プルートの逆襲

LongingMoon

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十三. マヌー国立公園とペルー

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マヌー国立公園は1辺が100km近くもある菱形でかつ標高200m~4000mもある壮大な公園で、普通に人が生活している文化地区と大半を占める基本的に人が住んでいない国立公園地区があった。カズ達がアクセスするのは、国立公園地区に住むマヌー族の長老だった。通常マヌー族にはアクセスすることはできないが、公園の管理事務所で頼みこみ、なんとか会わせてもらうことになった。
「しつこく言っとくが、一応、マヌーの代表に話は通したが、彼らには数えきれない風習があり、シッポを踏んだら命の保証はないぞ」
「それでも、ぼくらは、どうしても行かなくちゃならないんだ。風習については、あらかたマルシアから教わった」
「そうか。無事を祈ってるよ」
部族の棲家は秘密であるが、翌日の正午に管理事務所から部族に対して、公園南部にあるサルバドール湖まで来てもらうよう合図の狼煙を上げてもらった。
「それでも、来てもらえるかどうかはわからんぞ」
カズたちは、セバスチャンをしばりあげて、早朝からサルバドール湖まで50kmの川行程を遡った。
そして、船を川に繋留し、湖には正午前には到着し、待ち続けた。
マヌー族の姿はなく、現れる様子もなかった。
それでも、カズたちは待ち続けるしかなかった
やがて、日も暮れようとし、その日はあきらめて船に戻ろうとした時、彼らは大挙して突然現れた。
彼らは、用心深くカズたちのことを観察していたのであった。どうやら近づいても安心だと思ったのか、20人くらいのマヌー族がカズ達を取り囲んだ。
マルシアが交渉にあたった。
「私たちは、どうしても、マヌーの長老にあってから、ペルーの秘境ビルカバンバへ行かなきゃならないの。どんな拘束を受けても長老に合わせてほしいの」
「わかった。しかし、そのスペイン人のセバスチャンとかいうやつは生贄にさせてもらうぜ」
「・・・」
マルシアは、息詰まった。もちろん、マルシアにとってセバスチャンはもう大切な友人であったが、それとともにロケットを操縦できるのはセバスチャンだけであることも十分理解していた。
「いいわ。でも、私たちが長老に会うまでは、絶対セバスチャンを殺さないと約束して」
「・・・」
「いいだろう。オレたちは約束を守る。おまえたちが長老と面会するまで、スペイン人はコロサナイ」
マルシアのおかげで、交渉は成立した。
宵闇の中、全員後ろ手に縛られて星も見えないジャングルの中を、夜明け前まで10時間歩かされて、長老のいるマヌー族の部落へ到着した。
セバスチャンだけは、すぐに部族の牢へ連れて行かれてしまった。どうやら、今夜生贄にされるらしい。すでにプエルトエアトの長老から貰い受けた黄金の首飾りはマヌーの長老へ届けられているらしく、セバスチャン以外のみんなは、すぐさま長老の元へ連れていかれて、質問を受けた。これに対してマルシアが現地の言葉ケチャ語で世界は謎のウィルスに席巻され、マフィアに牛耳られはじめており、ここにいるメンバーはマフィアと戦うために、家族と別れて世界中から集まったメンバーであり、ここまで苦労してここまでやってきたことを説明した。
無論、セバスチャンも妻子をスペインに残してやってきたことも、パイロットとしてこれから宇宙への水先案内人としての重要性についても伝えた。
しかし、そのことに、長老は答えてくれなかった。
なんとか説得には成功したがセバスチャンがいない状態で、カズ達6人は一夜の接待を受けた。
翌朝、マヌー族の集落を後にして、ジャングルの中へ出発した。今度も長い道のりではあった。6時間ほど歩くと、サルバトール湖であるかどうかは不明であるが、湖の畔に到着した。すると、湖面にマヌー族が1人ずつ乗った6艘のカヌーが用意されており、ここでカズたちはマルシアとキャプテンに別れを告げることになった。敵の目を欺くためとはいえ、実に、キャプテンとは3000km2カ月、マルシアとは2000km1カ月強の行程を共にしてきた。カズたちは、感謝の意と別れの言葉を告げた。
