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連載
出来るだけの準備⑩
次の日。
父は朝からルームの窓から王冠山内部のダンジョンを鑑定している。詳しくすると、父の魔力が持たないので、大まかな鑑定だ。
私は念のために、母とディレックスで買い物に回る。どれくらいでヤマタノオロチにたどり着くか分からないからね。卵や米に調味料、ティッシュやトイレットペーパー。花のおやつに、トイレシート。思い付く限りの買い物をする。母自身大きなアイテムボックスあるからね。
それから定期的に孤児院や無理教室に提供してもらう薪も大量にゲット。19階がジャングルなので、それは大量に手に入った。元気とルリとクリスの木魔法の訓練にもなるし。こちらは時間停止のないマジックバッグに保管している。
両手に荷物を持ち、ディレックスを出る。花がお出迎えのはみはみからのローリング。さっきまでおったやん。かわいかね。
父の鑑定は夕方近くまで続いた。もちろん途中休憩しながらね。夕御飯の準備も終わった頃に、バトルジャンキー達が帰って来た。腹時計正解。
「お父さんお疲れ様、どうやった?」
「そうやな」
と、鑑定終わった父が定位置に座る。水分補給を終えた面々も興味津々と並んで聞いている。
「まずはヤマタノオロチが鎮座する場所、つまりボス部屋までは、構造上まっすぐ進めん」
晃太が描いた簡易の地図。まるで山の標高を示す線が年輪の様に入っている。
「フィールド型とは言え、ダンジョンはダンジョンや。各階層のボス部屋を突破せんといかん。ここは各階層にボス部屋がある」
戦力は心配ないけど。
「ボス部屋までの移動はノワールに騎乗してからが確実にはやかろう。ノワール自身には灯火の女神様のブーストがあるけん迷うことはなかろうし、それにイシスにもあるしね。ただ、ヤマタノオロチがおる場所まで、順調に進めたとしても最低2ヶ月かかる」
「はぁっ?」
2ヶ月? いくらなんでもかかりすぎっ。
「このダンジョンの特徴みたいやね。見た目に反した大きさみたいや。ヤマタノオロチがおるのは最深部まで、かなり長い行程やな」
うーん。
「それからな、ダンジョン内に入れば、イシス達も隠れる必要はなかよ。ダンジョンがうまい具合に侵入者の気配を飲み込んで、隠すみたいやな」
ちら、と振り返ると、私でも引くような笑顔を浮かべるイシスとビアンカとルージュ。アレスは従魔の部屋でアリスにベタベタしている。
しかし、思ったより長丁場になる。今日買い物したが、おそらく足りない。
明日にでも王冠山内部に行くと騒ぐ面々を抑え、私はもう一日買い物する事にした。
「あと、ちょっと気になる箇所があるんよ」
「気になる?」
「そう」
父が簡易地図の上を示す。私達の現在地からして、ヤマタノオロチの更に向こう側を、丸く示す。
「ここだけ、なんやダンジョンやないみたいなんよ」
ちょうどドーナツの空洞のところと言うか。
「まあ、台風の目、みたいな感じやな」
「回りがダンジョンなのに?」
「そうここだけ、もしかしたらいずれダンジョンに飲み込まれるかもしれんけど、ちょっと気になってね。遠すぎてよく見えんのよ」
なんやろ? 気になる。
「もしかした、こっちに移住してきた人達の集落後かもしれん」
ああ、確かにヤマタノオロチを連れてきたのは、私達の日本人のご先祖や。確か、感染症で全員亡くなったって。
うーん。
「分かった、確認してみる」
もし集落後なら、お花を供えよう。
時代が違うし、見ず知らずとはいえ、同じ国の人達やしね。
次の日。
パーティーハウスに来客があった。
ギルド職員さんだ。
マーファからの手紙だそうだ。誰かな? パーカーさん達かな?って思ったら、なんとロッシュさんのお母さんからだ。
今回カルーラで行動を共にするので、もしマーファのご家族から手紙が来た時に、街にロッシュさん達がいない場合、うちの両親が代わりに預かるようにしていた。
ロッシュさんは驚いた顔で手紙を受け取る。
ルームの隅で手紙を広げるロッシュさん。手紙を読みながら、ロッシュさんの肩が揺れる。私でも動揺していると分かる。
「ラーヴッ」
慌てて手紙をラーヴさんにも見せている。手紙を見て、ラーヴさんの驚いた顔になる。
どうしたんやろ?
