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始末?⑦
流血表現あります、ご注意ください
ある闇ギルドの殲滅作戦が立てられた。
俺もそれに加わることになった。
本来なら、警備兵の仕事なんだけど、な。警備って言っても立派なマーファの騎士団だ。彼らはマーファの街中の警備が主で、人々の生活を守っている。冷蔵庫ダンジョンから溢れ落ちた魔物の討伐も彼らの仕事だ。小さいことから大きなことまで、多種多様な仕事を幅広くやってる。頭よくないと無理。
マーファは第2都市だから、かなりの数の警備兵いるけど、人手が足りないって。外回り担当の俺まで駆り出されたよ。
よし、いっちょやるか、なんて思ったけど、新人の俺がやるのは雑務だよ。後方支援だよ。
騎士団長が鬼のようにおっかない顔して立ってる。近付かないでおこう。どうしてあんな鬼みたいな人に、あんな綺麗な奥さんいるんだよ、本当に謎だ。シエナ様、めっちゃ綺麗なんだよなあ。しかも3人も子供産んでるって思えないくらいスタイルいいしさ、ずっと綺麗なんだぜ。子供もみんなかわいいし、良かったと思う、鬼のような騎士団長に似ないでさ。
俺が配置されたのは、救護班だ。一応回復魔法使えるし、応急処置なんかもできる。俺はあんまり武術は得意ではなかったけど、これと馬術が得意で騎士団に入れた。
まあ、その得意な馬術も、先日自信が粉砕されたけど。
あれだよ、あれ。あのテイマーさんの魔法馬。あんた、あんな巨体の魔法馬を、乗りこなしてるのを見たら、誰だって自信粉砕だよ。金髪の男が乗ってたけど、どんな体幹してんだよ、暴れ回っているのに、ぶれもしねえ。俺達はたまたまマーファ周辺の警備していた時に出くわした。さあ、帰ろ、今日の寮のメシなんだろなー、みたいな呑気な話してたら、俺達の魔法馬達が怯えだした。
で、すんげえ音立てて、あの黒い魔法馬が爆走してきたんだよ。びびったよ。流石にびびったよ。
「失礼っ」
金髪の男がそう言って手綱を操って、風みたいに去っていった。あっという間の出来事だ。いや、あんな状況で、失礼っ、て言えるのがすげえよ。
え、いや、待て、あの魔法馬に乗ってたよ、あれ、乗れるの? 嘘でしょ?
ぽかん、として見送ったけどさ、帰って報告したら上司がびっくりしてたよ。テイマーさんの魔法馬は有名だ。まあ、とりわけデカイし、かなり賢いようだし、あの2体の従魔にも認められているようだし。誰かがうちの馬に、種を、何て言ってた。
後日、あの男は、テイマーさんの戦闘奴隷って知ったけど。俺達よりよさそうな装備品で、ちょっと羨ましい。まあ、きっとあの馬術を買われて、テイマーさんに購入されたんだろうなあ。あの魔法使いのお姉さん、綺麗だなあ。
あれ、誰か乗れる?って思ったけど、おそらくマーファの騎士団では誰も乗りこなせない。俺? ないない。
まあ魔法馬は、いいとして。
で、現在、俺は救護要員として控えている。鬼騎士団長とギルド職員の話が耳に入ってきた。
「ここで間違いないんですな?」
「ええ、昼間捕らえた賊に吐かせましたから」
鬼騎士団長と話しているのは山賊、違う、薬師ギルドマスターだ。
「よく吐きましたな」
「簡単ですよ。奥歯に仕込んであった自決用の毒を歯ごとひっこ抜いてから、そこに自白剤を注射しましたから」
痛いっ、痛いっ、聞いただけで痛いっ。
薬師の人って、すげえ優しいイメージあったのにっ。薬師ギルドマスターも、おっかない顔してるよっ。どっちが悪人かわかんねーっ。
「今まで奴らに奪われた命の数、無残に弄ばれ、苦しみ抜いて死んだ人達、そしてその家族達が受けた悲しみを思えば、これくらい」
その言葉に、俺の心はすとん、って音がした。
そうだ、あいつらはそれだけの事をしている。殲滅させられるような事をしているんだ。闇ギルドもぴんきりだけど、きっと捕らわれたやつの仲間は、そうされても文句が言えないような事をしているんだ。
しばらくして、周りは真っ暗になって、1人の男がやってきた。
金属の鎧を着た、背の高い男だ。誰だろ? その男は騎士団長や警備の偉い人、冒険者ギルドマスターと話している。
「本当に1人で?」
「問題ありません。この暗闇を利用しない手はありませんからね。逃げたものはお願いします」
「承知した」
騎士団長は、ベテランの騎士・警備兵達に指示を出して、すぐに配置が終わる。動きが速い、カッコいいぜ。
そんな中、背の高い男は、1人でねぐらに向かう。しかもどこからか兜を出して被ってるし。え? 真っ暗だよ、兜被ったら、余計に暗いし、視界がさ、いいのか? え? 武器は? 無手で?