「ほんとうにありがとう。一時はどうなるかわからなかったけど、言うまでもなくここまでこられたのは、マルシアとキャプテンのおかげだよ。ほんとに、ありがとう。セバスチャンもきっとどこかで無事で感謝しているに違いないと思うよ」
美鈴が、カンフーのポーズをとりながら言った。
「ほんとにありがとう。必ず無事に帰ってくるからね。それから今度会う時は、きっと私の方が勝つからね」
マルシアは苦笑していた。
クリスとドクターも、それぞれ感謝の意と別れの言葉を告げた。
「悪いけど、私たちも協力できるのは、ここまでね。地球に帰ってきたら、連絡ちょうだいね。今度会える時を楽しみしているわ」
「オレも行きたいのははやまやまだが、かあちゃんと7人のガキどもが腹空かして待ってるからなぁ。それから、おめぇらも達者でネギでもしょって帰ってこいよ」
クリスが、キャプテンに握手を求めた。
「何言ってやがるんだ。今度くる時は、全財産もってこいよ。船と生活費くらいは、残しといてやるからな」
そして、それぞれのカヌーに乗り込んで、カズたちは、「オブリガード(ありがとう)。チャオ(さようなら)」と叫びながら出発した。
マルシアたちは、どうやら湖水を横切って、川伝いにマヌー川に渓流しているキャプテンの船に戻るようだった。カズ・美鈴・クリス・ドクターの4人の乗ったカヌーも湖水へと別の方角へ出発した。
カズ達のカヌーは、1時間ほどすると、湖に流れ込む小さな川へ入った。それから、更に3時間ほど経過したくらいで、マヌー人は松明に火をつけながら、カヌーを小さな川とともに洞窟の中へすべりこませた。
暫く進むと、今度は洞窟の中に湖が広がった。
「向こう岸までは湖岸伝いに歩いて行け」と言われて、松明を渡された。
その池の周囲を30分程歩くと何やら照明らしい灯りが見えてきた。
更に歩いて灯りに近付いてみると、ジャケットを着た運転手つきのホバークラフトが、スタンバイしていた。
4人は、ホバークラフトの間近まで近づいた。
「ヨウ、遅かったな」という運転手の声は、正しくセバスチャンの声に間違いなかった。
4人は、その声を聞くやいなやホバークラフトまで、走り寄ってセバスチャンの足があるのを確認しながら、セバスチャンの体を触りだした。
「いい加減にしてくれ。オレは生きている」
セバスチャンが言うには、生け贄にするためにあらためて縛りなおされて目隠しをされた後、長老の息子の族長の家に連れて行かれると、族長がさっと左手を上げると部族の者たちは出て行って、2人きりになった。
すると、族長はセバスチャンの縄を解いて、突然スペイン語で「長旅ごくろうさんだったな」と言った。
最初、セバスチャンも戸惑ったが、族長が言うには、すでにプエルトエアトの長老から、マヌー族の長老への伝令が2日前に届いており、マヌー族では受け入れの準備は完了していたとのことであった。マヌー族には、長老を始めとして数人のインカの人間が紛れ込んでおり、共に生活していた。長老と族長は、部族の人達に怪しまれることなくというより、その生活が壊れないよう細心の注意を払って、今回の対策を考えてくれていた。
「これから、あなたには再び湖まで歩いてもらい、カヌーに乗せられて湖の真ん中で足におもりをつけて、湖の神への生贄として沈んでもらいます。そしたら、他のインカの仲間が泳いで、こっそりあなたを助けにいくので、安心していてください」
「あなたには、インカ地下都市までいくためのレクチャー受講と練習を受けてもらいます」
「アンデスには、地下水脈があって、かつてインカ人は信じられない早さで、都市から都市への伝令をとばすだけでなく、物資を輸送していた」
「その地底湖から地底湖を結ぶ水路、すなわち地下のインカ道を使って地下都市まで行ってもらいます。それは、複雑な水路をホバークラフトで、自由に運転できるようになる必要がありますが、あなたなら2~3時間もあれば運転できるようになるはずです」
「まぁ、ホバークラフトくらい、あのキャプテンのオンボロ船とくらべりゃ、すぐにマスターできるぜ」

