設の子供を助けて回っていたんだっけ。施設の子供たちは助かったが、あの妊婦さん産気づいちゃって救急車で、病院に運ばれていったんだよな」
「えっ、妊婦?そんな、ばかな。トヤーのことなのか?トヤーが。いったい、どうなったんだ」
オレは、まず施設の火事についてのニュースをググってみた。確かに、火災があったという記事を見つけることができたが、それ以上のことは何もわからなかった。
「いったい、どうなっているんだ」
オレは、郵便配達人の携帯で、近くにある病院情報をサーチした。それから、登録されているメールアドレスを使って、病院のサーバのハッキングを開始した。産婦人科と外科手術ができる救急病院をキーワードにサーチした。
施設のまわりに、それほど病院はなかった。
探し始めて3軒目だった。トヤーの出産のカルテがあったのは。
そして、まだ名前のない赤ん坊のカルテもあった。
カルテには出産の経緯が書かれていた。
トヤーには重度の子宮筋腫があり、子供を出産するのは非常に困難極まりなかったことが、カルテに書かれていた。
医者と施設長は、「子供のことは諦めなさい」と、一生懸命説得したようだが、・・・。
「ダメよ。あの人の子供だから、私が死んでも必ず産むの」
カルテの備考に、トヤーは断固として聞き入れなかったというような掛け合いが書かれていた。
「この子さえ、産めば。必ず、死んでしまったはずのあの人が、オユンナのことを守ってくれるわ」
トヤーは、産まれてくる女の子の名前まで決めていた。
「あの人、コウイチは、オユンナを必ず見つけて守り続けてくれるはずだわ」
トヤーのカルテの中には、手術中のトヤーの叫び声が記述されていた。
オユンナは、無事生まれた。しかし、トヤーは死んだ。
・・・
サポートするはずのターゲットである一人が存在しなくなっていた。オレのシステムは暴走したかのように動き出した。彼女のための膨大なデータに削除フラグが立っていった。データからデータへ連動して、猛烈な勢いで、メインのスーパーコンピュータのCPUトメモリをフル稼働し始めた。テストもロクにやってないロジックで何度もエラーを引き起こし、自動修復機能が動作した。
「バカヤロウ。何で死んだんだ。オレなんかのこと信じちゃって。バグだらけの・・・」
「もう、これ以上、しゃべっちゃいかん」
「トヤー、よくがんばったわ。あなたの娘オユンナのことは、私たちに任せて」
医者と施設長が、トヤーのか細くなった声を制止した。
「オ、オユンナのこと、おね・・・」
そこで、トヤーの心肺は停止してしまった。
カルテに、トヤーの最期が記録されていた。
オユンナのカルテもあった。
「オユンナは、早産で、各種臓器に未熟児の傾向あり。
それぞれの臓器の状況は、以下の通りである。
・・・
最終的に、保育器で1か月ほど入院し、退院にいたった」
ということが書かれてあった。
「オ、オユンナは無事なのか。今、どこにいるんだ。誰が面倒を見てくれているんだ」
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