393 / 867
連載
魔境⑨
しおりを挟む
てってれってー
【従魔の入室確認 従魔の部屋 追加されます】
【中庭に特別オプションつきます】
ポワン、と厩舎の隣に新しい部屋が。覗くと、ビアンカやルージュ達が使う従魔の部屋と同じ作りの部屋が。それから中庭には、なんと大樹がでででん、と立っていた。うわあ、見上げるようにデカかあ。多分幹とか直径何10メートルとかありそう。あの太い枝なら、『彼女さん』が乗っても大丈夫そうや。興奮した仔達が走り回る。うんうん、かわいか。
さ、部屋と大樹はいいとして。
『名前?』
「そう、それがあると便利なんやけど」
ビアンカとルージュ達の名前も私達が候補を出し合って決めた。
従魔契約してからもお食事会が続く。ただ、毎日こんな食事ではないことは説明した。だってぽちゃぽちゃになったら、飛ぶの大変だろうしね。『彼女さん』はビアンカとルージュのお尻を見て納得していた。
最後にデザートを出す。まずは銀の槌のケーキを並べ、次にうららのパンケーキを並べる。仔達にも、プレーンパンケーキを出す。
『ウム、任セル』
食べるのに忙しい様子。5枚のパンケーキが面白いようになくなる。追加のタップ。さっきまでわちゃわちゃしていたビアンカとルージュ、お兄さんと鼻水もパンケーキをもくもくと食べてる。静かや。お母さんウルフは、母の部屋で赤ちゃん達と寝てる。
『蜘蛛達はいいのですか?』
『そうね。あれなら、巣を壊滅させる?』
恐ろしい事を。だけど、気になるあの蜘蛛達。エリアボスの『彼女さん』とお兄さん達がいない時を狙って襲って来ていたし。
『アア、問題ナイ。扇動シテイタ奴ラハ根コソギ潰シテキタ』
こちらも恐ろしい。あ、おかわりね、はいはい。タップタップタップタップ。
話を聞いていると、普段あの蜘蛛達は無理に縄張りから出ず、かかった獲物だけで生活している種族だと。なので、こちらからもあえてちょっかいかけることはない。だが、エリアボスが襲われる数日前から、そちら方面の森がざわめいているのに『彼女さん』が気が付いて、お兄さんだけ連れて調べに回った。別方面からは伴侶さんと『彼女さん』の仔が空から偵察。
で、結果、蜘蛛達を扇動していた特殊個体が複数あり、まさに根こそぎ蹴散らした、と。エリアボスの間を襲撃されたが、本来ならウルフ総出で対応したら、蹴散らしたろうが、出産時期で奥の巣には、たくさんのお母さんウルフと赤ちゃん達がいたため、半数で応戦。日頃お兄さんのへいへいいくぜ行軍のお陰でかなり強いウルフ達は、ギリギリ持ちこたえて、私達が合流。なるほど。
「そんな怖か特殊個体が何体もおるなんて、怖かね」
『アア。ダガ、アレダケ叩イタノダ、シバラクハヤツラモ無理ハデキナイ。他ノエリアボス達モ、警戒シテイル』
ピタリ。と、止まる、ビアンカとルージュ。
『会ったのですか?』
『貴女、平気だったの?』
『フンッ、イツノ話ダ。トックニ私ガアレヲ上回ッテイルノダ。臆スル理由ナドナイ』
何やら心配そうなビアンカとルージュに、『彼女さん』は鼻で嗤う。気になるが、その内ね、きっとその内。
そうそう名前、どうしよう。
色々候補を出しあう。
パンケーキに満足した頃に、ようやく決まった。一体何枚のパンケーキを出したのだろう? うららだけで、10万近くした。私達も摘まんだけどね。
「では、イシスで」
『ウム』
『彼女さん』は異論ない様子。もといた世界の、女神様の1人と言うと、羽角がピクピクッてしたので、きっと大丈夫かな。
「伴侶さんはオシリス」
「クゥッ」
伴侶さんは、普通のグリフォンだ。だけど、鬼教官のリルさんに鍛えられたので、他のグリフォンよりは強いそうだ。イシスやお兄さん、ビアンカ、ルージュには負けるけど。
「君は、ホルスね」
「クルクルッ」
