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連載
首都へ⑤
いよいよ次の日。
早めに準備する。
晃太はスーツ。寝癖を直している。
私はヘルプに来てくれた母が、髪をくるっと一つにアップにしてくれる。私はパーカーさんが作ってくれた丈が長めのカラシ色のワンピース。タージェルさんが選んでくれた真珠のピアス。ネックレスは仰々しいからやめた。レースの手袋もして。普段あんまりしないけど、化粧もした。あまり長い時間すると、パリパリしてくるんだよね。
「ありがとうお母さん、もしかしたら今日呼べんかもしれんけん」
「よかよ。とにかく皆さんのケガ具合を先にね」
母をサブ・ドアからマーファに誘導する。最後まで心配そうだ。
ビアンカとルージュ達の準備も済んだ。綺麗にブラッシングもしたし、バンダナもアイロンかけたし。ノワールも念入りにブラッシングした。
私と晃太がお互いをチェックする。
「大丈夫みたいやね」
「そうやね」
よし、行こう。ちょっと早いけど5分前行動や。
「元気、コハク、今日はおとなしくしてね」
「わんっ」
「にゃあ」
分かっとるかね?
元気とコハクはダイアナちゃんの半成人の時のネクタイを。ルリ、クリス、ヒスイはリボンだ。
馬車をノワールに繋いで出発。私は本日スカートなので馬車の中で、晃太だけ馭者台に乗る。馬車のサイドにはビアンカとルージュがガッチリガード。門を出る時に冒険者ギルドカードを提示し、赤騎士団の人が2名付いてきてくれた。
13:25ギルド到着。
手綱を赤騎士団の人に託し、早いけどギルドに入り商人ギルドの窓口に向かう。昨日の中年男性がさっと出てきてくれた。
「すみません。少し早く来てしまって」
「構いませんよミズサワ様、お待ちしておりました。早速参りましょうか?」
「はい、お願いします」
「では、私リーバクがご案内致します」
「うちの馬車に乗られます?」
「いえ、商人ギルドの馬車がございます。先導しますので」
「お願いします」
ギルドの前に移動し待つことしばし、2人乗りのかわいか馬車に乗ったリーバクさんが来た。馬、小さくてかわいか。ノワールに比べたら皆小柄でかわいかなんだよね。馬って目がかわいいんよ。ケルピー? あんなの馬やない。
「では、先導します」
「お願いします」
ノワールの牽く馬車は、コーリナ商会に向かう。
エマちゃん、皆さん、今行くけんね。
コーリナ商会は静かな雰囲気の通り、高級品を扱うエリアのちょっと奥にある。鉄柵に囲まれた落ち着いた感じのお屋敷だ。門にはガッチリとした門番が2人、槍を持ち立っている。連絡は行っているだろうけど、やはり警戒された。
リーバクさんがまず話し、私達は冒険者ギルドカードを提示する。
「紹介状はお持ちですか?」
門番の片方が聞いてくる。もちろんありますよ。
「はい、あります。今、出しますので」
「いえ、お持ちか確認するだけなので。紹介状は当主人にお見せください」
「はい」
「では、どうぞ」
鉄柵を開けてくれて中に入る。なかなか綺麗なお庭が。元気が走り出そうになり、ビアンカがリードを咥えて止める。
ぞろぞろと入り、分厚い扉を開けてくれる。
中も品よく落ち着いた雰囲気。本当に奴隷を扱っているのか分からない。中に入ると、スーツを着た人、まるで執事さんみたいな男性が交代し案内してくれる。1階の広いサロンみたいなところに通される。
「当主人が参りますので、こちらでお待ちください」
「はい」
私と晃太とリーバクさんはソファーに。ビアンカとルージュは気ままにゴロリ。元気とコハクはうろうろしたそうだけど、リードでもぞもぞしてる。ルリとクリス、ヒスイはある程度匂いを嗅いで落ち着いて、母親の元でゴロリ。
直ぐにザ・ベテランメイドさん、みたいな人がお茶を出してくれる。うーん、お茶より早くエマちゃん達の状況知りたいんだけどなあ。
「あのリーバクさん、奴隷購入までの流れを教えていただけます?」
「はい、構いませんよ」
まず、奴隷購入に関しての注意事項の確認。これは初回でも2回目でも、3回目でも必ず行われる。
奴隷を故意に傷つけてはならない。
奴隷の衣食住を保証しなければならない。
労働奴隷の場合、必要な道具と作業場を確保しなければならない。そして労働時間は1日10時間を越えてはならない。必ず労働時間内に1時間以上の休息を挟まなければならない。休息時間は労働時間と認められる。
