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連載
始末?⑥
「わんわんっ」
「こら、花。すみません」
「いえいえ」
景子はけたたましく吠える花を抱える。吠える相手はフェリクスだ。当のフェリクスは穏やかな顔で応えている。
御用聞きとして急遽加わったフェリクスは、見習い2人だけを連れていた。元々のメンバーは後3人いて、1人はトッパで湯治、2人は一旦故郷に戻っている。今回は見習い2人の勉強になるからと、御用聞きに参加している。建前上。
フォリアとセーシャは冒険者ギルドで、いきなりリティアから引き合わされた時はなんの冗談だろうか、と思った。なんでSランクの冒険者が御用聞き? と。だが、顔合わせの時にリティアから、あの屋台街で騒ぎを起こした冒険者崩れの貴族女が、優衣の両親に害をなそうとしていると聞かされた。
「もちろんパーティーハウス周辺の警護も万全を期します。しかし、この件はミズサワ様には知られたくありません。なので、通常通りに接してください。闇ギルドに関しては分かり次第に潰します。それまでミズサワ様のご両親を守り抜いてください」
ギルドとしては、こんな血生臭い事は、知られたくないと。
おそらくかなりの大捕物になる、と。フェリクスは優衣の両親の護衛と、その闇ギルド殲滅依頼を受けたようだ。
事情を知っているのはフォリアとセーシャ、そして龍太が通う工房主のファベルのみ。フェリクスは見習いにも、他のメンバーにも告げてはいない。
事情を知らないエルバは、フェリクスの見習いの2人、ヘルトとドロテアと仲良くなり、空いた時間でよく魔力訓練を一緒にしている。ブルーメとコーレンもフェリクスは好印象だ。物腰は柔らかいし、なかなか顔立ちはいいし、何より憧れの存在であるSランクだから。
だが、セーシャだけは、少し一線を引いていた。理由は、フェリクスに底知れぬ不気味さがあると。フォリアも言われて気付く。いつも穏やかな顔だが、ずっとその表情を張り付かせ、いつもフル装備で休んでいるかも分からないくらいに起きている。時折休憩があるが、いつも外を気にしている。
おそらく襲われる可能性があるからと、気をはっているんだろうが。でもいつ、休んでいるんだろう? 本当に襲われるのだろうか? そうなれば、自分達が優衣の両親を守れるだろうか?
少し不安になりながら、3週間が過ぎようとしていた。
特に問題はない。
Sランクだからと言って騒がれないのは、フェリクスの顔を誰もしらないからだ。金属の鎧を着た背の高い男なんて、ゴロゴロいる。通信手段が少ないため、名乗りもしなければ分からない。スカイランでは軍隊ダンジョンに挑む為に、数ヶ月滞在したから顔が知られていただけ。一度、フェリクスの知り合いが驚いた顔をして話しかけきた。山風のロッシュだ。だが、そのロッシュにフェリクスは口の前に人差し指を立てる。口止めだ。たったそれだけだったが、ロッシュはすぐに引いた。そして自分のパーティーメンバーを連れて後にした。おそらくメンバーにも口止めしているはずだ。
フェリクスは優衣の両親とは穏やかに話して信頼を得ているようだ。以前スカイランでもちょっとした騒動があり、フェリクスが助け船を出した事があって余計に信頼したようだ。ただ、ミズサワ家の愛犬花だけは、フェリクスにいつもけたたましく吠えた。フォリアやセーシャや他のメンバーには、短い足で駆け寄って来るのに、フェリクスだけには懐かない。
「はは、嫌われましたね」
「すみません、怖がりで、大柄の男性が苦手みたいで」
景子が申し訳ない顔だ。抱えられた花は、プルプル震えている。
マルシェでの買い物帰りに、散歩がてら、リードを着けて歩く花は、いつにも増して吠えて仕方なく景子が抱えた。
メリッ