ご満足な様子。ホルスはイシスと同じエンペラーグリフォンだ。現在6歳だって。元気達のお兄さん的な感じになってくれないかな。
さて、戦力強化も無事済んだし、片付けして神様にご報告しようと思ったら、すでに就寝時間だ。明日、落ち着いてからにしよう。
早速、従魔の部屋で、イシス一家が寝るかな? と、思ったら、とりあえず今日は引き上げると。また、明日会うことに。お母さんウルフは、赤ちゃん達と寝ているので、そのまま。必死にすがり付くお兄さんと、きゅるん、と訴える鼻水をビアンカとルージュが追い出して、やっと就寝準備に取りかかった。
あ、せっかく従魔契約したから、シャンプーに行ってみよう。いくらかかるか分からない。それに、チーズクリームが受けてくれないかもしれない。時間を見ると、すでに閉店時間だ。これも明日確認だ。ある程度の額は覚悟しておこう。
次の日。
快晴だ。
色々済ませてお地蔵さんにお祈り。
「おはようございます神様、無事に戦力強化出来ました」
おはようお嬢さん
あ、今日は始祖神様や。
無事に強化出来たのお。では、そのグリフォン一家を、落ち着いたら連れておいで、声をかけておこう
「はい、お待ちください」
朝御飯の準備をしていると、お母さんウルフと赤ちゃん達が部屋から出てきた。ビアンカとルージュも釣られたように出てくる。
『体調はどうなのです?』
『お乳は順調かしら?』
「わおん、わおん」
お母さん達の井戸端会議が始まる。花がびくっとするが、お母さんウルフと赤ちゃん達には既に数日接している為、吠えない。
私の視界の中に、ぽてぽてぽてん、と歩く赤ちゃん達。あはははん、かわいかあ。
「あはははん、おいで~」
思わず手を差し出すと、赤ちゃんの一匹が私の元に。隣で晃太も口を尖らせている。そろそろさわっても大丈夫かな? お母さんウルフはビアンカとルージュとおしゃべりしてるし。
私はそっと一匹抱き上げる。あはははん、もふもふ~。口元がかわいかあ。お尻もぷりぷりしてて、もうたまらん。たまらん。
「ちゅー」
私は堪らずひょっとこの様な口をして、ちゅー。
ぺろん。
あはははん、かわいか。ピンクの舌のかわいらしいこと。病気? 神様からのお年玉の指輪があるから、全然大丈夫。
てってれってー
【フォレストガーディアンウルフ(幼体) 水澤優衣の従魔になりました】
……………………………やってしまったーッ。
いや、だけど、ちょっと待って、本当にちょっとちゅーしただけなのにッ。それに親御さんの許可だってないのに。あ、そうや、一旦解除や。やり方わからんけど、もしかしたら、もう一回ちゅーしてみるが、変わらず。従魔契約ってこんなに簡単なわけ? 不味い、親御さんの許可がないのに、どうしよう。あのお母さんウルフと、やっと信頼っぽいの芽生え始めたばっかりなのに。大事な赤ちゃん取り上げたみたいで、私は焦る。
「姉ちゃん、どうしたん?」
「いや、あの、ね」
説明どうしようか悩む。抱っこしていた赤ちゃんが、私の腕から降りて、晃太の膝にすがりつく。くっ、お尻がかわいか。あの尻尾っ。たまらん。
残りの三匹が私の膝に群がるので、さっきの焦りは靴を履いて走り去り、ザ・ウェルカム。
よしよし、もふもふ~。
三匹は背伸びして、ペロペロと私の顔を舐める。あはははん、夢のようや、赤ちゃんウルフ達に囲まれて。もふもふ~。
てってれってー
【アーマーナイトウルフ(幼体) アーマーナイトウルフ(幼体) アーマーナイトウルフ(幼体) 水澤優衣の従魔になりました】
不味い、非常に、まずい。
不味いーッ。ど、どうしよう。もふもふ。
うーん、やはりここは素直に言って、赤ちゃん達を取り上げるつもりはない事を言わんとね。やっぱり、お母さんウルフの側が絶対によかはず。
