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帰る準備⑧
ダンジョンを出ると既に母達が待っていた。
「クゥンックゥーンッ」
花が短い足で駆け寄ってきた。あははん、ぽちゃぽちゃ。口を尖らせた晃太と撫で回す。仔達は母にぷりぷりと寄っていく。
「ユイさん、お疲れ様です。お怪我は?」
チュアンさんが聞いてくる。
「大丈夫ですよ。何か問題はなかったですか?」
「それが」
いい淀むチュアンさん。
「実はオシリスさんが…………」
え? オシリスが? オシリスって基本的には大人しい上に賢い。母の言うこともよく聞くんやけど。
そこにギルドの職員さんが走って来た。
「お帰りなさいませミズサワ様っ。どうかお話をっ」
なんやなんや?
「私達すぐにカルーラに戻りたいのですが」
遠回しにご遠慮したい。いくらぶひひん特急ノワールでも今から出発しなければ、カルーラ到着が日暮れになってしまう。それに今回はあまりドロップ品は回せないと言ってあるんだけど。
「お時間は取らせません。1時間、いえ、30分だけっ」
なんやなんや? ずいぶん必死やな。
「優衣、ちょっと」
母がゴニョゴニョ。あ、はいはい。そういう事。
「必要な部位はお母さんがもっとるけど、他が欲しいって。それにかなり無理して捌いてもらったんよ。話ば聞いて」
「分かった」
私は晃太とチュアンさん、ルージュで向かう。
「どうぞラスチャーニエと蒼の麓のリーダーさんも」
顔を見合わせるケルンさんとフェリクスさん。特に異論はないみたいで、私達の後ろに続く。
職員さんは近くの派出所に案内してくれる。いつもならちゃんとしたソファーのある綺麗な応接室だけど、こちらは椅子とテーブルの簡素な部屋。
「申し訳ありません。こちらの派出所にはこの部屋しかなくて」
恐縮する職員さん。
「いえ、私は構いません。母から話しは伺っています」
そう。さっきのゴニョゴニョ。
理由はオシリスだ。
オシリスが暴れたとかではなく、母に付いて回り、大人しくしていた。母達は基本的に午前中にマルシェで海産物や農作物の買い物回り、午後からすることがなかった。ただ、母とミゲル君は洋裁をするために、裁断作業をしたり、ボタンつけなどしていた。チュアンさんとマデリーンさんは料理の下拵えをして過ごしていたそうだ。だけどオシリスがどうやら散歩に行きたいと訴えたために、花の散歩もかねて、港も散策。で、オシリスが、嘴で沖を示すので、単に飛びたいのかと思い許可を出した。生き生きと飛び出すオシリス。周りの皆さんから歓声が上がった。
で、しばらくのんびり飛行するオシリスを見ながら、更に海産物の屋台で買い物をしたと。どうやら近くに貝の加工品があったみたいで、お酒のおつまみにもなるし、出汁にもなると聞いて購入していた。
「あっ」
オシリスをみていたミゲル君が悲鳴に近い声を上げた。母が振り返ると、オシリスは海面に向かって一直線に急下降。海に消えた。さー、と血の気が引いた母だが、次の瞬間、オシリスが飛び出してきたのでほっとした。だけど、足になにやら大きな魚影があり。まさかと思ったら、まさか。
ブラックツナの一種で、ルーティツナを獲って来た。母の元に持ってきた時は、まだ、びったんびったんしていたみたいで、危ないからと、チュアンさんがエラに槍を一突き。さあ、どうしたものかと、思ったそうだ。ルーティツナも魔物の一種で、アスラ王国ではかなり高級品。サイズも300キロクラス。脂が美味しいんだって。さすがの母でも解体は無理や。チュアンさんと相談し、ギルドで解体をお願いすることにしたと。その一体なら問題はなかったのだけど、母がオシリスを、
「すごかねオシリス。捌いてもらって、皆で食べようかね。きっとイシスも気に入るばい」
と、誉めちぎる。
「くうっ」
オシリス、スイッチオン。
再び、ばっさばっさと飛び立って、海面にダイブ。再びルーティツナゲット。何だかんだと僅か2日で7匹ゲット。しかもうち2匹は更に高級なイエロールーティツナだった。なので少しギルドに回して貰えないかと打診された。