戦闘奴隷の場合、必要な武装一式を準備しなくてはならない。ランク不相応の依頼を受けてはならない。無理な特攻をさせてはならない。労働時間は実質労働時間は1日10時間。必ず労働時間内に1時間以上の休息を挟まなければならない。休息時間は労働時間と認められる。ただし、ダンジョン内など特殊環境下の場合は、これに準じないが、必ず休息時間を設けること。ダンジョン内での水・食糧の準備をしなくてはならない。ダンジョンに行った場合、追加報酬を支払う必要がある。これは契約時に配分を双方納得した内容で決められる。
奴隷に、肉体関係を求めてはならない。
奴隷に犯罪行為をさせてはならない、また、加担をさせてはならない。
契約時に決められた奴隷からの条件を、覆してはならない。
ユリアレーナの法で、奴隷をキズつけたり、犯罪行為をさせたり、強要すると、主人が罰せられる。
これが説明される。
で、次にこちらの条件を出し、向こうの条件を聞いて、それでいいなら購入となる。
私達は晃太のスキルアップの為に戦闘してもらうこと、ノワールに乗ってもらうこと、ビアンカやルージュ達のブラッシング等手伝ってもらうこと。そして私達のスキルを秘匿にしてもらうこと。ビアンカやルージュ達のスキルや戦闘能力、恐らく知るだろう原始のダンジョンなどだ。
「それに関しては制約魔法で守られますよ」
リーバクさんが説明してくれる。なら、私達からの要求はない。
「向こうは奴隷の代表が連れてこられるはずです。彼から奴隷達の条件を聞いて、ミズサワ様が納得すれば契約です。後は額により拘束期間が決まります」
「そうですか」
皆さんの条件はなんだろう?
あ、しまったッ。肝心な事が抜けてるッ。
リティアさんから、額を聞いていなかったッ。まずい、とりあえず有り金持ってきたけど、足りるかな?
私はこそっと晃太に相談。
「た、足りるかね?」
「ん? 足りるんやない?」
大丈夫やろうか?
別の心配が発生したが、ドアが開き、品のよい男性が現れる。
「お待たせしましたミズサワ様。私、当コーリナ商会取締役、ヨルジャと申します」
綺麗にお辞儀をするヨルジャさん。私達も立ち上がり頭を下げる。
「どうぞお座りください」
「はい」
促され、着席する。
「ではまず。紹介状を拝見させていただけますか?」
「はい」
私はアイテムボックスから全ての紹介状を出す。
「冒険者ギルド、商人ギルド、職人ギルド、鍛冶師ギルド、薬師ギルドから頂いた紹介状です。こちらはマーファ領主ダストン・ハルスフォン伯爵様からのです」
目が点になるヨルジャさん。
「あのミズサワ様、紹介状は一通あれば十分なんですよ」
「え? そうなんですか?」
だけど、せっかく頂いた紹介状だ。全て渡す。ヨルジャさんが確認。
「はい、問題ございません。次に奴隷購入に関しての説明をさせていただきます」
先ほどリーバクさんから聞いた内容と一緒だ。私達の条件も伝える。
「承知しました。制約魔法で、それは秘匿できます」
制約魔法は施行されると、首もとに制約紋が浮かび上がる。そして秘匿して欲しい内容以外にも、嘘がつけなくなる。とは言っても、故意に人を傷つけたり、騙したりするもののみ。具合が悪いのに、大丈夫だと言うと制約紋が赤く光るそうだ。ただ、自分を守ったり、相手を思っての嘘ならば制約紋は変わらない。
「では、冒険者パーティー『鷹の目』の代表者を連れて参ります。リーダーは動けないため、サブ・リーダーになります」
「はい」
チュアンさんね。いよいよや。でも、リーダーさん、やっぱり重症のままなんや。
心配しながら、待つと、大柄の男性が連れてこられる。
チュアンさんだ。私達を見て、驚いた顔をしている。
軽症だと聞いたけど、チュアンさんに目立つような傷がない。良かった。ずいぶん粗末な服だけど。
チュアンさんはヨルジャさんのソファーの近くに移動する。その直ぐ近くに武器を携帯した男性が張り付く。
「ミズサワ様、『鷹の目』サブ・リーダーのヒーラーチュアンです」
ヨルジャさんが紹介してくれるが、知ってますよ。
チュアンさんが一礼する。その顔には戸惑いの表情が浮かぶ。
「まず、そちらの奴隷に対する要求を」
「はい」
私は一息つく。
