プルートの逆襲

LongingMoon

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六. 2313年5月 横浜からのテイクオフ

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 初夏の夕暮れ、とある横浜の高校での放課後、カズこと一将が新入部員の仲間とともにサッカーグラウンドの整備と着替えを終えて部室を出ると、いつものように美術部の部活を終えた幼馴染のマリアが待っていた。
「待っててくれたんだね、マリア。ありがとう」
「今日は、遅かったね」
「うん、今日はきつかったぁ」
「私も、今日は部活遅くて、少し疲れちゃった」
「大丈夫か」
「うん。もうすぐ、コンクールがあるし、今日はみんなデッサンに集中しちゃって、遅くなったの」

 二人がクラブや友達の話をしながらいつもの川沿いの道を帰っていく途中、マリアは突然青ざめてしゃがみこんでしまった。
「うっ、うーん」
「どっ、どうしたんだい」
「・・・」
 マリアから、うめき声さえでなくなっていった。
ただの貧血のようでもあったが、しばらくマリアは立ち上がることができず、カズはマリアをおぶって家まで送り届けた。

・カズについて

本名:星野 一将
年齢:15歳   身長:170センチ  体重:62キロ
性格:優柔不断なところはあるが、正義感は強く、活動的。
スポーツ:Jリーグに憧れるサッカー少年
趣味:インターネットでサッカーや宇宙について情報をあさること
特技:父親と家族同伴のアメリカ転勤期間中、家族と共に日常英会話はマスター
出生:月。(父が月へ出張中、妊娠9ヶ月の母が父に会いに行った時に生まれた早産で未熟児であった)
兄弟:ハルカという名の妹がいた

・マリアについて

本名:海江田マリア
年齢:15歳   身長:160センチ  体重:43キロ
性格:おとなしいが真は強く頑張り屋
趣味:油絵
特技:茶道
出生:フランス。(父は有名な検事。母はフランス人の元キャビンアテンダントでマリアは母親の里帰り地で産まれた)

 「マリア、大丈夫か。もう少しで家に着くからな。がんばるんだぞ」
 「ううん、ううん」
うなされるような声しか、カズには聞こえなかった。
つい、さっきまで普通に会話していたのに。

  翌朝、カズはマリアのことが心配で、「きっと元気になってるはずだ」と自分自身に言い聞かせながら、いつものように彼女の家に行った。
「おはようございます。マリアは大丈夫でしょうか?」 
中から、マリアの母親が沈んだ顔をしながら出てきた。
「あっ、カズくん、昨日はありがとうね。マリアはねぇ、昨日病院に連れて行ったんだけど原因がわからなくてねぇ。今日、大学病院に連れて行ってみようと思っているの。いつも、ホントにありがとうね。何かわかったらカズくんにも知らせるからね。今日は悪いけど、1人で学校に行ってね」

それからマリアが欠席したまま1週間が過ぎた。カズは、マリアの父である海江田俊三の腹心であり、幼い頃からよく遊んでもらった山羽進に、しつこく頼み込みマリアの状況を聞き出した。その内容は次の通りであった。
 「カズくん、マリアさんのお父さんは昔からの友人である政治家から秘密の依頼を受けて、総理大臣の汚職事件を調査していたんだよ。そして、お父さんがそのバックに蠢くマフィアと黒幕の存在に気づき始めた矢先、マリアさんが原因不明の病気になって、脅迫状が舞い込んだらしいんだよ」
 「マリアさんの病気は特殊なウィルスによるもので、脅迫状に添付されていた薬を飲みつづけなければ患者の衰弱は悪化し、最悪の事態になるかもしれないらしいんだ。そしてその薬を送りつづける条件は総理大臣の汚職事件に首をつっこまないこととこの脅迫状に対する調査を行ってはいけないこと。また、この病気は現在の紫外線強度では悪化しやすいので、マリアさんを外に出したりしないようにと書いてあったらしいんだ」
 さらに山羽によると、どうやら総理大臣の孫の1人も同じような病気にかかっているらしいとのことであった。