「あのビアンカ、ルージュ、よか?」
『なんなのです?』
『どうしたの?』
「実はね、この赤ちゃん達と従魔契約してしまったんよ、あ、不可抗力やけんねっ。でもね、私は赤ちゃん達を取り上げるような事はせんって、お母さんウルフに説明してくれん?」
ビアンカとルージュが顔を見合わせる。
『先を越されたのですね』
『それは、心配無いわよ。ね、貴女もしてはどう?』
なんの話をしていたん? お母さんウルフが私に迫る、あはははんっ、迫力満点っ。赤と紫の目が、わあ、綺麗やあ。ビアンカと違う感じのオッドアイ。ビアンカは色味的に清楚感漂う色だけと。こちらはなんとも色っぽい感じや。
そして、ベロリン。
うぷうっ。でっかいザラザラした舌が、私の顔面をベロリ。く、くさかあっ。
てってれってー
【アーマークイーンウルフ 水澤優衣の従魔になりました】
「いやいや、ちょっと待ってん。よかとね? こんな簡単に契約して」
私はべとべとになった顔を拭く。
『構わないのですって』
『数日前から色々話していたのよ』
お母さんウルフと、ビアンカとルージュがずっと話していたそうだ。赤ちゃんウルフは全部で4匹。上位種族特有の生存率の問題がある。上手くいけば生き残れるのはたったの2匹。切ない。
だけど、元気、ルリ、クリス、コハク、ヒスイは全員無事に育っている。
『ユイ達がいたから、皆成体になれそうなのです。元気だって、あの時、ユイ達が手を尽くしてくれたから今があるのです。ルリとクリスにしてもそうなのです。どちらも乗り越えらなかったと思うのです』
『コハクとヒスイもよ。ヒスイはあの熊から逃れられても、持たなかったわ。本当に感謝しているのよ』
「そ、そうな」
『それに、ユイが彼女に『神への祈り』で回復してくれたのです』
『お乳にいいようなご飯を絶えず出してくれたわ』
それはつまり。
「赤ちゃん達の為に来るって事?」
『『そう』』
『彼女自身かなり優秀なのですよ。あの兄の伴侶になってくれているのですから』
『元々、アーマーナイトウルフだったの。ノワールの様に殻を破り、進化したんだから』
「いやいや、そのお兄さんはどうするん?」
だって、お母さんウルフの伴侶だし、赤ちゃん達のお父さんよね。
ふいに、向こうを向くビアンカとルージュ。
『イシスがいるのです』
『な、なんとかなるわ。ここに残るように言うし』
「大丈夫なあ?」
晃太が赤ちゃんを抱っこしながら疑いの眼差し。ここ数日でお兄さんのビアンカやルージュ達、お母さんウルフと赤ちゃん達へのスキンシップを見ているからだ。確かにずいぶんすりすりしていた。元気は平気そうだが、コハクはたまに嫌そうだし、三人娘はすり寄られて嫌がって、デレデレされてドン引きしてた。ビアンカとルージュもたまに手加減しないで、パンチ食らわせている。要は溺愛しているのだ。
「それでよかと?」
私はお母さんウルフに確認。お母さんウルフは別に、といった顔。
「わおん、わおん」
『私とルージュがいれば安心なのですって』
『ルームもあるから、会うのには困らないって』
「それでお兄さん納得するね?」
『あ、ユイが同行させなければいいのですっ』
『そうね、そうよっ』
「私に対応押し付けんで」
私は最初にちゅーした赤ちゃんを抱える。ちゅー、ちゅー。ペロペロ。
嫌な予感がするが。
じっと私を見つめる、赤と紫のオッドアイ。なんだか不安そうやけど。うーん、と思っていたが、赤ちゃんがペロペロ。あはははん、かわいか。もう、どうでもよか。何匹増えようがよか。かわいかもん。もふもふやもん。赤ちゃんかわいかもん。しっかりお世話せんとね。
「優衣、どうしたん? ご飯、手伝って」
「はいはい」
私は赤ちゃんをお母さんウルフに預けた。
後で名前考えよう。
【従魔の入室確認 従魔の部屋 追加されます】