それで、セバスチャンは、カズたちが到着するまで、地下都市までの行程把握とホバークラフトの練習を行っていた。ホバークラフトには、ナビゲーションシステムが付いており、基本的にはそれに従って運転すればよくて、後続車や対向車などはレーダーでキャッチすることができた。それにしても、地下水路での運転はよほど慣れなければたいへんな作業であった。暗闇の中をほとんどホバークラフトの明かりだけで、水流、岩盤、小さな支流、そしてコウモリなどの生き物を意識して、走らなければならなかった。スピードコントロールにはナビからの指示もあったが、ナビ通りにいかない部分もあり、スピードを出しすぎると転がっている岩で、大破する可能性もあった。
カズたちはホバークラフトに乗り込んで、マヌーの地下を後にした。そして、300kmの行程エスプリトゥパンパの地底に近付きつつあった。
「あぶねぇ。ホントに大丈夫なのか」
クリスは、正直気分が悪くなり、戻しそうになったりしていたが、カズと美鈴が案外平気なので、弱音をはけなかった。
「まかしとけ。具合悪かったら、早めに言えよ。中でゲロゲロすんなよ」
「なっ、何言ってんだ。大丈夫に決まってんだろ」

途中クスコへの分岐点以外は、ほとんどノンストップで走り続けた。
エスプリトゥパンパに近付くに連れて、徐々に水路は広がりを見せ、突然広大な湖が眼前に広がった。
「うわぁー。すごーい」
「ほんとね」
「こんな地下に、こんな湖があるのかよ」

その湖面には、たくさんのホバークラフトが繋留されていた。そして、はるか遠くの対岸には、地中の大都市が広がっていた。地底湖の中央を突き進んでいくと、両岸は数キロに渡って、セバスチャンにとって子供の頃から見慣れたバルセロナのような風景が広がっており、びっくり仰天した。しばらくすると湖を横切る橋の下に水門があり、その水門でこの都市の入管手続きらしきことをするようになっていた。といっても、すでにセバスチャンが入手している手続き書類と地図を係員に見せると、地図の行先であるこの都市の市長宅を教えてくれた。ホバークラフトは、水門をくぐって、すぐの左岸に繋留させてもらった。
そこから市長宅へは、徒歩で10分ほど町の中心地らしきところを横切って、更に5分ほど歩いて到着した。市長は、すでに連絡を受けており、外に出て出迎えていてくれた。
「この人は、いったいどういう人なのだろうか」
5人は戸惑い、それぞれ表情に緊張感を走らせた。
市長は、間髪入れず、満面の笑みで握手を求めてきた。
「よくぞここまでご無事で来てくれましたね」
その笑顔で5人は、少なくとも悪意はなさそうだという安心感は得た。
しかし、5人は秘められた使命を相手が理解してくれていることとは別に、この都市についての謎を質問したいことが山ほどあり、ドクターが口火を切った。
「あなたが歓迎してくれていることには感謝しますが、我々は、どうしてよいやら」
「私に聞きたいことは山ほどあるだろうし、急いでいるとは思いますが、まずは中に入って少しでもゆっくりして下さい」
「地下都市の謎については、全てを説明するには時間がかかりすぎて、その説明をする間に冥王星まで往復することになってしまうくらいの時間が必要です。なるべく簡単に説明すると、・・・」と言って、市長は説明しはじめた。
地下都市はここだけでなくて、アンデス山岳地帯沿いに南アメリカを南北に縦断する形で点在していた。それは、インカよりもはるか数千年前のアンデス文明から形成されていった。そして、インカ帝国の時代に、ある程度つながれていったそうだ。
インカ帝国はスペインの侵略を受けた時、ダミー都市であるマチュピチュを作り上げる一方で、彼らが隠れ家としたのは、すでに都市形成されていたエスプリトゥパンパであった。しかし、そのエスプリトゥパンパも彼らにとってはダミーであり、本当の隠れ家はその地下にあった。
彼らは、その昔、西欧諸国から侵略を受けたことにより早くから地下都市を形成することになったインカ人ではあったが、彼らは何よりも平和を愛していた。
しかも、彼らは決して閉鎖生活を送っているわけではなく世界中に人材を派遣しており、近年ではマフィアの野望を打ち砕くべく諜報活動を続けているとのことであった。であるから、彼らにとってカズたちの活動に全面的に協力するのは当然のことであった。

「人類の未来は君たちにかかっている。詳しい話は、月のじいさんから聞いている。必ず、無事に帰ってきてくれ」
市長は、そう言い残して、カズたちを見送った。
市長たちは、敵の空軍基地も把握しており、その付近を通っている地下水路もあるので、ホバークラフトを1時間ほど走らせたところから、その基地へ侵入する方法も教えてくれるとのことであった。

余談レベルの話ではあるが、スペインのバルセロナ風の街並みがあったことも市長は説明してくれた。
それは、大建築家のガウディが少年時代の夏休みに1週間ほどクスコの親類のおじさんの家を訪れたことから始まった。
ガウディは従弟と地元の子供たちと遊んでいるうちに、期せずして街のはずれにある洞窟への冒険へといざなわれ、複雑な洞窟の中へと迷い込んだ。ガウディたちは、インカ人の交通用地下水路ターミナル空間へ辿りついた。そこで、たまたま通りかかったインカ人の船に乗ってエスプリトゥパンパの地底都市へ連れて行ってもらった。その街の建造物を見た時、代々カタロニアの銅細工師だったガウディ一族の血に火をつけてしまった。その衝撃は、強烈にガウディの脳みそに焼きついた。バルセロナの建造物は、無意識のうちに焼きついたガウディの記憶が創り出した産物であった。
ガウディが晩年作り上げようとしたサクラダファミリアは、ガウディがこの地下都市の天地逆転建造物を再現しようとしたものだった。
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