神経を尖らせていたフォリアが、小さな音に気がついて振り返る。景子はコーレンと前を歩いていた。そのすぐ後ろにフォリア、最後尾にフェリクスだが、そのフェリクスが片手で人の首を掴み、路地に放り込んでいた。人、おそらく男だと思われるが、真っ黒な触手にぐるぐる巻きにされ、路地に放り込まれ、音もなく引き込まれていく。
一瞬でフォリアが理解する。
とうとう、闇ギルドが手を出してきた、と。
襲撃犯に全く気がつかなかったフォリアは、血の気が引いてくる。フェリクスは、そんなフォリアに口の前で人差し指を立てる。
黙ってろ。
そんな意味だろう。フォリアはそれに従った。
景子と花をパーティーハウスに送り、夕方フェリクスは龍太の迎えに行った。問題なく帰って来たと思ったら、フェリクスがパーティーハウスに闇の防御魔法をかけていた。ルージュが気軽に発動させる魔法のカーテンだ。
そっとフェリクスはフォリアとセーシャを呼んだ。
「ギルドに呼ばれたので、少し空けます」
それだけ告げると、2人は察知した。おそらく闇ギルドのねぐらが分かったのだろう、と。
その闇ギルドは今まで尻尾を掴ませずに、いつも手入れ寸前で逃げられていた。これを期に一網打尽にしたいと、リティアが言っていた。
さっき、景子を襲おうとした襲撃犯をどうにかして、吐かせたのだろう。
フェリクスは、見習い達に遅くなるからと声をかけてから、出掛けていった。
夜、夜警をしていたフォリアとセーシャは、フェリクスの帰りを待った。日付が変わった頃に、フェリクスが戻って来たが。
鉄錆の臭いが、鼻を付いた。何をしてきたかすぐに分かったが、あえて聞かない。
「終わりました。シャワーを浴びても?」
「どうぞ」
シャワーに向かった後で、床に数滴の血が落ちているのを見て、慌ててフォリアとセーシャは床を拭いた。まさか、怪我をしたのでは、と心配したが、長めにシャワーを浴びたフェリクスは、初めて鎧を身に着けず出てきた。怪我の有無を聞くが、それはないとフェリクスは答えた。
「少し、休んでも?」
いつ休んでいたか分からない男が初めて口にした言葉。
「はい、大丈夫です。明日、いえ、今日の御用聞きは私達がしますので休んでください」
咄嗟にフォリアが返答すると、フェリクスが安堵したように息を吐き出す。
「感謝します」
そう言ってフェリクスは宛がわれた部屋に行った。
「本当に、全部終わらせたんだね」
見送ったセーシャがやっと口を開く。
この3週間、今まで休んだ様子もなかった男が、やっと休むと言った事もそうだが、いつもフル装備で、周囲に分からないように張り詰めていたものが緩んでいた。それをしなくてもいい、そんな状況になったのだと。
フェリクスは夕方近くまで昏睡したように眠っていた。
そしてマーファの街中で、昨夜行われた大捕物が話題になっていた。フォリアとセーシャも耳にしたが、行ったのはマーファの騎士団と警備達だと言う話だ。フェリクスの話が一つもない、おそらく伏せられたのだろう。
何か引っ掛かるが、当のフェリクスが何も言わないし、フォリアもセーシャも何か言う権利もない。
その大捕物が終わった数日後、変化が起きた。
「くうーん、くうーん」
いつもけたたましく吠えていた花が、フェリクスに尻尾を振っている。
「はは、可愛いですね」
そう言ってフェリクスは笑う。それには、何か底に潜ませていない笑顔だ。
もしかして、こんな小さな犬が、今まで張っていたフェリクスの警戒心が分かっていたのだろうか? とフォリアは思ったが、花の言葉が分かるわけない。
「くうーん」
少し考えていたが、短い足で駆け寄られたから、考察をやめた。手を差し出すと、はみはみと甘噛みされた。
かわいい。
景子も変わらず笑顔だ。
それを見て、フォリアは、よし、としようと思う。
無事に全てが、終わったのならば、それでいい。
「それでいいんじゃないかい」
セーシャもフォリアにしか聞こえないように言った。
