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連載
騒がしい始まり㉓
「大ばあちゃんっ、やめてよっ」
ミゲル君が微かに震える声で言う。私は落ち着いてと言って、ミゲル君のひいおばあさんに視線を戻す。
私は小刻みに震えている。勝手な解釈かもしれんけど、ミゲル君のひいおばあさんは、奴隷が家族にいるからというメンツ問題ではない。ただ、戦闘奴隷として危険にさらされているミゲル君を救い出したいだけやないかな。
確かに、戦闘奴隷って、危険を伴う。戦闘要員なのに、主人が準備する装備品は、中古にすらならないようなものだったらりするって聞いた。うちも晃太のスキルアップの為に、今でもボス部屋に挑んでもらっているしね。ま、私は装備品にはケチケチしてないけど、ひいおばあさんは知らないはず。きっと、ずっと心配しとったんやね。
少し、話をせんとね。
全ての事情を説明はできんけど、ミゲル君のひいおばあさんの不安要素を取り除かんと。
「ジュディさん、少し、お話しましょう。さ、まずは、ソファに座ってください」
私はジュディさんの前に膝をつき、立たせる。
「ミズサワ様、ミゲルを、ミゲルを」
「とにかく座ってください。それは一旦しまってください。さ、お茶飲んで、はい、落ち着いて」
座って、お茶飲んで、はい、落ち着いて。
ふー。
「ジュディさん、ミゲル君の事情って何処までご存知です?」
「はい」
ちょっと落ち着いたミゲル君のひいおばあさん。
「ワゾーさんから、酷い依頼に当たってしまい、借金と怪我を負って戦闘奴隷になったと」
そこは合ってる。やっぱり、ホークさんから連絡を受けたワゾーさんが報せたんやな。
「ただ、主人の女性がとてもいい方で、怪我は問題なくなり、生活も問題はないと」
うん、そうやね。
「しかし、いくら主人の方がいい方でも、戦闘奴隷です。碌な扱いはされないとそればかり聞いております、心配で心配で」
確かに、ここは通信手段が手紙しかない。転移門を使えば、短期間で出来るが、そう気軽に使えない。遠方に送るには順番待ちだそうだ。それにミゲル君はあまり手紙を出してはいなかった。家出した手前があったみたいだしね。奴隷になったことを伏せて、差し障りのない内容で御両親に送っていたみたい。
「他のご家族は、ミゲル君の戦闘奴隷の件は知っているんですか?」
「いえ、私だけです。孫娘家族は、ミゲルが元気でやっていると思っています」
「それは、お辛かったですね」
ミゲル君のひいおばあさんは、誰にも話せずに、ずっと一人で悩んでいたんやね。ミゲル君の身を案じながら。
何処から説明しようか。えーっと、まず。
「まずジュディさん。私はですね、ミゲル君を含めた鷹の目の皆さんは、私の家族の一員として迎え入れたんです。なので、こちらやユリアレーナにあるような関係ではありませんね」
はぁ、みたいな顔のミゲル君のひいおばあさん。
「色々事情があってですね、奴隷解放については鷹の目の皆さんとはよく話し合っています。ただ、今、この場でその事情をジュディさんにお話できないんです」
これは本当。だって、あのワイン護送の件で鷹の目の皆さんが私の元に来た爆発事件を起こした商会を、今夜叩く予定なのだから。
「ジュディさん、納得していただけないと思いますが、明日以降には事態は変わると思います。悪い方には行かないと思いますので、それまで待っていただけませんか?」
「しかし」
「大ばあちゃん、頼むから今日は帰って」
ミゲル君にまで懇願するように言われてしまい、ジュディさんは帰宅してくれる事に。帰り際にミゲル君とのお話時間を設ける。ちなみにギルドでの騒ぎは知らなかったようだ。もしかしたら、お店に影響があるかもしれないと説明する。ミゲル君に突っかかってきたあの青年の事も伝えるが、ひいおばあさんにも心当たりはないみたい。
「ミゲル、本当に大丈夫なんだね?」
「心配ないって、ユイさん達にはよくしてもらっているんだ。ほら、見てよこのシャツ。カラーシープ100%なんだよ。この鎧も剣も、全部ユイさんが買ってくれたんだよ。怪我しないようにって」
「でも、危ない事させられるって」
「冒険者になったんだから、大なり小なりそんな危険はあるんだよ。とにかく、俺は大丈夫だから、今日は帰って、お願いだから」
しぶしぶ、ジュディさんは帰っていったけど、ちらちらと振り返っていた。やっぱり、ミゲル君が心配なんやね。
「すみませんユイさん」
ひいおばあさんの姿を見送り、ミゲル君が謝ってくる。
「いやいや、大丈夫よ。やっぱりひいおばあさん、ミゲル君ば心配しとったね」
私がそう言うと、ミゲル君がちょっとホッとした顔だ。
もしかしたら、奴隷となったミゲル君に対して拒否的な姿勢になるのでは、と思っていたが、杞憂に終わった。お国柄的に拒否的になるのは仕方ないのかもしれなかったが、ホッとした。
時間を確認すると、そろそろ支度のためにサミーラさん達が来るね。
よし、と気合を入れる。
活躍するのはルージュや、ザイーム殿下、騎士団や警らの人達やけどね。
上手くいくように、神様にお祈りしよう。