そう考えていると、男の足元から何か溢れてきた。真っ暗な中で更に真っ黒な何が。
あれ、なんだ? え、真っ黒なのは男を包んで、それからねぐらも包んでいく。
あれは、あれは、まさか。
高位フィールド型闇魔法。闇で包み、光を遮断し、術者以外の視界を奪う。ランタンとかの光も飲み込み、全ての光を奪う魔法。そしてその中で動けるのは、術者か、もしくは相当の気配感知があるものだけ。あの闇の中では、視覚なんてまったく役に立たない。
でも、聞いたことはあっても使える術者はそうはいないはず。闇魔法はちょっと地味な魔法で、華々しい攻撃魔法ではなく、人気がないとか言われているけど、極めたらすげえ重宝する。そう、極めたら、だ。
聞いたことある、闇魔法を極めた冒険者がいるって。
闇魔法だけではなく、いろんな戦闘術を持ってて、指導者としてもピカ一で、オールラウンダーなSランク冒険者が。
Sランク冒険者、闇魔法闘士、フェリクス。
兜を被ったのは、これか、と納得。元々視界が遮断されるから、被ろうがどうしようが変わらないだ。
ねぐらから、罵声と悲鳴と破壊音が響く。
何人かねぐらから逃げて来たけど、次々に捕らえられていく。
どれくらい経ったか、ねぐらの建物を覆っていた真っ黒いのが引いて、背の高い男、フェリクスが出てきた。女性2人を抱えて。
救護班の出番だ。
俺達は飛び出して女性2人を引き受ける。女性はひどく怯えていたので、女性救護班が対応した。
「1人奥で亡くなっています。闇ギルドは無傷のものはいませんので」
そう言って、フェリクスは俺の横を通りすぎていく。
一言、ぽつり、と呟いて。
俺はその一言を聞いて、弾かれるように道具を抱えて飛び出した。
ねぐらは空き家だ。明かりを持って中に入ると、転がる闇ギルド達。確かに無傷のものはいない。
腕や、足があらぬ方向に向いたり、片目が潰されていたり、指が斬り飛ばされていたり、掌をナイフで縫い付けられていたり、辺り一面血が飛び散ってる。痛みにのたうち回ってる。中には腕や足をばっさり斬られていて、大量出血している。
俺は手当たり次第に手当てをした。そして、奥で女性の遺体を発見した。
多分、娼婦だろう。派手に化粧していたらしい顔は色を失い、服はぼろぼろで血塗れだった。刃物で滅多刺しされたのだろう。酷い状態だ。何より、その遺体を見て、俺の胸を突いたのは、娼婦の化粧、目尻から流れるように青い化粧が筋になっていた。娼婦は泣いていたのだ、泣く程怖かったのだ。やるせない、やるせない、だけど、俺は必死に手当てした。
どれくらいしたか分からない。闇ギルドが全員運び出されたのを見て、俺もねぐらを出た。同僚が、俺を咎めるように見ている。分かっている、こんな連中見殺しにしたって構わないって。それなのに、俺は必死に手当てしたのが、同僚にしてみたら、咎めるような事なんだろう。
俺は強烈な血の臭いにやられて、吐きそうだし、何より一気に疲労がきた。魔力も枯渇してるし、服やら、手やら、血がついて、もう、どうしよう。俺はその場に膝をついた。くらくらする。
見たことない、初老の男性が、俺にハンカチを渡してくれた。反射的に受け取る。男性は運び出された遺体に寄り添うように去っていった。
膝をついた俺に誰か近付いてきた。
ぼんやりと顔を上げると、鬼騎士団長だ。じっと、俺を見ている。
「そこまでする理由は?」
冷たい声で言われた。
「………………1人、生きたら」
俺は言葉を絞り出す。
「………………罪が明るみになるから」
そう、さっき、フェリクスが呟いた。
「………………誰かが、きっと、救われるから」
罪が明るみになれば、償わせる事ができたら、きっとどこかで、誰かが救われる。自己満足だって、分かっている。それに俺は。
「………………俺は、救護要員です、だから、俺は、俺は。見捨てるなんて、したら、いけないんです」
