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連載
隠れて護衛⑩
バタバタと出発する準備。
あの後、ダイニングキッチンでフリーズしていたら、ホークさんが心配してきた。
だけど、昨日に比べたら随分いい、きっと超絶イッケメンの時空神様が何かしてくれたんや。うん。イッケメンやったなあ。流石神様、イッケメーン。
「ユイさん? さっきから何を呟いているんですか?」
ホークさんの目が、本当に心配している。色んな意味で。怪しい人を見る目に感じたのは、気のせい。
寝坊助の晃太を叩き起こし、バタバタ準備。
「優衣、晃太、大丈夫ね?」
サブ・ドアから来た母が開口一番。
「わいは、よかよ」
「私も、さっき、時空神様が来てくれて、魔法みたいなのかけてくれたけん。昨日よか、よかよ」
「そうな」
私達の答えに、少し安心した様子の母。後ろにいた父も安心した様子。
「クゥンクゥン」
花が相変わらず、ぽちゃぽちゃボディでローリング。もふもふ。ぽちゃぽちゃ。あははははん、かわいかあ。ビアンカと比べられない歯の口で、はみはみ。あははははん、癒しや。かわいかあ。
母と朝御飯の準備をする。完全にいい訳ではないが、味噌汁だけ、飲み干す。ちゃんと味がした。
「今日からフェリアレーナ様と合流やから、サブ・ドアを開けられんかもしれんよ」
「よかよ、仕方なかね」
片付けて、出発準備。私はエマちゃんの傷口チェック。うん、乾燥していい感じに瘡蓋になってる。腕の内出血も随分吸収されている。回復魔法もいいけど、擦り傷くらいで使うと自然回復力が弱くなる。そして自然に治るのに比べて、傷痕が残る可能性があるそうだ。エマちゃんのかわいか顔に傷痕残るなんていかん、いかん。母が浄化をして、念のために、薄くワセリンを塗る。ガーゼ付けると、元気が狙うんだよね。まだ眠そうな仔達を馬車にのせて、両親と花をマーファに見送り、宿をチェックアウト。
さあ、合流や、と思ったら問題発生。
「え? 通れないんですか?」
トッパの警備の人が申し訳なさそうな顔。そして道にはたくさんの人々。
「昨日、輿入れ行列が襲撃されたので、出発するまで通行規制を広げることになりまして」
本来の規制範囲より拡大して、トッパ自体の出入りを、数時間元々出発予定の馬車限定してできないように制限すると。
ああ、日本でもそうやったなあ。
いかん、どうしよう。
「ホークさん、どうしましょう?」
「そうですね…………通行規制、困りましたね。いっそトッパから出た輿入れ行列に合流するか、もしくは門付近まで行ってみるか」
ホークさんはノワールの手綱を持って悩む仕草。お見送りの人達は、私達に気が付かず、今か今かとフェリアレーナ王女を待っている。皆さん、一目見て、手を振ってお見送りしたいんやね。なんせ、王女様やもん。気持ち分かるよ。私もこんな状況じゃなければ、小さな旗振ってお見送りしたいもん。
「うーん…………行けそうですか? 人垣すごいですが」
「そうですね、裏から回るにしても、この人混みではぐれないか、そちらが心配ですね」
お見送りが終わったら、一斉に帰るだろう人達。うわあ、人波に揉まれそう。いや、元気が興奮しないか心配や。まあ、馬車内で寝てるけど。うちの馬車大型だから、裏道は厳しいしなあ。元気達が寝てるから、晃太のアイテムボックスには入れられないし、ここでルームも開けられないし。
「仕方ありません。後から街道で合流しましょう。ノワールならすぐに追い付けますし」
「そうですね」
仕方なかね。
『ユイ、どうしたのです?』
『行かないの? 私が道を作るわよ』
やめて、通った後は血の道が出来ると呼ばれるクリムゾンジャガーや。まあ、のしのし人垣を進むんだろうけど、やめて。
「あんま、目立ちたくないんよ。しばらくしてから、トッパから出るけん、それまでここで待機。はぐれたくないし」
『仕方ないのです』
『そうね。ふわあ、一眠りしようかしら』
「多分大騒ぎになるよ。あ、ルージュ、昨日みたいな人達、近くにおらんよね?」
私の言葉に、説明してくれた警備の人がひきつる。
『昨日の? ちょっと待ってね。……………いないはいないけど、小さな害意はあるわ。この人混みの誰かを狙っているみたい。強い害意ではないから、傷付けないとは思うけど』
なんやそれ?
