銀の鬼神とかわいいお嫁さん

鐘ケ江 しのぶ

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今、排するべきか?⑧

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「おはようエミリア、よく眠れたかい?」

「はいっ、バルド様っ」

 エミリアのワンピースは、おそらくこちらが用意した、部屋着だろう。しかし、リボンなんて準備した記憶がないが。
 ん? なんだ、あのメイド達は? なんの寸劇だ?
 は、そうか分かったっ。

「エミリア、今日は天気がいいから、テラスで朝食を取らないか?」

「はいっ」

 そっと、手を差し出す、うん、我ながら汚い手だな。タコやらまめやらでゴツゴツだ。鎧神アーマーヘッドの加護があっても、地味に重ねた訓練や戦闘で、地味に出来たものだ。
 エミリアは少し恥ずかしそうに、小さな手を乗せてくれる。良かった、良かった。
 寸劇していたメイド達が、ぐっ、と拳を握ってる。
 そう、メイド達は、エスコートのやり方を、エミリアの視界に入らないように、寸劇で教えてくれていたのだ。

 エミリアの歩調に合わせて、ゆっくり歩く。ガラスに映るのは、髭男が、小さな女の子の手を引いている。父親が娘と歩いているか、犯罪者が女の子を拐っているようにしか見えない。
 
 テラスには、テーブルと椅子がセットされている。
 な、なんだ、やけに気合いが入ってないか? キラキラしているぞ。
 自分でも驚いているが、エミリアもぽわん、と驚いている。

 セバスに促され、着席する。
 エミリアも緊張している。

「ご主人様はコーヒーで?」

 セバスが確認してくる。いつもコーヒーだ。

「エミリア様、お紅茶ですか? 新鮮なオレンジジュースもございます」

「え、えっと、オレンジジュースを」

「かしこまりました」

 てきぱきと動くわが使用人。
 コーンスープ、新鮮野菜のサラダ、オムレツ、腸詰め、ふわふわのパン。

「エミリア、それだけで足りるか?」

 まるで小鳥の餌じゃないかっ。

「ご主人様の量が多いだけですよ」

 と、コーヒーを出すセバス。

「あの、こんなにたくさん、私、食べきれないかも…………」

 エミリアが申し訳なさそうだ。

「ああ、しんぱ、ふがわっ」

 視界になんだか、とんでもないのが飛び込んできたっ。別館で休んでいるはずの両親が植え込みの隙間から、こっちをギラギラした目で見ていたのだ。いや、あの、一応、元だけど、フォン辺境伯夫妻だったわけだよ。何やってんだよっ、朝っぱらからっ。うちの両親、眼力ハンパないから、恐いよ、朝からヤバい雰囲気が、植え込みから滲み出してるっ。

「バルド様?」

 あ、エミリアが不安そうだ。こほん。

「エミリア、心配ないから。残っても私が全部平らげるよ。さあ、頂こう」

「はいっ」

 エミリアが嬉しそうに笑う。その後の植え込みで、チラチラ見える、ギラギラ両親。せっかくのエミリアとの記念すべき初朝食がっ。
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