もふもふ大好き家族が聖女召喚に巻き込まれる~時空神様からの気まぐれギフト・スキル『ルーム』で家族と愛犬守ります~

鐘ケ江 しのぶ

文字の大きさ
451 / 876
連載

変わらないもの①

 考えられるのは事故や。
 ビアンカやイシス達が人達を襲うわけない。もちろん仔達も、アレスもだ。それに両親やマデリーンさん達もすぐ近くにいる。もし、あのアルブレンの石少年みたいのがいても、ここはギルドの真ん前だ。そんなことしたら、すぐに捕まる。例え石を投げられたとしても、賢いビアンカ達がその相手を安易に傷付けるとは思えない。
 それにうちのビアンカとルージュ達は何度も警備の人に付き添われて、街中を歩き、ちゃんとした従魔だと、その存在は知れ渡っているはずだ。
 色々消去して、考えたのは、何かしらの事故に子供が巻き込まれたんやかな。
 晃太が不安そうに私を見る。
 私は腰をあげる。救急の経験はないが、色んな手段はある。
「チュアンさん」
「はい、ユイさん」
「表で負傷者がいます。力を貸してください」
「もちろんです」
 ラソノさんとガトールさんが慌てる。
「ミズサワ様? どうされました?」
「負傷者とは?」
「すみません、急を要するかもしれません。失礼します」
 返事を待たずに、私とチュアンさんは応接室を飛び出す。晃太とホークさん、ルージュとコハクとヒスイもだ。
 すぐにロビーに出ると、職員さんや冒険者さん達が騒然している。やっぱり何かあったんや。そしてハッキリ聞こえる低音の狼系特有の唸り声。アレスや。
 どうしたんね。
 そう叫びそうになったが、止まる。
 けが人、おらん。
 おらんけど、ギルドの前は、ロビー以上に騒然となっていた。
 全身の毛を逆立てたアレスが、今にもすべてを噛み砕かんばかりに唸り声を上げていた。思わず主人である私でも引きそうなくらい、恐ろしい形相だ。そのアレスの首に、父が腕を回し、視線を固定させていた。
 その先にあるのは、チュアンさんが上級商会のものだと言った、豪華な馬車だ。
 人垣は馬車とアレスの回りから引き、一様に怯えている。それはそうだ。只でさえデカイウルフが、眉間に深い皺を刻み、牙剥き出したら、誰でも逃げ出すよ。
「あ、ユイさんっ」
「ユイさんっ」
 近くで馬車を守っていたエマちゃんとテオ君。おそらく馬車には母と花、シルフィ達が乗っている。アリスも馬車から離れない。マデリーンさんとミゲル君も馬車に張り付いている。ビアンカとイシスがアレスと少し距離を置いている。
 豪華な馬車の前には護衛らしき人達が、ひーっ、と言った顔だけど、踏ん張って立ってる。
 いかんっ、立ち止まってしまった。
「アレスッ、お父さんっ」
 私は唸り声を上げるアレスの元に駆け寄る。
「どうしたんね、何で唸りようと?」
『主よっ、この木の箱に、弱った童達がいるのだっ』
「えっ?」
 目の前には、豪華な馬車が3台。
 弱った童達って、複数? これ、もしかして救急車? な、わけない。
『妙な魔力で隠しているが、我の気配感知から逃れられないのだっ』
 アレスが轟くように吼える。
 ひーっ、凄い迫力っ。
 ちらり、とビアンカとルージュ、イシス達に視線を送る。
『いるのですね』
『そうね。何かしら、妙な魔力で覆っているわ』
『ウム、イルナ数匹。ヌシヨ、ドウスル? ソノ木ノ塊、破壊スルカ?』
 ど、どうしようっ。
 弱った子供がいるというが、どうみても豪華な馬車に、不釣り合いやない?
「おいっ、お前っ、我が商会によくもこのような無礼をっ」
 ひーっ、となっている護衛さん達の後ろから、豪華な格好したメタボな男性が吠える。
『ああああぁぁぁぁぁっ、弱った童を、妙な魔力で拘束している屑どもがっ』
 アレスの顔が、や、の付く人達が逃げ出すような形相にっ。ひーっ、厄災クラスやーっ。
 やけど、ここで引くわけはいかん。だいたい、アレスは基本的に小さな子供には優しいんや。アリスやシルフィ達、ビアンカやルージュ、仔達にはでれでれして引かれているけど。孤児院の子供達にだってなにされても、へっへっ言って大人しく触られている。それにエマちゃんやテオ君も、保護対象にしているんや。そんなアレスがこんなに怒っている。それにビアンカやルージュ、イシスが言うなら、いるはずや。
 弱って、拘束されている子供達が。なら、引くわけにはいかんやろ。
「あの、その馬車に乗っている子供達、凄く弱っています。すぐに手当てをっ」
 とりあえず、言葉は選んでみたけど。
 だけど、その言葉に、さっきのメタボな男性の顔色が変わる。
「無礼者っ、これはアスラ王国とユリアレーナ王国の更なる友好の為にっ、お、王太子妃殿下になられる、か、方の、花嫁衣装の生地であるぞっ。子供が乗ってぇ、いるわけがないっ」
 あ、なんや、不味いことになりそうっ。
