銀の鬼神とかわいいお嫁さん

鐘ケ江 しのぶ

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会議と味方⑩

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 食後、先に両親が退席するが、後で執務室で合流だ。
 ゆっくりエミリアとお茶を楽しみ、時間が過ぎる。自分は徹夜なんて平気だが、エミリアはそうではない。名残惜しいがエミリアを部屋に送る。

「お休みエミリア」

 そっと小さなエミリアの手にキス。

「はい、お休みなさいバルド様」

「明日も朝食を一緒に取ってくれるかい?」

「はいっ」
 
 嬉しそうに笑うエミリア。大事にしないと。
 名残惜しいが、扉の向こう見送る。
 再び、執務室に行き、両親と合流して、根掘り葉掘り聞かれる。モーリスが淹れてくれた濃い目のコーヒーを飲みながら、必死に思い出す。
 多少、辺境伯の仕事もしていたので、領内の事ならだいたい覚えている。一つ思い出すと、芋づる式に記憶が甦る。
 領内の小さな事から、母の出身国マグル王国の事情。ミュンヘナー王国内で起きた大きな事から、細々とした事。首都の貴族学園に在学していたエミリアからの手紙の内容まで思い出す。
 時々両親の確認に答えながら時間が過ぎる。
 日付けが変わり、やっと一息つく。
 流石に頭痛がする。

「今日はこれくらいにしましょう」

 蟀谷を揉みほぐしていると、母が父に了解を取る。

「そうだな。バルド、昨日はほとんど寝ていないのだろう? 休みなさい」

 確かに、結婚式前日からほぼ寝ていない。言葉に甘える。
 明日、いや、今日になるな。朝食をエミリアと取り、ゆっくりフォン辺境伯邸内の案内だ。もともと国境にあるので、国交が不安定な時代は要塞として使用されていた。その名残があり、少々入り組んだ造りが残っている。必要時の抜け道なんかもあるが、そこら辺は母から説明するそうだ。
 まあ、自分がいる時に、エミリアを危険に晒すつもりはないが。
 そうだ、西の塔から見る夕陽が美しいと聞いた、少々高いがエミリアを抱えて行こう。前回、一度エミリアと塔登ったが、怖がっていなかった。高い場所が苦手ではないはず。ああ、夕陽に照らされたエミリアは、確か、十五を過ぎていた。まともに食事も共にしなかったし、同じ敷地内にいたのに、数ヶ月顔を合わせない事もあった。やっと交流をもったのは、エミリアが十五を過ぎた頃だった。きっかけはほんの些細なきっかけだ。遠征先で拾った石、割れ目に緑色を見つけてそれをエミリアに持って帰った。その時、エミリアは十五。結婚して五年して初めてもらった夫からのプレゼントが、拾った石。なぜエミリアが自分を捨てなかったのは、エミリアは帰る場所も頼る人もいなかったからだ。だが、その石はたまたま翡翠の原石で、マギーが研磨の手配をして、小さなペンダントトップにした。嬉しそうに翡翠のペンダントの感謝を言うエミリアの笑顔が、自分の動かない感情に刺激を与えた。それからだ、少しずつ、自分の感情に波が発生し始めたのだ。ずいぶん遅くなったが、人としての感情を産み出そうとし始めた。やっとエミリアと合流が始まった。
 今回は違う、エミリアとの過ごす時間を大事にしないと。

「では、父上、母上、先に失礼します」

「お休みバルド」

「お休みなさいバルド」

 両親に挨拶し、自分の部屋に戻る。流石に疲れていたのか、ベッドに横になるとあっという間に深い眠りについた。
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