「姉ちゃん、スリやなかね?」
「ああ、なるほど。スリがいるかもしれません。注意を。私達はしばらくしてからトッパを出ます」
「はい、ありがとうございますっ」
警備の人は走っていき、スリ、ひったくりにご注意をーっ、と声が上がる。
私達は固まって、じっとすることに。人垣の中、一度じっとしていられずグズりだした小さな女の子が、こちらに気が付いて触りたいとグズる。父親が真っ青でダメだといったが、私がどうぞと言って恐る恐るビアンカを女の子は触って上機嫌。ペコペコした父親と帰っていった。
しばらくして大歓声があがる。
ああ、フェリアレーナ様が宿泊先からでてきたんやね。
『うるさいのです』
『何を興奮しているんだか』
「王女様なんて、そうそう身近で見れんけんね」
私だって見たいよ。旗を振ってお見送りしたいよ。
だけど人々の歓声で、馬車で寝ていた仔達が覚醒。馬車のドアをバリバリするので開けると、元気を先頭にして飛び出す。元気とコハクはリード装着。
「わんわん」
「ガゥガゥ」
『ねぇね、うるちゃい~』
『くりちゅ、ねむちゃい~』
『ねえね、ねえね~、ひすいもねむい~』
「はいはい、かわいかね」
でれれん。コハクが最近にゃんにゃん率が低くなってる。しょうがないだろうけど。
「もう少ししたら、落ち着くからね。ちょっと我慢して」
三姉妹はぶー、となってる。ビアンカとルージュの、ぶー、そのままやん。かわいかね、もう。
元気とコハクはあくびをして、んーっと伸び。かわいかね。
で、
「わぉぉぉぉーんっ」
「がるぅぅぅぅっ」
何故咆哮する? しかも足をバタバタさせる。
ビアンカやルージュに比べたら声量は少ないが、そこそこボリュームのある。
「ちょっと、元気、コハク、やめんね」
「わぉぉぉぉーんっ」
「がるぅぅぅぅっ」
「連呼せんでっ」
『遊びたいみたいのですね』
『走りたいようよ』
「やめて」
出会った頃のサイズなら、走り回るにも場所は困らなかったが、現在大型となった元気とコハクが走り回るとなると、場所を選ぶ。ぶつかると単なる転倒ではすまない。下手したら原付バイク以上の威力だ。
それにせっかくトッパの皆さんが、フェリアレーナ王女の為にお見送りに来てるのに、水を差しそう。
「元気、コハク、静かにせんね」
余りしたくないけど、元気の口をそっと掴む。晃太がコハクに、しーっと言ってる。まあ、それくらいじゃ無理だった。
元気はブルブルと顔を振って、私の手を振り払う。元気はへっへとして、私の顔をべろんべろんして、再び吼える。
「わぉぉぉぉーんっ、わぉぉぉぉーんっ」
「がる、がるぅぅぅぅっ」
「ちょっと本当にやめてよ」
『静かにするのです』
『元気、コハク、お止めなさい』
ビアンカとルージュが注意すると、ぶー、となるコハク。あははん、ルージュそっくり。だが、元気は変わらずわぉんわぉん。しまいにはルリとクリスとヒスイまでごねだす。鷹の目の皆さんも総出で諌めてくれる。三人娘はぶー、となりながらも大人しくなってきた。
ふいに、私は周りの異常な状況を察知。あれだけの歓声が止んでいる。
『ユイ、来るのです』
『雌よ』
ビアンカとルージュの言葉、振り返る。
分厚い人垣が、まるで有名な映画の海のように割れていた。その向こうに、こちらに向かって数人が歩み寄ってきた。あれはマーファの騎士の皆さんよね。それから、その騎士の皆さんに守られるように、一人の女性がいた。人垣の皆さんは、一斉に深く会釈の姿勢。中には膝を突く人も。
私は隣の晃太を肘でつつく。
「晃太や」
「なんやね?」
「あの、綺麗な人、誰やねん」
そう、女性。癖のない、輝くような金髪、優しいオレンジ色の瞳、透き通るような白い肌は、決して蒼白くはなく、生き生きとしている。顔パーツがすばらしい、すらりと伸びた姿勢も、気品のよい微笑みも、何もかも素晴らしい。輝くように美しい。