ここでの問題は、そのツナ達の所有権だ。オシリスは私が契約しているから、基本的には私に所有権がある。だけど、私はダンジョン中だし、持ち込んだのは私の母。チュアンさんとも相談して、一応代理で母が所有し、私がダンジョンから出て交渉して貰うことになった。もちろん、こちらで引き取る分は引き取ってね。イエロールーティツナ1体、ルーティツナ3体の美味しい所は引き取り、残りをどうするかだ。私達がダンジョンから出てくるに合わせて特急で捌いてもらったみたい。
職員さんはすぐに何枚もの書類を出す。
「ダンジョン最下層ならば、薬草もある程度手に入れていらっしゃらないかと思いまして」
そうやった。皆さん空いた時間で薬草採取していた。フェリクスさんは主に指導だけど、ドーラさんとヒェリさんはポーションと解毒ポーションくらいなら作れるらしく、せっせと採取してた。ルーティのダンジョンはこの辺りでは、まとまった質のいい薬草が取れる。クラインにあるポーションダンジョンに比べたら少ないそうだけどね。それに最下層の薬草は品質もよく、ある程度種類が取れる。しかもうちの従魔ズが、派手にちゅどん、ドカン、バキバキしていたので、朝採取しても、その日の夕方には同じ薬草が生えてた。
エマちゃんとテオ君がある程度採取しているが、これはホークさんが帰って来てから提出すると決めている。
出された依頼の紙はすべて薬草関連だ。ケルンさんとフェリクスさんが手早くチェック。数枚の依頼書を引き抜く。
「ラスチャーニエはこれらを」
「蒼の麓は、これらを」
「ありがとうございますっ」
職員さんは控えていた若い女性職員さんに合図。直ぐに作業に入る。
その間に、私にはツナ達の件だ。
「ミズサワ様。どうかルーティツナをギルドに回していただけないでしょうか?」
必死な職員さん。
理由は大トロ的な事ではない。もちろん身は美味しいが、ルーティツナの骨が素材として重宝される。背骨の芯の部分が高品質の水属性があり、ワンランク上の付与をする際の補助材になるんだって。しかも成功率は90%を超える。ワンランク上の付与って言うのは通常の付与より、当然付きにくい。話を聞いて、母はよく分からないながらも、捌いてもらったイエロールーティツナの骨だけは引き取った。マデリーンさんの杖の強化になるんじゃないかと思ったそうだ。うん、もういいかな。ミゲル君や、テオ君の装備品にはすでに潜在的にシーサーペントの上位水属性付与がある。これ以上は水属性の付与は不可能だって言われているしね。
「残りすべてはギルドに回します。急いで捌いてもらったようですし」
「ありがとうございますっ。こちらが書類でございますっ」
仕事がはやか。職員さんは別の男性職員さんに合図。直ぐに作業に入る。
ケルンさんとフェリクスさんは既にサインと魔力は済み。依頼料をパーティーカードに入れてもらっている。
「お待たせしました」
と、出された書類をチェック。
イエロールーティツナ1体、550万。ルーティツナは2体480万。よし確認、と。急いで捌いてもらったので、今回ルーティのダンジョンの宝箱から出た赤ワインの樽、250Lを晃太に出して貰う。
「これ良かったら皆さんで仕事終わりにでも飲んでください」
「あ、ありがとうございますっ。みな、喜ぶでしょう」
私達は挨拶して派出所を出る。
すでにノワールは馬車を引いている。
わざわざ見送りに来てくれた職員さんに、再度挨拶して、私は馭者台に座る。手綱はチュアンさんだ。全員乗り込んだかな。よし。
「ノワール、頼むね」
「ブヒヒンッ」
ぶひひん特急ノワールは、カルーラに向けて発進した。
「クゥンックゥーンッ」
花が短い足で駆け寄ってきた。あははん、ぽちゃぽちゃ。口を尖らせた晃太と撫で回す。仔達は母にぷりぷりと寄っていく。
「ユイさん、お疲れ様です。お怪我は?」
チュアンさんが聞いてくる。
「大丈夫ですよ。何か問題はなかったですか?」
「それが」
いい淀むチュアンさん。
「実はオシリスさんが…………」
え? オシリスが? オシリスって基本的には大人しい上に賢い。母の言うこともよく聞くんやけど。
そこにギルドの職員さんが走って来た。
「お帰りなさいませミズサワ様っ。どうかお話をっ」
なんやなんや?
