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第2編:宇宙航行と拡張編
第22章「星屑に抗う壁」
しおりを挟む2031年、宇宙エレベータ構想『KIZUNA』が具体的な形を持ちはじめる中で、最大の技術的障壁の一つが浮かび上がっていた――スペースデブリ。
低軌道から静止軌道に至るまで、人工衛星の破片や使用済みロケットの部品などが飛び交い、それらは秒速数キロの速度で周回していた。
わずか数ミリの破片でも、宇宙エレベーターのワイヤーを破壊しかねない。
そのリスクは天文学的だった。
デブリ対策チームのリーダーは、元航空自衛隊の衛星防衛専門家・津島環。
彼は言った。
「ただ“避ける”だけでは不十分だ。そらす、あるいは破壊する必要がある」
当初、提案されたのは、
・レーザーによる加熱と蒸散による軌道変更
・電磁バリアによる反発
・衛星ネットによる捕獲
といった案だったが、いずれも持続性やエネルギー消費の面で難があった。
その中で浮上したのが「デブリ防御バリアをワイヤーに内蔵する」というコンセプトだった。
デブリが接近すれば、ワイヤー自身がそれを感知し、自己修復・防御行動をとるシステムである。
津島は、嶋村率いるワイヤーチームに支援を要請。
「CNTとCNFの複合構造に、電磁センサーと圧電破砕装置を組み込めないか?」
かつては不可能とされたその提案に、日本の若手研究者・深川光が応じた。
彼は京南工業大学の材料応用研究室で、圧電応答型ナノセラミック粒子をCNTに埋め込むことで、局所的な衝撃を受けた際に微小な電流を発生させ、周囲の構造を硬化・変性させる技術を開発していた。
その応用により、CNT+CNF複合素材は、
「デブリ接触予測→局所硬化→自己修復」という三段階反応を可能にした。
ワイヤーはまるで生きているかのように、自ら傷を防ぎ、癒す存在となった。
一方、全てのデブリがバリアで防げるわけではなかった。
特に大型の金属塊や軍事衛星の残骸は、軌道を外れるだけで重大なリスクとなる。
ここで登場したのが、スペースドローン・プロジェクトだった。
ドローンは、地上からの指令で軌道上に展開し、予測された衝突リスク対象に接近、ミリ波レーダーとAI制御により接触・吸収・破砕を行う。
スペースドローンチームを支えるのは、もう一つの部門――軌道予測システムチーム。
彼らは、AIと衛星群の連携で、90分後に周回する全デブリの軌道を精密に計算し、ドローンの最適経路を生成していた。
2035年、試験的に設置された3本のCNT-CNFワイヤーと4つのスペースドローン発進ステーションは、静止軌道からの展開に成功し、翌年には完全稼働を開始。
複数本の相互修復型バリアワイヤーと、ドローン迎撃システムによって守られた宇宙エレベータは、遂に最終段階へと進む。
その全長、地球から宇宙へ――10万キロメートルの橋。
人類の技術が、その星屑をかきわけ、静かに未来へと伸びていた。
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