「何かあったんですか?」
まさか、マーファにいるロッシュさんとラーヴさんのご家族に何かあったとか? この二人は従兄弟に当たり、ロッシュさんのお母さんとラーヴさんのお母さんが姉妹になる。仲良し姉妹なので、ロッシュさんとラーヴさんも仲良し。
「え、っと、その」
ロッシュさんが珍しいくらいに歯切れが悪い。ちら、とラーヴさんと確認するように顔を見合わせる。少しの沈黙。
「実は、家内が妊娠したようで」
「うちも、みたいです」
「最短でダンジョン抜けて、ヤマタノオロチ倒して帰りますよ」
即決。
「そうなるだろうからって、家内が連絡寄越さなかったんですよ」
と、ロッシュさん。
ロッシュさんの奥さん。メティシラさんは、妊娠したのを知らせたら、無理にでもロッシュさんが仕事を切り上げてマーファに帰って来るのでは? 大討伐を最後で参加していると決めていたし、冒険者パーティーのリーダーとしての立場的な事等を思い、連絡を迷っていた。メティシラさん的には帰って来て欲しいが本音だが、山風が大討伐を、メンバーのケガ等ではなく、私的な理由で途中で抜けるとなると、山風事態のペナルティになりかねないと思い悩んでいると、ラーヴさんの奥さん、ルイシさんも妊娠発覚。ルイシさんも同じように悩み、二人で相談し、大討伐の目処が立つまで連絡を控えるようにした。それに幸いにもかなりの蓄えがあったからだ。私達と冷蔵庫ダンジョンに一緒に行ったので、山風にもかなりの報酬を得ていたからだ。
だけど、心配したロッシュさんのお母さんが、ラーヴさんのお母さんと相談して、こっそり手紙を送って来たみたい。
「ですけど、心配じゃないですか」
「そりゃ今すぐ帰りたいですが、今回はそうは言っていられませんよ。俺達は最後までユイさん達といるって、神様に宣言したんです。それに、ビアンカさんやルージュさん達を疑う訳ではないですが、もしヤマタノオロチが這い出たら、どっちにしてもマーファは壊滅します。ユイさん達が命張ってるのに、多少の役に立てるのが分かっていて、このまま引き下がれません」
「そうですよ。もともとあの時、ユイさん達が助けてくれたから、生きているんです。それにこのままで来て、俺達だけ帰るなんて出来ません」
このヤマタノオロチの掃討後に出るボス部屋戦の為に、色んな準備をした。確かに神様からの依頼で、私に最後まで付き合うなんて宣言してるし。ロッシュさんもラーヴさんも責任感が強か。
しかしなあ、タイミングが悪い。王冠山に出発前に手紙が来てくれたら、返事のしようがあったが。悩んで母がロッシュさんのお母さんに、手紙を書くことに。手紙を預かっているが、現在ロッシュさん達は、私達と魔の森に籠っている事、私達といるから無事に帰って来るので、それまで手紙は預かりますって。
なるべく、雪が降る前にマーファに帰ろう。
仮に3ヶ月かかるとしても、秋にはカルーラに帰れる。ぶひひん特急ノワールなら、雪に降られる前に帰りつくはず。
私は、よし、と計算した。
父は朝からルームの窓から王冠山内部のダンジョンを鑑定している。詳しくすると、父の魔力が持たないので、大まかな鑑定だ。
私は念のために、母とディレックスで買い物に回る。どれくらいでヤマタノオロチにたどり着くか分からないからね。卵や米に調味料、ティッシュやトイレットペーパー。花のおやつに、トイレシート。思い付く限りの買い物をする。母自身大きなアイテムボックスあるからね。
それから定期的に孤児院や無理教室に提供してもらう薪も大量にゲット。19階がジャングルなので、それは大量に手に入った。元気とルリとクリスの木魔法の訓練にもなるし。こちらは時間停止のないマジックバッグに保管している。
両手に荷物を持ち、ディレックスを出る。花がお出迎えのはみはみからのローリング。さっきまでおったやん。かわいかね。
父の鑑定は夕方近くまで続いた。もちろん途中休憩しながらね。夕御飯の準備も終わった頃に、バトルジャンキー達が帰って来た。腹時計正解。
「お父さんお疲れ様、どうやった?」
「そうやな」
と、鑑定終わった父が定位置に座る。水分補給を終えた面々も興味津々と並んで聞いている。
「まずはヤマタノオロチが鎮座する場所、つまりボス部屋までは、構造上まっすぐ進めん」
晃太が描いた簡易の地図。まるで山の標高を示す線が年輪の様に入っている。
「フィールド型とは言え、ダンジョンはダンジョンや。各階層のボス部屋を突破せんといかん。ここは各階層にボス部屋がある」
戦力は心配ないけど。
「ボス部屋までの移動はノワールに騎乗してからが確実にはやかろう。ノワール自身には灯火の女神様のブーストがあるけん迷うことはなかろうし、それにイシスにもあるしね。ただ、ヤマタノオロチがおる場所まで、順調に進めたとしても最低2ヶ月かかる」
「はぁっ?」
2ヶ月? いくらなんでもかかりすぎっ。
「このダンジョンの特徴みたいやね。見た目に反した大きさみたいや。ヤマタノオロチがおるのは最深部まで、かなり長い行程やな」
うーん。
「それからな、ダンジョン内に入れば、イシス達も隠れる必要はなかよ。ダンジョンがうまい具合に侵入者の気配を飲み込んで、隠すみたいやな」