 かみかみのメタボな男性。顔色、真っ赤っ赤。
『ユイ、その雄の言葉には嘘はないわ』
 まさかのルージュの反応。
『ただし、前半だけね。だけど、あからさまに動揺しているわ、探られたくないようね』
 あ、やっぱり。
 子供達がいるのは確かな。だけど、知られたくないってことか。
「分かっているのかっ、お前がこれに触れることしら許されぬのだっ。これは両国の関係を更に強固にするために……………」
 メタボな男性のかみかみ説明が続く。
 私のすぐ後ろにラソノさんが恐る恐る近づいて来た。
「ミズサワ様。あの馬車はアスラ王国一の商会です。王太子妃殿下になられる方の為に、ミッシェル王太后様が特別発注したものです」
 やっぱり、不味いことになりそうやっ。ユリアレーナ王家の皆様にはお世話になっている。特にご高齢で、足を引きずっていたミッシェル王太后様は、社交界に復帰し牽制までしてくれている。パーヴェル様は、死ぬまで王族だと言ったけど、私は申し訳なかった。
 あの馬車の荷は、ジークフリード殿下の正室のご令嬢のものなんだろう。これで何かしらのトラブルに巻き込まれたら、あまりよろしくない事になりそう。
 私は決断を一瞬迷う。だが、アレスがいう弱った、拘束の言葉が押す。
「その馬車には、弱った子供達がいますっ。すぐに手当てをっ」
 アレスが嘘言うわけない。今は目の前の子供達を助けんと。
「我がズロー商会を愚弄する気かーっ」
 メタボな男性が吠える。顔色、真っ赤っ赤。
 どうしようっ。早く、子供達の手当てをしたか。しかし、無理矢理ってのはちょっと。
『真っ二つにするのです?』
『妙な魔力で、はっきり気配が分からないわ、当たったら死んでしまうわ。回りから剥がしましょう』
『ウム、アノ木ノ上ダケ剥ガスカ?』
 ちょっと待って。
 後ろのラソノさんが、お待ちくださいと繰り返す。
 恐らく、この馬車が運ぶのは、アスラ王国とユリアレーナ王国が、これからも仲良くしていくためのものなんだろう。それだけなら良かったが、そう、それだけなら。
「優衣」
 今まで、アレスの首に腕を回していた父が静かに発する。
「子供はみんな未成年。マーランからの違法奴隷として、拘束されとる」
 違法奴隷っ? 何でそんなあからさまに、この馬車に不釣り合いな単語がっ。
「全部で14人。誘拐、もしくは違法と分かっている親に故意に売られとる。一番年上の狼の獣人の男ん子の容態が一番悪かっ」
『僅かに聞こえるのだ、遮断されているが、怯えて泣いているのだっ』
 はい、決定。
 強行突破します。
 誘拐? 親に売られた? 怯えて泣いてる? ほっておけるわけがないやろ。単純に考えて、このメタボな男性、噛んでるな。
 許せん。許せん。許せん。
 腹の奥底から、ふつふつと怒りが沸き上がる。
 私は一歩前に出る。すぐにビアンカとルージュが張り付き、ホークさんもすぐそばに。
「このっ、無礼者っ、無礼者っ。何をしている早く追い返せっ。ギルドも何をしているっ。我がズロー商会が、アスラ王国で筆頭であるぞっ」
「だから、なんや」
 私は息を吸う。
「子供達を解放しなさい」
「無礼っ、この馬車にはっ」
「子供達を解放せんねっ」
 メタボな男性の声に、私の声量が勝る。
「ミズサワ様、落ち着いてください。この馬車は………」
 ラソノさんも私を止めてくる。多分、両国を思っての事やね。
「ラソノさん。すみません。目の前で、子供達が弱って泣いています」
「そ、その、証拠は……………」
「うちの従魔達が、嘘を付くとでも?」
 ぐうの音もでないラソノさん。違法奴隷ってよくわからないけど、響きでよくないはずや。だって誘拐や故意に売られたんやから。ホークさん達とは、絶対に違う。
「このっ、馬車に何かあれば、アスラ王国は黙っていると思うのかっ」
 それはつまり、ユリアレーナ王国と、火の粉が舞うと?
『嘘なのです』
『嘘ね』
『嘘なのだ』
『嘘ダ』
 そうだろうね。花嫁衣装の布をのせてる馬車に、違法奴隷が載ってる。罰を受けるの、このズロー商会やないの?
 まあ、それは、後々。
「さあ、子供達ば解放せんね。それとも、うちの従魔が探しだそうか?」
 私の言葉に、ゆっくり前に出るビアンカとルージュ。そしてその2人の前にアレスが進み出る。イシスは最後尾にオシリスと並ぶ。
「そんなことして………………」
 メタボな男性が喚く中、父が私にこしょこしょ。
「分かったありがとうお父さん。下がっとって」
 父はミゲル君が後ろに誘導。
「貴様っ、分かっているのかっ。自分がどれだけ、回りに影響するかっ」
「それは後で考える」
 ピシャッと答える。
 そう、まず、最優先すべき事。
 目の前で、弱って、怯えて泣いている子供達がいるのならば、引いておられん。
「さあ、あんたらも、いい加減、私達とやりあう覚悟、出来たよね?」
感想 851

あなたにおすすめの小説

「三番以下を取りなさい」と五年言われ続けたので、公開試験で本気を出しました

歩人
ファンタジー
王立魔法学院、入学時首席のリュシエンヌは、婚約者レイナルト公爵令息から五年間「女は三番以下を取れ」と命じられてきた。学院の序列は国家序列の縮図。レイナルトは常に一位に居続けた。婚約披露を控えた十九歳の春、レイナルトが新しい婚約者を連れて告げる。「お前では並び立てぬ。学力も身分も、足りなすぎる」——リュシエンヌは微笑んで、その翌日の年次公開試験で、五年封じてきた本気を出した。国王臨席の場で、史上最高点。魔法局長官が教授陣に命じる。「過去五年間の彼女の実測点と、もし本気で受けていたら出せた推計点を、公表したまえ」。教授陣は震える手で数字を並べた。レイナルトの「首席」は、全て彼女が譲った場所だった。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

夫の不倫相手に「妻の座を譲れ」と言われたので、譲る代わりに全部置いていきます 〜行き先は老舗旅館。追いかけてきても、もう遅いです〜 

なつめ
恋愛
夫の愛人に「妻の座を譲れ」と言い渡された主人公は、怒鳴り返すこともしがみつくこともせず、ただ静かに頷いた。 家のこと、食事のこと、社交のこと、義実家のこと、会社の裏方のこと。 誰も価値を知らなかった“妻の座”の中身を、そっくりそのまま置いて家を出る。 向かった先は、かつて傷ついた自分を受け入れてくれた老舗旅館。 再建に奔走する若旦那とともに働く中で、主人公は初めて「役に立つから愛される」のではなく、「あなた自身がいてほしい」と言われる温かさを知っていく。 一方、主人公を軽んじた元夫の家では、生活も体裁も仕事もじわじわと崩壊を始める。 これは、何も持たずに出ていったはずの女が、自分の人生を取り戻し、最後には新しい恋と居場所を手に入れる再生の物語。

見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです

珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。 その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。 それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。

夫が私にそっくりな下の娘ばかりをかわいがるのですけど!

山科ひさき
恋愛
「子供達をお願い」 そう言い残して、私はこの世を去った。愛する夫が子供達に私の分も愛情を注いでくれると信じていたから、不安はなかった。けれど死後の世界から見ている夫は下の娘ばかりをかわいがり、上の娘をないがしろにしている。許せない。そんな時、私に不思議な声が呼びかけてきて……。

「お前の泥だらけの手で触るな、気持ち悪い」と追放された令嬢——王宮の食器が一枚も焼けなくなった

歩人
ファンタジー
「お前の泥だらけの手で触るな、気持ち悪い」——王宮御用達の食器を焼く伯爵令嬢エルザは、婚約者の第二王子に手の荒れを嗤われて追放された。十二歳から十年間、王宮の全ての食器を手ずから焼いてきた。彼女の食器は特殊な土と焼成技術で魔力を通し、毒に触れると色が変わる。料理の温度も保つ。追放から三ヶ月後、晩餐会で新しい食器を使ったところ、毒が検知されず隣国の大使が倒れた。外交問題に発展する中、第二王子が「食器くらい誰でも焼ける」と窯に立った結果、出来上がったのは歪んだ灰色の皿だった。

「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした

しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」 十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。 会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。 魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。 ※小説家になろう様にも投稿しています※

私を追い出した結果、飼っていた聖獣は誰にも懐かないようです

天宮有
恋愛
 子供の頃、男爵令嬢の私アミリア・ファグトは助けた小犬が聖獣と判明して、飼うことが決まる。  数年後――成長した聖獣は家を守ってくれて、私に一番懐いていた。  そんな私を妬んだ姉ラミダは「聖獣は私が拾って一番懐いている」と吹聴していたようで、姉は侯爵令息ケドスの婚約者になる。  どうやらラミダは聖獣が一番懐いていた私が邪魔なようで、追い出そうと目論んでいたようだ。  家族とゲドスはラミダの嘘を信じて、私を蔑み追い出そうとしていた。