「まず、私達は今、戦闘スキルアップをしています。その為に一緒にダンジョンに潜って欲しいんです。うちにはビアンカとルージュがいますので危険時にはフォローに回ってもらいます。武装一式は全てこちらが準備しますが、我々は素人と代わりないので、皆さんの意見を取り入れながら準備します。必要なものがあれば、随時申請してください。私達は冒険者ギルドカードを持ってはいますが、それはほぼ身分証代わりです。もし、冒険者としておかしな事をしていたら、適宜注意して欲しいんです。衣食住も心配はありません。私達には高齢の両親がいます。必要時に護衛をしていただきたいです。そして、従魔のブラッシング等の世話を一緒にして欲しいんです。私には魔法馬もいますので、そちらもお願いしたいんです。最後にその魔法馬に乗る件ですが、騎乗能力の高いリーダーさんのケガをまずどうにかしますので、ご心配なく。もちろん残り2人のケガもです」
チュアンさんが驚いた顔をする。
「では、そちらの条件は?」
ヨルジャさんが、チュアンさんに催促する。
「はい。我々はリーダーとメンバー2名の治療継続を希望します」
「……………え、それだけ?」
「はい。それを望みます」
ぶれないチュアンさん。
「ほら、家族に手紙とかは? 別に構いませんよ。こちらで郵送代も支払いますし。絶対に無理的なことは?」
私が聞くと、チュアンさんが黙るが、重々しく口を開く。
「メンバーに女性が2人おり、その…………」
「承知してます。絶対にそのような事はしません」
隣で晃太が無言で頷く。基本的に真面目な性格だ、女性に奴隷だからと、そんな事は要求はしない。
それを聞いて、ほっとした表情のチュアンさん。
「他には?」
私が聞くと、チュアンさんは首を横に降る。
「ありません」
「では、お給料ですが。月に各自一万。ダンジョンに潜った時は、ドロップ品の買い取り価格1%。そして夏と冬は特別給料をお支払いします。こちらの額は気持ちくらいですので」
「十分です」
話がまとまる。
一旦チュアンさんが部屋を退室。残りメンバーが異議なければ本契約となり。
受けてくれるといいけど。
チュアンさんは直ぐに戻って来る。
「どうぞ、よろしくお願いいたします」
「はい」
良かったッ。
「では、契約に入ります。ミズサワ様、冒険者パーティー『鷹の目』の価格ですが、治療費、食事、部屋代込みで、ちょうど一億になります。パーティーランクを考慮して拘束年数は20年となります。こちらは鷹の目の今後の働き具合で短くすることは可能です。もちろん双方しっかり話し合いで納得してからですが。ミズサワ様、分割方法は?」
「一括払いで」
私は白金貨を1枚出す。
チュアンさんが目を剥く。だけど、ヨルジャさんは流石見慣れているのか、顔色一つ変えずに書類を手早く作成し出す。
内容を晃太と確認。説明のあった内容とお給料、条件がきちんと記載されている。
購入者は私だ。サインと魔力を流す。本来ならリーダーさんがサインをしないといけないが、代理でチュアンさんがサインと魔力を流す。
これで鷹の目の皆さんは、私の奴隷となる。
……………………………嫌な響きや。
「はい、確認しました。3日以内に冒険者ギルドで、再登録が必要になりますので、期日内に相談窓口にいってください」
ヨルジャさんはサインと白金貨を確認。
「では、他のメンバーを連れて来ましょう」
ああ、やっとや。
早めに準備する。
晃太はスーツ。寝癖を直している。
私はヘルプに来てくれた母が、髪をくるっと一つにアップにしてくれる。私はパーカーさんが作ってくれた丈が長めのカラシ色のワンピース。タージェルさんが選んでくれた真珠のピアス。ネックレスは仰々しいからやめた。レースの手袋もして。普段あんまりしないけど、化粧もした。あまり長い時間すると、パリパリしてくるんだよね。
「ありがとうお母さん、もしかしたら今日呼べんかもしれんけん」
「よかよ。とにかく皆さんのケガ具合を先にね」
母をサブ・ドアからマーファに誘導する。最後まで心配そうだ。
ビアンカとルージュ達の準備も済んだ。綺麗にブラッシングもしたし、バンダナもアイロンかけたし。ノワールも念入りにブラッシングした。
私と晃太がお互いをチェックする。
「大丈夫みたいやね」
「そうやね」
よし、行こう。ちょっと早いけど5分前行動や。
「元気、コハク、今日はおとなしくしてね」
「わんっ」
「にゃあ」
分かっとるかね?
