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連載
総仕上げ⑪
「ふー、ふー」
おでんの味見。うん、母のレシピが再現出来てる。只今冷蔵庫ダンジョン。異世界の湯で、まったりした数日後、ロッシュさんと相談し、冷蔵庫ダンジョンに再び1週間挑むことに。このダンジョンアタックの後、数日間の休みを挟んでからまた挑む。そうしたら春祭りだ。出る日を間違えないようにしないと。ロッシュさんの長男マシュー君の晴れ舞台だからね。
私は食事作りと移動に集中。ルームは開けっ放しだ。ビービー言うけど気にしない。ドアの向こうで、ちゅどん、ドカンやってる。
蓋をして、と。よし、いいかな。我が家のおでんは練り物中心なんだけど、他の皆さんいるからね。エマちゃんとテオ君に好評なロールキャベツ。エドワルドさんやツヴァイクさんに好評だった巾着類も入れた。豪華にセレクトショップダリアの鮑なんかも入れてみたが、柔らかくて美味しかった。神様用の土鍋もいいかな。
「ユイさん」
お手伝いしてくれていたシュタインさんが、そっと聞いてくる。
「はい?」
なんや、シュタインさん、久しぶりやけど、ちょっと心配そう。どうしたんやろ?
声をかけてきたけど、言い淀むシュタインさん。
「どうしました?」
「いや、あの………………ユイさん」
意を決したようなシュタインさん。
「あいつと上手くいってます?」
ブハアッ。
私は噴き出す。心の中でね。噎せそうになるけど、頭に先日の異世界の湯での出来事が沸き上がる。
そう、物凄く久しぶりに、ホークさんと2人だけになった。で、
「少し、触れてもいいですか?」
と、聞かれたので、学習能力の低い私は、どうぞ。本当に久しぶりだし、ちょっと、ちゅ、てしてほしかったし、なんてね。
ちょうど晃太とチュアンさんはサウナ、両親は仔達に囲まれて昼寝。ミゲル君はマッサージ機。エマちゃん、テオ君も寝ていた。エドワルドさんとツヴァイクさんはお風呂、マデリーンさんは岩盤浴中。
で、個室に手を引かれていって、まあ、色々あったんですよ。
ぎゅー、とされて、ちゅ、ああ、安心感ー、って思っていた。まさか、館内着の中に、ホークさんの手が入って来たのにびっくり。結局、びびりな私はストップかけてしまった。あの時のホークさんの目が、忘れらない。凄く切なそうで。思い返せば、しっかりした成人男性のホークさんにしては、色々言いたかったんやろうけど、私のびびり具合に合わせてくれて、引いてくれた。私は、そんなホークさんの気遣いに甘えてばっかりで、申し訳ない。いつかは、と、思っている。
あの日見た、おくるみ抱いてる姿。ああ、なりたい自分がいるが、現在それになれないのは、わかっているし、覚悟する暇がない。もっとホークさんと2人になれる時間があれば、違うのかもしれないが、なんせ今は忙しい。ホークさんもブラックギリギリに動いている。もちろん、私やホークさん以外もバタバタ忙しい。おそらく、ヤマタノオロチの件が終わるまで、バタバタのはず。落ち着いたら、そのね、ゆっくりね、時間をね、なんて思っている。
あの後、ただひたすら抱き締めてくれたのが、とにかく嬉しかった。短い時間だけど、ぽつぽつと、2人だけで話をしたのが、なにより嬉しかった。素直に伝えたら、ホークさんも凄く穏やかに笑ってくれた。ずいぶん、ちゅ、としてくれて、凄く嬉しかった。
なんて事が起こりまして、はい、数日前の話。
「な、な、な、何故にっ」
小さく動揺した。まさかシュタインさんから、そんな言葉が出てくるとは思わず動揺。はっ、自意識過剰やっ。平常心ー、ふー、ふー。
「いやあ、変な噂がですね」
そんな私の内心を知ってか知らずか、シュタインさんが続ける。
またそれっ。最近、ちょっと出歩かなかっただけで、私の死亡説やら重症説がでたばかりなのにっ。
「どういった内容が?」
落ち着いて聞く。
「あー、聞き齧っただけなんですけど。とうとうユイさんが、その、相手を決めたって」
「相手?」
えっ? ホークさんは絶対に外や人目がある所は、きちんと立場を弁えている。私だってさ、気をつけているのにっ。
「あのエドワルド・ウルガーを、相手に選んだって」
「はあぁっ」
思わず地が出る。
なんで、エドワルドさんっ? 建前上マーファで一緒に行動しているが、それだって数えるほどしかないはずなのにっ。
「ほら、あの変な言い掛かりを付けて来た女達がいたじゃないですか?」
「はい」
つい最近決着が着いた。ハルスフォン侯爵家、ウルガー子爵家、名誉伯爵の父には、それぞれに迷惑料や慰謝料の支払いが下った。元凶のギーリアッシュ伯爵の支払い額が多い上に、喧嘩を売った相手が悪い。国王陛下が溺愛している一人娘のフェリアレーナ様が嫁ぎ、長年の功績により侯爵となったハルスフォン家相手に勝てっこない。ピンクの女性達は無一文なんて甘い、借金を背負ったみたい。女性達がどうなるかは、私にはわからないが過酷な肉体労働だろうって。ギーリアッシュは借金までにはならないが、かなりの支払いが生じていて、家屋敷を手離すかも知れないって聞いたけど。
「それで、あのSランクエドワルド・ウルガーが、ユイさんの近くにいるってのが知れ渡ったでしょ」
「でも別に隠してた訳じゃないし」
そう。カルーラの大討伐の休息期のみの同行なんやし。
「事情を、皆が皆知ってる訳じゃない。勝手に勘違いされたみたいで、それが膨らんだみたいです」
「えぇー」
なんや、げんなりしてきた。ちょっとしたことで変な噂が立つ。それだけ、注目されとるってわけやけど。なんや、エドワルドさんに申し訳ないというか、はぁ。
ため息。
「シュタインさん、何か聞かれたりしました」
最近山風の皆さんとよく行動しているし、こんな話を持ってくるって事は、もしかしたら誰かに聞かれたのかな?