某大国の映画で綺麗な女優さんを見てきたけど、この女性は一線を越える美しさがある。女の私が、惚れるような美しさ。
「ミス・ユニバースも白旗振るような美人さんは?」
「王女様たい、フェリアレーナ様たい。ああ、綺麗な人やなあ」
晃太が、ほわわわん、と答える。
あ、あの絶世の美人さんが、フェリアレーナ王女。アルティーナ帝国皇帝が実の妹を犠牲にしてまで、手に入れようとしている女性。
確かに、傾国の美女と言われても、納得するような美貌だ。歩く姿はユリの花だ。ああ、綺麗、キラキラしてる。
キラキラしている綺麗な人が、こちらに向かって、え、こっち来てる。
「ユイさん、ユイさん、膝を突いてください」
ホークさんが小声で言ってくる。
あ、そうよね、そうよね。
「晃太、拝もう」
「そやな」
私と晃太は揃って両膝突いて、掌合わせて、拝みの姿勢。鷹の目の皆さんも、膝を各々突いている。
あわわわ、綺麗やー。本当に綺麗やー。
これは、拝まんといかん。はい、拝みます。
フェリアレーナ王女様は、私達の前で止まる。
仔達も空気を読んでくれたのか、静かに、いや、ならない。
「わんっ」
元気が後ろ足で立つが、リードをビアンカが押さえてびくともしない。いくら私達を知っているとは言え、流石にマーファの騎士の皆さんが警戒体勢。本当に止めて。気を利かせたビアンカが元気を抱き込んで伏せる。
マーファの騎士の皆さんの間から、フェリアレーナ王女様が一歩前に。シンプルな黄色のロング丈のワンピースのスカートを摘まんで、フェリアレーナ王女様がお辞儀。
ひゃーっ、王女様がお辞儀ーっ。美しいーっ。隣で晃太が、綺麗な人やなーと繰り返す。
「おはようございます。ユリアレーナ国王、セレドニアが娘、フェリアレーナでございます」
きゃーっ、綺麗な声ーっ。私は女性の声で初めてちょっと興奮する。
「ミ、ミズサワデス」
我ながら、日本語が苦手な外国人みたいな返事や。内心はへへー、みたいな感じになる。時代劇で見る、へへー、だ。
「昨日は助けて頂きありがとうございます」
「イエイエソンナ」
私は、結局、役立たずだったし。晃太が綺麗な人やなー、と繰り返す。元気がわんわん。
「皆様、今からどちらに?」
「マーファニ、カエロウカト。マホウバノアシモ、イイヨウデスカラ」
「まあ、私達もマーファに向かっていますのよ」
わあ。某大国の映画の女優さん顔負けに、いかにも偶然と驚くフェリアレーナ王女様。晃太が綺麗人やなあと繰り返す。うん、綺麗な人やー。目の保養になる。仕草一つ一つが、品がいい。
「良かったらご一緒しません?」
「ヨロコンデッ」
合流作戦が、こんな形になるなんて。散々悩んだのにっ。大根だからって悩んだのにっ。まあ、よか、無事合流できた、結果よければすべてよし。
フェリアレーナ王女様は、護衛のマーファの騎士さんに確認。もちろんオッケーだ。
「テイマーのミズサワ殿なら、何の問題もございません」
ですって。良かった、良かった。連絡が行ってるだろうしね。
「では、参りましょう」
そういって、フェリアレーナ王女様が私の手を包む。
……………………
あ、鼻血出そう。興奮が頭に来て、鼻血が、鼻血が出そう。
「セザール様からお手紙で貴女のお話を伺っております。本当にありがとうございます。これで、やっとセザール様の元に嫁ぐことができます」
ああ、フェリアレーナ王女様のお顔が美し過ぎて。それで、心から嬉しそうで。ああ、良かった、本当に良かった。昨日、いろいろあったけど、結果的に、フェリアレーナ王女様は、セザール様の元に嫁げる。いや、マーファまで気を緩められない。よし、頑張らんと。
「私は、当然の事をしたまでです」
言葉が直った。
フェリアレーナ王女様が、手を引き上げてくれ、私は立ち上がる。背丈は私より高い、テオ君くらいかな。