 カズもまた海江田氏と共に苦悩の日々を送る中、脅迫事件発生以来1ヶ月が過ぎた。カズは、ある日、インターネットで妙なバナーがあちこちにはられているのを見つけた。
 「人類の危機、勇者を募る」
何気なくインターネットをアクセスしてみるとそのゲーム宣伝らしきバナーの奥は深く、いたずらとしか思えなかった。しかし、そのバナーには危機を伝える意味不明の暗号のようなものが混じっていることに気付いた。
 1週間ほどかけて解読してみると「世界に蔓延する謎のウィルスを叩き潰す仲間を求む。我はと思わんものはメールを送れ。メールアドレスは・・・。月の翁より」という内容が浮かび上がってきた。
 その暗号を解読した時には、もうすでにバナーはどこにも見つけることができなくなっていたが、カズは何の迷いもなくすぐさま「自分自身の紹介に加えて、我が友を救いたし」というメールを送り返した。
 何も手につかずクラブもサボり、ただ毎日急いで帰宅しメールの受信BOXをのぞくだけで3日間が過ぎた。
 3日後、受信BOXをのぞくと「君の勇気に喝采を送る。メンバーは君と私を含めて7人だ。君は1週間後に横浜で香港のじいさんとその孫の女性の2人ずれと落ち合ってくれ。そして、彼らとともに同志の誘導で厚木の米軍基地からロサンゼルスへ向かってくれ。そこでアメリカ人の軽業師と合流し詳しい話を聞き行動をともにしてくれ。合言葉はプルート&カロンだ。かなり危険な長い旅になると思う。もしやめるなら、すぐにメールを送れ。君の勇気と知恵を信じている。行先は、・・・。月の翁より」
 その夜、カズは父と母に今までの経緯を少し興奮しながら話した。
「とうさん、かあさん、ボクの話を聞いてほしいんだ。ボクは、今どうしてもやらなきゃならないことができたんだ。とうさんもかあさんも知っているように、マリアは病気でずっと休んでいるんだけど、それは人為的なウィルスのせいなんだ。ボクは、マリアを助けるために、その抗ウィルス剤を作っているところへ、しばらく旅に出る事にしたんだ。もちろん危険なこともあって、ひょっとしたら、ひょっとすることもあるかもしれないけど、誰が何と言おうと行くことにしたんだ」
  母親の香は、かなり困惑した表情を浮かべた。
「あなたの言っていることの意味はわかったわ。で、あなたは、どこへ行こうとしているの」
  父親の敬輔は無言で、腕組みをして話を聞いていた。
 「冥王星」
 カズは、一瞬、息をのんで、ボソっと言った。
 「めっ、メイオウセイって、あの冥王星」
香は、びっくり仰天して叫びながら夫の敬輔の顔を見た。
  敬輔は、無言で腕組みをしたまま、話を聞いていた。
 「カズ、あなたいったい、どうやってそんな所まで、行くつもりなの。そんなの無理よ。だいたい、その冒険旅行の首謀者なんて、どこの誰かもわかったもんじゃないわよ。きっとペテン師に決まっているわよ」
香は、また敬輔の顔をちらっと見た。
 敬輔は、やはり無言で腕組みをしたままで話を聞いていた。
「その、あの、反物質ロケットとかいうロケットで行くという話は聞いてるんだ」
 そこで、敬輔は目をパッと開き、カズの顔をじっと見た。
 「それは、誰からの指示を受けて動いているんだ」
 カズは、敬輔から怒鳴られるのではないかと内心思いながら、おそるおそる言った。
「それが、月の翁という人からの指示なんだ」
 「そうか。そういうことか。よし、いいだろう。何があっても、絶対あきらめるなよ。それで、必ず帰ってこいよ」
 敬輔は、二言返事で香を無視して了解してしまった。
 「えっ、あなたまで、何を言っているの」
香は、絶句した。
 「母さん、男には決断の時がやってくるものなんだ。それを逃してしまった男は、一生、決断のできない男になってしまうんだ。歳など関係ないさ」
「そうね。そうよね。カズは、あなたの子供だったんだよね。月の翁って、確か・・・」 
「カズ、無理しないでね。自分を守れるのは、自分しかいないんだからね」
 「うん。十分注意して、必ず無事に帰ってくるからね」

・カズの父について

本名:星野 敬輔
年齢:44歳
性格:温厚で多少内気
職業:宇宙船リーダークラスのミッションエンジニア
その他:性格に反して、カズの母を射止める時には回りの目も気にせず頑張った

・カズの母について

本名:星野 香
年齢:39歳
性格:明るく裏表なく気さく、どんなことでも大風呂敷で受け止められる
職業:専業主婦
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