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魔境⑧
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床に散らばるエビチリと油淋鶏。
だけど、私の様子に周りは大騒ぎだ。
「優衣っ、どうしたねっ」
痛む頭を抱えて蹲る私に、母が駆け寄る。
「あ、あ、ごめん、警報音が酷くて」
頭を軽く振る。エマちゃんとテオ君も心配そうに側に来てくれる。
『ユイっ、どうしたのですっ』
『どうしたのっ、って、勝手に入って来てっ』
ホークさんに支えられて、床に座り直すと、ルームが賑やかになっている。ちょっとお母さんウルフが心配で、ドア開けっ放しにしていた。
だいたい予想はついてる。【厄災クラス】なんてそうそういない。いても怖か。
「くうーん」
『外に行きなさいっ。あ、私のエビよっ』
お兄さんはルージュの皿に顔を突っ込み、ジャガーパンチを連発で受けている。痛くないの? ルージュは大好物のエビを横から食べられて、絶対容赦してないはず。食べ物の恨みは怖かのよ。ちゃんとお兄さんにはワイバーンのお肉出しておいたのに。
「くうーん」
『だから、私は貰えないのです』
…………………………
ギャーッ、鼻水ウルフが咥えて引き摺って来た爬虫類の親玉ーッ。
フローリングが大惨事やーッ。
止めて、ドラゴンーッ。母が悲鳴を上げる、花が吠える、鷹の目の皆さんは、戦闘体勢に入る。ドラゴン、白眼向いてる。ドラゴンって、魔境とかにしかいなくて珍しいはずでは? あ、ここ魔境やった。
それから不思議そうな顔したお母さんウルフと、かわいか赤ちゃん達まで。
大騒ぎや。大騒ぎや。
「ユイさん、どうですか?」
ホークさんが座り込んだままの私の顔を覗き込んで心配してくれる。
「ずいぶんいいですよ」
頭痛、だいぶ、引いてきた。さっきのびーびーはきつかった。
『ドウシタノダ?』
「ああ、ちょっと」
『彼女さん』まで心配してくれる。私が警報音の説明している間も大騒ぎが起きる。コハクと『彼女さん』の仔が柵を飛び越えてきて、元気が続けとばかりに飛び出して前肢が引っ掛かり、背中からばたん。
「きゃいいんっ」
いや危なかったっ、赤ちゃんおるのにっ。両親が慌てて赤ちゃん達の避難誘導。母の寝室に花のクッションを持ち込み、お母さんウルフと共に誘導する。チュアンさんとミゲル君が散らばった食事を片付けてくれる。
『私の油淋鶏なのですよっ』
お兄さんがビアンカの皿に顔を突っ込み、パンチを食らってる。
「へっへっ」
効いてない、全く効いてない。
鼻水は白眼剥いたドラゴンをパンチを食らわすビアンカに差し出すのをやめない。
『フム、ナルホド、従魔契約シナクテハ、ヌシノアタマニ音ガナルノダナ』
「はい、そうです」
お兄さんが、『彼女さん』のお皿に顔を寄せてる。
「ぎゃいんっ」
初めて響く、お兄さんのガチの悲鳴。
『彼女さん』の前肢で、お兄さんの頭を床に叩きつける。ひーっ、フローリングがーッ。ビアンカとルージュのパンチで、一切効いてなかったお兄さんが、頭を抑えられて、じたばたしている。びくともしない。流石、エリアボス。
『私ノニ、手ヲ出ソウトシタナ?』
ちょっと『彼女さん』、お兄さんの頭から軋むような音が響いてますよっ。
「きゅーんっ、きゅーんっ」
お兄さんが悲鳴を上げる。
『フンッ』
やっと解放されて、お兄さんは頭をぶるぶる振っている。
『ユイ~、なくなってしまったのです~』
『エビ、エビエビ~』
ビアンカとルージュは、お兄さんに目もくれず、空になってしまった皿を咥えて、エアーお手、おかわりを繰り返す。
『プライドハ?』
『ユイには必要ないのです』
『私達の特権よ』
元気とコハクまでソワソワと期待の眼差しだ。『彼女さん』の仔はどうしたものかと、悩んでいる。真似していいものかと。
「クゥッ」
と、皿を咥えているのは、なんと伴侶さん。器用に前肢で、お皿を掴んで持ち上げて。
首を、こてん。
おめめ、くりくりしながら、空のお皿を持ち上げる。
…………………………………………
か、かわいかっ。かわいかぁっ。グリフォンなんやけど、かわいかーっ。