【中庭に特別オプションつきます】
ポワン、と厩舎の隣に新しい部屋が。覗くと、ビアンカやルージュ達が使う従魔の部屋と同じ作りの部屋が。それから中庭には、なんと大樹がでででん、と立っていた。うわあ、見上げるようにデカかあ。多分幹とか直径何10メートルとかありそう。あの太い枝なら、『彼女さん』が乗っても大丈夫そうや。興奮した仔達が走り回る。うんうん、かわいか。
さ、部屋と大樹はいいとして。
『名前?』
「そう、それがあると便利なんやけど」
ビアンカとルージュ達の名前も私達が候補を出し合って決めた。
従魔契約してからもお食事会が続く。ただ、毎日こんな食事ではないことは説明した。だってぽちゃぽちゃになったら、飛ぶの大変だろうしね。『彼女さん』はビアンカとルージュのお尻を見て納得していた。
最後にデザートを出す。まずは銀の槌のケーキを並べ、次にうららのパンケーキを並べる。仔達にも、プレーンパンケーキを出す。
『ウム、任セル』
食べるのに忙しい様子。5枚のパンケーキが面白いようになくなる。追加のタップ。さっきまでわちゃわちゃしていたビアンカとルージュ、お兄さんと鼻水もパンケーキをもくもくと食べてる。静かや。お母さんウルフは、母の部屋で赤ちゃん達と寝てる。
『蜘蛛達はいいのですか?』
『そうね。あれなら、巣を壊滅させる?』
恐ろしい事を。だけど、気になるあの蜘蛛達。エリアボスの『彼女さん』とお兄さん達がいない時を狙って襲って来ていたし。
『アア、問題ナイ。扇動シテイタ奴ラハ根コソギ潰シテキタ』
こちらも恐ろしい。あ、おかわりね、はいはい。タップタップタップタップ。
話を聞いていると、普段あの蜘蛛達は無理に縄張りから出ず、かかった獲物だけで生活している種族だと。なので、こちらからもあえてちょっかいかけることはない。だが、エリアボスが襲われる数日前から、そちら方面の森がざわめいているのに『彼女さん』が気が付いて、お兄さんだけ連れて調べに回った。別方面からは伴侶さんと『彼女さん』の仔が空から偵察。
で、結果、蜘蛛達を扇動していた特殊個体が複数あり、まさに根こそぎ蹴散らした、と。エリアボスの間を襲撃されたが、本来ならウルフ総出で対応したら、蹴散らしたろうが、出産時期で奥の巣には、たくさんのお母さんウルフと赤ちゃん達がいたため、半数で応戦。日頃お兄さんのへいへいいくぜ行軍のお陰でかなり強いウルフ達は、ギリギリ持ちこたえて、私達が合流。なるほど。
「そんな怖か特殊個体が何体もおるなんて、怖かね」
『アア。ダガ、アレダケ叩イタノダ、シバラクハヤツラモ無理ハデキナイ。他ノエリアボス達モ、警戒シテイル』
ピタリ。と、止まる、ビアンカとルージュ。
『会ったのですか?』
『貴女、平気だったの?』
『フンッ、イツノ話ダ。トックニ私ガアレヲ上回ッテイルノダ。臆スル理由ナドナイ』
何やら心配そうなビアンカとルージュに、『彼女さん』は鼻で嗤う。気になるが、その内ね、きっとその内。
そうそう名前、どうしよう。
色々候補を出しあう。
パンケーキに満足した頃に、ようやく決まった。一体何枚のパンケーキを出したのだろう? うららだけで、10万近くした。私達も摘まんだけどね。
「では、イシスで」
『ウム』
『彼女さん』は異論ない様子。もといた世界の、女神様の1人と言うと、羽角がピクピクッてしたので、きっと大丈夫かな。
「伴侶さんはオシリス」
「クゥッ」
伴侶さんは、普通のグリフォンだ。だけど、鬼教官のリルさんに鍛えられたので、他のグリフォンよりは強いそうだ。イシスやお兄さん、ビアンカ、ルージュには負けるけど。
「君は、ホルスね」
「クルクルッ」
ご満足な様子。ホルスはイシスと同じエンペラーグリフォンだ。現在6歳だって。元気達のお兄さん的な感じになってくれないかな。