「マーファまで、どうぞ宜しくお願いします」
「こちらこそ、フェリアレーナ王女様」
「わんっ」
元気が吠える。それにフェリアレーナ王女様は微笑む。
「ふふ、噂をお伺いしてますが、本当に可愛らしいですわね」
「すみません、やんちゃでよく吠えるんです」
「マーファに到着するまでに、仲良しになれるでしょうか?」
「元気は本当にやんちゃなんです。飛びかかりますから」
飛びかかって、綺麗なお肌に傷でも入ったら大変。
フェリアレーナ王女様は、綺麗にうふふと笑う。
晃太が綺麗な人やなー、と呟く。
それから、私達は輿入れ行列の後に続いて、トッパを無事に出ることになった。
あの後、ダイニングキッチンでフリーズしていたら、ホークさんが心配してきた。
だけど、昨日に比べたら随分いい、きっと超絶イッケメンの時空神様が何かしてくれたんや。うん。イッケメンやったなあ。流石神様、イッケメーン。
「ユイさん? さっきから何を呟いているんですか?」
ホークさんの目が、本当に心配している。色んな意味で。怪しい人を見る目に感じたのは、気のせい。
寝坊助の晃太を叩き起こし、バタバタ準備。
「優衣、晃太、大丈夫ね?」
サブ・ドアから来た母が開口一番。
「わいは、よかよ」
「私も、さっき、時空神様が来てくれて、魔法みたいなのかけてくれたけん。昨日よか、よかよ」
「そうな」
私達の答えに、少し安心した様子の母。後ろにいた父も安心した様子。
「クゥンクゥン」
花が相変わらず、ぽちゃぽちゃボディでローリング。もふもふ。ぽちゃぽちゃ。あははははん、かわいかあ。ビアンカと比べられない歯の口で、はみはみ。あははははん、癒しや。かわいかあ。
母と朝御飯の準備をする。完全にいい訳ではないが、味噌汁だけ、飲み干す。ちゃんと味がした。
「今日からフェリアレーナ様と合流やから、サブ・ドアを開けられんかもしれんよ」
「よかよ、仕方なかね」
片付けて、出発準備。私はエマちゃんの傷口チェック。うん、乾燥していい感じに瘡蓋になってる。腕の内出血も随分吸収されている。回復魔法もいいけど、擦り傷くらいで使うと自然回復力が弱くなる。そして自然に治るのに比べて、傷痕が残る可能性があるそうだ。エマちゃんのかわいか顔に傷痕残るなんていかん、いかん。母が浄化をして、念のために、薄くワセリンを塗る。ガーゼ付けると、元気が狙うんだよね。まだ眠そうな仔達を馬車にのせて、両親と花をマーファに見送り、宿をチェックアウト。
さあ、合流や、と思ったら問題発生。
「え? 通れないんですか?」
トッパの警備の人が申し訳なさそうな顔。そして道にはたくさんの人々。
「昨日、輿入れ行列が襲撃されたので、出発するまで通行規制を広げることになりまして」
本来の規制範囲より拡大して、トッパ自体の出入りを、数時間元々出発予定の馬車限定してできないように制限すると。
ああ、日本でもそうやったなあ。
いかん、どうしよう。
「ホークさん、どうしましょう?」
「そうですね…………通行規制、困りましたね。いっそトッパから出た輿入れ行列に合流するか、もしくは門付近まで行ってみるか」
ホークさんはノワールの手綱を持って悩む仕草。お見送りの人達は、私達に気が付かず、今か今かとフェリアレーナ王女を待っている。皆さん、一目見て、手を振ってお見送りしたいんやね。なんせ、王女様やもん。気持ち分かるよ。私もこんな状況じゃなければ、小さな旗振ってお見送りしたいもん。
「うーん…………行けそうですか? 人垣すごいですが」
「そうですね、裏から回るにしても、この人混みではぐれないか、そちらが心配ですね」
お見送りが終わったら、一斉に帰るだろう人達。うわあ、人波に揉まれそう。いや、元気が興奮しないか心配や。まあ、馬車内で寝てるけど。うちの馬車大型だから、裏道は厳しいしなあ。元気達が寝てるから、晃太のアイテムボックスには入れられないし、ここでルームも開けられないし。
