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連載
王冠山へ⑧
時空神様達を見送って、肉まんのお昼を済ませる。肉まんだけでは足りないからね。私は松太郎の半炒飯、晃太は紫竜の辛味噌麺だ。鷹の目の皆さんにもね。紫竜の海鮮粥、五目チャーハン、五目餡掛けおこわ、上海風焼きそば、棒棒鶏サラダをシェアしてもらう。メニューみてたら追加したくなった。餃子、海老焼売もタップ。
「姉ちゃん、わい、春巻き食べたか」
「はいはい」
タップ、と。
「ビール~」
ミゲル君の切ない呟き。チュアンさんが肩を掴んで、ぷしゅー、と黙っている。相変わらずやね。でも、確かにビールなメニューかな。毎日ビアンカやルージュ達のブラッシングや、母の裁縫のお手伝い頑張ってくれてるし。ノンアルコールビールならよかろう、タップと。勿論、ホークさんの分も。
ぱぁぁぁぁぁっ、とミゲル君の顔が輝く。
「一杯だけよ」
「ありがとうございますっ」
ぐびびびびびっ。
「あーっ」
いいのみっぷり。
「姉ちゃんわいも」
「はいはい」
『私は油淋鶏~』
『私はエビ~』
しれっとリクエストが入るが、スルー。
ノンアルコールビール以外はジャスミンティーをタップと。
ふう、温かいジャスミンティー、落ち着く。
肉まんはぎっしり餡が入っていて、肉汁が溢れて、かわが美味しい。まだ、この肉まんあるかな? 中庭を見ると、移動販売車はなくなっていた。売り切れちゃったかあ。しかたない、次に来た時までの楽しみやね。
デザートに杏仁豆腐も食べてしまった。魔境に向かった際に減った体重が、半分近く戻ってしまっているから気を付けないとね。
昼食後、しっかり休憩して、いよいよ王冠山に向かう事に。
オシリスにホークさんが鞍を装着する。
『ヌシヲ乗セルノダ、気ヲ付ケルダゾ』
「くうっ」
各パーティーの皆さんも、いよいよなので、お見送りに来てくれる。
「ミズサワ殿、どうかお気をつけてください」
ケルンさんが代表して言ってくれる。見た目、二十歳くらいなのに、これでこの冒険者メンバーの中で最高齢なんて、ね。皆さん、心配そうだ。
「はい、ありがとうございます」
ワイバーンのポンチョ、ベスト、レギンス。レッサードラゴンのブーツ。ヘルメットの準備オッケー。
「ユイさん、気を付けてね」
エマちゃんも心配してくれる。その後ろでテオ君もだ。
「大丈夫よ、ホークさんおるしね」
オシリスはお尻ぷりぷりしながらホークさんに寄って来ている。うーん、ぷりぷり。
『オシリス、いくら灯火の女神様のブーストがあると言っても、無理はダメなのですよ』
『ユイを乗せているのを忘れてはダメよ』
「くうっ、くうっ」
お尻ぷりぷり。
「ユイさん、準備出来ました」
ホークさんがオシリスの鞍と手綱の最終確認する。
「お願いします」
「姉ちゃん、気を付けてな」
晃太もギリギリまで支援魔法を使ってくれる。
いよいよやね。
ルームの扉を開けて、私とホークさん、オシリスが出る。何時ものように元気が続きそうになるので、ビアンカが鼻先で止める。
イシスとルージュがたくさんの光のリンゴにカボチャにスイカを出してくれる。周囲の確認し、ドアを閉める。うーん、いつもビアンカやルージュ、仔達がいて、賑やかな回りが静かで、逆に恐か。
ホークさんがまずオシリスに騎乗、私も鞍に跨がる。ホークさんがマントを取り出し包む、はい、餃子の出来上がり。安定の安心感ー。
「オシリス頼むね」
「くうっ」
「ホークさん、お願いします」
