もふもふ大好き家族が聖女召喚に巻き込まれる~時空神様からの気まぐれギフト・スキル『ルーム』で家族と愛犬守ります~

鐘ケ江 しのぶ

文字の大きさ
854 / 873
連載

騒がしい始まり⑩

 首都に入るにあたり、マデリーンさんとミゲル君は馬車内で待機案が出た。顔見知りがいるし、もしかしたら鉢合わせになる可能性があるからね。マデリーンさんはいいが、ご実家がお店を構えるミゲル君は、余計なトラブルを避けるためね。だけど、広い首都でダイレクトに知り合いに鉢合わせするとは思えないと、断られてしまった。二人共にシーラに帰って来たのは五年ぶりくらいだし、すれ違うくらいで分かりはしないだろうって。特にミゲル君は、お友達とかいるんじゃないかなって思ったが、深い付き合いまである友人はいないって。
 ちょっと心配だったけど、二人共にあっけらかんに言うので油断していた。
 一斉に注目が集まった大声の主は、二十歳すぎくらいの青年で、びっくりしていた。もしかしたら、久しぶり、元気だった? みたいな展開になるかと思ったけど。その人、驚いた顔から一気に、嫌な顔になる。
「お前奴隷になったんだっ、だっせえっ」
 うわっ、上から目線で嫌な言い方っ。
 チラリ、と戸惑いのミゲル君に知り合い?と小声で聞いたけど、細かく小さく首を横に振る。本当に知らないみたい。
 なら、どちらの人? 格好からして、冒険者やけど。そう思っていると、その青年の口撃が続く。
「奴隷の癖に、何、ギルドに入ってんだよっ、さっさと出ていけ、ここはお前なんかが入っていい場所じゃねーんだよっ」
 さっきから他の人達からも出た言葉。
 ぷちぷち、と怒りの導火線が細かく切れていく。
「やめんかっ、バカどもっ。ギルドから通達があったはずっ。彼らの事をどうこう言うなっ」
 ボスザさんの一括で、数人が怯み、更にその中の口を閉ざす人が出てくる。付いてきたイーゴリさんとジョレスさんも制しようと必死だ。それで、ちょっと冷静になるが、見てしまった。奥のカウンターで、ギルド職員がいるのだけど、受付でオロオロする気の毒な若い女性職員さん。その更に奥で、まるで、面倒くさい、と言わんばかりの職員達の姿が目に入る。いやいや、オロオロしている女性職員さんを下げんね。
『ユイ、軽ーく噛むのです?』
 ちら、と恐ろしい牙をチラ見せするビアンカ。
『ちょっと脅しましょうか?』
 爪をちゃきん、するルージュ。
『主よっ、いつでもヤレるのだっ』
 アレス、何をする気?
 アリスまでチラリと確認するように視線を寄越してくる。イシスは歯牙にもかけずに、いつもの、ふん、小物が、みたいな顔で見下している。オシリスはイシスの隣でふーん、みたいな顔だ。
「ダメよ」
 と、制止していると、嫌味な青年の叫びに、繋いでいた私の堪忍袋の尾がブチ切れる。
「あーあっ、これで『リソーナ』が店じまいだなっ、一族から奴隷なんか出したんだっ、ざまあみろっ、さっさとアウデから出ていけっ、くだばっちまえっ」
 ……………は?
「なんであんたがそんな事言う権利があると?」
『あ、ユイが怒ったのですっ』
『アレス、下がりなさいっ』
『わ、分かったのだっ』
 睨みつけていたアレスがすごすごと私の後ろに移動。もちろんすぐそばにいるけどね。私の手を、誰かが掴んだ、ミゲル君だ。ダメです、とその表情は物語っているが、私はそっと手を離す。
「これはね、私の主人としての役目や」
 そう、これは役目、私の役割。
 シーラに来るに辺り、奴隷に厳しいお国柄とあって、色々と先手を打ってきたつもり。ギルドを通し、鷹の目の皆さんは、我が水澤家の一員として迎え入れているとつたえていた。なんとサエキ様からも、シーラの王族になるザイーム殿下にも連絡してくれてある。
 つまり、シーラ特有の奴隷の色眼鏡で、鷹の目の皆さんを見ないでほしいと要望していた。だから、ボスザさんは声を上げて入れし、イーゴリさんやジョレスさんは必死に体格のいい冒険者を抑えようとしている。
 やけど、彼らのように動けているギルド職員は僅か数人だ。カウンターの向こうでは、騒動に対応しきれない若い職員と、白けた顔の職員達と別れている。
 これは予想以上に奴隷に対するものが根深いものなんやろうけど、さ、あんたら、プロのギルド職員やろうもん。
 いいわけ? この騒動に対して白けた顔してるけどさ。
 ふー、と息を吐き、ゆっくり嫌味な青年を見る。嫌味な青年は、にやにやと嫌な嘲笑を浮かべている。
 確かに、シーラは奴隷に厳しい心象はあるが、だからといって事情も知らんで言っていいことも分からんのかね? ギルドから、私達の事は通達あったはずやない?
 腹の奥底から、怒りが湧き上がり、何かが、鎌首を上げる。

 神子ノ怒リハ我ノ怒リ

 静かに響く声。
 ああ、白夜が起きてしまった。あの王冠山の内部、かつての故郷を離れるに辺り、私の返答に答えて以来、一切の声を聞いていなかった。まさしく、私の奥底で眠りについていた白夜が、ゆっくりと目覚めだしていた。
感想 843

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまうリリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、悪役令嬢として断罪された少女が、「誰かの物語の脇役」ではなく、自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました

由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。 ——皇子を産めるかどうか。 けれど私は、産めない。 ならば—— 「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」 そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。 毒を盛られても、捨てられず。 皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。 「お前は、ここにいろ」 これは、子を産めない女が ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。 そして—— その寵愛は、やがて狂気に変わる。

「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~

水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」 夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。 王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。 「左様でございますか」 彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。