もふもふ大好き家族が聖女召喚に巻き込まれる~時空神様からの気まぐれギフト・スキル『ルーム』で家族と愛犬守ります~

鐘ケ江 しのぶ

文字の大きさ
496 / 869
連載

帰る準備⑧

しおりを挟む
 ダンジョンを出ると既に母達が待っていた。
「クゥンックゥーンッ」
 花が短い足で駆け寄ってきた。あははん、ぽちゃぽちゃ。口を尖らせた晃太と撫で回す。仔達は母にぷりぷりと寄っていく。
「ユイさん、お疲れ様です。お怪我は?」
 チュアンさんが聞いてくる。
「大丈夫ですよ。何か問題はなかったですか?」
「それが」
 いい淀むチュアンさん。
「実はオシリスさんが…………」
 え? オシリスが? オシリスって基本的には大人しい上に賢い。母の言うこともよく聞くんやけど。
 そこにギルドの職員さんが走って来た。
「お帰りなさいませミズサワ様っ。どうかお話をっ」
 なんやなんや?
「私達すぐにカルーラに戻りたいのですが」
 遠回しにご遠慮したい。いくらぶひひん特急ノワールでも今から出発しなければ、カルーラ到着が日暮れになってしまう。それに今回はあまりドロップ品は回せないと言ってあるんだけど。
「お時間は取らせません。1時間、いえ、30分だけっ」
 なんやなんや? ずいぶん必死やな。
「優衣、ちょっと」
 母がゴニョゴニョ。あ、はいはい。そういう事。
「必要な部位はお母さんがもっとるけど、他が欲しいって。それにかなり無理して捌いてもらったんよ。話ば聞いて」
「分かった」
 私は晃太とチュアンさん、ルージュで向かう。
「どうぞラスチャーニエと蒼の麓のリーダーさんも」
 顔を見合わせるケルンさんとフェリクスさん。特に異論はないみたいで、私達の後ろに続く。
 職員さんは近くの派出所に案内してくれる。いつもならちゃんとしたソファーのある綺麗な応接室だけど、こちらは椅子とテーブルの簡素な部屋。
「申し訳ありません。こちらの派出所にはこの部屋しかなくて」
 恐縮する職員さん。
「いえ、私は構いません。母から話しは伺っています」
 そう。さっきのゴニョゴニョ。
 理由はオシリスだ。
 オシリスが暴れたとかではなく、母に付いて回り、大人しくしていた。母達は基本的に午前中にマルシェで海産物や農作物の買い物回り、午後からすることがなかった。ただ、母とミゲル君は洋裁をするために、裁断作業をしたり、ボタンつけなどしていた。チュアンさんとマデリーンさんは料理の下拵えをして過ごしていたそうだ。だけどオシリスがどうやら散歩に行きたいと訴えたために、花の散歩もかねて、港も散策。で、オシリスが、嘴で沖を示すので、単に飛びたいのかと思い許可を出した。生き生きと飛び出すオシリス。周りの皆さんから歓声が上がった。
 で、しばらくのんびり飛行するオシリスを見ながら、更に海産物の屋台で買い物をしたと。どうやら近くに貝の加工品があったみたいで、お酒のおつまみにもなるし、出汁にもなると聞いて購入していた。
「あっ」
 オシリスをみていたミゲル君が悲鳴に近い声を上げた。母が振り返ると、オシリスは海面に向かって一直線に急下降。海に消えた。さー、と血の気が引いた母だが、次の瞬間、オシリスが飛び出してきたのでほっとした。だけど、足になにやら大きな魚影があり。まさかと思ったら、まさか。
 ブラックツナの一種で、ルーティツナを獲って来た。母の元に持ってきた時は、まだ、びったんびったんしていたみたいで、危ないからと、チュアンさんがエラに槍を一突き。さあ、どうしたものかと、思ったそうだ。ルーティツナも魔物の一種で、アスラ王国ではかなり高級品。サイズも300キロクラス。脂が美味しいんだって。さすがの母でも解体は無理や。チュアンさんと相談し、ギルドで解体をお願いすることにしたと。その一体なら問題はなかったのだけど、母がオシリスを、
「すごかねオシリス。捌いてもらって、皆で食べようかね。きっとイシスも気に入るばい」
 と、誉めちぎる。
「くうっ」
 オシリス、スイッチオン。
 再び、ばっさばっさと飛び立って、海面にダイブ。再びルーティツナゲット。何だかんだと僅か2日で7匹ゲット。しかもうち2匹は更に高級なイエロールーティツナだった。なので少しギルドに回して貰えないかと打診された。
 ここでの問題は、そのツナ達の所有権だ。オシリスは私が契約しているから、基本的には私に所有権がある。だけど、私はダンジョン中だし、持ち込んだのは私の母。チュアンさんとも相談して、一応代理で母が所有し、私がダンジョンから出て交渉して貰うことになった。もちろん、こちらで引き取る分は引き取ってね。イエロールーティツナ1体、ルーティツナ3体の美味しい所は引き取り、残りをどうするかだ。私達がダンジョンから出てくるに合わせて特急で捌いてもらったみたい。
 職員さんはすぐに何枚もの書類を出す。
「ダンジョン最下層ならば、薬草もある程度手に入れていらっしゃらないかと思いまして」
 そうやった。皆さん空いた時間で薬草採取していた。フェリクスさんは主に指導だけど、ドーラさんとヒェリさんはポーションと解毒ポーションくらいなら作れるらしく、せっせと採取してた。ルーティのダンジョンはこの辺りでは、まとまった質のいい薬草が取れる。クラインにあるポーションダンジョンに比べたら少ないそうだけどね。それに最下層の薬草は品質もよく、ある程度種類が取れる。しかもうちの従魔ズが、派手にちゅどん、ドカン、バキバキしていたので、朝採取しても、その日の夕方には同じ薬草が生えてた。
 エマちゃんとテオ君がある程度採取しているが、これはホークさんが帰って来てから提出すると決めている。
 出された依頼の紙はすべて薬草関連だ。ケルンさんとフェリクスさんが手早くチェック。数枚の依頼書を引き抜く。
「ラスチャーニエはこれらを」
「蒼の麓は、これらを」
「ありがとうございますっ」
 職員さんは控えていた若い女性職員さんに合図。直ぐに作業に入る。
 その間に、私にはツナ達の件だ。
「ミズサワ様。どうかルーティツナをギルドに回していただけないでしょうか?」
 必死な職員さん。
 理由は大トロ的な事ではない。もちろん身は美味しいが、ルーティツナの骨が素材として重宝される。背骨の芯の部分が高品質の水属性があり、ワンランク上の付与をする際の補助材になるんだって。しかも成功率は90%を超える。ワンランク上の付与って言うのは通常の付与より、当然付きにくい。話を聞いて、母はよく分からないながらも、捌いてもらったイエロールーティツナの骨だけは引き取った。マデリーンさんの杖の強化になるんじゃないかと思ったそうだ。うん、もういいかな。ミゲル君や、テオ君の装備品にはすでに潜在的にシーサーペントの上位水属性付与がある。これ以上は水属性の付与は不可能だって言われているしね。
「残りすべてはギルドに回します。急いで捌いてもらったようですし」
「ありがとうございますっ。こちらが書類でございますっ」
 仕事がはやか。職員さんは別の男性職員さんに合図。直ぐに作業に入る。
 ケルンさんとフェリクスさんは既にサインと魔力は済み。依頼料をパーティーカードに入れてもらっている。
「お待たせしました」
 と、出された書類をチェック。
 イエロールーティツナ1体、550万。ルーティツナは2体480万。よし確認、と。急いで捌いてもらったので、今回ルーティのダンジョンの宝箱から出た赤ワインの樽、250Lを晃太に出して貰う。
「これ良かったら皆さんで仕事終わりにでも飲んでください」
「あ、ありがとうございますっ。みな、喜ぶでしょう」
 私達は挨拶して派出所を出る。
 すでにノワールは馬車を引いている。
 わざわざ見送りに来てくれた職員さんに、再度挨拶して、私は馭者台に座る。手綱はチュアンさんだ。全員乗り込んだかな。よし。
「ノワール、頼むね」
「ブヒヒンッ」
 ぶひひん特急ノワールは、カルーラに向けて発進した。
しおりを挟む
感想 836