「はい、お任せください」
オシリスが頭を上げて、ゆっくり走り出す。光のリンゴ達が、離れず付いてきてくれる。
「飛びますっ」
はい、お口チャック。
木々の隙間を縫うようにして、オシリスが離陸する。飛行機に乗ってる時の圧がかかるが、時空神様のブーストのおかげでそれ以上はないからありがたい。
王冠山の麓はしっかり森だけど、徐々に高度が上がるにつれて、緑から灰色がかった山肌になっていき、植物も変わっていく。ちらほらと魔物もいるが、オシリスの姿を見て、ちりじりに逃げていく。何体かはこちらを伺っているけど、飛行しているために、あっという間に視界から消える。光のリンゴ達の出番なし。
オシリスはほぼまっすぐ飛行するが、途中で左右に微妙に揺れる。だけど、安全安定のホークさんのおかげで、全く心配していない。
どれくらいしたか、ほとんど緑がなくなって来た。風も強いみたいで、ヘルメット越しでもビュンビュン言ってるけど、身体に感じる圧は変わらず。時空神様のブーストや晃太の支援魔法、オシリスの風の結界のおかげやね。剥き出しの岩山、みたいな雰囲気になっていく。うっ、寒かっ。
オシリスが少し右斜めにコースを変える。
「ユイさん、降りますよ」
お口チャックの私は頷く。オシリスはぶわっと、翼の角度を変えて、スピードを落とす。オシリスは少し開けた場所に、ふわりと着地。
うっ、風が強かっ。
王冠山の中を見たいけど、風が強かっ。
「ユイさん、そのままルームにっ」
「はいっ」
私はルームを開け、オシリスは私とホークさんを乗せたまま入る。ふうっ、風、強かっ。
「姉ちゃん、大丈夫なっ?」
「大丈夫よ」
さ、オシリスから降りましょ。ヘルメット越しに差し出された手に、反射的に掴まってしまう。ん、チュアンさんにしてはちょっと小さめの手。
「お疲れ様です、ユイさん」
「あ、あ、はい」
ヘルメット越しでも綺麗に見えました、灰色の目。シュタインさんがそっと降りる私の介助をしてくれる。私の二段腹に回されたホークさんの腕が強ばった気がしたが、トラブルなく下車する。
「あ、ありがとうございます」
「いいえ」
なんや、ドキドキ。いかん、邪念やね。今はヤマタノオロチの目視や。
ヘルメットを脱いで、私はルームの窓に。いつも騒がしいアレスが窓の向こうを見ている。近くでイシスも覗いている。
なんや、さっきのドキドキとは別のドキドキが。腹の奥底が冷えるようなドキドキ。
この王冠山を衝撃で作る程の大怪獣合戦をして、魔物分布を変えるほどのゲリラ豪雨と土石流を起こしたヤマタノオロチがいる。
『ユイ、大丈夫なのです』
『ここはルームよ、向こうは手出し出来ないわ』
ビアンカとルージュがそっと寄り添ってくれる。ありがとう。
『ヌシヨ、見エルゾ』
イシスがこちらにちらり、と視線を流す。
ドキドキ、ドキドキ、違う、ドクン、ドクン。
イシスの隣に立ち、窓を覗く。
王冠山内部は、すり鉢のような感じだ。下の方はうっそうとした森の様だ。魔境の様に、深い緑の絨毯が広がっている。かなり、広大な森や。地図上でもはっきりと山が描かれている王冠山の内側やから、広大やと思っていたけど、向こうが遥か彼方や。
ヤマタノオロチ、どこやろ。
ドクン、ドクン、としながら視線を走らせるが、ヤマタノオロチはどこや? 蛇よね、蛇よね。
皆さんも窓を覗く。
「ねえ、イシス、どこ?」
『アソコダ』
イシスの嘴の先を見る。
……………………………………………?
目を凝らす。
え? あれ? まさか、あれ? 嘘やろ?
