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思い出したのはお式の前④
ああ、幼いエミリアが歩いている。
駆け寄って、抱き上げたい。
ダメだ、我慢だ、初対面なのだから。
パイプオルガンの音楽に合わせて、ゆっくり歩くエミリア。当然、軽いざわめき。エミリアはたった一人だからだ。花嫁は父親役のエスコートが着くのが当然なのだが、当の父親は椅子に呑気に座っているからだ。
だが、前回はもっと酷かった。
エミリアは古ぼけた白いドレスとベール。ブーケも持たなかった。余計にざわめきが起きた。
だが、今回は応急措置でブーケを作り、レースのカーテンだがベールをしている。見た目だけはなんとか花嫁だ。ベンが見頃の花で作ってくれたブーケ、短時間でカーテンをベールもどきにしてくれたマギーに感謝しなくては。
式は厳かな雰囲気で進む。
ここで、齢10のエミリアと、父親と同い年の30の自分が何故結婚できるか、だ。
法律がそうだから。
ミュンヘナー王国の結婚に関する法律では、年齢が10を越えたら、結婚オッケー。ただし、貴族だけ。平民がダメな理由は、人身売買の様に売られる幼子が絶えないし、そもそもその年で家族を養えない。貴族の場合は、先に保険として結婚しておいて、実際夫婦になるのは数年後とあらかじめ決める。まあ、ここ半世紀は貴族が義務で通う学校卒業と同時のデビュタントの後に結婚が主で、その年は18。それで問題ないからと、この法律が変わらず残っていたため、エミリアとの結婚となった。
両親はやっと相手を選んだかと、妥協したのか、変わりに式は準備、バルド伯爵家への支度金支払いなどもろもろ交渉してくれた。
「誓いの言葉を」
ミュンヘナー王国での結婚では、お互いに誓いの言葉を贈り合う。
前回は「私は君を妻にする」だけだった。うん、殴ってやりたい。
よし、今回はエミリアが喜ぶような言葉を贈ろう。
司教に目で促される。
まずは膝を着く、そう古今東西の恋愛小説にあった。プロポーズとかは鉄板のはず。
ざわめきが更に起こる。
少しだけ見上げると、ベールの向こうでエミリアが戸惑っている。
息が詰まりそうだ。
エミリアが、いま、生きて、目の前にいる。
生きている。
何か込み上げそうだが、飲み込む。
「エミリア嬢、急な結婚で驚かれたでしょう。しかし、私は君を、笑顔にするために、幸せするために、全てを捧げる事を、いまここで誓います。この気持ちに偽りはありません。どうか、私の家族になってください」
必死に考え、絞り出した言葉。
ベールの向こうで、戸惑いの顔から驚きに、そして、照れ臭そうな、恥ずかしそうなエミリア。
ああ、間違ってしまったか? 初対面の男からのこの言葉は、気持ち悪いか?
「はい、私を貴方のお嫁さんにしてください」
ふわあ、とはにかむように笑うエミリア。
一気に沸き上がる安堵、良かった、エミリアが笑ってくれた。良かった、エミリアが笑った。
司教が、小さく咳払い。
あ、誓いのキスだな。
これは前回と同じにするべきだ。
本来なら、口にキスだが、それは直ぐに夫婦になる場合だ。エミリアは10歳。期間を置きますよ、と言う意味で、手の甲にキス。
小さな手を大切に包み込み、そっとキス。
「ここにバルド・フォン、エミリア・ベルドの婚姻を宣言します」
駆け寄って、抱き上げたい。
ダメだ、我慢だ、初対面なのだから。
パイプオルガンの音楽に合わせて、ゆっくり歩くエミリア。当然、軽いざわめき。エミリアはたった一人だからだ。花嫁は父親役のエスコートが着くのが当然なのだが、当の父親は椅子に呑気に座っているからだ。
だが、前回はもっと酷かった。
エミリアは古ぼけた白いドレスとベール。ブーケも持たなかった。余計にざわめきが起きた。
だが、今回は応急措置でブーケを作り、レースのカーテンだがベールをしている。見た目だけはなんとか花嫁だ。ベンが見頃の花で作ってくれたブーケ、短時間でカーテンをベールもどきにしてくれたマギーに感謝しなくては。
式は厳かな雰囲気で進む。
ここで、齢10のエミリアと、父親と同い年の30の自分が何故結婚できるか、だ。
法律がそうだから。
ミュンヘナー王国の結婚に関する法律では、年齢が10を越えたら、結婚オッケー。ただし、貴族だけ。平民がダメな理由は、人身売買の様に売られる幼子が絶えないし、そもそもその年で家族を養えない。貴族の場合は、先に保険として結婚しておいて、実際夫婦になるのは数年後とあらかじめ決める。まあ、ここ半世紀は貴族が義務で通う学校卒業と同時のデビュタントの後に結婚が主で、その年は18。それで問題ないからと、この法律が変わらず残っていたため、エミリアとの結婚となった。
両親はやっと相手を選んだかと、妥協したのか、変わりに式は準備、バルド伯爵家への支度金支払いなどもろもろ交渉してくれた。
「誓いの言葉を」
ミュンヘナー王国での結婚では、お互いに誓いの言葉を贈り合う。
前回は「私は君を妻にする」だけだった。うん、殴ってやりたい。
よし、今回はエミリアが喜ぶような言葉を贈ろう。
司教に目で促される。
まずは膝を着く、そう古今東西の恋愛小説にあった。プロポーズとかは鉄板のはず。
ざわめきが更に起こる。
少しだけ見上げると、ベールの向こうでエミリアが戸惑っている。
息が詰まりそうだ。
エミリアが、いま、生きて、目の前にいる。
生きている。
何か込み上げそうだが、飲み込む。
「エミリア嬢、急な結婚で驚かれたでしょう。しかし、私は君を、笑顔にするために、幸せするために、全てを捧げる事を、いまここで誓います。この気持ちに偽りはありません。どうか、私の家族になってください」
必死に考え、絞り出した言葉。
ベールの向こうで、戸惑いの顔から驚きに、そして、照れ臭そうな、恥ずかしそうなエミリア。
ああ、間違ってしまったか? 初対面の男からのこの言葉は、気持ち悪いか?
「はい、私を貴方のお嫁さんにしてください」
ふわあ、とはにかむように笑うエミリア。
一気に沸き上がる安堵、良かった、エミリアが笑ってくれた。良かった、エミリアが笑った。
司教が、小さく咳払い。
あ、誓いのキスだな。
これは前回と同じにするべきだ。
本来なら、口にキスだが、それは直ぐに夫婦になる場合だ。エミリアは10歳。期間を置きますよ、と言う意味で、手の甲にキス。
小さな手を大切に包み込み、そっとキス。
「ここにバルド・フォン、エミリア・ベルドの婚姻を宣言します」
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