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連載
フィールド型ダンジョン⑰
最後のフィールド。
切り立った崖、荒れ狂い打ち寄せる白い波、叩きつけるような風。
まさに、サスペンスの最終舞台の東○坊。
行ったことないけど。
寒っ、寒かっ。
ちょっと覗いただけやけど、寒かっ。あわててルームに引き返す。ダンジョンの外は、季節的にまだ夏、秋の始まりくらいのはずなのにっ。これがダンジョンの不思議で、外とダンジョン内の気候は必ずしも一致しない。
これ、誰がクリア出来るの? ちょっと難関すぎやしないかい?
「姉ちゃん、どうする?」
「どうするって、どうしようかね」
うーん。
とにかく、ホークさんとノワールの体を休めるために出発は明後日にしたけど。
ちらっとしか見ていないが、悪路のようやし、風も強そうだけど。
それになにやら恐い感じがひしひしと空気で伝わってきた。今までのフィールドと比べれない程の緊張感。いままで冷蔵庫ダンジョンや軍隊ダンジョン、ルーティのダンジョンなどから感じたことのない、緊張感が。
『嫌な気配がするのです』
『そうね、そんな感じがするわ』
ビアンカとルージュが眉間を寄せる。この二人がそう言うのであれば、そうなんだろう。
ここでの移動手段を心強い、わが家族と相談や。
「ねえ、このフィールドやけど、移動手段はどうしたらよか?」
『そうなのですね。ここはノワールで移動が良いと思うのです』
『そうね、ノワールで移動じゃないかしら? 私達がしっかり守るわ』
『ソウダナ、ソレガ良イダロウガ、崖ノ予測ガツカナイ。必要ナラオシリスデノ移動ダナ。風ガ強イガ、短距離ナラ行ケルダロウ。ナニ、心配ナイ、私ガイル』
「くうっくうっ」
心強いなあ。
『見たことない場所なのだー』
と、呑気なアレス。
『主よ、早く行きたいのだ』
きゅるん。
いや、あんた、恐いとかないわけ? あの崖とか波とかさ。
『…………行ってくるのです』
『…………そうね、行ってくるといいわ』
あ、二人の言わんとする事が分かった。
「アレス、ちょっと周囲ば偵察してくれる? ノワールでも大丈夫そうか、見てきてくれん?」
まずは単独でも平気だろうアレスに周囲を見て貰う感じだね。アレスにしたらずっとレベルが低い仔達や若手達が下手に同行したら、何かあったら大変や。特にこの第八階層は、他の階層にいままでのダンジョンに比べての危険度は最難関のはずだ。
『ならば、妹よっ、一緒に行くのだっ』
『疲れているのです』
『一人で行ってきて』
『ガーンッ』
すげなさすぎ。
撃沈するアレス。トラックみたいな鰐を蹴散らしていたのに、ぺたん、と伏している。ちら、と目配せする。
『…………私とルージュはちょっと疲れているのです、辺りを代わりに見てきてほしいのです』
『そうね。後で出るユイ達のためよ、アレスなら大丈夫でしょう』
言い方をソフトにしている。
『『頑張って』』
ぺたん、と付したアレスを覗き込む、ビアンカとルージュ。鼻先で、ちょんちょん。アレスの垂れた耳が、ぴん、と立ち上がる。
『行くのだーっ』
アレス、復活。
……………………………ちょろ、あ、失礼。アレスに失礼やね。
「アレス、頼むね。移動の事を考えると情報が欲しいんよ」
『任せるのだっ、いってくるのだーっ』
念のために、首にマジックバッグを下げると、バーッ、と行ってしまった。夕御飯までには帰って来てよー。
行ってくれたが、なんや心配。
『主ヨ、私モ出ル。周囲ノ地形ヲ確認シテコヨウ』
イシスがずいっと出てきてくれた。地上はアレス、上空はイシスが見てきてくれる。助かる。
「頼むねイシス」
首にマジックバッグを下げる。ぶわっ、と圧巻に舞い上がるイシス。ぴー、と彼方に。
このフィールド、恐いから、この二人に調査を任せよう。でも、いくら強くても、危険な事をさせてしまうから、夕御飯豪勢にしよう。
「晃太、ドラゴンの肉ば出して」
「ん」
イシスとアレスにドラゴンのステーキをトッピングしよう。ホークさんの分も忘れずに、ね。ノワールは豪勢にセレクトショップダリアから、高級苺をたっぷりタップ。
二日間で、イシスとアレスの情報をまとめて、簡単にコースを決める事になった。
『旨いのだっ、旨いのだーっ』
『ウムッ、所望スルッ』
ガツガツと、景気よくドラゴンステーキを食べている。アレスには米、イシスには軽くトーストした食パンを乗せているが、綺麗に消えていく。不公平だと、ポッチャーズの視線が来るので焼いたが、アレスとイシスの量の半分以下。仔達と若手達にもね。
私達はそれぞれ100g、ホークさんは250gだ。それぞれ好きなソースを選んで貰う。
「晃太、ドラゴンのお肉、後どれくらい?」
「次に出したらなくなるよ」
「そうな」
魔境で鼻水君、違うシヴァがビアンカに献上したドラゴンのお肉が少ない。スジ肉は大量にあるけど、処理が大変なんだよね。ほとんど母が預り、私達が王冠山に籠っている間に料理してくれるって。
次は何時にしようかな? やっぱり大晦日かな?
