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連載
騒がしい始まり⑩
首都に入るにあたり、マデリーンさんとミゲル君は馬車内で待機案が出た。顔見知りがいるし、もしかしたら鉢合わせになる可能性があるからね。マデリーンさんはいいが、ご実家がお店を構えるミゲル君は、余計なトラブルを避けるためね。だけど、広い首都でダイレクトに知り合いに鉢合わせするとは思えないと、断られてしまった。二人共にシーラに帰って来たのは五年ぶりくらいだし、すれ違うくらいで分かりはしないだろうって。特にミゲル君は、お友達とかいるんじゃないかなって思ったが、深い付き合いまである友人はいないって。
ちょっと心配だったけど、二人共にあっけらかんに言うので油断していた。
一斉に注目が集まった大声の主は、二十歳すぎくらいの青年で、びっくりしていた。もしかしたら、久しぶり、元気だった? みたいな展開になるかと思ったけど。その人、驚いた顔から一気に、嫌な顔になる。
「お前奴隷になったんだっ、だっせえっ」
うわっ、上から目線で嫌な言い方っ。
チラリ、と戸惑いのミゲル君に知り合い?と小声で聞いたけど、細かく小さく首を横に振る。本当に知らないみたい。
なら、どちらの人? 格好からして、冒険者やけど。そう思っていると、その青年の口撃が続く。
「奴隷の癖に、何、ギルドに入ってんだよっ、さっさと出ていけ、ここはお前なんかが入っていい場所じゃねーんだよっ」
さっきから他の人達からも出た言葉。
ぷちぷち、と怒りの導火線が細かく切れていく。
「やめんかっ、バカどもっ。ギルドから通達があったはずっ。彼らの事をどうこう言うなっ」
ボスザさんの一括で、数人が怯み、更にその中の口を閉ざす人が出てくる。付いてきたイーゴリさんとジョレスさんも制しようと必死だ。それで、ちょっと冷静になるが、見てしまった。奥のカウンターで、ギルド職員がいるのだけど、受付でオロオロする気の毒な若い女性職員さん。その更に奥で、まるで、面倒くさい、と言わんばかりの職員達の姿が目に入る。いやいや、オロオロしている女性職員さんを下げんね。
『ユイ、軽ーく噛むのです?』
ちら、と恐ろしい牙をチラ見せするビアンカ。
『ちょっと脅しましょうか?』
爪をちゃきん、するルージュ。
『主よっ、いつでもヤレるのだっ』
アレス、何をする気?
アリスまでチラリと確認するように視線を寄越してくる。イシスは歯牙にもかけずに、いつもの、ふん、小物が、みたいな顔で見下している。オシリスはイシスの隣でふーん、みたいな顔だ。
「ダメよ」
と、制止していると、嫌味な青年の叫びに、繋いでいた私の堪忍袋の尾がブチ切れる。
「あーあっ、これで『リソーナ』が店じまいだなっ、一族から奴隷なんか出したんだっ、ざまあみろっ、さっさとアウデから出ていけっ、くだばっちまえっ」
……………は?
「なんであんたがそんな事言う権利があると?」
『あ、ユイが怒ったのですっ』
『アレス、下がりなさいっ』
『わ、分かったのだっ』
睨みつけていたアレスがすごすごと私の後ろに移動。もちろんすぐそばにいるけどね。私の手を、誰かが掴んだ、ミゲル君だ。ダメです、とその表情は物語っているが、私はそっと手を離す。
「これはね、私の主人としての役目や」
そう、これは役目、私の役割。
シーラに来るに辺り、奴隷に厳しいお国柄とあって、色々と先手を打ってきたつもり。ギルドを通し、鷹の目の皆さんは、我が水澤家の一員として迎え入れているとつたえていた。なんとサエキ様からも、シーラの王族になるザイーム殿下にも連絡してくれてある。
つまり、シーラ特有の奴隷の色眼鏡で、鷹の目の皆さんを見ないでほしいと要望していた。だから、ボスザさんは声を上げて入れし、イーゴリさんやジョレスさんは必死に体格のいい冒険者を抑えようとしている。
やけど、彼らのように動けているギルド職員は僅か数人だ。カウンターの向こうでは、騒動に対応しきれない若い職員と、白けた顔の職員達と別れている。
これは予想以上に奴隷に対するものが根深いものなんやろうけど、さ、あんたら、プロのギルド職員やろうもん。
いいわけ? この騒動に対して白けた顔してるけどさ。
ふー、と息を吐き、ゆっくり嫌味な青年を見る。嫌味な青年は、にやにやと嫌な嘲笑を浮かべている。
確かに、シーラは奴隷に厳しい心象はあるが、だからといって事情も知らんで言っていいことも分からんのかね? ギルドから、私達の事は通達あったはずやない?