「実はそうなんです。聞いてきた人達には、体裁上の目的は話しましたが、あえてあちこちに言い触らしていません。実際話の中心にいるユイさんが知らない所で話していいわけないですし」
ありがたい対応。
「だけど、聞かれたの、俺だけなんですよ」
「え? なんで?」
シュタインさんは頬をかく。
「一応俺もユイさんの男候補になりましたから」
なにそれっ。
「あ、あの時」
カルーラに出発するのを見送った時の、あれっ。あれで勘違いされたんやな。
「まあ、すぐになくなりましたけど。あのエドワルド・ウルガーが出てきたんじゃ、名前だけでも太刀打ち出来ないし」
「なんだか、ご迷惑を…………」
も、申し訳ない。シュタインさんもそうだけど、エドワルドさんにもますます申し訳ない。
「別に迷惑なんて思ってませんよ。ただ、火がないところにって言うし、完全にお節介なんですが、ちょっと気になって」
シュタインさんが一息つく。
「もし、上手く行ってなかったら、付け入る隙あるかなって」
ブハアッ。
「何の話をしているんですか?」
ドキイッ。
話に集中していて気が付かなかったっ。心臓がばくばくしている。シュタインさんの後ろに、ボス部屋に行っていたはずのホークさんが立っていた。
おでんの味見。うん、母のレシピが再現出来てる。只今冷蔵庫ダンジョン。異世界の湯で、まったりした数日後、ロッシュさんと相談し、冷蔵庫ダンジョンに再び1週間挑むことに。このダンジョンアタックの後、数日間の休みを挟んでからまた挑む。そうしたら春祭りだ。出る日を間違えないようにしないと。ロッシュさんの長男マシュー君の晴れ舞台だからね。
私は食事作りと移動に集中。ルームは開けっ放しだ。ビービー言うけど気にしない。ドアの向こうで、ちゅどん、ドカンやってる。
蓋をして、と。よし、いいかな。我が家のおでんは練り物中心なんだけど、他の皆さんいるからね。エマちゃんとテオ君に好評なロールキャベツ。エドワルドさんやツヴァイクさんに好評だった巾着類も入れた。豪華にセレクトショップダリアの鮑なんかも入れてみたが、柔らかくて美味しかった。神様用の土鍋もいいかな。
「ユイさん」
お手伝いしてくれていたシュタインさんが、そっと聞いてくる。
「はい?」
なんや、シュタインさん、久しぶりやけど、ちょっと心配そう。どうしたんやろ?