さて、戦力強化も無事済んだし、片付けして神様にご報告しようと思ったら、すでに就寝時間だ。明日、落ち着いてからにしよう。
早速、従魔の部屋で、イシス一家が寝るかな? と、思ったら、とりあえず今日は引き上げると。また、明日会うことに。お母さんウルフは、赤ちゃん達と寝ているので、そのまま。必死にすがり付くお兄さんと、きゅるん、と訴える鼻水をビアンカとルージュが追い出して、やっと就寝準備に取りかかった。
あ、せっかく従魔契約したから、シャンプーに行ってみよう。いくらかかるか分からない。それに、チーズクリームが受けてくれないかもしれない。時間を見ると、すでに閉店時間だ。これも明日確認だ。ある程度の額は覚悟しておこう。
次の日。
快晴だ。
色々済ませてお地蔵さんにお祈り。
「おはようございます神様、無事に戦力強化出来ました」
おはようお嬢さん
あ、今日は始祖神様や。
無事に強化出来たのお。では、そのグリフォン一家を、落ち着いたら連れておいで、声をかけておこう
「はい、お待ちください」
朝御飯の準備をしていると、お母さんウルフと赤ちゃん達が部屋から出てきた。ビアンカとルージュも釣られたように出てくる。
『体調はどうなのです?』
『お乳は順調かしら?』
「わおん、わおん」
お母さん達の井戸端会議が始まる。花がびくっとするが、お母さんウルフと赤ちゃん達には既に数日接している為、吠えない。
私の視界の中に、ぽてぽてぽてん、と歩く赤ちゃん達。あはははん、かわいかあ。
「あはははん、おいで~」
思わず手を差し出すと、赤ちゃんの一匹が私の元に。隣で晃太も口を尖らせている。そろそろさわっても大丈夫かな? お母さんウルフはビアンカとルージュとおしゃべりしてるし。
私はそっと一匹抱き上げる。あはははん、もふもふ~。口元がかわいかあ。お尻もぷりぷりしてて、もうたまらん。たまらん。
「ちゅー」
私は堪らずひょっとこの様な口をして、ちゅー。
ぺろん。
あはははん、かわいか。ピンクの舌のかわいらしいこと。病気? 神様からのお年玉の指輪があるから、全然大丈夫。
てってれってー
【フォレストガーディアンウルフ(幼体) 水澤優衣の従魔になりました】
……………………………やってしまったーッ。
いや、だけど、ちょっと待って、本当にちょっとちゅーしただけなのにッ。それに親御さんの許可だってないのに。あ、そうや、一旦解除や。やり方わからんけど、もしかしたら、もう一回ちゅーしてみるが、変わらず。従魔契約ってこんなに簡単なわけ? 不味い、親御さんの許可がないのに、どうしよう。あのお母さんウルフと、やっと信頼っぽいの芽生え始めたばっかりなのに。大事な赤ちゃん取り上げたみたいで、私は焦る。
「姉ちゃん、どうしたん?」
「いや、あの、ね」
説明どうしようか悩む。抱っこしていた赤ちゃんが、私の腕から降りて、晃太の膝にすがりつく。くっ、お尻がかわいか。あの尻尾っ。たまらん。
残りの三匹が私の膝に群がるので、さっきの焦りは靴を履いて走り去り、ザ・ウェルカム。
よしよし、もふもふ~。
三匹は背伸びして、ペロペロと私の顔を舐める。あはははん、夢のようや、赤ちゃんウルフ達に囲まれて。もふもふ~。
てってれってー
【アーマーナイトウルフ(幼体) アーマーナイトウルフ(幼体) アーマーナイトウルフ(幼体) 水澤優衣の従魔になりました】
不味い、非常に、まずい。
不味いーッ。ど、どうしよう。もふもふ。
うーん、やはりここは素直に言って、赤ちゃん達を取り上げるつもりはない事を言わんとね。やっぱり、お母さんウルフの側が絶対によかはず。
「あのビアンカ、ルージュ、よか?」
『なんなのです?』
『どうしたの?』
