かぐや姫奇譚?ー求婚者がダメンズばかりなんですがー

青太郎

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16 大臣 阿部御主人 -あべのみうし-

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『火鼠の皮衣は大臣阿倍御主人です』

「ヒネズミノカワゴロモハ、ダイジンアベノミウシデス?」

一瞬、何かの呪文を唱えられたのかと思った…。

『…貴方が火鼠の皮衣を要求していたのが阿倍御主人という大臣だと言っているのです…』

「…アベノミウシ…ダイジン」

『…そうです』

…だいじん…大臣…。大臣?

え、…それって俗に言う閣僚じゃないか…?

…官僚の更に上の役職だよな?

「…そんな役職の奴まで俺に求婚してるのか⁉︎」

『…今更ですね…。
…それで言うと石作皇子も車持皇子も皇族だったので身分でいえば上ですが…そこは理解出来てるのですか…?』

「え、あいつら皇族だったのか…
…知らんかった…」

それ以外の事に気を取られててそこまで気が回ってなかった…。

あいつら早口言葉のような名前の奴らだとは思っていたが、言われてみれば確かに名前に皇子と付いてるな。

メチャ高貴な方々じゃないか…。

そりゃ爺さんも焦るわな…。

側室ふざけんなって思ったけど、身分的に考えたらひょっとして普通なのか…?

ちょっと混乱する俺にお姫様が続ける。

『まぁ、天界の存在であり高貴な血筋の私が一番身分が高いのですけどね』



…一応、そうなる…のか…?

…罪人だけど?


そういう考えなら、お姫様の身体を持つ俺も同じ身分って事で良いかな…。

よし、俺が一番身分が上だ。


「んで、火鼠の皮衣はどこにあるんだ?」

『あなたは…本当に何も知らずに要求していたのですね』

「…名前しか聞いた事ない」

お姫様は疲れた様に言うが、むしろ要求した品物の名前を覚えてただけでも割と良い方だと思う。

『一応、下界では海を越えた国に存在すると伝えられていますが、火鼠は下界に存在しません。
…よって、火鼠の皮衣などあるはずがないのです』

「…これも、ないんだな」

良かった。

…そして、やっぱり海を越えて行かないといけないんだな。

でもまぁ、これなら見つかる事は無さそうだ。

「…一応見に行っておくか…?」

流石に偽物を作る奴はもういないと思うが、これまでの事もあるので念のために確認しておきたいとは思う。

『そうですね。
…どういうつもりなのかは確認しておきましょう』

…どうも、男性に対しての不信感を持ったお姫様は自分の目で確認する事の大切さを学んだようだ。




たどり着いた阿倍御主人の屋敷は豪華だった。

俺の屋敷も今までの2人の屋敷も神殿造の豪華な屋敷だったが、この阿倍御主人のお屋敷は一味違う。

置いてある品々に何処か異国情緒を感じる。

他ではあまり見たことのない陶器の壺や螺鈿造りの家具で溢れている。

他の屋敷にも螺鈿細工や漆喰の物は勿論あったが、ここまでの物では無かった。

「すごいな…」

『これらは…交易品の品のようですね』

交易品…外国の物か…。

だから、どこか異国情緒を感じるんだな…。

「お姫様、よく知ってるな」

『…下界については書物で調べましたので』

お姫様は何気に勉強家っぽい部分がちょいちょいある。

これで知的好奇心の行方さえ間違わなければな…。

『ところで、…朝廷に出仕しているのならば、この時間帯は屋敷にはいないのではないですか?』

「…」

言われてみれば…確かに、そりゃそうだな…。

影の移動にも慣れた物だ。

スイスイと朝廷まで移動して阿倍御主人を探す。

当たり前だが、仕事中のようだ。

そして当たり前の事のはずなのにちゃんと仕事をしている姿を見て感心してしまった…。

皇子達と比べて随分しっかりとしている。

流石大臣だ。

しかし、ここでこうして通常通りの仕事をしているということは俺への求婚はあきらめたのだろうか…?

『この者はしっかり現実を見ているのですね』

お姫様もどこかホッとした声をしている。


何日か様子を見に行ったが、阿部御主人が旅に出る様子は無かった。

かといって求婚を諦めたわけでもないらしく、どうも火鼠の皮衣を手に入れる為の手配は行っているようだ。

部下らしき者に何度も確認したり、わざわざ交易相手に問い合わせ等も行っているようだ。

しごく真っ当な手段で入手しようとしている事に思わず感心してしまった。

交易品に関わっているだけあって、目利きにも自信があるようだ。

これはと思うものがあると金額を気にせず手に入れている。

こうして手に入れた物がきっと屋敷に置かれていた品々なのだろう。

その地位に就くだけあって自信家で先頭に立って仕事をするタイプのようだ。

…ただ、性格はあまり褒められたものではない…

普通に仕事をしているだけで前の2人よりは全然素晴らしいとは思うのだが、性格は少々傲慢なところが目立つ。

多分、俺が難題を出した時に声を上げて最初に怒っていたのもコイツだったと思う…。

-「役立たずめ」-

-「お前の代わりなどいくらでもいる」-

-「こんな事もできんのか」-

-「無能はいらん」-

-「間違いなんてありえん」-

-「愚か者め」-

-「黙って従え」-

などなど…

何処のパワハラ上司だと言いたくなる暴言を日常的に使っている。

当然、部下達の評判はあまり良くはない。

自分の有能さを鼻にかけて他のもの達を見下した態度も目立つ。

これくらいの傲慢さがないとやっていけないのかもしれないが、人望は無さそうだな。

しかも、権力と金だけはあるので文句を言える者もいない。



「…念のために聞くんだけど…」

俺は恐る恐るお姫様に確認する。

「…ああいうのがタイプだったりとかは…」

『…ないです』

良かった。

偶に仕事の出来る俺様タイプが好きな女子もいるからな…。


とりあえず、こいつは放置しても大丈夫だろう。

これだけ目利きや自分の能力に自信があるのだから、まさか偽物を掴まされる事もないだろうし。

-「騙される方が愚かなのだ」-

-「物の価値など見ればわかるだろう」-

等と言っていたし。

きっとそのうち本物が見つからない現実に諦めがつくだろう。

-「物事の本質を知れ」-

-「どうなるのか先ぐらい見通せるだろ」-

等とも言っていたし。

ひょっとしたら、物事の本質がわかる程に優秀らしいので火鼠の皮衣等存在しない事にも薄々勘付いているかもしれないな…。

『…』

わかっているのなら早く諦めてくれるといいのに…。

『…この者、そんなに優秀そうには見えませんが…』

お姫様はどうも納得がいかないようだ。

確かに、発言を聞く限りはそこまで頭が良さそうには思えない…だが、

「…優秀な奴ってきっとそんなものなんじゃないか…?
…なんといっても大臣が務まるくらいだし」

…凡人にはわからないが、きっと優秀に違いない。

仕事もキチンと行っているようだし。

そして、偽物を用意するという小狡い発想も無さそうなのも良い。

「…コイツはほっといても大丈夫だな」



結果的に俺のこの時の判断は間違いではなかったが、分析は間違っていた。

…彼を過大評価していたようだ。

だが、問題にするほどの事は何もなかったので特に気にする必要はないだろう。



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