『お前は相変わらずなのですね』
『よく私達を見て真似して』
『ダカラ、プライド』
「クゥッ、クゥッ」
伴侶さんの催促が止まらない。かわいか。
私は堪らずタップタップタップ。タップしながら気になる事を利いてみる。口振りからして。
「ねえ、『彼女さん』の伴侶さんとは知り合いなん?」
『ん、そうなのですね』
『巣から落ちていたのを、母が拾ってきて育てたのよ』
「へぇ、ルージュみたいやね」
『ちょっと違うのですよ』
本来、巣から落ちたら、母親グリフォンがすぐに助け出しに来るが、この伴侶さんは何度も落ちてしまい、とうとう育児放棄されてしまったそうだ。ドジッ子過ぎると、見放されてしまった。それをリルさんが拾って、育てたと。
『私達が成体になった頃に拾ってきたのよ』
「なら、伴侶さんは弟みたいな感じ?」
私の問いに、うーん、と悩むビアンカとルージュ。
『弟、でないのですねえ』
『なんて言うかしら、あ、規格外かしら?』
「リンゴやあるまいし」
私は伴侶さんのお皿に餃子や唐揚げを乗せる。
「グルルルルルゥッ」
「ガルルルルルゥッ」
呑気にお皿に食事を乗せていると、うなり声が上がる。
白眼剥いたドラゴンを挟んで、お兄さんと鼻水が唸り合っている。止めて、ここ、ルーム内。ビアンカも止めるように言ってくれるが、なかなか止まない。
『フム。アヤツモアレニ喧嘩ヲ売ルヨウニナッタカ』
『彼女さん』はふう、と息を出す。
『ナラバ、私ハエリアボスノ座ヲ譲リ、同行シヨウ』
「えっ? 本当ですかっ?」
あんなに迷っていた『彼女さん』があっさり了承してくれる。
『アア、ソレニコノルームヲ経由スレバ、簡単ニ帰レルノダロウ? 引キ継ギニ必要ナ事ガ済メバ、ナ』
他のウルフ達への説得やらなんやら色々あるんだろう。1ヶ月程待って欲しいと。すべて済んだら、カルーラに合流することになる。サブ・ドアはエリアボスの間の奥に設置することにした。後から合流になるため、魔の森で登録したもう1つのサブ・ドア付近を使い、ショートカットして、カルーラで従魔登録だ。なんと『彼女さん』一家全員付いてきてくれると。助かる、とっても助かる。戦力倍になりそうやん。先に『彼女さん』の仔だけが、私達と同行することになる。
『ヨシ、ナラバ従魔契約シヨウ。タダシ、先代ニ会ウマデノ間ダケダ』
「ありがとうございます。あの出来れば、私達の家族ってことでお願いします」
私の言葉に、『彼女さん』は目を細める。
『フフ、ソレデ良イナラ、ソレデヨカロウ』
良かった。戦力強化クリアや。
ビアンカとルージュがお兄さんと鼻水で、わちゃわちゃしている間に、従魔契約する。どうするかと思ったら、おでこ触ったら、あっさりできてしまった。
【エンペラーグリフォン グリフォン エンペラーグリフォン 水澤優衣の従魔になりました】
だけど、私の様子に周りは大騒ぎだ。
「優衣っ、どうしたねっ」
痛む頭を抱えて蹲る私に、母が駆け寄る。
「あ、あ、ごめん、警報音が酷くて」
頭を軽く振る。エマちゃんとテオ君も心配そうに側に来てくれる。
『ユイっ、どうしたのですっ』
『どうしたのっ、って、勝手に入って来てっ』
ホークさんに支えられて、床に座り直すと、ルームが賑やかになっている。ちょっとお母さんウルフが心配で、ドア開けっ放しにしていた。
だいたい予想はついてる。【厄災クラス】なんてそうそういない。いても怖か。
「くうーん」
『外に行きなさいっ。あ、私のエビよっ』
お兄さんはルージュの皿に顔を突っ込み、ジャガーパンチを連発で受けている。痛くないの? ルージュは大好物のエビを横から食べられて、絶対容赦してないはず。食べ物の恨みは怖かのよ。ちゃんとお兄さんにはワイバーンのお肉出しておいたのに。
「くうーん」
『だから、私は貰えないのです』
…………………………
ギャーッ、鼻水ウルフが咥えて引き摺って来た爬虫類の親玉ーッ。
フローリングが大惨事やーッ。
止めて、ドラゴンーッ。母が悲鳴を上げる、花が吠える、鷹の目の皆さんは、戦闘体勢に入る。ドラゴン、白眼向いてる。ドラゴンって、魔境とかにしかいなくて珍しいはずでは? あ、ここ魔境やった。
それから不思議そうな顔したお母さんウルフと、かわいか赤ちゃん達まで。