「実はね、この赤ちゃん達と従魔契約してしまったんよ、あ、不可抗力やけんねっ。でもね、私は赤ちゃん達を取り上げるような事はせんって、お母さんウルフに説明してくれん?」
ビアンカとルージュが顔を見合わせる。
『先を越されたのですね』
『それは、心配無いわよ。ね、貴女もしてはどう?』
なんの話をしていたん? お母さんウルフが私に迫る、あはははんっ、迫力満点っ。赤と紫の目が、わあ、綺麗やあ。ビアンカと違う感じのオッドアイ。ビアンカは色味的に清楚感漂う色だけと。こちらはなんとも色っぽい感じや。
そして、ベロリン。
うぷうっ。でっかいザラザラした舌が、私の顔面をベロリ。く、くさかあっ。
てってれってー
【アーマークイーンウルフ 水澤優衣の従魔になりました】
「いやいや、ちょっと待ってん。よかとね? こんな簡単に契約して」
私はべとべとになった顔を拭く。
『構わないのですって』
『数日前から色々話していたのよ』
お母さんウルフと、ビアンカとルージュがずっと話していたそうだ。赤ちゃんウルフは全部で4匹。上位種族特有の生存率の問題がある。上手くいけば生き残れるのはたったの2匹。切ない。
だけど、元気、ルリ、クリス、コハク、ヒスイは全員無事に育っている。
『ユイ達がいたから、皆成体になれそうなのです。元気だって、あの時、ユイ達が手を尽くしてくれたから今があるのです。ルリとクリスにしてもそうなのです。どちらも乗り越えらなかったと思うのです』
『コハクとヒスイもよ。ヒスイはあの熊から逃れられても、持たなかったわ。本当に感謝しているのよ』
「そ、そうな」
『それに、ユイが彼女に『神への祈り』で回復してくれたのです』
『お乳にいいようなご飯を絶えず出してくれたわ』
それはつまり。
「赤ちゃん達の為に来るって事?」
『『そう』』
『彼女自身かなり優秀なのですよ。あの兄の伴侶になってくれているのですから』
『元々、アーマーナイトウルフだったの。ノワールの様に殻を破り、進化したんだから』
「いやいや、そのお兄さんはどうするん?」
だって、お母さんウルフの伴侶だし、赤ちゃん達のお父さんよね。
ふいに、向こうを向くビアンカとルージュ。
『イシスがいるのです』
『な、なんとかなるわ。ここに残るように言うし』
「大丈夫なあ?」
晃太が赤ちゃんを抱っこしながら疑いの眼差し。ここ数日でお兄さんのビアンカやルージュ達、お母さんウルフと赤ちゃん達へのスキンシップを見ているからだ。確かにずいぶんすりすりしていた。元気は平気そうだが、コハクはたまに嫌そうだし、三人娘はすり寄られて嫌がって、デレデレされてドン引きしてた。ビアンカとルージュもたまに手加減しないで、パンチ食らわせている。要は溺愛しているのだ。
「それでよかと?」
私はお母さんウルフに確認。お母さんウルフは別に、といった顔。
「わおん、わおん」
『私とルージュがいれば安心なのですって』
『ルームもあるから、会うのには困らないって』
「それでお兄さん納得するね?」
『あ、ユイが同行させなければいいのですっ』
『そうね、そうよっ』
「私に対応押し付けんで」
私は最初にちゅーした赤ちゃんを抱える。ちゅー、ちゅー。ペロペロ。
嫌な予感がするが。
じっと私を見つめる、赤と紫のオッドアイ。なんだか不安そうやけど。うーん、と思っていたが、赤ちゃんがペロペロ。あはははん、かわいか。もう、どうでもよか。何匹増えようがよか。かわいかもん。もふもふやもん。赤ちゃんかわいかもん。しっかりお世話せんとね。
「優衣、どうしたん? ご飯、手伝って」
「はいはい」
私は赤ちゃんをお母さんウルフに預けた。
後で名前考えよう。
2,931
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
母は何処? 父はだぁれ?
穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。
産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。
妹も、実妹なのか不明だ。
そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。
父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。
母は、どこへ行ってしまったんだろう!
というところからスタートする、
さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。
変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、
家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。
意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。
前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。
もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。
単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。
また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。
「小説家になろう」で連載していたものです。
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~
ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。
しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。
やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。
そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。
そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。
これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。
悪女と呼ばれた死に戻り令嬢、二度目の人生は婚約破棄から始まる
冬野月子
恋愛
「私は確かに19歳で死んだの」
謎の声に導かれ馬車の事故から兄弟を守った10歳のヴェロニカは、その時に負った傷痕を理由に王太子から婚約破棄される。
けれど彼女には嫉妬から破滅し短い生涯を終えた前世の記憶があった。
なぜか死に戻ったヴェロニカは前世での過ちを繰り返さないことを望むが、婚約破棄したはずの王太子が積極的に親しくなろうとしてくる。
そして学校で再会した、馬車の事故で助けた少年は、前世で不幸な死に方をした青年だった。
恋や友情すら知らなかったヴェロニカが、前世では関わることのなかった人々との出会いや関わりの中で新たな道を進んでいく中、前世に嫉妬で殺そうとまでしたアリサが入学してきた。
【完結】最愛から2番目の恋
Mimi
恋愛
カリスレキアの第2王女ガートルードは、相手有責で婚約を破棄した。
彼女は醜女として有名であったが、それを厭う婚約者のクロスティア王国第1王子ユーシスに男娼を送り込まれて、ハニートラップを仕掛けられたのだった。
以前から婚約者の気持ちを知っていたガートルードが傷付く事は無かったが、周囲は彼女に気を遣う。
そんな折り、中央大陸で唯一の獣人の国、アストリッツァ国から婚姻の打診が届く。
王太子クラシオンとの、婚約ではなく一気に婚姻とは……
彼には最愛の番が居るのだが、その女性の身分が低いために正妃には出来ないらしい。
その事情から、醜女のガートルードをお飾りの妃にするつもりだと激怒する両親や兄姉を諌めて、クラシオンとの婚姻を決めたガートルードだった……
※ 『きみは、俺のただひとり~神様からのギフト』の番外編となります
ヒロインは本編では名前も出ない『カリスレキアの王女』と呼ばれるだけの設定のみで、本人は登場しておりません
ですが、本編終了後の話ですので、そちらの登場人物達の顔出しネタバレが有ります
神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました
青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。
それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。
手放したのは、貴方の方です
空月そらら
恋愛
侯爵令嬢アリアナは、第一王子に尽くすも「地味で華がない」と一方的に婚約破棄される。
侮辱と共に隣国の"冷徹公爵"ライオネルへの嫁入りを嘲笑されるが、その公爵本人から才能を見込まれ、本当に縁談が舞い込む。
隣国で、それまで隠してきた類稀なる才能を開花させ、ライオネルからの敬意と不器用な愛を受け、輝き始めるアリアナ。
一方、彼女という宝を手放したことに気づかず、国を傾かせ始めた元婚約者の王子。
彼がその重大な過ちに気づき後悔した時には、もう遅かった。
手放したのは、貴方の方です――アリアナは過去を振り切り、隣国で確かな幸せを掴んでいた。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。