「私達すぐにカルーラに戻りたいのですが」
遠回しにご遠慮したい。いくらぶひひん特急ノワールでも今から出発しなければ、カルーラ到着が日暮れになってしまう。それに今回はあまりドロップ品は回せないと言ってあるんだけど。
「お時間は取らせません。1時間、いえ、30分だけっ」
なんやなんや? ずいぶん必死やな。
「優衣、ちょっと」
母がゴニョゴニョ。あ、はいはい。そういう事。
「必要な部位はお母さんがもっとるけど、他が欲しいって。それにかなり無理して捌いてもらったんよ。話ば聞いて」
「分かった」
私は晃太とチュアンさん、ルージュで向かう。
「どうぞラスチャーニエと蒼の麓のリーダーさんも」
顔を見合わせるケルンさんとフェリクスさん。特に異論はないみたいで、私達の後ろに続く。
職員さんは近くの派出所に案内してくれる。いつもならちゃんとしたソファーのある綺麗な応接室だけど、こちらは椅子とテーブルの簡素な部屋。
「申し訳ありません。こちらの派出所にはこの部屋しかなくて」
恐縮する職員さん。
「いえ、私は構いません。母から話しは伺っています」
そう。さっきのゴニョゴニョ。
理由はオシリスだ。
オシリスが暴れたとかではなく、母に付いて回り、大人しくしていた。母達は基本的に午前中にマルシェで海産物や農作物の買い物回り、午後からすることがなかった。ただ、母とミゲル君は洋裁をするために、裁断作業をしたり、ボタンつけなどしていた。チュアンさんとマデリーンさんは料理の下拵えをして過ごしていたそうだ。だけどオシリスがどうやら散歩に行きたいと訴えたために、花の散歩もかねて、港も散策。で、オシリスが、嘴で沖を示すので、単に飛びたいのかと思い許可を出した。生き生きと飛び出すオシリス。周りの皆さんから歓声が上がった。
で、しばらくのんびり飛行するオシリスを見ながら、更に海産物の屋台で買い物をしたと。どうやら近くに貝の加工品があったみたいで、お酒のおつまみにもなるし、出汁にもなると聞いて購入していた。
「あっ」
オシリスをみていたミゲル君が悲鳴に近い声を上げた。母が振り返ると、オシリスは海面に向かって一直線に急下降。海に消えた。さー、と血の気が引いた母だが、次の瞬間、オシリスが飛び出してきたのでほっとした。だけど、足になにやら大きな魚影があり。まさかと思ったら、まさか。
ブラックツナの一種で、ルーティツナを獲って来た。母の元に持ってきた時は、まだ、びったんびったんしていたみたいで、危ないからと、チュアンさんがエラに槍を一突き。さあ、どうしたものかと、思ったそうだ。ルーティツナも魔物の一種で、アスラ王国ではかなり高級品。サイズも300キロクラス。脂が美味しいんだって。さすがの母でも解体は無理や。チュアンさんと相談し、ギルドで解体をお願いすることにしたと。その一体なら問題はなかったのだけど、母がオシリスを、
「すごかねオシリス。捌いてもらって、皆で食べようかね。きっとイシスも気に入るばい」
と、誉めちぎる。
「くうっ」
オシリス、スイッチオン。
再び、ばっさばっさと飛び立って、海面にダイブ。再びルーティツナゲット。何だかんだと僅か2日で7匹ゲット。しかもうち2匹は更に高級なイエロールーティツナだった。なので少しギルドに回して貰えないかと打診された。