「こら、花。すみません」
「いえいえ」
景子はけたたましく吠える花を抱える。吠える相手はフェリクスだ。当のフェリクスは穏やかな顔で応えている。
御用聞きとして急遽加わったフェリクスは、見習い2人だけを連れていた。元々のメンバーは後3人いて、1人はトッパで湯治、2人は一旦故郷に戻っている。今回は見習い2人の勉強になるからと、御用聞きに参加している。建前上。
フォリアとセーシャは冒険者ギルドで、いきなりリティアから引き合わされた時はなんの冗談だろうか、と思った。なんでSランクの冒険者が御用聞き? と。だが、顔合わせの時にリティアから、あの屋台街で騒ぎを起こした冒険者崩れの貴族女が、優衣の両親に害をなそうとしていると聞かされた。
「もちろんパーティーハウス周辺の警護も万全を期します。しかし、この件はミズサワ様には知られたくありません。なので、通常通りに接してください。闇ギルドに関しては分かり次第に潰します。それまでミズサワ様のご両親を守り抜いてください」
ギルドとしては、こんな血生臭い事は、知られたくないと。
おそらくかなりの大捕物になる、と。フェリクスは優衣の両親の護衛と、その闇ギルド殲滅依頼を受けたようだ。
事情を知っているのはフォリアとセーシャ、そして龍太が通う工房主のファベルのみ。フェリクスは見習いにも、他のメンバーにも告げてはいない。
事情を知らないエルバは、フェリクスの見習いの2人、ヘルトとドロテアと仲良くなり、空いた時間でよく魔力訓練を一緒にしている。ブルーメとコーレンもフェリクスは好印象だ。物腰は柔らかいし、なかなか顔立ちはいいし、何より憧れの存在であるSランクだから。
だが、セーシャだけは、少し一線を引いていた。理由は、フェリクスに底知れぬ不気味さがあると。フォリアも言われて気付く。いつも穏やかな顔だが、ずっとその表情を張り付かせ、いつもフル装備で休んでいるかも分からないくらいに起きている。時折休憩があるが、いつも外を気にしている。
おそらく襲われる可能性があるからと、気をはっているんだろうが。でもいつ、休んでいるんだろう? 本当に襲われるのだろうか? そうなれば、自分達が優衣の両親を守れるだろうか?
少し不安になりながら、3週間が過ぎようとしていた。
特に問題はない。
Sランクだからと言って騒がれないのは、フェリクスの顔を誰もしらないからだ。金属の鎧を着た背の高い男なんて、ゴロゴロいる。通信手段が少ないため、名乗りもしなければ分からない。スカイランでは軍隊ダンジョンに挑む為に、数ヶ月滞在したから顔が知られていただけ。一度、フェリクスの知り合いが驚いた顔をして話しかけきた。山風のロッシュだ。だが、そのロッシュにフェリクスは口の前に人差し指を立てる。口止めだ。たったそれだけだったが、ロッシュはすぐに引いた。そして自分のパーティーメンバーを連れて後にした。おそらくメンバーにも口止めしているはずだ。
フェリクスは優衣の両親とは穏やかに話して信頼を得ているようだ。以前スカイランでもちょっとした騒動があり、フェリクスが助け船を出した事があって余計に信頼したようだ。ただ、ミズサワ家の愛犬花だけは、フェリクスにいつもけたたましく吠えた。フォリアやセーシャや他のメンバーには、短い足で駆け寄って来るのに、フェリクスだけには懐かない。
「はは、嫌われましたね」
「すみません、怖がりで、大柄の男性が苦手みたいで」
景子が申し訳ない顔だ。抱えられた花は、プルプル震えている。
マルシェでの買い物帰りに、散歩がてら、リードを着けて歩く花は、いつにも増して吠えて仕方なく景子が抱えた。
メリッ
神経を尖らせていたフォリアが、小さな音に気がついて振り返る。景子はコーレンと前を歩いていた。そのすぐ後ろにフォリア、最後尾にフェリクスだが、そのフェリクスが片手で人の首を掴み、路地に放り込んでいた。人、おそらく男だと思われるが、真っ黒な触手にぐるぐる巻きにされ、路地に放り込まれ、音もなく引き込まれていく。