ちら、と振り返ると、私でも引くような笑顔を浮かべるイシスとビアンカとルージュ。アレスは従魔の部屋でアリスにベタベタしている。
しかし、思ったより長丁場になる。今日買い物したが、おそらく足りない。
明日にでも王冠山内部に行くと騒ぐ面々を抑え、私はもう一日買い物する事にした。
「あと、ちょっと気になる箇所があるんよ」
「気になる?」
「そう」
父が簡易地図の上を示す。私達の現在地からして、ヤマタノオロチの更に向こう側を、丸く示す。
「ここだけ、なんやダンジョンやないみたいなんよ」
ちょうどドーナツの空洞のところと言うか。
「まあ、台風の目、みたいな感じやな」
「回りがダンジョンなのに?」
「そうここだけ、もしかしたらいずれダンジョンに飲み込まれるかもしれんけど、ちょっと気になってね。遠すぎてよく見えんのよ」
なんやろ? 気になる。
「もしかした、こっちに移住してきた人達の集落後かもしれん」
ああ、確かにヤマタノオロチを連れてきたのは、私達の日本人のご先祖や。確か、感染症で全員亡くなったって。
うーん。
「分かった、確認してみる」
もし集落後なら、お花を供えよう。
時代が違うし、見ず知らずとはいえ、同じ国の人達やしね。
次の日。
パーティーハウスに来客があった。
ギルド職員さんだ。
マーファからの手紙だそうだ。誰かな? パーカーさん達かな?って思ったら、なんとロッシュさんのお母さんからだ。
今回カルーラで行動を共にするので、もしマーファのご家族から手紙が来た時に、街にロッシュさん達がいない場合、うちの両親が代わりに預かるようにしていた。
ロッシュさんは驚いた顔で手紙を受け取る。
ルームの隅で手紙を広げるロッシュさん。手紙を読みながら、ロッシュさんの肩が揺れる。私でも動揺していると分かる。
「ラーヴッ」
慌てて手紙をラーヴさんにも見せている。手紙を見て、ラーヴさんの驚いた顔になる。
どうしたんやろ?
「何かあったんですか?」
まさか、マーファにいるロッシュさんとラーヴさんのご家族に何かあったとか? この二人は従兄弟に当たり、ロッシュさんのお母さんとラーヴさんのお母さんが姉妹になる。仲良し姉妹なので、ロッシュさんとラーヴさんも仲良し。
「え、っと、その」
ロッシュさんが珍しいくらいに歯切れが悪い。ちら、とラーヴさんと確認するように顔を見合わせる。少しの沈黙。
「実は、家内が妊娠したようで」
「うちも、みたいです」
「最短でダンジョン抜けて、ヤマタノオロチ倒して帰りますよ」
即決。
「そうなるだろうからって、家内が連絡寄越さなかったんですよ」
と、ロッシュさん。
ロッシュさんの奥さん。メティシラさんは、妊娠したのを知らせたら、無理にでもロッシュさんが仕事を切り上げてマーファに帰って来るのでは? 大討伐を最後で参加していると決めていたし、冒険者パーティーのリーダーとしての立場的な事等を思い、連絡を迷っていた。メティシラさん的には帰って来て欲しいが本音だが、山風が大討伐を、メンバーのケガ等ではなく、私的な理由で途中で抜けるとなると、山風事態のペナルティになりかねないと思い悩んでいると、ラーヴさんの奥さん、ルイシさんも妊娠発覚。ルイシさんも同じように悩み、二人で相談し、大討伐の目処が立つまで連絡を控えるようにした。それに幸いにもかなりの蓄えがあったからだ。私達と冷蔵庫ダンジョンに一緒に行ったので、山風にもかなりの報酬を得ていたからだ。
だけど、心配したロッシュさんのお母さんが、ラーヴさんのお母さんと相談して、こっそり手紙を送って来たみたい。
「ですけど、心配じゃないですか」
「そりゃ今すぐ帰りたいですが、今回はそうは言っていられませんよ。俺達は最後までユイさん達といるって、神様に宣言したんです。それに、ビアンカさんやルージュさん達を疑う訳ではないですが、もしヤマタノオロチが這い出たら、どっちにしてもマーファは壊滅します。ユイさん達が命張ってるのに、多少の役に立てるのが分かっていて、このまま引き下がれません」
「そうですよ。もともとあの時、ユイさん達が助けてくれたから、生きているんです。それにこのままで来て、俺達だけ帰るなんて出来ません」
このヤマタノオロチの掃討後に出るボス部屋戦の為に、色んな準備をした。確かに神様からの依頼で、私に最後まで付き合うなんて宣言してるし。ロッシュさんもラーヴさんも責任感が強か。
しかしなあ、タイミングが悪い。王冠山に出発前に手紙が来てくれたら、返事のしようがあったが。悩んで母がロッシュさんのお母さんに、手紙を書くことに。手紙を預かっているが、現在ロッシュさん達は、私達と魔の森に籠っている事、私達といるから無事に帰って来るので、それまで手紙は預かりますって。
なるべく、雪が降る前にマーファに帰ろう。
仮に3ヶ月かかるとしても、秋にはカルーラに帰れる。ぶひひん特急ノワールなら、雪に降られる前に帰りつくはず。
私は、よし、と計算した。
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