ここでの問題は、そのツナ達の所有権だ。オシリスは私が契約しているから、基本的には私に所有権がある。だけど、私はダンジョン中だし、持ち込んだのは私の母。チュアンさんとも相談して、一応代理で母が所有し、私がダンジョンから出て交渉して貰うことになった。もちろん、こちらで引き取る分は引き取ってね。イエロールーティツナ1体、ルーティツナ3体の美味しい所は引き取り、残りをどうするかだ。私達がダンジョンから出てくるに合わせて特急で捌いてもらったみたい。
職員さんはすぐに何枚もの書類を出す。
「ダンジョン最下層ならば、薬草もある程度手に入れていらっしゃらないかと思いまして」
そうやった。皆さん空いた時間で薬草採取していた。フェリクスさんは主に指導だけど、ドーラさんとヒェリさんはポーションと解毒ポーションくらいなら作れるらしく、せっせと採取してた。ルーティのダンジョンはこの辺りでは、まとまった質のいい薬草が取れる。クラインにあるポーションダンジョンに比べたら少ないそうだけどね。それに最下層の薬草は品質もよく、ある程度種類が取れる。しかもうちの従魔ズが、派手にちゅどん、ドカン、バキバキしていたので、朝採取しても、その日の夕方には同じ薬草が生えてた。
エマちゃんとテオ君がある程度採取しているが、これはホークさんが帰って来てから提出すると決めている。
出された依頼の紙はすべて薬草関連だ。ケルンさんとフェリクスさんが手早くチェック。数枚の依頼書を引き抜く。
「ラスチャーニエはこれらを」
「蒼の麓は、これらを」
「ありがとうございますっ」
職員さんは控えていた若い女性職員さんに合図。直ぐに作業に入る。
その間に、私にはツナ達の件だ。
「ミズサワ様。どうかルーティツナをギルドに回していただけないでしょうか?」
必死な職員さん。
理由は大トロ的な事ではない。もちろん身は美味しいが、ルーティツナの骨が素材として重宝される。背骨の芯の部分が高品質の水属性があり、ワンランク上の付与をする際の補助材になるんだって。しかも成功率は90%を超える。ワンランク上の付与って言うのは通常の付与より、当然付きにくい。話を聞いて、母はよく分からないながらも、捌いてもらったイエロールーティツナの骨だけは引き取った。マデリーンさんの杖の強化になるんじゃないかと思ったそうだ。うん、もういいかな。ミゲル君や、テオ君の装備品にはすでに潜在的にシーサーペントの上位水属性付与がある。これ以上は水属性の付与は不可能だって言われているしね。
「残りすべてはギルドに回します。急いで捌いてもらったようですし」
「ありがとうございますっ。こちらが書類でございますっ」
仕事がはやか。職員さんは別の男性職員さんに合図。直ぐに作業に入る。
ケルンさんとフェリクスさんは既にサインと魔力は済み。依頼料をパーティーカードに入れてもらっている。
「お待たせしました」
と、出された書類をチェック。
イエロールーティツナ1体、550万。ルーティツナは2体480万。よし確認、と。急いで捌いてもらったので、今回ルーティのダンジョンの宝箱から出た赤ワインの樽、250Lを晃太に出して貰う。
「これ良かったら皆さんで仕事終わりにでも飲んでください」
「あ、ありがとうございますっ。みな、喜ぶでしょう」
私達は挨拶して派出所を出る。
すでにノワールは馬車を引いている。
わざわざ見送りに来てくれた職員さんに、再度挨拶して、私は馭者台に座る。手綱はチュアンさんだ。全員乗り込んだかな。よし。
「ノワール、頼むね」
「ブヒヒンッ」
ぶひひん特急ノワールは、カルーラに向けて発進した。
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