一瞬でフォリアが理解する。
とうとう、闇ギルドが手を出してきた、と。
襲撃犯に全く気がつかなかったフォリアは、血の気が引いてくる。フェリクスは、そんなフォリアに口の前で人差し指を立てる。
黙ってろ。
そんな意味だろう。フォリアはそれに従った。
景子と花をパーティーハウスに送り、夕方フェリクスは龍太の迎えに行った。問題なく帰って来たと思ったら、フェリクスがパーティーハウスに闇の防御魔法をかけていた。ルージュが気軽に発動させる魔法のカーテンだ。
そっとフェリクスはフォリアとセーシャを呼んだ。
「ギルドに呼ばれたので、少し空けます」
それだけ告げると、2人は察知した。おそらく闇ギルドのねぐらが分かったのだろう、と。
その闇ギルドは今まで尻尾を掴ませずに、いつも手入れ寸前で逃げられていた。これを期に一網打尽にしたいと、リティアが言っていた。
さっき、景子を襲おうとした襲撃犯をどうにかして、吐かせたのだろう。
フェリクスは、見習い達に遅くなるからと声をかけてから、出掛けていった。
夜、夜警をしていたフォリアとセーシャは、フェリクスの帰りを待った。日付が変わった頃に、フェリクスが戻って来たが。
鉄錆の臭いが、鼻を付いた。何をしてきたかすぐに分かったが、あえて聞かない。
「終わりました。シャワーを浴びても?」
「どうぞ」
シャワーに向かった後で、床に数滴の血が落ちているのを見て、慌ててフォリアとセーシャは床を拭いた。まさか、怪我をしたのでは、と心配したが、長めにシャワーを浴びたフェリクスは、初めて鎧を身に着けず出てきた。怪我の有無を聞くが、それはないとフェリクスは答えた。
「少し、休んでも?」
いつ休んでいたか分からない男が初めて口にした言葉。
「はい、大丈夫です。明日、いえ、今日の御用聞きは私達がしますので休んでください」
咄嗟にフォリアが返答すると、フェリクスが安堵したように息を吐き出す。
「感謝します」
そう言ってフェリクスは宛がわれた部屋に行った。
「本当に、全部終わらせたんだね」
見送ったセーシャがやっと口を開く。
この3週間、今まで休んだ様子もなかった男が、やっと休むと言った事もそうだが、いつもフル装備で、周囲に分からないように張り詰めていたものが緩んでいた。それをしなくてもいい、そんな状況になったのだと。
フェリクスは夕方近くまで昏睡したように眠っていた。
そしてマーファの街中で、昨夜行われた大捕物が話題になっていた。フォリアとセーシャも耳にしたが、行ったのはマーファの騎士団と警備達だと言う話だ。フェリクスの話が一つもない、おそらく伏せられたのだろう。
何か引っ掛かるが、当のフェリクスが何も言わないし、フォリアもセーシャも何か言う権利もない。
その大捕物が終わった数日後、変化が起きた。
「くうーん、くうーん」
いつもけたたましく吠えていた花が、フェリクスに尻尾を振っている。
「はは、可愛いですね」
そう言ってフェリクスは笑う。それには、何か底に潜ませていない笑顔だ。
もしかして、こんな小さな犬が、今まで張っていたフェリクスの警戒心が分かっていたのだろうか? とフォリアは思ったが、花の言葉が分かるわけない。
「くうーん」
少し考えていたが、短い足で駆け寄られたから、考察をやめた。手を差し出すと、はみはみと甘噛みされた。
かわいい。
景子も変わらず笑顔だ。
それを見て、フォリアは、よし、としようと思う。
無事に全てが、終わったのならば、それでいい。
「それでいいんじゃないかい」
セーシャもフォリアにしか聞こえないように言った。
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