必死に、言葉を紡いだ。
鬼騎士団長は、すっ、と俺の側に膝を突いた。
「お前は間違っていない」
そう言って俺の肩に手を置いた。
後悔やら、やりきった感やら、恐怖やら、いろんな感情に飲み込まれそうな気持ちを、その一言が引き上げてくれる。
「私はお前を誇りに思う。一時の感情に流されず、職務を果たしたお前を」
鬼騎士団長は、俺にそう言って、他の騎士団や警備兵に指示を出すために行ってしまった。
後ろ姿を見ながら実感する。ああ、鬼騎士団長って、滅茶苦茶カッコいいなあ。だから、あんな綺麗な奥さんいるんだ。
膝を突いたままの俺に、罰の悪そうな同僚が駆け寄ってきた。
「おい、大丈夫か? 立てるか?」
「ちょっと、無理かも……………」
俺は、魔力枯渇もあり、そこで意識を飛ばした。
後日、闇ギルド関連の事を聞いた。
生き残った連中は厳しい尋問されて、洗いざらいに吐かされていると。手段は知らないけどね。
救助された女性2人は、スラム街の娼婦だったらしい。ギルドが保護しているそうだ。連中に半分拉致されて乱暴されたそうだ。あの殺害された娼婦も一緒に拉致されて抵抗して、見せしめに滅多刺しされたそうだ。それを見せつけられて、2人は抵抗できなかったと。殺害された娼婦は、未成年の妹がいたそうだ。学も身分証もない彼女は、身を売って生計を立てていたんだろう。残された妹は、孤児院が引き取ったと。亡くなった姉の分も生きて欲しいと思った。
闇ギルドは、マーファに拠点を置いていない、首都のスラム街にあり、同時刻に手入れがあったそうだ。なんと、あのオスヴァルト・ウルガー准将が先陣を切ったそうだ。当然闇ギルドは壊滅。今、いろんな事が分かって、お偉いさんが大変そうだ。
ま、俺には関係ないけどね。
今日もシエナ様、綺麗だなあ。
ある闇ギルドの殲滅作戦が立てられた。
俺もそれに加わることになった。
本来なら、警備兵の仕事なんだけど、な。警備って言っても立派なマーファの騎士団だ。彼らはマーファの街中の警備が主で、人々の生活を守っている。冷蔵庫ダンジョンから溢れ落ちた魔物の討伐も彼らの仕事だ。小さいことから大きなことまで、多種多様な仕事を幅広くやってる。頭よくないと無理。
マーファは第2都市だから、かなりの数の警備兵いるけど、人手が足りないって。外回り担当の俺まで駆り出されたよ。
よし、いっちょやるか、なんて思ったけど、新人の俺がやるのは雑務だよ。後方支援だよ。
騎士団長が鬼のようにおっかない顔して立ってる。近付かないでおこう。どうしてあんな鬼みたいな人に、あんな綺麗な奥さんいるんだよ、本当に謎だ。シエナ様、めっちゃ綺麗なんだよなあ。しかも3人も子供産んでるって思えないくらいスタイルいいしさ、ずっと綺麗なんだぜ。子供もみんなかわいいし、良かったと思う、鬼のような騎士団長に似ないでさ。
俺が配置されたのは、救護班だ。一応回復魔法使えるし、応急処置なんかもできる。俺はあんまり武術は得意ではなかったけど、これと馬術が得意で騎士団に入れた。
まあ、その得意な馬術も、先日自信が粉砕されたけど。
あれだよ、あれ。あのテイマーさんの魔法馬。あんた、あんな巨体の魔法馬を、乗りこなしてるのを見たら、誰だって自信粉砕だよ。金髪の男が乗ってたけど、どんな体幹してんだよ、暴れ回っているのに、ぶれもしねえ。俺達はたまたまマーファ周辺の警備していた時に出くわした。さあ、帰ろ、今日の寮のメシなんだろなー、みたいな呑気な話してたら、俺達の魔法馬達が怯えだした。
で、すんげえ音立てて、あの黒い魔法馬が爆走してきたんだよ。びびったよ。流石にびびったよ。
「失礼っ」
金髪の男がそう言って手綱を操って、風みたいに去っていった。あっという間の出来事だ。いや、あんな状況で、失礼っ、て言えるのがすげえよ。
え、いや、待て、あの魔法馬に乗ってたよ、あれ、乗れるの? 嘘でしょ?