「仕方ありません。後から街道で合流しましょう。ノワールならすぐに追い付けますし」
「そうですね」
仕方なかね。
『ユイ、どうしたのです?』
『行かないの? 私が道を作るわよ』
やめて、通った後は血の道が出来ると呼ばれるクリムゾンジャガーや。まあ、のしのし人垣を進むんだろうけど、やめて。
「あんま、目立ちたくないんよ。しばらくしてから、トッパから出るけん、それまでここで待機。はぐれたくないし」
『仕方ないのです』
『そうね。ふわあ、一眠りしようかしら』
「多分大騒ぎになるよ。あ、ルージュ、昨日みたいな人達、近くにおらんよね?」
私の言葉に、説明してくれた警備の人がひきつる。
『昨日の? ちょっと待ってね。……………いないはいないけど、小さな害意はあるわ。この人混みの誰かを狙っているみたい。強い害意ではないから、傷付けないとは思うけど』
なんやそれ?
「姉ちゃん、スリやなかね?」
「ああ、なるほど。スリがいるかもしれません。注意を。私達はしばらくしてからトッパを出ます」
「はい、ありがとうございますっ」
警備の人は走っていき、スリ、ひったくりにご注意をーっ、と声が上がる。
私達は固まって、じっとすることに。人垣の中、一度じっとしていられずグズりだした小さな女の子が、こちらに気が付いて触りたいとグズる。父親が真っ青でダメだといったが、私がどうぞと言って恐る恐るビアンカを女の子は触って上機嫌。ペコペコした父親と帰っていった。
しばらくして大歓声があがる。
ああ、フェリアレーナ様が宿泊先からでてきたんやね。
『うるさいのです』
『何を興奮しているんだか』
「王女様なんて、そうそう身近で見れんけんね」
私だって見たいよ。旗を振ってお見送りしたいよ。
だけど人々の歓声で、馬車で寝ていた仔達が覚醒。馬車のドアをバリバリするので開けると、元気を先頭にして飛び出す。元気とコハクはリード装着。
「わんわん」
「ガゥガゥ」
『ねぇね、うるちゃい~』
『くりちゅ、ねむちゃい~』
『ねえね、ねえね~、ひすいもねむい~』
「はいはい、かわいかね」
でれれん。コハクが最近にゃんにゃん率が低くなってる。しょうがないだろうけど。
「もう少ししたら、落ち着くからね。ちょっと我慢して」
三姉妹はぶー、となってる。ビアンカとルージュの、ぶー、そのままやん。かわいかね、もう。
元気とコハクはあくびをして、んーっと伸び。かわいかね。
で、
「わぉぉぉぉーんっ」
「がるぅぅぅぅっ」
何故咆哮する? しかも足をバタバタさせる。
ビアンカやルージュに比べたら声量は少ないが、そこそこボリュームのある。
「ちょっと、元気、コハク、やめんね」
「わぉぉぉぉーんっ」
「がるぅぅぅぅっ」
「連呼せんでっ」
『遊びたいみたいのですね』
『走りたいようよ』
「やめて」
出会った頃のサイズなら、走り回るにも場所は困らなかったが、現在大型となった元気とコハクが走り回るとなると、場所を選ぶ。ぶつかると単なる転倒ではすまない。下手したら原付バイク以上の威力だ。
それにせっかくトッパの皆さんが、フェリアレーナ王女の為にお見送りに来てるのに、水を差しそう。
「元気、コハク、静かにせんね」
余りしたくないけど、元気の口をそっと掴む。晃太がコハクに、しーっと言ってる。まあ、それくらいじゃ無理だった。
元気はブルブルと顔を振って、私の手を振り払う。元気はへっへとして、私の顔をべろんべろんして、再び吼える。
「わぉぉぉぉーんっ、わぉぉぉぉーんっ」
「がる、がるぅぅぅぅっ」
「ちょっと本当にやめてよ」
『静かにするのです』
『元気、コハク、お止めなさい』