声をかけてきたけど、言い淀むシュタインさん。
「どうしました?」
「いや、あの………………ユイさん」
意を決したようなシュタインさん。
「あいつと上手くいってます?」
ブハアッ。
私は噴き出す。心の中でね。噎せそうになるけど、頭に先日の異世界の湯での出来事が沸き上がる。
そう、物凄く久しぶりに、ホークさんと2人だけになった。で、
「少し、触れてもいいですか?」
と、聞かれたので、学習能力の低い私は、どうぞ。本当に久しぶりだし、ちょっと、ちゅ、てしてほしかったし、なんてね。
ちょうど晃太とチュアンさんはサウナ、両親は仔達に囲まれて昼寝。ミゲル君はマッサージ機。エマちゃん、テオ君も寝ていた。エドワルドさんとツヴァイクさんはお風呂、マデリーンさんは岩盤浴中。
で、個室に手を引かれていって、まあ、色々あったんですよ。
ぎゅー、とされて、ちゅ、ああ、安心感ー、って思っていた。まさか、館内着の中に、ホークさんの手が入って来たのにびっくり。結局、びびりな私はストップかけてしまった。あの時のホークさんの目が、忘れらない。凄く切なそうで。思い返せば、しっかりした成人男性のホークさんにしては、色々言いたかったんやろうけど、私のびびり具合に合わせてくれて、引いてくれた。私は、そんなホークさんの気遣いに甘えてばっかりで、申し訳ない。いつかは、と、思っている。
あの日見た、おくるみ抱いてる姿。ああ、なりたい自分がいるが、現在それになれないのは、わかっているし、覚悟する暇がない。もっとホークさんと2人になれる時間があれば、違うのかもしれないが、なんせ今は忙しい。ホークさんもブラックギリギリに動いている。もちろん、私やホークさん以外もバタバタ忙しい。おそらく、ヤマタノオロチの件が終わるまで、バタバタのはず。落ち着いたら、そのね、ゆっくりね、時間をね、なんて思っている。
あの後、ただひたすら抱き締めてくれたのが、とにかく嬉しかった。短い時間だけど、ぽつぽつと、2人だけで話をしたのが、なにより嬉しかった。素直に伝えたら、ホークさんも凄く穏やかに笑ってくれた。ずいぶん、ちゅ、としてくれて、凄く嬉しかった。
なんて事が起こりまして、はい、数日前の話。
「な、な、な、何故にっ」
小さく動揺した。まさかシュタインさんから、そんな言葉が出てくるとは思わず動揺。はっ、自意識過剰やっ。平常心ー、ふー、ふー。
「いやあ、変な噂がですね」
そんな私の内心を知ってか知らずか、シュタインさんが続ける。
またそれっ。最近、ちょっと出歩かなかっただけで、私の死亡説やら重症説がでたばかりなのにっ。
「どういった内容が?」
落ち着いて聞く。
「あー、聞き齧っただけなんですけど。とうとうユイさんが、その、相手を決めたって」
「相手?」
えっ? ホークさんは絶対に外や人目がある所は、きちんと立場を弁えている。私だってさ、気をつけているのにっ。
「あのエドワルド・ウルガーを、相手に選んだって」
「はあぁっ」
思わず地が出る。
なんで、エドワルドさんっ? 建前上マーファで一緒に行動しているが、それだって数えるほどしかないはずなのにっ。
「ほら、あの変な言い掛かりを付けて来た女達がいたじゃないですか?」
「はい」
つい最近決着が着いた。ハルスフォン侯爵家、ウルガー子爵家、名誉伯爵の父には、それぞれに迷惑料や慰謝料の支払いが下った。元凶のギーリアッシュ伯爵の支払い額が多い上に、喧嘩を売った相手が悪い。国王陛下が溺愛している一人娘のフェリアレーナ様が嫁ぎ、長年の功績により侯爵となったハルスフォン家相手に勝てっこない。ピンクの女性達は無一文なんて甘い、借金を背負ったみたい。女性達がどうなるかは、私にはわからないが過酷な肉体労働だろうって。ギーリアッシュは借金までにはならないが、かなりの支払いが生じていて、家屋敷を手離すかも知れないって聞いたけど。
「それで、あのSランクエドワルド・ウルガーが、ユイさんの近くにいるってのが知れ渡ったでしょ」
「でも別に隠してた訳じゃないし」
そう。カルーラの大討伐の休息期のみの同行なんやし。
「事情を、皆が皆知ってる訳じゃない。勝手に勘違いされたみたいで、それが膨らんだみたいです」
「えぇー」
なんや、げんなりしてきた。ちょっとしたことで変な噂が立つ。それだけ、注目されとるってわけやけど。なんや、エドワルドさんに申し訳ないというか、はぁ。
ため息。
「シュタインさん、何か聞かれたりしました」
最近山風の皆さんとよく行動しているし、こんな話を持ってくるって事は、もしかしたら誰かに聞かれたのかな?
「実はそうなんです。聞いてきた人達には、体裁上の目的は話しましたが、あえてあちこちに言い触らしていません。実際話の中心にいるユイさんが知らない所で話していいわけないですし」
ありがたい対応。
「だけど、聞かれたの、俺だけなんですよ」
「え? なんで?」
シュタインさんは頬をかく。
「一応俺もユイさんの男候補になりましたから」
なにそれっ。
「あ、あの時」
カルーラに出発するのを見送った時の、あれっ。あれで勘違いされたんやな。
「まあ、すぐになくなりましたけど。あのエドワルド・ウルガーが出てきたんじゃ、名前だけでも太刀打ち出来ないし」
「なんだか、ご迷惑を…………」
も、申し訳ない。シュタインさんもそうだけど、エドワルドさんにもますます申し訳ない。
「別に迷惑なんて思ってませんよ。ただ、火がないところにって言うし、完全にお節介なんですが、ちょっと気になって」
シュタインさんが一息つく。
「もし、上手く行ってなかったら、付け入る隙あるかなって」
ブハアッ。
「何の話をしているんですか?」
ドキイッ。
話に集中していて気が付かなかったっ。心臓がばくばくしている。シュタインさんの後ろに、ボス部屋に行っていたはずのホークさんが立っていた。
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