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第4編:88星座巡礼編
第63章「タウ・ケンタウリの音楽の星」
しおりを挟むタウ・ケンタウリ系の第三惑星は、旅を続ける僧侶がたどり着いた、最初の“音楽の星”だった。
惑星の大気は薄い青の層をまとい、複雑に反響する磁気嵐が、軌道上からでも波紋のように見えた。
その磁場と恒常的な風の流れが、惑星全体をひとつの巨大な楽器へと変えていた。
僧侶は意識生命体として、光速を超えてこの世界に降り立った。
彼の祈りの周波数に応じるかのように、大気の流れが微かに震え、低く澄んだ音色が惑星全体に広がった。
地表に存在する生物たちは、目を持たない代わりに音で世界を感じ、
音で語り、音で愛を伝えていた。
共鳴する心
彼らは僧侶の存在を、ほとんど瞬時に察知した。
彼が放つ意識の律動が、惑星固有の“基本音”と完全に調和したからだ。
「ようこそ、旅のひと」
それは声ではなかった。
脳に直接届くような、柔らかく透明な共鳴だった。
僧侶はその感覚に、静かな衝撃を受けた。
――自分の祈りが、銀河を越えて、ここまで届いた。
その事実が、初めて実感として胸に満ちたのだ。
彼らは僧侶を「巡礼者」と呼んだ。
そして、彼らの音楽を共有した。
それは旋律ではなく、無限の調和。
風、海、地下の鉱物、生命の鼓動。
そのすべてが音として存在し、互いに絡み合いながら、一つの「星の楽曲」を奏でていた。
物理生命体の影
僧侶はこの惑星で、数百年を過ごした。
物理生命体として短命な旅人たちが、ときおりこの星を訪れ、
その音楽に心を奪われていった。
彼らは惑星の住人にとって、
「流れては消える音の影」のような存在だった。
僧侶は、ある一人の旅人の短い生涯を見守った。
彼は歌人であり、惑星の響きに魅了され、
最期の瞬間まで旋律を記録し続けた。
その旅人が息を引き取るとき、
僧侶は彼の意識を静かに導き、
穏やかな波となって宇宙へと送り出した。
その魂は、のちに別の星で目覚め、
再び僧侶の旅路と交わることになる。
――だが、それを知るのは、はるか未来の話である。
旅立ち
僧侶がこの星を離れる日、惑星全体が祝福の音で満ちた。
海は高く鳴り、風は笛のように歌い、
地下の岩盤は低く、深く響いた。
「また来るだろう」
誰もが、言葉にせずともそう理解していた。
僧侶は星の楽曲の一部を、意識の奥深くに刻み込み、
再び銀河の深淵へと旅立った。
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