ビアンカとルージュが注意すると、ぶー、となるコハク。あははん、ルージュそっくり。だが、元気は変わらずわぉんわぉん。しまいにはルリとクリスとヒスイまでごねだす。鷹の目の皆さんも総出で諌めてくれる。三人娘はぶー、となりながらも大人しくなってきた。
ふいに、私は周りの異常な状況を察知。あれだけの歓声が止んでいる。
『ユイ、来るのです』
『雌よ』
ビアンカとルージュの言葉、振り返る。
分厚い人垣が、まるで有名な映画の海のように割れていた。その向こうに、こちらに向かって数人が歩み寄ってきた。あれはマーファの騎士の皆さんよね。それから、その騎士の皆さんに守られるように、一人の女性がいた。人垣の皆さんは、一斉に深く会釈の姿勢。中には膝を突く人も。
私は隣の晃太を肘でつつく。
「晃太や」
「なんやね?」
「あの、綺麗な人、誰やねん」
そう、女性。癖のない、輝くような金髪、優しいオレンジ色の瞳、透き通るような白い肌は、決して蒼白くはなく、生き生きとしている。顔パーツがすばらしい、すらりと伸びた姿勢も、気品のよい微笑みも、何もかも素晴らしい。輝くように美しい。
某大国の映画で綺麗な女優さんを見てきたけど、この女性は一線を越える美しさがある。女の私が、惚れるような美しさ。
「ミス・ユニバースも白旗振るような美人さんは?」
「王女様たい、フェリアレーナ様たい。ああ、綺麗な人やなあ」
晃太が、ほわわわん、と答える。
あ、あの絶世の美人さんが、フェリアレーナ王女。アルティーナ帝国皇帝が実の妹を犠牲にしてまで、手に入れようとしている女性。
確かに、傾国の美女と言われても、納得するような美貌だ。歩く姿はユリの花だ。ああ、綺麗、キラキラしてる。
キラキラしている綺麗な人が、こちらに向かって、え、こっち来てる。
「ユイさん、ユイさん、膝を突いてください」
ホークさんが小声で言ってくる。
あ、そうよね、そうよね。
「晃太、拝もう」
「そやな」
私と晃太は揃って両膝突いて、掌合わせて、拝みの姿勢。鷹の目の皆さんも、膝を各々突いている。
あわわわ、綺麗やー。本当に綺麗やー。
これは、拝まんといかん。はい、拝みます。
フェリアレーナ王女様は、私達の前で止まる。
仔達も空気を読んでくれたのか、静かに、いや、ならない。
「わんっ」
元気が後ろ足で立つが、リードをビアンカが押さえてびくともしない。いくら私達を知っているとは言え、流石にマーファの騎士の皆さんが警戒体勢。本当に止めて。気を利かせたビアンカが元気を抱き込んで伏せる。
マーファの騎士の皆さんの間から、フェリアレーナ王女様が一歩前に。シンプルな黄色のロング丈のワンピースのスカートを摘まんで、フェリアレーナ王女様がお辞儀。
ひゃーっ、王女様がお辞儀ーっ。美しいーっ。隣で晃太が、綺麗な人やなーと繰り返す。
「おはようございます。ユリアレーナ国王、セレドニアが娘、フェリアレーナでございます」
きゃーっ、綺麗な声ーっ。私は女性の声で初めてちょっと興奮する。
「ミ、ミズサワデス」
我ながら、日本語が苦手な外国人みたいな返事や。内心はへへー、みたいな感じになる。時代劇で見る、へへー、だ。
「昨日は助けて頂きありがとうございます」
「イエイエソンナ」
私は、結局、役立たずだったし。晃太が綺麗な人やなー、と繰り返す。元気がわんわん。
「皆様、今からどちらに?」
「マーファニ、カエロウカト。マホウバノアシモ、イイヨウデスカラ」
「まあ、私達もマーファに向かっていますのよ」
わあ。某大国の映画の女優さん顔負けに、いかにも偶然と驚くフェリアレーナ王女様。晃太が綺麗人やなあと繰り返す。うん、綺麗な人やー。目の保養になる。仕草一つ一つが、品がいい。
「良かったらご一緒しません?」
「ヨロコンデッ」
合流作戦が、こんな形になるなんて。散々悩んだのにっ。大根だからって悩んだのにっ。まあ、よか、無事合流できた、結果よければすべてよし。
フェリアレーナ王女様は、護衛のマーファの騎士さんに確認。もちろんオッケーだ。