ぽかん、として見送ったけどさ、帰って報告したら上司がびっくりしてたよ。テイマーさんの魔法馬は有名だ。まあ、とりわけデカイし、かなり賢いようだし、あの2体の従魔にも認められているようだし。誰かがうちの馬に、種を、何て言ってた。
後日、あの男は、テイマーさんの戦闘奴隷って知ったけど。俺達よりよさそうな装備品で、ちょっと羨ましい。まあ、きっとあの馬術を買われて、テイマーさんに購入されたんだろうなあ。あの魔法使いのお姉さん、綺麗だなあ。
あれ、誰か乗れる?って思ったけど、おそらくマーファの騎士団では誰も乗りこなせない。俺? ないない。
まあ魔法馬は、いいとして。
で、現在、俺は救護要員として控えている。鬼騎士団長とギルド職員の話が耳に入ってきた。
「ここで間違いないんですな?」
「ええ、昼間捕らえた賊に吐かせましたから」
鬼騎士団長と話しているのは山賊、違う、薬師ギルドマスターだ。
「よく吐きましたな」
「簡単ですよ。奥歯に仕込んであった自決用の毒を歯ごとひっこ抜いてから、そこに自白剤を注射しましたから」
痛いっ、痛いっ、聞いただけで痛いっ。
薬師の人って、すげえ優しいイメージあったのにっ。薬師ギルドマスターも、おっかない顔してるよっ。どっちが悪人かわかんねーっ。
「今まで奴らに奪われた命の数、無残に弄ばれ、苦しみ抜いて死んだ人達、そしてその家族達が受けた悲しみを思えば、これくらい」
その言葉に、俺の心はすとん、って音がした。
そうだ、あいつらはそれだけの事をしている。殲滅させられるような事をしているんだ。闇ギルドもぴんきりだけど、きっと捕らわれたやつの仲間は、そうされても文句が言えないような事をしているんだ。
しばらくして、周りは真っ暗になって、1人の男がやってきた。
金属の鎧を着た、背の高い男だ。誰だろ? その男は騎士団長や警備の偉い人、冒険者ギルドマスターと話している。
「本当に1人で?」
「問題ありません。この暗闇を利用しない手はありませんからね。逃げたものはお願いします」
「承知した」
騎士団長は、ベテランの騎士・警備兵達に指示を出して、すぐに配置が終わる。動きが速い、カッコいいぜ。
そんな中、背の高い男は、1人でねぐらに向かう。しかもどこからか兜を出して被ってるし。え? 真っ暗だよ、兜被ったら、余計に暗いし、視界がさ、いいのか? え? 武器は? 無手で?
そう考えていると、男の足元から何か溢れてきた。真っ暗な中で更に真っ黒な何が。
あれ、なんだ? え、真っ黒なのは男を包んで、それからねぐらも包んでいく。
あれは、あれは、まさか。
高位フィールド型闇魔法。闇で包み、光を遮断し、術者以外の視界を奪う。ランタンとかの光も飲み込み、全ての光を奪う魔法。そしてその中で動けるのは、術者か、もしくは相当の気配感知があるものだけ。あの闇の中では、視覚なんてまったく役に立たない。
でも、聞いたことはあっても使える術者はそうはいないはず。闇魔法はちょっと地味な魔法で、華々しい攻撃魔法ではなく、人気がないとか言われているけど、極めたらすげえ重宝する。そう、極めたら、だ。
聞いたことある、闇魔法を極めた冒険者がいるって。
闇魔法だけではなく、いろんな戦闘術を持ってて、指導者としてもピカ一で、オールラウンダーなSランク冒険者が。
Sランク冒険者、闇魔法闘士、フェリクス。
兜を被ったのは、これか、と納得。元々視界が遮断されるから、被ろうがどうしようが変わらないだ。
ねぐらから、罵声と悲鳴と破壊音が響く。
何人かねぐらから逃げて来たけど、次々に捕らえられていく。
どれくらい経ったか、ねぐらの建物を覆っていた真っ黒いのが引いて、背の高い男、フェリクスが出てきた。女性2人を抱えて。
救護班の出番だ。
俺達は飛び出して女性2人を引き受ける。女性はひどく怯えていたので、女性救護班が対応した。
「1人奥で亡くなっています。闇ギルドは無傷のものはいませんので」
そう言って、フェリクスは俺の横を通りすぎていく。
一言、ぽつり、と呟いて。
俺はその一言を聞いて、弾かれるように道具を抱えて飛び出した。