腹の奥底から、怒りが湧き上がり、何かが、鎌首を上げる。
神子ノ怒リハ我ノ怒リ
静かに響く声。
ああ、白夜が起きてしまった。あの王冠山の内部、かつての故郷を離れるに辺り、私の返答に答えて以来、一切の声を聞いていなかった。まさしく、私の奥底で眠りについていた白夜が、ゆっくりと目覚めだしていた。
ちょっと心配だったけど、二人共にあっけらかんに言うので油断していた。
一斉に注目が集まった大声の主は、二十歳すぎくらいの青年で、びっくりしていた。もしかしたら、久しぶり、元気だった? みたいな展開になるかと思ったけど。その人、驚いた顔から一気に、嫌な顔になる。
「お前奴隷になったんだっ、だっせえっ」
うわっ、上から目線で嫌な言い方っ。
チラリ、と戸惑いのミゲル君に知り合い?と小声で聞いたけど、細かく小さく首を横に振る。本当に知らないみたい。
なら、どちらの人? 格好からして、冒険者やけど。そう思っていると、その青年の口撃が続く。
「奴隷の癖に、何、ギルドに入ってんだよっ、さっさと出ていけ、ここはお前なんかが入っていい場所じゃねーんだよっ」
さっきから他の人達からも出た言葉。
ぷちぷち、と怒りの導火線が細かく切れていく。
「やめんかっ、バカどもっ。ギルドから通達があったはずっ。彼らの事をどうこう言うなっ」
ボスザさんの一括で、数人が怯み、更にその中の口を閉ざす人が出てくる。付いてきたイーゴリさんとジョレスさんも制しようと必死だ。それで、ちょっと冷静になるが、見てしまった。奥のカウンターで、ギルド職員がいるのだけど、受付でオロオロする気の毒な若い女性職員さん。その更に奥で、まるで、面倒くさい、と言わんばかりの職員達の姿が目に入る。いやいや、オロオロしている女性職員さんを下げんね。
『ユイ、軽ーく噛むのです?』
ちら、と恐ろしい牙をチラ見せするビアンカ。
『ちょっと脅しましょうか?』
爪をちゃきん、するルージュ。
『主よっ、いつでもヤレるのだっ』
アレス、何をする気?
アリスまでチラリと確認するように視線を寄越してくる。イシスは歯牙にもかけずに、いつもの、ふん、小物が、みたいな顔で見下している。オシリスはイシスの隣でふーん、みたいな顔だ。
「ダメよ」
と、制止していると、嫌味な青年の叫びに、繋いでいた私の堪忍袋の尾がブチ切れる。
「あーあっ、これで『リソーナ』が店じまいだなっ、一族から奴隷なんか出したんだっ、ざまあみろっ、さっさとアウデから出ていけっ、くだばっちまえっ」
……………は?
「なんであんたがそんな事言う権利があると?」
『あ、ユイが怒ったのですっ』
『アレス、下がりなさいっ』
『わ、分かったのだっ』
睨みつけていたアレスがすごすごと私の後ろに移動。もちろんすぐそばにいるけどね。私の手を、誰かが掴んだ、ミゲル君だ。ダメです、とその表情は物語っているが、私はそっと手を離す。
「これはね、私の主人としての役目や」
そう、これは役目、私の役割。
シーラに来るに辺り、奴隷に厳しいお国柄とあって、色々と先手を打ってきたつもり。ギルドを通し、鷹の目の皆さんは、我が水澤家の一員として迎え入れているとつたえていた。なんとサエキ様からも、シーラの王族になるザイーム殿下にも連絡してくれてある。
つまり、シーラ特有の奴隷の色眼鏡で、鷹の目の皆さんを見ないでほしいと要望していた。だから、ボスザさんは声を上げて入れし、イーゴリさんやジョレスさんは必死に体格のいい冒険者を抑えようとしている。
やけど、彼らのように動けているギルド職員は僅か数人だ。カウンターの向こうでは、騒動に対応しきれない若い職員と、白けた顔の職員達と別れている。
これは予想以上に奴隷に対するものが根深いものなんやろうけど、さ、あんたら、プロのギルド職員やろうもん。
いいわけ? この騒動に対して白けた顔してるけどさ。
ふー、と息を吐き、ゆっくり嫌味な青年を見る。嫌味な青年は、にやにやと嫌な嘲笑を浮かべている。
確かに、シーラは奴隷に厳しい心象はあるが、だからといって事情も知らんで言っていいことも分からんのかね? ギルドから、私達の事は通達あったはずやない?
腹の奥底から、怒りが湧き上がり、何かが、鎌首を上げる。
神子ノ怒リハ我ノ怒リ
静かに響く声。
ああ、白夜が起きてしまった。あの王冠山の内部、かつての故郷を離れるに辺り、私の返答に答えて以来、一切の声を聞いていなかった。まさしく、私の奥底で眠りについていた白夜が、ゆっくりと目覚めだしていた。
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