銀の鬼神とかわいいお嫁さん

鐘ケ江 しのぶ

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今、排するべきか?⑥

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 それは、後から追いかけてきた、両親だった。
 黄金の鎖の上から、自分に抱きついてきた。エミリアときちんと家族なると言ったら、涙を溢さんばかりに喜んだ両親。その両親の身体にも黄金の鎖が絡み付き始める。

「父上っ、母上っ」

 振り離したいが、びくともしない。

「ぼっちゃま、この老骨の寿命ですが、どうかエミリア様と幸せに」

「私を除け者にしないでください」

 そういって加わりのは、セバスとマギー。おそらく追いかけてきた両親にくっついて来たのだろう。

「ああ、坊やも愛されているわ。お願い坊や、あなたが今日、斬った人達にも、愛し愛される人がいるのよ。だから、どうかお願い、救って頂戴」

 それが最後の言葉。
 黄金の鎖が視界まで遮った時、ぷつん、と音がなり、視界が真っ暗になった。
 次に気が付いたのは、控え室で結婚式の支度の真っ最中だったのだ。

 自分は、ベルギッタ侯爵、両親、セバス、マギーの寿命を使ってもらい、過去に飛ばされたのだ。
 なら、彼らを救うのが自分の役割ではないか。
 ベルギッタ侯爵の言葉が重くのし掛かる。

 今日、斬った人達にも、愛し愛される人がいるのよ

 自分がエミリアを失った悲しみを抱える人達を、あの日、どれだけ増やしてしまったか。モーリスの妻、息子達から、夫を父親を奪ってしまった。他ならぬ自分が。あれだけ、献身的に支えてくれたモーリスを。
 だが、幸運か、自分は未来から戻って来た。
 間違えないようにしない、と。

 羅列したキーワードを見る。

 まずは、情報を、と思うが、疑問が津波のように発生する。

 何故、エミリアやベルギッタ侯爵令嬢達は、貴族牢なんかに繋がれた? 確証もない、フランシスが虐められたという理由で。王城の誰も止めなかったのか?
 ベルギッタ侯爵家は、建国時から続く由緒正しき家柄で、侯爵家内でもトップだったはず。財力もかなりのもので、うちでも太刀打ちできない。カシアン王子は、そのベルギッタ侯爵に婿入りするはず。そして、レイナ嬢の父親は、コースロ王国の王族だったはず。ダメだ、社交を苦手だからと、全てうろ覚え状態だ。
 だが、王家にしてみたら、ベルギッタ侯爵を怒らせなくない存在であることは確実。だから、カシアン王子の婿入りだったはず。
 そしてあのヤノス将軍の嫡男、宰相の息子、大商会の息子にも、それぞれ貴族の令嬢が婚約者としていた。マグル王国からの留学生なわからないが。高位貴族の結婚は、政略の意味合いが多いし、深い。中には自由恋愛もあるが、ほぼ政略だ。だからといって相手を疎かにしてはいけないが。

 自分が言える立場ではないが。

 やっと、エミリアとちゃんとした家族になると決めた時、王家に報告した。そして、うちうちで式を挙げるのならと、お祝いまで贈ってくれた。
 もし、エミリアに何かあれば、自分が怒ると思わなかったのか?
 城の連中は何をしていた?
 仮にもエミリアは自分の妻だし、ベルギッタ侯爵令嬢は、ミュンヘナー王国内屈指の大貴族のたった一人の跡継ぎ。
 何故、陵辱目的の奴らが、やすやすと地下牢に入れた? あそこは外部と完全遮断するように造られたはず。看守も鍵もどうした?

 これ、本当に、フランシスが虐められたとかの話で、起きた事か?
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