大騒ぎや。大騒ぎや。
「ユイさん、どうですか?」
ホークさんが座り込んだままの私の顔を覗き込んで心配してくれる。
「ずいぶんいいですよ」
頭痛、だいぶ、引いてきた。さっきのびーびーはきつかった。
『ドウシタノダ?』
「ああ、ちょっと」
『彼女さん』まで心配してくれる。私が警報音の説明している間も大騒ぎが起きる。コハクと『彼女さん』の仔が柵を飛び越えてきて、元気が続けとばかりに飛び出して前肢が引っ掛かり、背中からばたん。
「きゃいいんっ」
いや危なかったっ、赤ちゃんおるのにっ。両親が慌てて赤ちゃん達の避難誘導。母の寝室に花のクッションを持ち込み、お母さんウルフと共に誘導する。チュアンさんとミゲル君が散らばった食事を片付けてくれる。
『私の油淋鶏なのですよっ』
お兄さんがビアンカの皿に顔を突っ込み、パンチを食らってる。
「へっへっ」
効いてない、全く効いてない。
鼻水は白眼剥いたドラゴンをパンチを食らわすビアンカに差し出すのをやめない。
『フム、ナルホド、従魔契約シナクテハ、ヌシノアタマニ音ガナルノダナ』
「はい、そうです」
お兄さんが、『彼女さん』のお皿に顔を寄せてる。
「ぎゃいんっ」
初めて響く、お兄さんのガチの悲鳴。
『彼女さん』の前肢で、お兄さんの頭を床に叩きつける。ひーっ、フローリングがーッ。ビアンカとルージュのパンチで、一切効いてなかったお兄さんが、頭を抑えられて、じたばたしている。びくともしない。流石、エリアボス。
『私ノニ、手ヲ出ソウトシタナ?』
ちょっと『彼女さん』、お兄さんの頭から軋むような音が響いてますよっ。
「きゅーんっ、きゅーんっ」
お兄さんが悲鳴を上げる。
『フンッ』
やっと解放されて、お兄さんは頭をぶるぶる振っている。
『ユイ~、なくなってしまったのです~』
『エビ、エビエビ~』
ビアンカとルージュは、お兄さんに目もくれず、空になってしまった皿を咥えて、エアーお手、おかわりを繰り返す。
『プライドハ?』
『ユイには必要ないのです』
『私達の特権よ』
元気とコハクまでソワソワと期待の眼差しだ。『彼女さん』の仔はどうしたものかと、悩んでいる。真似していいものかと。
「クゥッ」
と、皿を咥えているのは、なんと伴侶さん。器用に前肢で、お皿を掴んで持ち上げて。
首を、こてん。
おめめ、くりくりしながら、空のお皿を持ち上げる。
…………………………………………
か、かわいかっ。かわいかぁっ。グリフォンなんやけど、かわいかーっ。
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「へぇ、ルージュみたいやね」
『ちょっと違うのですよ』
本来、巣から落ちたら、母親グリフォンがすぐに助け出しに来るが、この伴侶さんは何度も落ちてしまい、とうとう育児放棄されてしまったそうだ。ドジッ子過ぎると、見放されてしまった。それをリルさんが拾って、育てたと。
『私達が成体になった頃に拾ってきたのよ』
「なら、伴侶さんは弟みたいな感じ?」
私の問いに、うーん、と悩むビアンカとルージュ。
『弟、でないのですねえ』
『なんて言うかしら、あ、規格外かしら?』
「リンゴやあるまいし」
私は伴侶さんのお皿に餃子や唐揚げを乗せる。
「グルルルルルゥッ」
「ガルルルルルゥッ」
呑気にお皿に食事を乗せていると、うなり声が上がる。
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「えっ? 本当ですかっ?」
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「ありがとうございます。あの出来れば、私達の家族ってことでお願いします」
私の言葉に、『彼女さん』は目を細める。
『フフ、ソレデ良イナラ、ソレデヨカロウ』
良かった。戦力強化クリアや。
ビアンカとルージュがお兄さんと鼻水で、わちゃわちゃしている間に、従魔契約する。どうするかと思ったら、おでこ触ったら、あっさりできてしまった。
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