元気とコハクはダイアナちゃんの半成人の時のネクタイを。ルリ、クリス、ヒスイはリボンだ。
馬車をノワールに繋いで出発。私は本日スカートなので馬車の中で、晃太だけ馭者台に乗る。馬車のサイドにはビアンカとルージュがガッチリガード。門を出る時に冒険者ギルドカードを提示し、赤騎士団の人が2名付いてきてくれた。
13:25ギルド到着。
手綱を赤騎士団の人に託し、早いけどギルドに入り商人ギルドの窓口に向かう。昨日の中年男性がさっと出てきてくれた。
「すみません。少し早く来てしまって」
「構いませんよミズサワ様、お待ちしておりました。早速参りましょうか?」
「はい、お願いします」
「では、私リーバクがご案内致します」
「うちの馬車に乗られます?」
「いえ、商人ギルドの馬車がございます。先導しますので」
「お願いします」
ギルドの前に移動し待つことしばし、2人乗りのかわいか馬車に乗ったリーバクさんが来た。馬、小さくてかわいか。ノワールに比べたら皆小柄でかわいかなんだよね。馬って目がかわいいんよ。ケルピー? あんなの馬やない。
「では、先導します」
「お願いします」
ノワールの牽く馬車は、コーリナ商会に向かう。
エマちゃん、皆さん、今行くけんね。
コーリナ商会は静かな雰囲気の通り、高級品を扱うエリアのちょっと奥にある。鉄柵に囲まれた落ち着いた感じのお屋敷だ。門にはガッチリとした門番が2人、槍を持ち立っている。連絡は行っているだろうけど、やはり警戒された。
リーバクさんがまず話し、私達は冒険者ギルドカードを提示する。
「紹介状はお持ちですか?」
門番の片方が聞いてくる。もちろんありますよ。
「はい、あります。今、出しますので」
「いえ、お持ちか確認するだけなので。紹介状は当主人にお見せください」
「はい」
「では、どうぞ」
鉄柵を開けてくれて中に入る。なかなか綺麗なお庭が。元気が走り出そうになり、ビアンカがリードを咥えて止める。
ぞろぞろと入り、分厚い扉を開けてくれる。
中も品よく落ち着いた雰囲気。本当に奴隷を扱っているのか分からない。中に入ると、スーツを着た人、まるで執事さんみたいな男性が交代し案内してくれる。1階の広いサロンみたいなところに通される。
「当主人が参りますので、こちらでお待ちください」
「はい」
私と晃太とリーバクさんはソファーに。ビアンカとルージュは気ままにゴロリ。元気とコハクはうろうろしたそうだけど、リードでもぞもぞしてる。ルリとクリス、ヒスイはある程度匂いを嗅いで落ち着いて、母親の元でゴロリ。
直ぐにザ・ベテランメイドさん、みたいな人がお茶を出してくれる。うーん、お茶より早くエマちゃん達の状況知りたいんだけどなあ。
「あのリーバクさん、奴隷購入までの流れを教えていただけます?」
「はい、構いませんよ」
まず、奴隷購入に関しての注意事項の確認。これは初回でも2回目でも、3回目でも必ず行われる。
奴隷を故意に傷つけてはならない。
奴隷の衣食住を保証しなければならない。
労働奴隷の場合、必要な道具と作業場を確保しなければならない。そして労働時間は1日10時間を越えてはならない。必ず労働時間内に1時間以上の休息を挟まなければならない。休息時間は労働時間と認められる。
戦闘奴隷の場合、必要な武装一式を準備しなくてはならない。ランク不相応の依頼を受けてはならない。無理な特攻をさせてはならない。労働時間は実質労働時間は1日10時間。必ず労働時間内に1時間以上の休息を挟まなければならない。休息時間は労働時間と認められる。ただし、ダンジョン内など特殊環境下の場合は、これに準じないが、必ず休息時間を設けること。ダンジョン内での水・食糧の準備をしなくてはならない。ダンジョンに行った場合、追加報酬を支払う必要がある。これは契約時に配分を双方納得した内容で決められる。
