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一度目の人生
第8話 この熱が消えぬように
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「お茶会ですか?」
今日は王宮内の客間で、王太子殿下との面会となる。
私に会いたいわけでもないだろうに、いつもより日にちの間隔が短い。国王陛下にもっと私との時間を取るように言われたのだろうか。
そんなことを考えながら殿下と向かい合った。その後ろにはやはりバーナード卿が控えている。
「ああ。姉上が茶会を開くと言っていた」
殿下が目を伏せてお茶を飲んでいる隙に、私は気まずい思いをしながらバーナード卿に視線を送った。しかし彼は何事もなかったかのように、常時と変わらぬ誠実そうな目で私に目礼するばかりだ。私ばかりあの夜の彼の口づけを意識しているらしい。
私は視線を殿下に戻した。
「君はお茶を淹れるのが上手いらしいな。久々に君が淹れるお茶を飲みたいそうだ。お茶や茶菓子の用意はこちらでする。身一つで来てくれればいい。ああ。それと君の妹、リーチェ嬢も招待したいそうだ」
「ミラディア王女殿下がリーチェもお誘いくださったのですか?」
ミラディア王女殿下がリーチェをお茶会に招待するのは珍しい。
「いや。私の妹のエレーヌが君の妹も招待したいと言ったそうだ。何でもエレーヌが以前、リーチェ嬢と茶会の約束をしていたとか」
そういえば、リーチェはエレーヌ王女殿下からお茶のお誘いを受けたと言っていた。
「そうでしたか」
「ああ。だからリーチェ嬢にも伝えておいてくれ。日時はまた後日知らせよう」
「承知いたしました」
「では用件も伝えたし、私はこれで失礼する。君はゆっくりお茶を楽しんでいけばいい」
大半のお茶を残して立ち上がった殿下は、以前と同じ言葉を放つ。
「いいえ。わたくしももう失礼いたします」
「そうか? ではバーナード、後は頼む」
「承知いたしました」
私は立ち上がって礼を取る。
「殿下、本日はご招待いただき、ありがとうございました」
「ああ」
それだけ言うと殿下は私に振り返りもせず、出て行った。
若い独身男性がいる部屋に妙齢の女性を残して去って行く殿下は、私の評判など気にもかけていないのだろう。今さら彼に期待するところはないが、心の中でため息をついてしまう。
「アリシア様」
「は、はい!」
考え事をしていた私は、バーナード卿に声をかけられて、びくりと肩を揺らす。
過剰に反応してしまった。
「失礼いたしました。馬車までお送りいたします」
「……はい」
彼は二人きりになってもいつもと変わらない。あの日は、やはり私を気遣ってくれただけのことだったのだろう。彼の厚意を好意と受け取ってはいけない。
「お願いいたします」
長い廊下を沈黙で終えた後、私たちは外に出た。
庭にまばらに人がいるのが見えるが、私たちが話したところで周りに聞こえるほどではない。
「バーナード卿」
一歩後ろに控えるバーナード卿に声をかける。あの日のことを謝罪することにしたのだ。
「はい。何でしょう」
答える彼の口調もいつもと変わらぬ温度だ。
「先日は醜態をお見せして誠に申し訳ございませんでした」
「いいえ」
「お恥ずかしい限りでございます。あの夜のことはどうかお忘れください」
彼からの返答はない。了承したということだろう。またそのまま馬車まで無言の時間が続いた。そして馬車の前までやって来たところで私は振り返った。
「お見送りいただき、ありがとうございました」
「いいえ。お手をどうぞ」
「ありがとうございます」
彼の手をそっと取って階段を上ろうとした。しかし指先を握られて動きを止められる。
「バーナード卿?」
「アリシア様はお忘れになっても構いません。ですが私は忘れません」
「え……?」
「どうぞお気をつけてお帰りください」
バーナード卿は微笑すると私の手を離した。
私は馬車の中で、バーナード卿が握った指先の熱が消えないようにと、自分の手を包み込んだ。
今日は王宮内の客間で、王太子殿下との面会となる。
私に会いたいわけでもないだろうに、いつもより日にちの間隔が短い。国王陛下にもっと私との時間を取るように言われたのだろうか。
そんなことを考えながら殿下と向かい合った。その後ろにはやはりバーナード卿が控えている。
「ああ。姉上が茶会を開くと言っていた」
殿下が目を伏せてお茶を飲んでいる隙に、私は気まずい思いをしながらバーナード卿に視線を送った。しかし彼は何事もなかったかのように、常時と変わらぬ誠実そうな目で私に目礼するばかりだ。私ばかりあの夜の彼の口づけを意識しているらしい。
私は視線を殿下に戻した。
「君はお茶を淹れるのが上手いらしいな。久々に君が淹れるお茶を飲みたいそうだ。お茶や茶菓子の用意はこちらでする。身一つで来てくれればいい。ああ。それと君の妹、リーチェ嬢も招待したいそうだ」
「ミラディア王女殿下がリーチェもお誘いくださったのですか?」
ミラディア王女殿下がリーチェをお茶会に招待するのは珍しい。
「いや。私の妹のエレーヌが君の妹も招待したいと言ったそうだ。何でもエレーヌが以前、リーチェ嬢と茶会の約束をしていたとか」
そういえば、リーチェはエレーヌ王女殿下からお茶のお誘いを受けたと言っていた。
「そうでしたか」
「ああ。だからリーチェ嬢にも伝えておいてくれ。日時はまた後日知らせよう」
「承知いたしました」
「では用件も伝えたし、私はこれで失礼する。君はゆっくりお茶を楽しんでいけばいい」
大半のお茶を残して立ち上がった殿下は、以前と同じ言葉を放つ。
「いいえ。わたくしももう失礼いたします」
「そうか? ではバーナード、後は頼む」
「承知いたしました」
私は立ち上がって礼を取る。
「殿下、本日はご招待いただき、ありがとうございました」
「ああ」
それだけ言うと殿下は私に振り返りもせず、出て行った。
若い独身男性がいる部屋に妙齢の女性を残して去って行く殿下は、私の評判など気にもかけていないのだろう。今さら彼に期待するところはないが、心の中でため息をついてしまう。
「アリシア様」
「は、はい!」
考え事をしていた私は、バーナード卿に声をかけられて、びくりと肩を揺らす。
過剰に反応してしまった。
「失礼いたしました。馬車までお送りいたします」
「……はい」
彼は二人きりになってもいつもと変わらない。あの日は、やはり私を気遣ってくれただけのことだったのだろう。彼の厚意を好意と受け取ってはいけない。
「お願いいたします」
長い廊下を沈黙で終えた後、私たちは外に出た。
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一歩後ろに控えるバーナード卿に声をかける。あの日のことを謝罪することにしたのだ。
「はい。何でしょう」
答える彼の口調もいつもと変わらぬ温度だ。
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「いいえ」
「お恥ずかしい限りでございます。あの夜のことはどうかお忘れください」
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「え……?」
「どうぞお気をつけてお帰りください」
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