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

【完結】「神様、辞めました〜竜神の愛し子に冤罪を着せ投獄するような人間なんてもう知らない」

まほりろ
恋愛
王太子アビー・シュトースと聖女カーラ・ノルデン公爵令嬢の結婚式当日。二人が教会での誓いの儀式を終え、教会の扉を開け外に一歩踏み出したとき、国中の壁や窓に不吉な文字が浮かび上がった。 【本日付けで神を辞めることにした】 フラワーシャワーを巻き王太子と王太子妃の結婚を祝おうとしていた参列者は、突然現れた文字に驚きを隠せず固まっている。 国境に壁を築きモンスターの侵入を防ぎ、結界を張り国内にいるモンスターは弱体化させ、雨を降らせ大地を潤し、土地を豊かにし豊作をもたらし、人間の体を強化し、生活が便利になるように魔法の力を授けた、竜神ウィルペアトが消えた。 人々は三カ月前に冤罪を着せ、|罵詈雑言《ばりぞうごん》を浴びせ、石を投げつけ投獄した少女が、本物の【竜の愛し子】だと分かり|戦慄《せんりつ》した。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」 アルファポリスに先行投稿しています。 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 2021/12/13、HOTランキング3位、12/14総合ランキング4位、恋愛3位に入りました! ありがとうございます!

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~

水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」 夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。 王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。 「左様でございますか」 彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

奪う人たちは放っておいて私はお菓子を焼きます

タマ マコト
ファンタジー
伯爵家の次女クラリス・フォン・ブランディエは、姉ヴィオレッタと常に比較され、「控えめでいなさい」と言われ続けて育った。やがて姉の縁談を機に、母ベアトリスの価値観の中では自分が永遠に“引き立て役”でしかないと悟ったクラリスは、父が遺した領都の家を頼りに自ら家を出る。 領都の端でひとり焼き菓子を焼き始めた彼女は、午後の光が差す小さな店『午後の窓』を開く。そこへ、紅茶の香りに異様に敏感な謎の青年が現れる。名も素性も明かさぬまま、ただ菓子の味を静かに言い当てる彼との出会いが、クラリスの新しい人生をゆっくりと動かし始める。 奪い合う世界から離れ、比較されない場所で生きると決めた少女の、静かな再出発の物語。

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。