「あれ?」
『ソウダ』
私が示した先が合ったのか、イシスが頷く。
嘘やろ。
あれ、あれ、ちょっと、大きいとかやない。
だって、だって、広大な王冠山内部にあちこちポツポツある1つみたいに溶け込んでいるんやもんっ。
隣の晃太が、肺の中にある空気を全て吐き出すようなため息。
緑の絨毯の中で、ぽっこりと飛び出しているのは、黒っぽいそれ。確かに、よくみたら、かつて魔境でみた蛇が集団で絡まっているような感じ。いややあ。
一緒にみていた冒険者の皆さんも唖然として、数人は目を覆っている。
「あれはないやろうもん……………」
私も、日本神話を知らない訳ではないが、いくらなんでもあれはない。
サイズ、おそらく、小山サイズのヤマタノオロチ。
私は現実逃避したくなった。
「姉ちゃん、わい、春巻き食べたか」
「はいはい」
タップ、と。
「ビール~」
ミゲル君の切ない呟き。チュアンさんが肩を掴んで、ぷしゅー、と黙っている。相変わらずやね。でも、確かにビールなメニューかな。毎日ビアンカやルージュ達のブラッシングや、母の裁縫のお手伝い頑張ってくれてるし。ノンアルコールビールならよかろう、タップと。勿論、ホークさんの分も。
ぱぁぁぁぁぁっ、とミゲル君の顔が輝く。
「一杯だけよ」
「ありがとうございますっ」
ぐびびびびびっ。
「あーっ」
いいのみっぷり。
「姉ちゃんわいも」
「はいはい」
『私は油淋鶏~』
『私はエビ~』
しれっとリクエストが入るが、スルー。
ノンアルコールビール以外はジャスミンティーをタップと。
ふう、温かいジャスミンティー、落ち着く。
肉まんはぎっしり餡が入っていて、肉汁が溢れて、かわが美味しい。まだ、この肉まんあるかな? 中庭を見ると、移動販売車はなくなっていた。売り切れちゃったかあ。しかたない、次に来た時までの楽しみやね。
デザートに杏仁豆腐も食べてしまった。魔境に向かった際に減った体重が、半分近く戻ってしまっているから気を付けないとね。
昼食後、しっかり休憩して、いよいよ王冠山に向かう事に。
オシリスにホークさんが鞍を装着する。
『ヌシヲ乗セルノダ、気ヲ付ケルダゾ』
「くうっ」
各パーティーの皆さんも、いよいよなので、お見送りに来てくれる。
「ミズサワ殿、どうかお気をつけてください」
ケルンさんが代表して言ってくれる。見た目、二十歳くらいなのに、これでこの冒険者メンバーの中で最高齢なんて、ね。皆さん、心配そうだ。
「はい、ありがとうございます」
ワイバーンのポンチョ、ベスト、レギンス。レッサードラゴンのブーツ。ヘルメットの準備オッケー。
「ユイさん、気を付けてね」
エマちゃんも心配してくれる。その後ろでテオ君もだ。
「大丈夫よ、ホークさんおるしね」
オシリスはお尻ぷりぷりしながらホークさんに寄って来ている。うーん、ぷりぷり。
『オシリス、いくら灯火の女神様のブーストがあると言っても、無理はダメなのですよ』
『ユイを乗せているのを忘れてはダメよ』
「くうっ、くうっ」
お尻ぷりぷり。
「ユイさん、準備出来ました」
ホークさんがオシリスの鞍と手綱の最終確認する。
「お願いします」
「姉ちゃん、気を付けてな」
晃太もギリギリまで支援魔法を使ってくれる。
いよいよやね。
ルームの扉を開けて、私とホークさん、オシリスが出る。何時ものように元気が続きそうになるので、ビアンカが鼻先で止める。
イシスとルージュがたくさんの光のリンゴにカボチャにスイカを出してくれる。周囲の確認し、ドアを閉める。うーん、いつもビアンカやルージュ、仔達がいて、賑やかな回りが静かで、逆に恐か。
ホークさんがまずオシリスに騎乗、私も鞍に跨がる。ホークさんがマントを取り出し包む、はい、餃子の出来上がり。安定の安心感ー。
「オシリス頼むね」
「くうっ」
「ホークさん、お願いします」
「はい、お任せください」
オシリスが頭を上げて、ゆっくり走り出す。光のリンゴ達が、離れず付いてきてくれる。
「飛びますっ」
はい、お口チャック。
