22 / 51
今、排するべきか?⑥
しおりを挟む
それは、後から追いかけてきた、両親だった。
黄金の鎖の上から、自分に抱きついてきた。エミリアときちんと家族なると言ったら、涙を溢さんばかりに喜んだ両親。その両親の身体にも黄金の鎖が絡み付き始める。
「父上っ、母上っ」
振り離したいが、びくともしない。
「ぼっちゃま、この老骨の寿命ですが、どうかエミリア様と幸せに」
「私を除け者にしないでください」
そういって加わりのは、セバスとマギー。おそらく追いかけてきた両親にくっついて来たのだろう。
「ああ、坊やも愛されているわ。お願い坊や、あなたが今日、斬った人達にも、愛し愛される人がいるのよ。だから、どうかお願い、救って頂戴」
それが最後の言葉。
黄金の鎖が視界まで遮った時、ぷつん、と音がなり、視界が真っ暗になった。
次に気が付いたのは、控え室で結婚式の支度の真っ最中だったのだ。
自分は、ベルギッタ侯爵、両親、セバス、マギーの寿命を使ってもらい、過去に飛ばされたのだ。
なら、彼らを救うのが自分の役割ではないか。
ベルギッタ侯爵の言葉が重くのし掛かる。
今日、斬った人達にも、愛し愛される人がいるのよ
自分がエミリアを失った悲しみを抱える人達を、あの日、どれだけ増やしてしまったか。モーリスの妻、息子達から、夫を父親を奪ってしまった。他ならぬ自分が。あれだけ、献身的に支えてくれたモーリスを。
だが、幸運か、自分は未来から戻って来た。
間違えないようにしない、と。
羅列したキーワードを見る。
まずは、情報を、と思うが、疑問が津波のように発生する。
何故、エミリアやベルギッタ侯爵令嬢達は、貴族牢なんかに繋がれた? 確証もない、フランシスが虐められたという理由で。王城の誰も止めなかったのか?
ベルギッタ侯爵家は、建国時から続く由緒正しき家柄で、侯爵家内でもトップだったはず。財力もかなりのもので、うちでも太刀打ちできない。カシアン王子は、そのベルギッタ侯爵に婿入りするはず。そして、レイナ嬢の父親は、コースロ王国の王族だったはず。ダメだ、社交を苦手だからと、全てうろ覚え状態だ。
だが、王家にしてみたら、ベルギッタ侯爵を怒らせなくない存在であることは確実。だから、カシアン王子の婿入りだったはず。
そしてあのヤノス将軍の嫡男、宰相の息子、大商会の息子にも、それぞれ貴族の令嬢が婚約者としていた。マグル王国からの留学生なわからないが。高位貴族の結婚は、政略の意味合いが多いし、深い。中には自由恋愛もあるが、ほぼ政略だ。だからといって相手を疎かにしてはいけないが。
自分が言える立場ではないが。
やっと、エミリアとちゃんとした家族になると決めた時、王家に報告した。そして、うちうちで式を挙げるのならと、お祝いまで贈ってくれた。
もし、エミリアに何かあれば、自分が怒ると思わなかったのか?
城の連中は何をしていた?
仮にもエミリアは自分の妻だし、ベルギッタ侯爵令嬢は、ミュンヘナー王国内屈指の大貴族のたった一人の跡継ぎ。
何故、陵辱目的の奴らが、やすやすと地下牢に入れた? あそこは外部と完全遮断するように造られたはず。看守も鍵もどうした?
これ、本当に、フランシスが虐められたとかの話で、起きた事か?
黄金の鎖の上から、自分に抱きついてきた。エミリアときちんと家族なると言ったら、涙を溢さんばかりに喜んだ両親。その両親の身体にも黄金の鎖が絡み付き始める。
「父上っ、母上っ」
振り離したいが、びくともしない。
「ぼっちゃま、この老骨の寿命ですが、どうかエミリア様と幸せに」
「私を除け者にしないでください」
そういって加わりのは、セバスとマギー。おそらく追いかけてきた両親にくっついて来たのだろう。
「ああ、坊やも愛されているわ。お願い坊や、あなたが今日、斬った人達にも、愛し愛される人がいるのよ。だから、どうかお願い、救って頂戴」
それが最後の言葉。
黄金の鎖が視界まで遮った時、ぷつん、と音がなり、視界が真っ暗になった。
次に気が付いたのは、控え室で結婚式の支度の真っ最中だったのだ。
自分は、ベルギッタ侯爵、両親、セバス、マギーの寿命を使ってもらい、過去に飛ばされたのだ。
なら、彼らを救うのが自分の役割ではないか。
ベルギッタ侯爵の言葉が重くのし掛かる。
今日、斬った人達にも、愛し愛される人がいるのよ
自分がエミリアを失った悲しみを抱える人達を、あの日、どれだけ増やしてしまったか。モーリスの妻、息子達から、夫を父親を奪ってしまった。他ならぬ自分が。あれだけ、献身的に支えてくれたモーリスを。
だが、幸運か、自分は未来から戻って来た。
間違えないようにしない、と。
羅列したキーワードを見る。
まずは、情報を、と思うが、疑問が津波のように発生する。
何故、エミリアやベルギッタ侯爵令嬢達は、貴族牢なんかに繋がれた? 確証もない、フランシスが虐められたという理由で。王城の誰も止めなかったのか?