奴隷に、肉体関係を求めてはならない。
奴隷に犯罪行為をさせてはならない、また、加担をさせてはならない。
契約時に決められた奴隷からの条件を、覆してはならない。
ユリアレーナの法で、奴隷をキズつけたり、犯罪行為をさせたり、強要すると、主人が罰せられる。
これが説明される。
で、次にこちらの条件を出し、向こうの条件を聞いて、それでいいなら購入となる。
私達は晃太のスキルアップの為に戦闘してもらうこと、ノワールに乗ってもらうこと、ビアンカやルージュ達のブラッシング等手伝ってもらうこと。そして私達のスキルを秘匿にしてもらうこと。ビアンカやルージュ達のスキルや戦闘能力、恐らく知るだろう原始のダンジョンなどだ。
「それに関しては制約魔法で守られますよ」
リーバクさんが説明してくれる。なら、私達からの要求はない。
「向こうは奴隷の代表が連れてこられるはずです。彼から奴隷達の条件を聞いて、ミズサワ様が納得すれば契約です。後は額により拘束期間が決まります」
「そうですか」
皆さんの条件はなんだろう?
あ、しまったッ。肝心な事が抜けてるッ。
リティアさんから、額を聞いていなかったッ。まずい、とりあえず有り金持ってきたけど、足りるかな?
私はこそっと晃太に相談。
「た、足りるかね?」
「ん? 足りるんやない?」
大丈夫やろうか?
別の心配が発生したが、ドアが開き、品のよい男性が現れる。
「お待たせしましたミズサワ様。私、当コーリナ商会取締役、ヨルジャと申します」
綺麗にお辞儀をするヨルジャさん。私達も立ち上がり頭を下げる。
「どうぞお座りください」
「はい」
促され、着席する。
「ではまず。紹介状を拝見させていただけますか?」
「はい」
私はアイテムボックスから全ての紹介状を出す。
「冒険者ギルド、商人ギルド、職人ギルド、鍛冶師ギルド、薬師ギルドから頂いた紹介状です。こちらはマーファ領主ダストン・ハルスフォン伯爵様からのです」
目が点になるヨルジャさん。
「あのミズサワ様、紹介状は一通あれば十分なんですよ」
「え? そうなんですか?」
だけど、せっかく頂いた紹介状だ。全て渡す。ヨルジャさんが確認。
「はい、問題ございません。次に奴隷購入に関しての説明をさせていただきます」
先ほどリーバクさんから聞いた内容と一緒だ。私達の条件も伝える。
「承知しました。制約魔法で、それは秘匿できます」
制約魔法は施行されると、首もとに制約紋が浮かび上がる。そして秘匿して欲しい内容以外にも、嘘がつけなくなる。とは言っても、故意に人を傷つけたり、騙したりするもののみ。具合が悪いのに、大丈夫だと言うと制約紋が赤く光るそうだ。ただ、自分を守ったり、相手を思っての嘘ならば制約紋は変わらない。
「では、冒険者パーティー『鷹の目』の代表者を連れて参ります。リーダーは動けないため、サブ・リーダーになります」
「はい」
チュアンさんね。いよいよや。でも、リーダーさん、やっぱり重症のままなんや。
心配しながら、待つと、大柄の男性が連れてこられる。
チュアンさんだ。私達を見て、驚いた顔をしている。
軽症だと聞いたけど、チュアンさんに目立つような傷がない。良かった。ずいぶん粗末な服だけど。
チュアンさんはヨルジャさんのソファーの近くに移動する。その直ぐ近くに武器を携帯した男性が張り付く。
「ミズサワ様、『鷹の目』サブ・リーダーのヒーラーチュアンです」
ヨルジャさんが紹介してくれるが、知ってますよ。