木々の隙間を縫うようにして、オシリスが離陸する。飛行機に乗ってる時の圧がかかるが、時空神様のブーストのおかげでそれ以上はないからありがたい。
王冠山の麓はしっかり森だけど、徐々に高度が上がるにつれて、緑から灰色がかった山肌になっていき、植物も変わっていく。ちらほらと魔物もいるが、オシリスの姿を見て、ちりじりに逃げていく。何体かはこちらを伺っているけど、飛行しているために、あっという間に視界から消える。光のリンゴ達の出番なし。
オシリスはほぼまっすぐ飛行するが、途中で左右に微妙に揺れる。だけど、安全安定のホークさんのおかげで、全く心配していない。
どれくらいしたか、ほとんど緑がなくなって来た。風も強いみたいで、ヘルメット越しでもビュンビュン言ってるけど、身体に感じる圧は変わらず。時空神様のブーストや晃太の支援魔法、オシリスの風の結界のおかげやね。剥き出しの岩山、みたいな雰囲気になっていく。うっ、寒かっ。
オシリスが少し右斜めにコースを変える。
「ユイさん、降りますよ」
お口チャックの私は頷く。オシリスはぶわっと、翼の角度を変えて、スピードを落とす。オシリスは少し開けた場所に、ふわりと着地。
うっ、風が強かっ。
王冠山の中を見たいけど、風が強かっ。
「ユイさん、そのままルームにっ」
「はいっ」
私はルームを開け、オシリスは私とホークさんを乗せたまま入る。ふうっ、風、強かっ。
「姉ちゃん、大丈夫なっ?」
「大丈夫よ」
さ、オシリスから降りましょ。ヘルメット越しに差し出された手に、反射的に掴まってしまう。ん、チュアンさんにしてはちょっと小さめの手。
「お疲れ様です、ユイさん」
「あ、あ、はい」
ヘルメット越しでも綺麗に見えました、灰色の目。シュタインさんがそっと降りる私の介助をしてくれる。私の二段腹に回されたホークさんの腕が強ばった気がしたが、トラブルなく下車する。
「あ、ありがとうございます」
「いいえ」
なんや、ドキドキ。いかん、邪念やね。今はヤマタノオロチの目視や。
ヘルメットを脱いで、私はルームの窓に。いつも騒がしいアレスが窓の向こうを見ている。近くでイシスも覗いている。
なんや、さっきのドキドキとは別のドキドキが。腹の奥底が冷えるようなドキドキ。
この王冠山を衝撃で作る程の大怪獣合戦をして、魔物分布を変えるほどのゲリラ豪雨と土石流を起こしたヤマタノオロチがいる。
『ユイ、大丈夫なのです』
『ここはルームよ、向こうは手出し出来ないわ』
ビアンカとルージュがそっと寄り添ってくれる。ありがとう。
『ヌシヨ、見エルゾ』
イシスがこちらにちらり、と視線を流す。
ドキドキ、ドキドキ、違う、ドクン、ドクン。
イシスの隣に立ち、窓を覗く。
王冠山内部は、すり鉢のような感じだ。下の方はうっそうとした森の様だ。魔境の様に、深い緑の絨毯が広がっている。かなり、広大な森や。地図上でもはっきりと山が描かれている王冠山の内側やから、広大やと思っていたけど、向こうが遥か彼方や。
ヤマタノオロチ、どこやろ。
ドクン、ドクン、としながら視線を走らせるが、ヤマタノオロチはどこや? 蛇よね、蛇よね。
皆さんも窓を覗く。
「ねえ、イシス、どこ?」
『アソコダ』
イシスの嘴の先を見る。
……………………………………………?
目を凝らす。
え? あれ? まさか、あれ? 嘘やろ?
「あれ?」
『ソウダ』
私が示した先が合ったのか、イシスが頷く。
嘘やろ。
あれ、あれ、ちょっと、大きいとかやない。
だって、だって、広大な王冠山内部にあちこちポツポツある1つみたいに溶け込んでいるんやもんっ。
隣の晃太が、肺の中にある空気を全て吐き出すようなため息。
緑の絨毯の中で、ぽっこりと飛び出しているのは、黒っぽいそれ。確かに、よくみたら、かつて魔境でみた蛇が集団で絡まっているような感じ。いややあ。
一緒にみていた冒険者の皆さんも唖然として、数人は目を覆っている。
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