ミゲル君が微かに震える声で言う。私は落ち着いてと言って、ミゲル君のひいおばあさんに視線を戻す。
私は小刻みに震えている。勝手な解釈かもしれんけど、ミゲル君のひいおばあさんは、奴隷が家族にいるからというメンツ問題ではない。ただ、戦闘奴隷として危険にさらされているミゲル君を救い出したいだけやないかな。
確かに、戦闘奴隷って、危険を伴う。戦闘要員なのに、主人が準備する装備品は、中古にすらならないようなものだったらりするって聞いた。うちも晃太のスキルアップの為に、今でもボス部屋に挑んでもらっているしね。ま、私は装備品にはケチケチしてないけど、ひいおばあさんは知らないはず。きっと、ずっと心配しとったんやね。
少し、話をせんとね。
全ての事情を説明はできんけど、ミゲル君のひいおばあさんの不安要素を取り除かんと。
「ジュディさん、少し、お話しましょう。さ、まずは、ソファに座ってください」
私はジュディさんの前に膝をつき、立たせる。
「ミズサワ様、ミゲルを、ミゲルを」
「とにかく座ってください。それは一旦しまってください。さ、お茶飲んで、はい、落ち着いて」
座って、お茶飲んで、はい、落ち着いて。
ふー。
「ジュディさん、ミゲル君の事情って何処までご存知です?」
「はい」
ちょっと落ち着いたミゲル君のひいおばあさん。
「ワゾーさんから、酷い依頼に当たってしまい、借金と怪我を負って戦闘奴隷になったと」
そこは合ってる。やっぱり、ホークさんから連絡を受けたワゾーさんが報せたんやな。
「ただ、主人の女性がとてもいい方で、怪我は問題なくなり、生活も問題はないと」
うん、そうやね。
「しかし、いくら主人の方がいい方でも、戦闘奴隷です。碌な扱いはされないとそればかり聞いております、心配で心配で」
確かに、ここは通信手段が手紙しかない。転移門を使えば、短期間で出来るが、そう気軽に使えない。遠方に送るには順番待ちだそうだ。それにミゲル君はあまり手紙を出してはいなかった。家出した手前があったみたいだしね。奴隷になったことを伏せて、差し障りのない内容で御両親に送っていたみたい。
「他のご家族は、ミゲル君の戦闘奴隷の件は知っているんですか?」
「いえ、私だけです。孫娘家族は、ミゲルが元気でやっていると思っています」
「それは、お辛かったですね」
ミゲル君のひいおばあさんは、誰にも話せずに、ずっと一人で悩んでいたんやね。ミゲル君の身を案じながら。
何処から説明しようか。えーっと、まず。
「まずジュディさん。私はですね、ミゲル君を含めた鷹の目の皆さんは、私の家族の一員として迎え入れたんです。なので、こちらやユリアレーナにあるような関係ではありませんね」
はぁ、みたいな顔のミゲル君のひいおばあさん。
「色々事情があってですね、奴隷解放については鷹の目の皆さんとはよく話し合っています。ただ、今、この場でその事情をジュディさんにお話できないんです」
これは本当。だって、あのワイン護送の件で鷹の目の皆さんが私の元に来た爆発事件を起こした商会を、今夜叩く予定なのだから。
「ジュディさん、納得していただけないと思いますが、明日以降には事態は変わると思います。悪い方には行かないと思いますので、それまで待っていただけませんか?」
「しかし」
「大ばあちゃん、頼むから今日は帰って」
ミゲル君にまで懇願するように言われてしまい、ジュディさんは帰宅してくれる事に。帰り際にミゲル君とのお話時間を設ける。ちなみにギルドでの騒ぎは知らなかったようだ。もしかしたら、お店に影響があるかもしれないと説明する。ミゲル君に突っかかってきたあの青年の事も伝えるが、ひいおばあさんにも心当たりはないみたい。
「ミゲル、本当に大丈夫なんだね?」
「心配ないって、ユイさん達にはよくしてもらっているんだ。ほら、見てよこのシャツ。カラーシープ100%なんだよ。この鎧も剣も、全部ユイさんが買ってくれたんだよ。怪我しないようにって」
「でも、危ない事させられるって」
「冒険者になったんだから、大なり小なりそんな危険はあるんだよ。とにかく、俺は大丈夫だから、今日は帰って、お願いだから」
しぶしぶ、ジュディさんは帰っていったけど、ちらちらと振り返っていた。やっぱり、ミゲル君が心配なんやね。
「すみませんユイさん」
ひいおばあさんの姿を見送り、ミゲル君が謝ってくる。
「いやいや、大丈夫よ。やっぱりひいおばあさん、ミゲル君ば心配しとったね」
私がそう言うと、ミゲル君がちょっとホッとした顔だ。
もしかしたら、奴隷となったミゲル君に対して拒否的な姿勢になるのでは、と思っていたが、杞憂に終わった。お国柄的に拒否的になるのは仕方ないのかもしれなかったが、ホッとした。
時間を確認すると、そろそろ支度のためにサミーラさん達が来るね。
よし、と気合を入れる。
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上手くいくように、神様にお祈りしよう。
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