チュアンさんが一礼する。その顔には戸惑いの表情が浮かぶ。
「まず、そちらの奴隷に対する要求を」
「はい」
私は一息つく。
「まず、私達は今、戦闘スキルアップをしています。その為に一緒にダンジョンに潜って欲しいんです。うちにはビアンカとルージュがいますので危険時にはフォローに回ってもらいます。武装一式は全てこちらが準備しますが、我々は素人と代わりないので、皆さんの意見を取り入れながら準備します。必要なものがあれば、随時申請してください。私達は冒険者ギルドカードを持ってはいますが、それはほぼ身分証代わりです。もし、冒険者としておかしな事をしていたら、適宜注意して欲しいんです。衣食住も心配はありません。私達には高齢の両親がいます。必要時に護衛をしていただきたいです。そして、従魔のブラッシング等の世話を一緒にして欲しいんです。私には魔法馬もいますので、そちらもお願いしたいんです。最後にその魔法馬に乗る件ですが、騎乗能力の高いリーダーさんのケガをまずどうにかしますので、ご心配なく。もちろん残り2人のケガもです」
チュアンさんが驚いた顔をする。
「では、そちらの条件は?」
ヨルジャさんが、チュアンさんに催促する。
「はい。我々はリーダーとメンバー2名の治療継続を希望します」
「……………え、それだけ?」
「はい。それを望みます」
ぶれないチュアンさん。
「ほら、家族に手紙とかは? 別に構いませんよ。こちらで郵送代も支払いますし。絶対に無理的なことは?」
私が聞くと、チュアンさんが黙るが、重々しく口を開く。
「メンバーに女性が2人おり、その…………」
「承知してます。絶対にそのような事はしません」
隣で晃太が無言で頷く。基本的に真面目な性格だ、女性に奴隷だからと、そんな事は要求はしない。
それを聞いて、ほっとした表情のチュアンさん。
「他には?」
私が聞くと、チュアンさんは首を横に降る。
「ありません」
「では、お給料ですが。月に各自一万。ダンジョンに潜った時は、ドロップ品の買い取り価格1%。そして夏と冬は特別給料をお支払いします。こちらの額は気持ちくらいですので」
「十分です」
話がまとまる。
一旦チュアンさんが部屋を退室。残りメンバーが異議なければ本契約となり。
受けてくれるといいけど。
チュアンさんは直ぐに戻って来る。
「どうぞ、よろしくお願いいたします」
「はい」
良かったッ。
「では、契約に入ります。ミズサワ様、冒険者パーティー『鷹の目』の価格ですが、治療費、食事、部屋代込みで、ちょうど一億になります。パーティーランクを考慮して拘束年数は20年となります。こちらは鷹の目の今後の働き具合で短くすることは可能です。もちろん双方しっかり話し合いで納得してからですが。ミズサワ様、分割方法は?」
「一括払いで」
私は白金貨を1枚出す。
チュアンさんが目を剥く。だけど、ヨルジャさんは流石見慣れているのか、顔色一つ変えずに書類を手早く作成し出す。
内容を晃太と確認。説明のあった内容とお給料、条件がきちんと記載されている。
購入者は私だ。サインと魔力を流す。本来ならリーダーさんがサインをしないといけないが、代理でチュアンさんがサインと魔力を流す。
これで鷹の目の皆さんは、私の奴隷となる。
……………………………嫌な響きや。
「はい、確認しました。3日以内に冒険者ギルドで、再登録が必要になりますので、期日内に相談窓口にいってください」
ヨルジャさんはサインと白金貨を確認。
「では、他のメンバーを連れて来ましょう」
ああ、やっとや。
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