ドラゴンステーキを切って、セレクトショップダリアの高級岩塩でぱくり、はぁー、優しい甘さ、溶けるー。
100gは少なかったかな、あっという間になくなった。
ドラゴンステーキの夕御飯後、イシスとアレスに第八階層について話をきくことになった。
切り立った崖、荒れ狂い打ち寄せる白い波、叩きつけるような風。
まさに、サスペンスの最終舞台の東○坊。
行ったことないけど。
寒っ、寒かっ。
ちょっと覗いただけやけど、寒かっ。あわててルームに引き返す。ダンジョンの外は、季節的にまだ夏、秋の始まりくらいのはずなのにっ。これがダンジョンの不思議で、外とダンジョン内の気候は必ずしも一致しない。
これ、誰がクリア出来るの? ちょっと難関すぎやしないかい?
「姉ちゃん、どうする?」
「どうするって、どうしようかね」
うーん。
とにかく、ホークさんとノワールの体を休めるために出発は明後日にしたけど。
ちらっとしか見ていないが、悪路のようやし、風も強そうだけど。
それになにやら恐い感じがひしひしと空気で伝わってきた。今までのフィールドと比べれない程の緊張感。いままで冷蔵庫ダンジョンや軍隊ダンジョン、ルーティのダンジョンなどから感じたことのない、緊張感が。
『嫌な気配がするのです』
『そうね、そんな感じがするわ』
ビアンカとルージュが眉間を寄せる。この二人がそう言うのであれば、そうなんだろう。
ここでの移動手段を心強い、わが家族と相談や。
「ねえ、このフィールドやけど、移動手段はどうしたらよか?」
『そうなのですね。ここはノワールで移動が良いと思うのです』
『そうね、ノワールで移動じゃないかしら? 私達がしっかり守るわ』
『ソウダナ、ソレガ良イダロウガ、崖ノ予測ガツカナイ。必要ナラオシリスデノ移動ダナ。風ガ強イガ、短距離ナラ行ケルダロウ。ナニ、心配ナイ、私ガイル』
「くうっくうっ」
心強いなあ。
『見たことない場所なのだー』
と、呑気なアレス。
『主よ、早く行きたいのだ』
きゅるん。
いや、あんた、恐いとかないわけ? あの崖とか波とかさ。
『…………行ってくるのです』
『…………そうね、行ってくるといいわ』
あ、二人の言わんとする事が分かった。
「アレス、ちょっと周囲ば偵察してくれる? ノワールでも大丈夫そうか、見てきてくれん?」
まずは単独でも平気だろうアレスに周囲を見て貰う感じだね。アレスにしたらずっとレベルが低い仔達や若手達が下手に同行したら、何かあったら大変や。特にこの第八階層は、他の階層にいままでのダンジョンに比べての危険度は最難関のはずだ。
『ならば、妹よっ、一緒に行くのだっ』
『疲れているのです』
『一人で行ってきて』
『ガーンッ』
すげなさすぎ。
撃沈するアレス。トラックみたいな鰐を蹴散らしていたのに、ぺたん、と伏している。ちら、と目配せする。
『…………私とルージュはちょっと疲れているのです、辺りを代わりに見てきてほしいのです』
『そうね。後で出るユイ達のためよ、アレスなら大丈夫でしょう』
言い方をソフトにしている。
『『頑張って』』
ぺたん、と付したアレスを覗き込む、ビアンカとルージュ。鼻先で、ちょんちょん。アレスの垂れた耳が、ぴん、と立ち上がる。
『行くのだーっ』
アレス、復活。
……………………………ちょろ、あ、失礼。アレスに失礼やね。
「アレス、頼むね。移動の事を考えると情報が欲しいんよ」
『任せるのだっ、いってくるのだーっ』
念のために、首にマジックバッグを下げると、バーッ、と行ってしまった。夕御飯までには帰って来てよー。
行ってくれたが、なんや心配。
『主ヨ、私モ出ル。周囲ノ地形ヲ確認シテコヨウ』
イシスがずいっと出てきてくれた。地上はアレス、上空はイシスが見てきてくれる。助かる。
「頼むねイシス」
首にマジックバッグを下げる。ぶわっ、と圧巻に舞い上がるイシス。ぴー、と彼方に。
このフィールド、恐いから、この二人に調査を任せよう。でも、いくら強くても、危険な事をさせてしまうから、夕御飯豪勢にしよう。
「晃太、ドラゴンの肉ば出して」
「ん」
イシスとアレスにドラゴンのステーキをトッピングしよう。ホークさんの分も忘れずに、ね。ノワールは豪勢にセレクトショップダリアから、高級苺をたっぷりタップ。
二日間で、イシスとアレスの情報をまとめて、簡単にコースを決める事になった。
『旨いのだっ、旨いのだーっ』
『ウムッ、所望スルッ』
ガツガツと、景気よくドラゴンステーキを食べている。アレスには米、イシスには軽くトーストした食パンを乗せているが、綺麗に消えていく。不公平だと、ポッチャーズの視線が来るので焼いたが、アレスとイシスの量の半分以下。仔達と若手達にもね。
私達はそれぞれ100g、ホークさんは250gだ。それぞれ好きなソースを選んで貰う。
「晃太、ドラゴンのお肉、後どれくらい?」
「次に出したらなくなるよ」
「そうな」
魔境で鼻水君、違うシヴァがビアンカに献上したドラゴンのお肉が少ない。スジ肉は大量にあるけど、処理が大変なんだよね。ほとんど母が預り、私達が王冠山に籠っている間に料理してくれるって。
次は何時にしようかな? やっぱり大晦日かな?
ドラゴンステーキを切って、セレクトショップダリアの高級岩塩でぱくり、はぁー、優しい甘さ、溶けるー。
100gは少なかったかな、あっという間になくなった。
ドラゴンステーキの夕御飯後、イシスとアレスに第八階層について話をきくことになった。
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