「テイマーのミズサワ殿なら、何の問題もございません」
ですって。良かった、良かった。連絡が行ってるだろうしね。
「では、参りましょう」
そういって、フェリアレーナ王女様が私の手を包む。
……………………
あ、鼻血出そう。興奮が頭に来て、鼻血が、鼻血が出そう。
「セザール様からお手紙で貴女のお話を伺っております。本当にありがとうございます。これで、やっとセザール様の元に嫁ぐことができます」
ああ、フェリアレーナ王女様のお顔が美し過ぎて。それで、心から嬉しそうで。ああ、良かった、本当に良かった。昨日、いろいろあったけど、結果的に、フェリアレーナ王女様は、セザール様の元に嫁げる。いや、マーファまで気を緩められない。よし、頑張らんと。
「私は、当然の事をしたまでです」
言葉が直った。
フェリアレーナ王女様が、手を引き上げてくれ、私は立ち上がる。背丈は私より高い、テオ君くらいかな。
「マーファまで、どうぞ宜しくお願いします」
「こちらこそ、フェリアレーナ王女様」
「わんっ」
元気が吠える。それにフェリアレーナ王女様は微笑む。
「ふふ、噂をお伺いしてますが、本当に可愛らしいですわね」
「すみません、やんちゃでよく吠えるんです」
「マーファに到着するまでに、仲良しになれるでしょうか?」
「元気は本当にやんちゃなんです。飛びかかりますから」
飛びかかって、綺麗なお肌に傷でも入ったら大変。
フェリアレーナ王女様は、綺麗にうふふと笑う。
晃太が綺麗な人やなー、と呟く。
それから、私達は輿入れ行列の後に続いて、トッパを無事に出ることになった。
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そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
聖女って無給で無休なんですか?じゃあやらないです
こじまき異世界に聖女として召喚されたイラストレーターのチヒロ。しかし聖女には給料も休みもないことを知って「じゃあやらないです」と聖女就任を断る。
「国と人を救う崇高な仕事には、私どもからの感謝を捧げよう」
「心底いらないです」
異世界でまで、やりがい搾取されてたまるかよ。
※小説家になろうにも投稿しています
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまうリリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、悪役令嬢として断罪された少女が、「誰かの物語の脇役」ではなく、自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
妹を踏みにじった奴らに、復讐の花束を
楠ノ木雫 妹を傷つけたやつは誰だ。
隣国に嫁いだこの国の王女であり双子の妹でもあるクラリスが2年後に亡き人となって帰ってきた。死因すら伝えられず嫁ぎ先の墓にも入れてもらえずに隣国の使者が連れてきた。
この事実に信じられずにいると、クラリスが帰ってくる半年前に戻っていた。
一体隣国でクラリスの身に何があったのか。
絶対に、もうクラリスのあんな姿を見たくない。堅く決意し使節団の使者として隣国に乗りこむ事になった。
※一話で過激なシーンがあります。
【第1回新エンタメ小説大賞】にエントリー中です。
【完結済】ワザと醜い令嬢をしていた令嬢一家華麗に亡命する
satomi醜く自らに魔法をかけてケルリール王国王太子と婚約をしていた侯爵家令嬢のアメリア=キートウェル。フェルナン=ケルリール王太子から醜いという理由で婚約破棄を言い渡されました。
もう王太子は能無しですし、ケルリール王国から一家で亡命してしまう事にしちゃいます!