ねぐらは空き家だ。明かりを持って中に入ると、転がる闇ギルド達。確かに無傷のものはいない。
腕や、足があらぬ方向に向いたり、片目が潰されていたり、指が斬り飛ばされていたり、掌をナイフで縫い付けられていたり、辺り一面血が飛び散ってる。痛みにのたうち回ってる。中には腕や足をばっさり斬られていて、大量出血している。
俺は手当たり次第に手当てをした。そして、奥で女性の遺体を発見した。
多分、娼婦だろう。派手に化粧していたらしい顔は色を失い、服はぼろぼろで血塗れだった。刃物で滅多刺しされたのだろう。酷い状態だ。何より、その遺体を見て、俺の胸を突いたのは、娼婦の化粧、目尻から流れるように青い化粧が筋になっていた。娼婦は泣いていたのだ、泣く程怖かったのだ。やるせない、やるせない、だけど、俺は必死に手当てした。
どれくらいしたか分からない。闇ギルドが全員運び出されたのを見て、俺もねぐらを出た。同僚が、俺を咎めるように見ている。分かっている、こんな連中見殺しにしたって構わないって。それなのに、俺は必死に手当てしたのが、同僚にしてみたら、咎めるような事なんだろう。
俺は強烈な血の臭いにやられて、吐きそうだし、何より一気に疲労がきた。魔力も枯渇してるし、服やら、手やら、血がついて、もう、どうしよう。俺はその場に膝をついた。くらくらする。
見たことない、初老の男性が、俺にハンカチを渡してくれた。反射的に受け取る。男性は運び出された遺体に寄り添うように去っていった。
膝をついた俺に誰か近付いてきた。
ぼんやりと顔を上げると、鬼騎士団長だ。じっと、俺を見ている。
「そこまでする理由は?」
冷たい声で言われた。
「………………1人、生きたら」
俺は言葉を絞り出す。
「………………罪が明るみになるから」
そう、さっき、フェリクスが呟いた。
「………………誰かが、きっと、救われるから」
罪が明るみになれば、償わせる事ができたら、きっとどこかで、誰かが救われる。自己満足だって、分かっている。それに俺は。
「………………俺は、救護要員です、だから、俺は、俺は。見捨てるなんて、したら、いけないんです」
必死に、言葉を紡いだ。
鬼騎士団長は、すっ、と俺の側に膝を突いた。
「お前は間違っていない」
そう言って俺の肩に手を置いた。
後悔やら、やりきった感やら、恐怖やら、いろんな感情に飲み込まれそうな気持ちを、その一言が引き上げてくれる。
「私はお前を誇りに思う。一時の感情に流されず、職務を果たしたお前を」
鬼騎士団長は、俺にそう言って、他の騎士団や警備兵に指示を出すために行ってしまった。
後ろ姿を見ながら実感する。ああ、鬼騎士団長って、滅茶苦茶カッコいいなあ。だから、あんな綺麗な奥さんいるんだ。
膝を突いたままの俺に、罰の悪そうな同僚が駆け寄ってきた。
「おい、大丈夫か? 立てるか?」
「ちょっと、無理かも……………」
俺は、魔力枯渇もあり、そこで意識を飛ばした。
後日、闇ギルド関連の事を聞いた。
生き残った連中は厳しい尋問されて、洗いざらいに吐かされていると。手段は知らないけどね。
救助された女性2人は、スラム街の娼婦だったらしい。ギルドが保護しているそうだ。連中に半分拉致されて乱暴されたそうだ。あの殺害された娼婦も一緒に拉致されて抵抗して、見せしめに滅多刺しされたそうだ。それを見せつけられて、2人は抵抗できなかったと。殺害された娼婦は、未成年の妹がいたそうだ。学も身分証もない彼女は、身を売って生計を立てていたんだろう。残された妹は、孤児院が引き取ったと。亡くなった姉の分も生きて欲しいと思った。
闇ギルドは、マーファに拠点を置いていない、首都のスラム街にあり、同時刻に手入れがあったそうだ。なんと、あのオスヴァルト・ウルガー准将が先陣を切ったそうだ。当然闇ギルドは壊滅。今、いろんな事が分かって、お偉いさんが大変そうだ。
ま、俺には関係ないけどね。
今日もシエナ様、綺麗だなあ。
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