ベルギッタ侯爵家は、建国時から続く由緒正しき家柄で、侯爵家内でもトップだったはず。財力もかなりのもので、うちでも太刀打ちできない。カシアン王子は、そのベルギッタ侯爵に婿入りするはず。そして、レイナ嬢の父親は、コースロ王国の王族だったはず。ダメだ、社交を苦手だからと、全てうろ覚え状態だ。
だが、王家にしてみたら、ベルギッタ侯爵を怒らせなくない存在であることは確実。だから、カシアン王子の婿入りだったはず。
そしてあのヤノス将軍の嫡男、宰相の息子、大商会の息子にも、それぞれ貴族の令嬢が婚約者としていた。マグル王国からの留学生なわからないが。高位貴族の結婚は、政略の意味合いが多いし、深い。中には自由恋愛もあるが、ほぼ政略だ。だからといって相手を疎かにしてはいけないが。
自分が言える立場ではないが。
やっと、エミリアとちゃんとした家族になると決めた時、王家に報告した。そして、うちうちで式を挙げるのならと、お祝いまで贈ってくれた。
もし、エミリアに何かあれば、自分が怒ると思わなかったのか?
城の連中は何をしていた?
仮にもエミリアは自分の妻だし、ベルギッタ侯爵令嬢は、ミュンヘナー王国内屈指の大貴族のたった一人の跡継ぎ。
何故、陵辱目的の奴らが、やすやすと地下牢に入れた? あそこは外部と完全遮断するように造られたはず。看守も鍵もどうした?
これ、本当に、フランシスが虐められたとかの話で、起きた事か?
220
あなたにおすすめの小説
【完結】運命の番じゃないけれど
凛蓮月
恋愛
人間の伯爵令嬢ヴィオラと、竜人の侯爵令息ジャサントは幼い頃に怪我を負わせた為に結ばれた婚約者同士。
竜人には運命の番と呼ばれる唯一無二の存在がいる。
二人は運命の番ではないけれど――。
※作者の脳内異世界の、全五話、一万字越の短いお話です。
※シリアス成分は無いです。
※魔女のいる世界観です。
愛することはない?教育が必要なようですわね!?
ゆるぽ
恋愛
ヴィオーラ公爵家には独自の風習がある。それはヴィオーラに連なるものが家を継ぐときに当代の公爵が直接指導とテストを行うというもの。3年前に公爵を継いだシンシア・ヴィオーラ公爵は数代前に分かれたヴィオーラ侯爵家次期侯爵のレイモンド・ヴィオーラが次期当主としてふさわしいかどうかを見定め指導するためにヴィオーラ侯爵家に向かう。だがそんな彼女を待っていたのはレイモンドの「勘違いしないでほしいが、僕は君を愛するつもりはない!」という訳の分からない宣言だった!どうやらレイモンドは婚約者のレンシアとシンシアを間違えているようで…?※恋愛要素はかなり薄いです※
妖精のいたずら
朝山みどり
恋愛
この国の妖精はいたずら好きだ。たまに誰かの頭の上にその人の心の声や妖精のつっこみを文章で出す。
それがどんなに失礼でもどんなに不敬でも罪に問われることはない。
「なろう」にも投稿しています。
デネブが死んだ
ありがとうございました。さようなら
恋愛
弟との思い出の土地で、ゆっくりと死を迎えるつもりのアデラインの隣の屋敷に、美しい夫婦がやってきた。
夫のアルビレオに強く惹かれるアデライン。
嫉妬心を抑えながら、妻のデネブと親友として接する。
アデラインは病弱のデネブを元気付けた。
原因となる病も完治した。それなのに。
ある日、デネブが死んだ。
ふわっとしてます
修道院パラダイス
羊
恋愛
伯爵令嬢リディアは、修道院に向かう馬車の中で思いっきり自分をののしった。
『私の馬鹿。昨日までの私って、なんて愚かだったの』
でも、いくら後悔しても無駄なのだ。馬車は監獄の異名を持つシリカ修道院に向かって走っている。そこは一度入ったら、王族でも一年間は出られない、厳しい修道院なのだ。いくら私の父が実力者でも、その決まりを変えることは出来ない。
◇・◇・◇・・・・・・・・・・
優秀だけど突っ走りやすいリディアの、失恋から始まる物語です。重い展開があっても、あまり暗くならないので、気楽に笑いながら読んでください。
なろうでも連載しています。
婚約破棄でお願いします
基本二度寝
恋愛
王太子の婚約者、カーリンは男爵令嬢に覚えのない悪行を並べ立てられた。
「君は、そんな人だったのか…」
王太子は男爵令嬢の言葉を鵜呑みにして…
※ギャグかもしれない
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる